絵話塾だより

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2024年11月30日(土)文章たっぷりコース第6期・第2回目の授業内容/高科正信先生

2024-12-06 20:38:56 | 文章たっぷりコース

この週の始めに高科先生は用事で西中島南方へ行かれ、その後体調をくずされたそうで、授業のある土曜日にはずいぶん回復しておられましたが、それまではまるで『どろんここぶた』(アーノルド・ローベル 作・岸田衿子 訳/文化出版局) の こぶた君みたいに、コタツに潜り込んで過ごしていたそうです。

状況をすぐに絵本作品からの引用ができるというのも、高科先生ならではです。絵本のページを思い浮かべると、分かりやすいです。

 

この後、映画『ベルリン・天使の歌』(ヴィム・ヴェンダース 監督/1988年日本初公開)の話も出たのですが、それは「人にとっての幸せとは何か?」ということについて説明するためでした。
映画の中で、元天使役のピーター・フォークが天使から人間になったばかりのブルーノ・ガンツに「コーヒーを飲むと暖かくなる(=幸せになる)」と教えるシーンがあって、先生はそこがとても好きなのだそうです。

さて、授業の方はテキスト『「書く力」私たちはこうして文章を磨いた』(池上彰・竹内政明 著/朝日新書) 第一章「構成の秘密」の続きからです。
・結論よりも、まずは「書き出し」を ─ テーマと書き出しをつなぐブリッジを見つける
・無駄を恐れない ─ 冒頭から結論へのブリッジを見つける①
・「部品」の数は多めに持とう ─ 冒頭から結論へのブリッジを見つける②
・向田邦子のうまさの秘密 ─ 巧みなブリッジのかけ方①

前回の授業では、何をテーマに書くか、書きたいことをハッキリさせるのが重要ということを学びました。
今回は、書き出しで読者を引き込んでいくのが重要、ということです。特に短い文章の場合は、書き出しがより重要になります。
逆に、結論はきっちり決めてから書くのではなく、書いているうちに浮かんでくることが多いといい、ベストセラー作家『精霊の守人シリーズ』の上橋菜穂子氏 も結論は決めずに書き始めると常々言っておられるそうです。
書き出しが決まったら、ここではああする・ここではそうするというプロット(筋・柱)を立てて、展開を考えてから書くと書き進めやすくなります。
書くべきこと(材料)を書き留めておき、エピソードも貯めておくと良いでしょう。(=部品が多い)

『向田邦子ベスト・エッセイ』(向田邦子 著・向田和子 編集/筑摩書房) からは「う」を。「う」は「うまい」の「う」だそうです。
向田さんの文章は一つ一つのセンテンスが短くてリズムが良く、書き出しを読んだだけでは本来のテーマが想像できないので、ついつい読み進めてしまうというのです。

 

おいしいものの記録を「う」という整理箱に入れて貯めていたという向田さんは、レシピ&エッセイ集『向田邦子の手料理 (講談社のお料理BOOK) 』(向田邦子 著 監修・講談社 編集) という本も出版されています。

紹介された文章について、
向田さんは漢字とひらがなの使い分けに特徴があると思うのですが、自分で書く場合はどうしたら良いですか?と、質問がありました。
難しい漢字ばかりだと読みにくいけれど、ひらがなだけでも読みにくいでしょうから、そのあたりを考えて、自分の中で使い分けの約束事を決めて書くと良いでしょう。
また、傍点(文字の脇に付ける点々)は、その言葉を強調したり特別な意味を持たせたいときに付ける約物で、効力は少し弱まるけれど「」を使うこともあります、と教えていただきました。

他にも、タイトル(題名)はどのように付けたら良いのでしょうか?という質問にも、お友達の岡田淳さんの「こそあどの森」シリーズや、先生ご自身が3部作(『ぼくらの事情』『ふたご前線』『ツバメ日和』)を執筆された経験など、いろんなケースを聞くことができて興味深かったです。

  
結論として「タイトルを付けるのは難しい」ことがよく分かりました。

皆さんがどんどん質問されるのを、先生がテキパキ答えていかれるのがこのクラス。
絵話塾には珍しい座学中心のクラスなので、学生時代に戻ったようで楽しいです。

休憩後も、テキストの続きです。

テーマを決めて書くにしても、思ったことを全部書く必要はありません。
誰に向けて(テーマに関心がある人? 不特定多数? 年齢制限? など)書くのか(誰が読むのか)考えて、削れるところは削る方が良いでしょう。

エッセイ(随筆)とは、日常の暮らしの中に登場するつれづれなるままの出来事を書いたもので、読者が共感できるような話になっています。
さまざまな人が執筆しており、中には寺田寅彦など科学者の作品もあったりするので、それぞれの視点で書かれているところが面白いです。

「向田邦子の文章がうまい」ということで、『眠る杯』(講談社文庫) から、「眠る杯」の箇所を見ていきました。
彼女が幼かったとき、『荒城の月』の歌詞「巡る杯」を「眠る杯」と間違えて覚えてしまったことを、当時の思い出と共に綴った作品。
「なーんだそういうことか」と思うものの、当時の向田家の様子〜特にお父さんの思い出を記した文章に、ぐっときてしまいます。

書き出しを読んで、中身が分かってしまうような文章はできるだけ書かないようにしましょう、書き出しと書きたいことの間にブリッジ(橋)を掛けるようにつとめましょう。
ということで、『安房直子コレクション1 なくしてしまった魔法の時間』(安房直子 作・北見葉胡 絵)から「はじめの一行」を見ていきました。

 

安房直子はこの文章の中で「はじめの一行」の成功例として、『北風のわすれたハンカチ』を取り上げ、この一行が決まったとき、作品はなめらかに書けると思ったそうです。
自分自身に魔法をかけ、作者も読者も物語の世界へするりと入り込める……そんな書き出しを我々も見つけたいものですね。

そして、春の窓 安房直子ファンタジスタ』 (講談社X文庫 ホワイトハート)から「北風のわすれたハンカチ」の書き出しのところも皆で確認しました。

それから、高科先生の『ふたご前線』(すがわらけいこ 絵/フレーベル館)についてのお話を聞き、双子が主役の『ふたりの証拠 』(アゴタ・クリストフ 作・堀茂樹 訳/ハヤカワepi文庫) も紹介していただきました。

 

最後に新聞の切り抜きから、はがきの名文コンクールの受賞作で、10才の小学生が書いた「タダよりこわい物はない」という書き出しとオチが楽しい作品を読みました。

最後は課題です。
「わたしは○○です」というテーマで、エッセイでも創作でもかまいませんので書いてください。長さも自由ですが、根底にあるのは「私とは誰か(何か)」ということです。
※ 一人称であれば、私・僕・俺・あたし・ウチ・ワシ・自分・吾輩・小生……何でもOKです。
書き出しは「わたしは○○です」で、タイトルは何でも自由に付けてください。
「です・ます」(敬体)でも「だ・である」(常体)で書いてもかまいませんが、最後まで同じ文体で書き通してください。

ちなみに、「」内に書かれた文章の最後に “。” は不要です。
また、「」や。など約物は、行の始めには入れません。一行の最後に(枠外に)ぶら下げるように記載します。

それでは、次回12月21日(土)までに(書き出しに気をつけて)課題にチャレンジしてくださいね。よろしくお願いします。

 


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