風来坊参男坊

思い付くまま、気が向くまま、記述する雑文。好奇心は若さの秘訣。退屈なら屁理屈が心の良薬。

遺伝子は利己的 125号

2007年07月20日 08時50分57秒 | 随想
ダーウィニズムは、生物が自然淘汰され適者生存するとする進化論である。現世で存在する多種多様な生物は、過酷な生存競争に勝利したもので構成されている。
遺伝子(DNA)は生物の形状や行動様式を決定する情報が入った生命の設計図である。遺伝子で生存競争を述べたのが、リチャード・ドーキンス博士の提唱した利己的遺伝子という考え方で「成功した遺伝子に期待される特質のうちで最も重要なのは非情な利己主義」である。

遺伝子中心で見れば、産んだ子供を放置するより子育てをした方が、子の生存に有利と解釈できる。そのような性質は遺伝を通して広まる。子育てをしない生物は一般に多産である。ミツバチの働きバチなど、社会性昆虫における不妊階層がみせる行動は、人間が見れば利他的活動に見えるが、女王蜂に子孫を産んでもらうことで、ミツバチ遺伝子にとってはミツバチ遺伝子の利益に十分かなう(利己的)のである。

南極のペンギンは氷棚の上で天敵のアザラシが海中にいないか長時間観察する。そのうち待ちきれなくなると、押し合いをして他の個体を海に突き落とす行動をする。もし率先して飛び込む「利他的」ペンギンがいれば、彼の中の「利他的遺伝子」と共にアザラシが食べてしまう。真っ先に飛び込まない遺伝子が生存競争に勝利することになる。

利他的な雄鳥が仲間のために餌を運び続けたとする。その様子を見た雌鳥が、その行動に惚れこみ、多くの雌鳥が利他的雄鳥と交尾をした場合、利他的雄鳥の遺伝子は、結果的に自己の繁殖率を高めているのだから、鳥の意図はどうであれ遺伝子は利己的である。

ノルウェー地方に住む小さなネズミ「レミング」は、集団自殺で人口調節を行うという。鼠算的に4年周期で子どもが増える。すると何百万匹というレミングが自発的に群れをなして旅に出て、海岸から入水、溺死して海洋生物の餌になる。人間が見れば、仲間を救う為のレミングの集団自殺は、利他的な究極的行動で涙が出るのであるが、レミングの種の遺伝子は生き残る為の利己的な行動なのである。

万物の霊長である人間の遺伝子の能力は無尽蔵であるから、その生存競争の方法は無限である。過去の歴史研究をすると、家父長制のミツバチ社会、若者を戦場で死なせた戦争はペンギン社会、アラブの王侯貴族のハーレムは利他的雄鳥社会、カルト宗教の集団自殺はレミング社会。この様な見方は、人間を生存機械として、人間を物質として、人間を遺伝子の乗り物として、自然科学的に分析したに過ぎない。

「人間はどう有るべきか?人間が生きる目的や意義は?」と言う命題は別物で、心の問題である。遺伝子の可能性の発露である心の有様は、各人各様、千差万別で他人にはうかがい知れない世界である。人間特有の能力である言葉を利用して、自然環境から見聞して、個人が研究し納得する以外にないのである。先祖累代の遺伝子を引き継ぎ、試行錯誤の人生経験を積み重ねて適者生存している自分を信じ、そして自然淘汰されて今有る自然環境から学び、自己責任で懸命に生きるのである。お釈迦様の「自灯明法灯明」の教えである。

私の心はコロコロ変わり、止まることを知らない。心を止めて『無の境地』になるために般若湯を頂く事にする。信州飯田の芋焼酎「風太」が私にお釈迦様が指定した般若湯である。本日の心変わりは非常に激しいので、多めに頂く事にする。私の遺伝子の指示なのであるから、私は従う運命に有る。私は利己的な性格なのである。

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