はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

私のサポーター

2014-07-06 06:17:30 | はがき随筆


 6月のある朝。腹部手術後間もない私はリハビリのため、じとじとと降る雨の中を傘を差して散歩に出た。
 雨はますます強くなってくる。雨の音で重たくなった傘を握り締め歩く私の足が止まった。「もう駄目だ」と先の方を見ると、紫色の大きなアジサイの花が五つばかり雨にたたかれて揺れていた。よく見ると、そのアジサイが「頑張れ、頑張れ」と首を振っているではないか。
 そうだ、アジサイの花言葉は「耐える愛」だったはずだ。私は背中を押されたような気がして、手術の後を手で押さえながら、一歩前に進んだ。
  鹿児島市 紫原 野幸祐 2014/7/4 毎日新聞鹿児島版掲載

時代

2014-07-03 10:13:36 | はがき随筆
 ある職場から「コーラス部を作りたい。力を貸して」と乞われた。
 「私でよかったら」と請け合ってしまった。まず注文の曲、中島みゆきさんの「時代」で困った。こちらは知らない。彼ら若者は多分、知っている。こちらは習う方に回りたい気分だ。
 音符を見ると、2部合唱になっているので、急ぎ教材研究へ向かう。練習を重ねて、発表会にも無事参加でき、楽しみを分け合った。続いてこちらから「雨降りお月さん」を持ち出した。この童謡を知らない。が数人いた。
 時代の差なのでしょう。
  出水市 松尾繁 2014/7/3 毎日新聞鹿児島版掲載

造林鎌

2014-07-03 10:07:12 | はがき随筆
 13坪の貸農園へ行き来する小道に雑草がかぶさってきた。草刈り鎌で刈り取れるようなものではないし、刈り払い機もない。実家の倉庫からさびた造林鎌を持ち出した。刃渡り60㌢、柄の長さ1㍍。亡き父が造林作業で使っていたものだ。それを研いで使った。
 2㌔の造林鎌は重たく、全身で雑草をたたき切るような力と根気がいる。肌着も上着も汗でびっしょりになった。
 夏の山仕事で汗まみれになった服を絞っていたと父が語ったことを思い出した。働き者で身を粉にして働き、家の暮らしを支えていた父を思った。
  姶良市 中馬和美 2014/7/2 毎日新聞鹿児島版掲載

手伝い

2014-07-01 11:44:20 | はがき随筆
 中学生の孫に「手伝い二つ、考えといて」と3日前に予告され思案する。ちょうどサツキの花が咲き終わったので、剪定をしてもらうことに。2人で並んで手を動かしながら口も動く。初めての剪定ばさみは「チョッキン、チョッキン」と間遠いが、私のは「チョキチョキチョキ」と忙しい。これは年期の違いだから仕方がない。2人で三つの丸っこいサツキの小山を仕上げて剪定は終了。後片付けは、二つ目の手伝いとなる。 
 急にやってくる小学生の「手伝い」には歌を歌ってもらうこともある。この老体が少しわかやぎを思い出す瞬間でもある。
  霧島市 口町円子 2014/7/1 毎日新聞鹿児島版掲載