はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

バレイショ

2013-12-17 20:39:48 | はがき随筆


 北海道を旅した時、ちょうどバレイショの花盛りだった。濃緑の葉に白色の花が丘一面に広がり、その先は青い空。その広大なイモ畑の素晴らしさは脳裏に残っている。
 家庭菜園が趣味となり、2月に植えたイモは白い花が咲き、梅雨前に収穫した。この9月、また植え付けをした。年に2回収穫できるのはうれしい。
 先日、畝に手を入れると、卵くらいのイモが手に触れた。間もなく収穫できる。だも花は見られなかった。秋植えは花が咲かないのだろうか。ホクホクしたイモも好きだが、花もいい。ちょっと寂しかった。
  出水市 年神貞子 2013/12/13 毎日新聞鹿児島版掲載

災難

2013-12-17 20:30:32 | はがき随筆
 畑の草取りを終え、ポカポカ陽気に誘われ、弁当を片手に浜に下った。海は穏やかで沖を行き交う船を眺め、のんびり取る昼飯は格別。景色もおかずにして世の中を独り占めと思った。その時だった。いきなり背後から黒い物体が弁当をわしづかみ。一体何事が起きたのか。我に返ると、トンビが油揚げをつかんで飛んでいったではないか! 上空から隙をうかがっていたのだ。ヒエーッ! たまげた。突然の出来事に肝がつぶれた。
これが本当のトンビに油揚げじゃなあ。教訓その一 男たるもの一歩外に出たら油断大敵、何が起きるか分からんぞ!
  指宿市 有村好一 2013/12/12 毎日新聞鹿児島版掲載

ですです

2013-12-17 20:24:13 | はがき随筆
 「そうですよね」「ですです」。鹿児島暮らしは初めてなので、随分親しげな話し方をするなと思っていた。しかし「そうでしたよね」に対する「でした」には驚いた。メールだったので、一言「でした!」とあり、訳が分からなかった。ちなみに「だよね」「だよー」もある。
 「うれしいでした」にもちょっと驚いた。「『うれしかったです』じゃないの」と思ったが、これも方言の一つという。
 鹿児島弁の本を開くと、「地方共通語」とあった。こちらの人は共通語、標準語として話しているそうだ。「なるほど!」。鹿児島弁は奥が深いのだ。
  鹿児島市 津島友子 2013/12/11 毎日新聞鹿児島版掲載

思い思われ

2013-12-17 20:16:14 | はがき随筆
 5台あるレジ係の中からNさんを見つけた妻が「居るよ」と言い、カートを押す私を促す。「お待ちしていました」とNさん。笑顔がうれしい。並ぶ客が少ないと、マイバッグに商品を入れながら「いつもありりがとうございます」の言葉に心がこもっている。効き手が動かない妻の財布からカードやお金を出してくれるので、妻も助かる。
 数年前、スーパーAで客への応対が気持よく、商品さばきやレジ打ちが速いNさんに感嘆して夫婦でファンになった。明日はポイント5倍の日。彼女は遅番だ。心配をかけないためにも夕方でかけよう。
  出水市 清田文雄 2013/12/10 毎日新聞鹿児島版掲載

「男はつらいよ」

2013-12-10 07:29:39 | 岩国エッセイサロンより
2013年12月10日 (火)

 岩国市  会 員   吉岡 賢一

孫3兄弟の末っ子で、やんちゃこの上ない悠雅君がインフルエンザと日本脳炎の予防注射を同時に受けることになった。「1回なら泣かんけど、2回やると涙が出るかも」。待合室で殊勝にも弱音を吐く。 
 「のぞみちゃんは泣かんかったらしいよ」。妹のように可愛がっている6ヵ月のいとこを引き合いに出すと「がんばってみる」と診察室へ。真っ赤な顔で出てくるとジジの膝にしばし顔をうずめる。やがて涙の跡が残る顔を上げ泣かんかったじゃろ」と見えを張る。
 いとことはいえ相手は年下の女の子。涙は見せられない。男4歳児の心意気。

