はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

QOSの急低下

2018-04-05 16:07:54 | はがき随筆
 睡眠の質が悪くなったのを実感するこのごろだ。夜11時ごろ就寝。「朝が来たか」と明りをつけるとまだ1時前。再び眠りにつくが目覚めると4時なんてことはしょっちゅう。QOL(クオリティ オブ ライフ=暮らしの質)をもじってQOS(クオリティー オブ スリープ=眠りの質)急低下などと気どっているが、1日トータル5~6時間の睡眠が確保できているかどうか、心もとない。
 加齢に伴う現象と割り切ればよかろうと考える一方で、せめて月に1度ぐらいは「春眠暁を覚えず」を味わいたいという気持ちになるのは欲張り?
  熊本市東区 中村弘之  2018/4/5 毎日新聞鹿児島版掲載

山椒

2018-04-05 15:59:06 | はがき随筆
 初冬のある日、30㌢ぐらいの木を築山に見つけた。勝手に生えたものでなく植えたような細い木。さて何だったか、頭の中は?でいっぱい。枯れてるようで枯れてはいない。それでも冬の間は謎の木のことはすっかり忘れていた。春めいて緑の新芽が出て山椒と判明。そういえば、植えた気がする。鳥の置き土産を植え替えたのだ。去年は山椒と認識していたのに困ったものである。最近は分かったと納得して時間がたつと分かってはいなかったことがよくある。
 季節柄、山椒を入れてタケノコの酢みそあえもいいなと思う私である。
  鹿児島県霧島市  口町円子  2018/4/5  毎日新聞鹿児島版掲

湧水のセリ

2018-04-05 15:51:47 | はがき随筆
 温室の君子蘭に春の日差しがまばゆい。そうだウオーキングはセリ摘みに行こう。
 五ヶ瀬川を右に見ながら山に沿って歩く。誰も見向きもしないのに湧水にセリが青々と命を唄っていた。2.3年来なかったが春を忘れずお日さまと戯れているよう。手を入れるとおやと思う程の日なた水で温かい。細い茎に柔らかそうな青い葉と少し小豆色がかったのとある。
 日曜日に息子夫婦がわたしのファクスどおり買い物をして来る。腕によりをかけセリの風味を利かせた料理を作ろう。「残りをください」「いいよ」。いつもの嫁との対話ウフフ……。
  宮崎県延岡市 逢坂鶴子  2018/4/5  毎日新聞鹿児島版掲載

荒尾干潟

2018-04-05 15:40:26 | はがき随筆
 今日も荒尾の有明海は穏やかだった。子どもたちと潮干狩りに行った県境の露店ではタイラギ、小さな生き物たちが売られてにぎやかだった。夏休みの海水浴も楽しかった。
 いつの頃からかそれも禁止となる。海も今は何もいなくなったと猟師さんは不漁を嘆いた。
 2012年7月にラムサール条約に登録された荒尾干潟は渡り鳥の中継地でもある。餌をついばみ休息しては旅立っていく。永遠に豊かな楽園であったほしい。諫早湾干拓では開門が争われているが、
人間のエゴで豊かな自然の形態を破壊しないでほしい。
  熊本県荒尾市 平田清子  2018/4/5  毎日新聞鹿児島版掲載

劣化

2018-04-05 15:32:33 | はがき随筆
 今年初め「母も劣化したね」と直球が。「はいお陰さまで」とやり過ごした。マグマがたまっていた私は後日「劣化と言ったよね」と息子に詰問。電話の向こうから「怒ってる? それはね、逆に老練・熟練・醸成」と立て続けに単語が並ぶ。ありがたいお言葉! ついには向上の証しだと。いやはやすり替えでしょう。外見を吐いた言葉だったはず。
 自分でもわかっているよ。年を取るのは避けられない現実。忖度! なく耳の痛いことを言う身内を大切に考えよう。年ごとのしわは頭中に取り込んで前向きに過ごそうと思う今ごろ。
  鹿児島県鹿屋市  日高美代子  2018/4/5  毎日新聞鹿児島版掲載


春一番

2018-04-05 15:25:29 | はがき随筆
 昨夜は台風のような強い雨風で、夜が明けても風は強く、各地で春一番が吹いたようだ。
 昼から、隣街へ買い物に出かけた。駐車場のエレベーターに乗り、女子高生と母親が閉まりかけに入ってきて、2人を囲む同乗者は2人を注視した。直ちに若い男性が「卒業式ですか」と尋ね、母親が「はい」と答えた。会話の続きを待つが、シーンとなり、彼が「それだけです」と言った。笑いがこぼれた。「おめでとうございます」と私は言った。着いてドアが開くと、照れた親子は小走りに去った。
 見知らぬもの同士に春風が吹き春一番を口ずさむ気分だった。
  宮崎県串間市  武田ゆきえ  2018/4/4  毎日新聞鹿児島版掲載


言えなかった言葉

2018-04-03 18:39:42 | はがき随筆
 お隣に時々赤ちゃんがやってくる。ママが用事のある日におばあちゃんに預けられるのだが、毎回決まって大泣きする。それは10分、20分と続き「まるで虐待しているみたいだよね」とおばあちゃんは困惑顔で言う。
 私も子育て中は母によく応援を頼んだ。夜泣きする息子の面倒も母がみてくれた。当たり前のように甘えていたが、母は大変だったんだなと今になって思う。
 お隣から「お世話になりました。ありがとうございました」とママの声が聞こえた。胸が痛んだ。私は母にお礼の言葉も感謝の気持ちも伝えなかった。
  熊本県天草市  岡田八千代  2018/4/3 毎日新聞鹿児島版掲載

ナデナデ儀式

2018-04-03 18:19:33 | はがき随筆


 猫のイークンが帰宅、取り付けたばかりの猫用出入り口にもすっかり慣れた。食事を済ませてから、パソコンに向かっている私の横に来て、背中をこちらに向けて横になる。耳の後ろあたりの後頭部を撫でてもらうのがお気に入りなのだ。これがイークンと私の主なスキンシップとなった。これまでは朝4時ごろ私がトイレに起きるのを待って、ガラス戸を開けさせて外に出ていたのだが、最近は起きると既に外出している。それがなくなってみると何となく物足りない。この日のナデナデ儀式が終わったイークン、自分のベッドに入って寝息を立てている。
  西之表市  武田静瞭  2018/4/2  毎日新聞鹿児島版掲載

桜花

2018-04-03 17:57:56 | はがき随筆
 真っ青な空に貼りつくように咲いた綾馬事公苑の満開桜。木の上での役目を終えた一輪一輪は、そのままの姿で下の芝生に落花。その花たちがいとおしくて、たくさん集めて家へ連れ帰った。
 緑色の大鉢に水を張り、一輪ずつそーっと水面いっぱいに浮かべる。新芽のアイビー数本を加えると、水に実を委ねた花たちは、気持ち良さそうに左右にリズムを取り始め、うす紅色の花芯が際だってくる。
 短い命の間に、私たちの暮らしに彩りを添えてくれる桜。その花たちに来年の春も会いたい。
  宮崎市 四位久美子  2018/4/1  毎日新聞鹿児島版掲載