暗号は仲間の信号 １５０号

人の意思を相手に伝達する為に、共通の言葉や信号があり、組織の限られた人間の通信には、隠語や暗号が使われる。日本語は日本人の暗号であったが、最近は英語を話す国際人が増え、日本語の暗号が失効し、情緒や侘び・寂びの心情も絶滅危惧種のレッドデータに登録しなければならない。

イトーヨーカドーでビートルズのヘルプが流れたときは、従業員がレジに行く合図で、西武百貨店の案内放送で「ニシタケマモル」という名前が出たら、問題が発生したのであり警備員が本部に連絡する約束事がある。「西武を守る」為である。

野球では、フラッシュサイン(隠語)やブロックサイン(暗号)を使って、作戦内容がベンチから3塁ランナーコーチ、そして選手に伝える。一番サインの解読が難しいチームは、ノーサインの野球である。三原監督の野武士野球が該当し、おもしろい集団であったが、サラリーマンの管理野球全盛の現代では、期待できない。

第二次世界戦争時、平文の「開戦の決定」は「新高山登れ」の隠語となり暗号化され発信された。「トラ、トラ、トラ」は我、奇襲に成功の隠語である。日米交渉が妥結して引き返す場合は「筑波山晴れ」であったが、発信されることはなく、原子爆弾による終戦の悲劇的結末となってしまった。

隠語や暗号が解読されると、相手に有利な情報となり、組織にとっては不利になるから、その機密保持は重要事項である。キャシュカードの暗証番号が解れば、他人が引き出すことが可能である。私の銀行口座は安全である。何故なら、常に残高がないからである。

連合艦隊指令長官山本五十六は、兵士たちの士気を鼓舞する為に、前線基地の視察を計画、昭和１８年４月１８日、ラバウルからソロモン諸島へ向けて飛び立った。アメリカ軍は完璧に日本の暗号解読をしており、待ち伏せして、長官機を撃墜した。護衛は零戦たったの6機であった。劣勢に責任を感じた山本将軍が目立つ純白の第１種軍服を着用して、あえて敵機に打ち落されるために視察に出た、自殺行だった。

お釈迦様の教えは仏教であるが、隠語や暗号で述べられているので、秘密教・密教といわれる。サンスクリット語で記述されているが、解釈は多岐にわたり、その為に日本の古典仏教は、奈良仏教の華厳宗・法相宗・律宗、平安仏教の天台宗・真言宗・念仏の融通念仏宗・浄土宗、鎌倉仏教の禅の臨済宗、曹洞宗、念仏の浄土真宗・時宗そして日蓮宗、江戸時代の黄檗宗(禅)の十三宗に分派し現代に存続している。

お釈迦様の暗号解釈は至難なことで、各人がお釈迦様の追体験をして、自身で解明する意外に方法が無く、それが座禅である。以心伝心で、冷暖自知の取得は、自己責任の行為で、他人の教えを参考にして、自分で納得する以外に方法が無いし、私の人生を他人は善くも悪くもしない。

平和を維持できたであろう「筑波山晴れ」に匹敵する、仏教の暗号は「南無阿弥陀仏」で「オン・アミリタテイゼイ・カラ・ウン」である。