やまめの庭つくり

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旧吉田茂邸 その2

2010-09-22 | 庭園見学
庭園を見学する時に,ひとりで見るのと,よく知っている人に解説してもらうのとでは大違いです.

晩年に作る個人庭の場合は,いわばその人の集大成,全精力を傾けて作ったものになっている場合が多々あります.


技術的な視点だけではなく,その人の生活感,人生観,性格を深く考えて庭から読み取る作業を行う事でより深く庭を観賞出来るようになります.

といっても,やまめのレベルではそんなこと簡単に出来ません.

もっともっと勉強しなければ・・・無理です.


今回の吉田茂邸の場合,整備工事に関わっている野村勘治氏が読み解いてくれたエピソードと庭の関係を,少しだけ紹介したいと思います.

まず,消失してしまった本邸.

これは,駐在大使時代が長かった吉田茂が,海外で自分が受けたもてなしと同じように,外国からの賓客を個人邸でもてなしたいという迎賓館として建てたものです.

実際には存命中はたくさんの人が訪れたものの,誰も泊まる事がなかったらしいのですが・・・

心字池の前の芝はガーデンパーティが行えるように,考えられていたそうです.

でも実際はパーティを開くようなお客さんが集まる事はなかったとか・・・


兜門から真っ直ぐに伸びる敷石の轍は当初砂利で出来ていましたが,皇太子と身重の美智子様が来訪することになったときに今の状態に直したそうです.





駐車場は離れたところにあったのですが,そこから砂利道を歩いて万が一の事があってはならないと思い,玄関近くのアプローチまで車で乗り付けてもらおうと考えての事だったそうです.

吉田茂という人は相手をもてなす事にとても繊細な心配りをした人なんだなぁと思いました.

もっと豪快な人なのかなと何となく思っていましたが・・・

ただ,このとき美智子様は駐車場に車を止めて歩いて来られたそうで,やはり思いは空振り気味だったようですが・・alien


何となくすごく気合いを入れたのに思ったように使う機会が少なくて・・・というエピソードは哀愁を感じつつ,クスッと笑えました.


また,この日は見る事が出来ませんでしたが,住居の近くに普段は水が流れていない滝が作ってあったそうで,来客が来た時に水を流していたそうです.

どうやら(特に女性が)トイレの音を気にしないですむようにという配慮からではないかとの事yellow25

昭和40年頃には音姫なんて発想もなかったのではないでしょうか.

素晴らしく細やかな人ですね~

駐伊,駐英大使などを歴任した経験から花好きだったためにバラ園や温ランの温室が作られたそうですが,ここでも吉田茂=花好きというイメージがなく,新しい発見でした.



ああしたい,こうしたい,こんなものが欲しい・・・・という趣味や希望が詰め込まれ,まとまりはないけれど生活感があふれているものが個人邸なんだなぁと実感できました.