風来坊参男坊

思い付くまま、気が向くまま、記述する雑文。好奇心は若さの秘訣。退屈なら屁理屈が心の良薬。

河豚毒 34号

2007年02月22日 18時59分00秒 | 随想
フグ毒は化学物質のテトロドトキシンで、青酸カリの10倍もの威力を持った猛毒。一匹のトラフグで人間なら10人、マウスなら5万匹を死に追いやることができる。

テトロドトキシンはもともと海洋細菌に含まれ、それを巻き貝が食べて蓄積し、さらにそれをフグが食べて肝臓などに蓄える食物連鎖である。フグ以外の多くの魚がテトロドトキシンをもっていないのは,DNA(命の設計図)の違いだろう。フグの幼魚を外的から守り、子孫を後世に残すため、自分が犠牲になり、食われて敵を殺し、刺し違えて幼魚を守る。種の保存のために、自分の都合のみを考えている我利我利亡者である。外敵のいない生け簀で、人間の与える餌で養殖されているフグの大半は無毒である。

鰯は大量の幼魚を育て、一部を外敵の餌にして、仲間が己を犠牲にする敵に対する奉仕をして生き延びようとする。忘己利他に見える。遺伝子は、究極のところ、自分自身を増やそうとする行動のプログラムである。ドーキンスの利己的遺伝子の考え方によれば、一見したところ、どんな犠牲的な行動、利他的な行動も、遺伝子にとっては利己的で合理的な振る舞いでしかないということである。人間にある特異な自死は遺伝子の突然変異である。

フグも鰯も、外敵は海洋生物を想定している。人間は想定外である。人間には悪知恵があるので、フグの毒のある卵巣など内蔵を除いた肉を食ってしまい、死なずに元気である。そして又フグを獲りに出掛ける。あるいは鰯を大量に捕獲して、牛に食わしてしまう。

鰯のDNAには牛に食われることは想定外である。人間の貪欲の極みは、フグの中でも猛毒がある卵巣を調理して名物食品にしてしまう。石川県金沢市周辺や能登地方では「フクノコ」というフグの卵巣の糠漬けがある。フグの卵巣を1年くらい塩漬けにし、その後イワシの塩汁と麹を加え糠に漬け込み、重石をおいて2年以上発酵させると、フグ毒が消える。最初に食べた人は勇気のある人である。今では科学分析機器で安全を確かめている。

人間も生命を維持するだけの食料を手に入れていれば、自然のバランスは崩れない。貨幣経済に成ってから、マネーゲームの道具として食料を物と見るようになってしまった。

生かされている命を維持してもらえるのが、人間以外の生物の命である。命を戴いた感謝のお礼をしないのが最近の人間である。人間のDNAの心の部分が休止してしまったのか。

人間の漁獲量よりも鯨の方がイワシの消費量は確かに多いが、鯨は死後有機質に分解されてイワシに還元されるが人間に食われたイワシが漁業資源に還元される事はない。人間も知恵を働かせて、魚にお返しをしなければならない。

豊かな森を再生することは、一つの選択肢である。森から流出した栄養は豊かな海を形成する。文明は森に始まり、森を搾取し尽した砂漠が終焉である。演歌に東京砂漠があるのは異常なのである。

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