祝辞 ６７号

最近は兄弟・親族の甥・姪の祝言ラッシュである。その時に引用する言葉は、1985年アメリカのＳＦ映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』 (Back to the Future) からである。カリフォルニア州の町、ヒルバレーに住む、ロック好きの高校生マーティ・マクフライは、深夜のショッピングモール「ツイン・パインズ・モール」の駐車場で、親友である科学者エメット・ブラウン博士（通称ドク）が開発したタイムマシン実験を手伝う。その時、ドクが燃料のプルトニウム獲得のために騙したリビアの過激派が現われ、ドクは機関銃で撃たれる。過激派から逃げるマーティはタイムマシン・デロリアンに乗り込みカーチェイスの末、30年前の1955年にタイムスリップしてしまう。そこでドクと再会する。過去への旅である。そして多様な過去の世界を見聞するのである。
あらためて時間旅行に出かけるドクを見送り、1985年の家へ戻ったマーティは、状況が少し変化しているのに気づく。1955年のマーティの介入で、弱虫だった父のジョージは自分に自信を持ち、立派な小説家になっていたのだ。恋人ジェニファーとの仲を認めなかった堅物の母も、二人の仲を認めていた。
車に乗って、ジェニファーとドライブへ行こうとするマーティであるが、そこにデロリアンに乗ったドクが現われる。ドクはマーティらの未来の子供が窮地に陥っていると告げる。しぶしぶ従うマーティとジェニファーを乗せ、デロリアンは未来へと消えて行った。未来への旅である。未来の世界を見聞するのである。この映画は三部作で、二つの作品が続く。
1955年のドクに出会ったマーティが、1985年のアメリカ大統領は「ロナルド・レーガン」だと言ったのを、ドクが「俳優の?　じゃあ副大統領はジェリー・ルイスか?」
茶化されたレーガンはこの映画をとても気に入り、一般教書演説で引用して次のように述べている。「映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で述べられているように、我々がこれから行こうとする場所には、道など必要ないのです（Where we're going, we don't need roads）。」
私の人生で、過去を振り返ると、人の感情を傷つけ、自分が傷つき落ち込んだり、人に喜んでもらい、自分も喜び、教えたり教えてもらったり、過去を思い出し、苦しみ懐かしみ悲喜交交である。体験から、知識から頭で考えれば様々な未来を想像できるのである。しかしすべて妄想である。今現在の活動には、過去も未来も無いのである。特に未来は白いキャンバスで、自己責任で如何様にも、絵を描けるのである。
祝辞は
「君達の未来は白紙です。良くも悪くも二人の責任で絵を描いていくのです。素晴らしい絵を見せて下さい」