6月のある朝。腹部手術後間もない私はリハビリのため、じとじとと降る雨の中を傘を差して散歩に出た。
雨はますます強くなってくる。雨の音で重たくなった傘を握り締め歩く私の足が止まった。「もう駄目だ」と先の方を見ると、紫色の大きなアジサイの花が五つばかり雨にたたかれて揺れていた。よく見ると、そのアジサイが「頑張れ、頑張れ」と首を振っているではないか。
そうだ、アジサイの花言葉は「耐える愛」だったはずだ。私は背中を押されたような気がして、手術の後を手で押さえながら、一歩前に進んだ。
鹿児島市 紫原 野幸祐 2014/7/4 毎日新聞鹿児島版掲載