 (2013.12.10 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載

一本負け

2013-12-08 13:49:24 | はがき随筆
 隣町の強豪校へ、初めて足を踏み入れた。高校1年生。県高校柔道新人戦の団体メンバーとして……。団体戦は登場順に先鋒・次鋒・中堅・副将・大将と呼ばれ、私は先鋒を命じられた。全員黒帯だが、私以外はみんな中学からの柔道経験者。猛者ぞろいである。
 トラホームを患っていた私は眼帯を付けて出場。相手は……。小さい! 184㌢の私は一瞬「もらった」と思った。「はじめ!」「オリャア!」。相手の奥襟に手がかかったその刹那、体がフワッと……。「一本!」
 穴があったら入りたかった。一本背負い。後は記憶にない。
  霧島市 久野茂樹 2013/12/8 毎日新聞鹿児島版掲載 

第九 終わりました♪

2013-12-07 18:03:19 | アカショウビンのつぶやき


ブログの更新が遅れました…。

12月1日、県内第九の最初が「かのや第九演奏会」でした。
大隅地域唯一のオーケストラ、かのやオーケストラの皆さんと、歓喜の歌を歌いあげました。

私にとっては、最後であろう…第九でしたが、歌い終わったら、また次も…
なんて気分になるのが、不思議です。

今回は練習の半分は参加ができず、少々焦りもありましたが、高らかに歌いました。

ちょっと出遅れた所もあったのですが、何とか今年の大きな宿題をやり遂げた!
と言うところでしょうか。

あれもこれも、第九が終わるまで…と、後回しにしたツケは、どさっと。
その上、不覚にも風邪をひいてしまい、ブログも更新できず、

ゴメンナサイ。

10円玉

2013-12-07 17:42:35 | はがき随筆
 たばこを買って店を出た。小学生が自販機の底をのぞいている。「僕、どうした」「10円がこの下に入ったの」「おじさんが10円あげるよ」「それ、要らない」と拒否された。
 「じゃあ、2人で捜そう」。店の板切れを借りて10回、20回とかき出す。すると「チャリン」と音がして、10円が転がり出た。半べそをかいていた少年の顔が一気に輝いた。
 さて、どうしようか。彼が受け取っていたら、私の手にはなかったこの10円。そうだ。大型台風で苦しむフィリピンに送ろう。早速、義捐金受付のダイヤルを回した。
  出水市 道田道範 2013/12/7 毎日新聞鹿児島版掲載

広い青空

2013-12-07 17:36:02 | はがき随筆
 青空が広がった。それまで庭の木の枝で暗かった。年の瀬になると、S君が来て庭木を剪定してくれる。年に一度の剪定なので、枝も葉も茂って大変だ。
 ハサミ、バリカンでチョキチョキ、ジャージャーと手際よく刈っていく。すごい、速い、速い。バリカンが枝や葉をどんどん飛ばしていく。太陽の恵みでいっぱい茂っていた木だ。人間の身勝手で刈り取られて寂しく、寒くなっただろう。
 「ごめんね」と思いつつ、うれしくなった。S君も満足気に茶をすすっている。青い空に見事な枝ぶりの木が出現して明るくなった。「ありがとう」
  出水市 畠中大喜 2013/12/6 毎日新聞鹿児島版掲載

有明の月

2013-12-07 17:30:30 | はがき随筆
 朝、小学校の正門の前に立つと、まだ西の空に月が残っていました。登校してくる子供たちにそのことを伝える。
 「かぐや姫の月がまだ残っているよ」と。「何それ」という子も多くいました。「うさぎが餅をついているよ」と言った方がよかったのかな。この状態の月を何というのだろうか。何気なく見上げてきたその時期の朝方の風景。子供たちとの会話の必要上、ウェブをのぞいてみる。「有明月」と出ていました。
 情けないことだけど、知らないよりは死ぬ前に、付け焼刃でも知った方がいいと考えました。
  いちき串木野市 新川宣史  2013/12/5 毎日新聞鹿児島版掲載

決意

2013-12-07 17:24:12 | はがき随筆
 妻も古稀を迎えた。が、祝宴会は子供たちの都合がつかずに延期となった。仕方なくその夜はワインで2人での寂しい乾杯となった。ならば、温泉にと日にちを決めた矢先、母の具合が悪くなり、おじゃんとなった。
 ようやく子供たちから一月遅れのお祝いをすると電話があり、今度こそと喜んでいたが、主人公が風邪をひき、またもや流れてしまった。
 そういえば、2年前の私の古稀の祝いの時は、足の親指を骨折し、うまい酒をなめる程度で終わったっけ。こりゃ2人の70代は前途多難ぞ。いや、災い転じて福となさねばなるまいぞ。
  肝付町 吉井三男 2013/12/4 毎日新聞鹿児島版掲載

