絵話塾だより

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2021年6月12日(土)文章たっぷりコース第14回めの授業内容・高科正信先生

2021-06-16 19:11:57 | 文章たっぷりコース
前回の授業から約1ヶ月経つということで、まずは高科先生の近況報告から。
いま近所のクリの木が花をつけているそうで、白い小さな花が房になっているのに、どうして実はあんな風なのだろう?とか、
クリもドングリの一種なのですが、シイやナラの実のように渋くなくておいしいので、動物に食べられてしまわないように
イガで覆われているのだとか、クリについての豆知識をひとしきり。先生は何でもよく知っていらっしゃいます。
他には、コロナワクチン接種の予約の電話が一回で繋がったとか。強運の持ち主なのかもしれませんね。



今期の授業もこの日を入れてあと3回になってしまいましたが、最後まで “言葉の問題” について考えていきましょう、とのことでした。
前回でテキストが終わってしまったので、今回からは外山滋比古の『ことばのある暮し』(中央文庫)から抜粋した
「始め・中・おわり」という箇所を見ていきました。



言葉の習得は一にも二にもくりかえしによるものであり、新生児はくりかえし言葉を聞くことによって
他の言葉と分別し、意味と使い方を知るようになる。
食べ物を与える時に「マンマ」と言ったり、イヌを指差して「ワンワン」と言ったり、
世の母親たちは知らず知らずのうちにそのようにして言葉を教えています。
人間は生後30か月くらいのうちに “はじめの言葉” を確立し、それが三つ児の魂というものをつくりあげると
その人が死ぬまで変わらない個性の核となるそうです。
ですから、親の海外赴任などで幼少期を外国で過ごすと、日本語と日本文化の取得に苦労したり
極端な例では、オオカミに育てられた子供は、人間の中で暮らすようになっても言葉は話せず
短命に終わるいうことが多かったそうです。



岡本夏木の『子どもと言葉』(岩波新書)は、幼少期に母国語と出会って習得していく過程と意味を表した書物で
幼児教育を勉強する人の必読書です。



人間が最初に習得する言葉は記号化した事物ですが、人間として育っていくにはそれだけでは十分ではありません。
他の人と意思を交わすためには、抽象的な言葉も必要になってきます。
幼い頃におとぎ話を語ってもらったり、絵本を読み聞かせてもらうことが役に立ちます。



須藤真澄の漫画『どこか遠くの話をしよう』(KADOKAWA)でも、ことばの通じない人同士が
どのようにコミュニケーションを取るようになるのかが描かれています。

次に、“読み” の大切さについての箇所を見ていきました。
“読み” には、既に知っていることを読むアルファ読みと、一つ一つの言葉は分かるけれど
全体的に何を言っているのか理解できない文章を読むベーター読みの2種類があり
幼い頃から漢文や百人一首にふれるのはベーター読みの訓練になるが
今はそれを行っていないので、文学表現を読んでいくしかない。
ベーター読みを追求していくと読み手としてのスタイルは確立し、無限に未知の世界に挑んでいけるようになる。
そのようにしてことばの習得は完成する、ということでした。



みんなチンプンカンプンでしたが、先生は
「一度読んだ書物も、時が経って読み返してみると違った捉え方ができる」と
以前からおっしゃっているので、また後日読み返してみたらわかるかも…。

『ことばのある暮し』の最後は、老化を防ぐには新しい言葉を習得するのが効果的だという箇所。
そのためには何か新しいスポーツや、俳句や短歌を趣味を始めるのが良い方法ですが
最も効果的なのは、外国語を学ぶことなのだそうです。
赤ちゃんのように柔軟に頭を働かせることが、不老長寿の妙薬になるとか…いかがでしょうか?

休憩を挟んで、前々回の課題「お悩み相談の回答」を返却してもらいました。
私たちが回答を書いたのは、朝日新聞の「悩みのるつぼ」に掲載された相談でした。
実際に紙面に載ったのは社会学者の上野千鶴子さんの回答で
質問者に対してけんもほろろな内容でした。

高科先生は、相談者は実際には答えを求めているわけではなく
自分の答えに光を当てて欲しい人が相談をする傾向がある。
答に正解はないので、回答者の好きなように書けば良いとのことでした。
(上記の上野氏しかり、美輪明宏や車谷長吉なども回答者として求められているものがある)
人生は「めでたしめでたし」で終わりはしない。「そして人生は続く」のですね。

その後、朝日新聞に掲載された中島らもの「明るい悩み相談室」の記事と
『明るい悩み もっと 相談室』(朝日文学文庫)から回答例を見ていきました。
きちんと悩みに答えているのに、オチがあっておもしろい。
本当に、早くに亡くなって残念な方だと思います。



次回は岡本夏木の『幼児期 — 子どもは世界をどうつかむか』(岩波新書)から抜粋して
もう少し幼児期と言葉について詳しく学んでいきましょう。

そして、今期最後の課題は「自分にとって初めての記憶(体験)について」です。
自分の中の幼少期の記憶を思い出し、カケラをつなぎ合わせて文章にしてください。
他人に読んでもらうものですから、内容のすべてが事実でなくてもかまいません。
(多少は脚色しても結構です)
文体も文章量も、すべて自由に書いてください。
よろしくお願いいたします。

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