感謝の旅

2013-12-07 17:17:29 | はがき随筆
 11月初旬。家族14人だんらんの霧島一泊の旅をした。まず、神宮参り。バスに1人残っていると、孫達が車椅子を借りてきたので行くことにした。
 坂道、砂利や敷石の道、更に車道のない再上段二つの階段は乗ったまま、4、5人で抱え、いつ来たかも分からない荘厳な本殿の前に着いて思いを込めて拝礼した。また帰りの下り坂は、1人が後ろ向きに2、3にんで支えて下さった。
 孫たちよ、ありがとう、ありがとう感謝感謝。そして高千穂河原からえびの、ホテルへ。温泉、食事一切家族に支えられた心に残る旅となった。
  鹿屋市 森園愛吉 2013/12/3 毎日新聞鹿児島版掲載

ひげそり

2013-12-07 17:11:02 | はがき随筆
 最近、高校2年生の長男が私の電気カミソリでひげをそるようになった。細く柔らかいひげに四苦八苦しているので、そり方を伝授。やっと身だしなみを気遣い始めたことに安堵する。
 自分もひげをそり始めたのは高校生だった。以来電気カミソリを愛用してきたが、カミソリのダンディーさにあこがれて、40歳を過ぎた頃からT字カミソリも使うようになった。そり後の爽快感は何とも言えない。
 思えば、2年もしないうちに、長男は1人暮らしを始めるかも知れない。「勉強しろ」以外に、語り、触れ合わねばならぬことが山ほどあると気づく。
  垂水市 川畑千歳 2013/12/2 毎日新聞鹿児島版掲載

事実は小説よりも

2013-12-07 16:49:45 | ペン&ぺん

 事実は小説よりも奇なり──。60年前、生まれた病院で他の赤ちゃんと取り違えられ、別の人生を余儀なくされた男性のニュース。多くの皆さんがご存じだろう。本来なら経済的に恵まれた家庭の長男だったのに……。52歳の私も57歳の姉も病院ではなく、実家で生まれた。助産師に来てもらったが、当時自宅分娩は珍しくなかったという。
 私の長女は1996(平成8)年、旧県立鹿屋病院で生まれた。連絡を受けて駆け付けると生まれたばかりで、顔はしわくちゃ。孫の顔をのぞいた義理の両親は「まあ、(私の妻に)うり二つだね」と喜んだ。次女も大きな病院で生まれたが、今度は私の母が「うわ、あんたかと思った」と驚いた。よほど私に似ていたらしい。娘達は生まれてすぐに腕や足の裏に名前を書かれ、手と足首にネームバンドを巻かれた。2人は高2、中2になったが、妻は今もバンドを大切に持っている。ただ、60年前も病院は細心の注意を払わねばならないことだった。
 医療法人「徳州会」グループの公職選挙法違反事件は全国に飛び火している。猪瀬直樹・東京都知事が「徳州会」グループから多額の資金提供を受けた問題。猪瀬知事は借用証を公開し釈明したが、このご時世に5000万円は変だろう。しかも無利息、無担保、押印なし。記者会見でしどろもどろする姿に、どれだけの人が納得するのか。
 そして鹿児島。伊藤祐一郎知事が「徳州会」グループ所有の軽飛行機を利用していたことが分かった。伊藤知事は「(徳田虎雄・徳州会前理事長)夫人が使う飛行機に便乗させてもらった」と述べ、利用供与にあたらない考えを示している。
 政治家は何事も誤解を受けないよう振る舞い、法に従い文書を作成提出し、管理を怠らぬよう身を律したい。公人なら自ら語り、関係文書を公開する気構えがほしい。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎  
  

隣国の人

2013-12-07 16:40:56 | はがき随筆
 紅葉の時季、友人と旅をしたことがあった。すばらしい景色にお互いカメラを向けていた。その時、女性が話し掛けてきたが、日本語ではない。けげんな顔をする私達に彼女はジェスチャーをする。つまり、2人並んで写してあげましょうかと言っているのだと私は解した。
 お礼に頭を下げて、その場は通じた。言葉は分からなくても心は通じるものだと思った。一瞬の出来事に同じツアーと間違えられたのかな? と2人で笑いながら歩いた。映った2人の表情は固まっていた。国交もお互い通じ会える心を持つ隣国であってほしてし願いたい。
  鹿児島市 竹之内美知子 2013/12/1 毎日新聞鹿児島版掲載