ゆるゆるらいふ

とりあえず、今日も一日機嫌よく・・・

【観劇メモ】「大正時代の身の上相談」と「潤う」を観て昭和レトロな喫茶店へ

2020年03月03日 | 演劇

うるう年の2月末、28日、29日の二日間は、演劇三昧で過ごすはずだった。

が、このコロナ騒動の影響で、28日の日生劇場「天保十二年のシェイクスピア」が当日の朝中止になった

それはそれは楽しみにしていたので、残念なことこの上ないが、今のこの状況では仕方がない。

では、29日の観る予定の2本の公演は・・・

と確かめてみると、どちらも上演するとのこと。

2週間ほど前に体調を崩し、気管支が腫れてしまい

(コロナではありません)

若干咳が残っているので、マスクを着用し、のど飴数種類と水を持ち、万全を期して臨む。

【大正時代の身の上相談】

まずは高円寺にあるファンファーレ高円寺という小さな劇場へ。

出演者は茅島成美さんと鶴田忍さん、という大ベテランのお二人。

以前にお仕事でお世話になった、俳優・演出家の故高橋昌也さんの奥様からお誘いいただいた。

大正時代の読売新聞の紙上に掲載されていた実際の身の上相談とその回答をお二人が朗読。

相談内容や回答に対する感想や、それとは全く関係ないトークを繰り広げて、なんだかほのぼのとする。

失礼ながら、ご老人のお友達同士が縁側で世間話をしているのを垣間見ているような・・・。

質問の内容もなんだかほっこりしている。

婚約者がいるのに他の男性に接吻されてしまった自分は汚れてしまったのだろうか、と思い悩む女性

お尻が大きいことをものすごく悩んでいる男子中学生

仕事が長続きしないと嘆く男性

禁煙ができない女性

愛想が無いと夫に言われることを悩んでいる新婚の妻

催眠術をかけてほしいから、紙面に載っていた先生の家を教えてほしい、という相談には住所を教えちゃってる。

今ではありえないおおらかさ。

回答もなんだか適当で、それで解決するのか、とちょっと笑ってしまう。

こんな大ベテランがこんな小さな劇場で公演するのね、ってことも驚いたし、
前の席に女優のかとうかずこさんが座っていたのにも驚いた。

世間がトイレットペーパーを買い占めたりして騒がしい中、ゆっくりとした時間が流れた気がする。

【潤す】

この日お付き合いいただいたのは、2013年に通っていた「戯曲セミナー」のお仲間の一人。

セミナー終了後も、観劇友達としてお付き合いいただいている。

次の会場がある荻窪に移動して、ランチをいただいてから、劇場へ向かう。

i Rego Garageは同じく戯曲セミナー仲間の一人が所属する劇団のアトリエ。

ここでこの日上演される「潤す」は、3人の作家の作品によるオムニバス。

うち二人はセミナーのお仲間だ。(一人がこのアトリエの劇団員です)

1本目「うるう」は年度の違うセミナー生の作品だとか。

2月29日が誕生日の彼を祝おうと、どうやら彼氏の部屋で鉢合わせしたらしい二人の女性。

不穏な空気が流れる中、なんとなくところどころ噛み合わない会話に違和感を感じていると、

どうやら一人は4年前の2/29日からタイムスリップしてきたらしい元カノで・・・。

ってことがわかったところで、終わっちゃうので、「で、どうなるの?」という含みを残したまま。

テンポのいい今どきの女性のセリフの応酬が楽しかったので、もう少し続きが見たかった。

2本目「ジョシ改」は一人の女性の脳内にいる二人の人格がそれぞれの主張を繰り広げる。

セミナーのお仲間の一人が演出した作品。

ある朝、コインランドリーで旧友と再会した、って感じで始まるのだが、実は同じ人物の中の別人格。

洗濯が終わったら入れ替わるという。

一人はごく普通のOL。

もう一人はロックな感じの女の子。

息つく間もないセリフの応酬は古舘伊知郎さんが二人いるみたい。

わ~っていう勢いの中で、なんとなく二人は入れ替わったような・・・

ほんとにどうでもいいことなんだけど、ロックな方の女の子の黒いタイツにビミョーな穴が開いているのが、わざとなのかそうでないのか、ずっと気になってしまった

最後は「あけまして」

こちらは、セミナーのお仲間のもう一人の脚本・演出

幼馴染の二人の男女の年賀状の文面だけで物語が進んでいく。

屈託のない子供のころから、思春期を過ぎ、やがて結婚・出産・離婚・再婚・・・

ちょっとしたすれ違いから、お互いを分かり合えないまま、幸せな時間が遠のいていく切なさ。

二人だけのやりとりから、一転して、小学校の恩師に宛てたそれぞれの年賀状の文面で同じ時間が繰り返される。

当人同士には伝えきれていなかった深い想いが先生に向けて綴られ、先生が都度アドバイスをするけれど、結果はわかっているのでよけいに切ない。

恩師の訃報を聞いて、葬儀に向かう二人の姿で幕が下りる。

そこで再会したらどうなるんだろう、という余韻が残る。

個人的には矛盾の少ない話が好きなので、3本目が一番好きだった。

最初の2本のようなパラレルワールドっぽいものは着地点が難しくて、何となくあいまいになることが多い。

そういうのがちょっとすっきりしない。

という、個人的な好き嫌いみたいなのはさておき、セミナーのお仲間の皆さんの頑張ってる姿を見るとエネルギーを分けていただける気がして、

私も頑張ろうって気になる。(戯曲を書くわけではありません

どちらの公演も、入場の際にアルコール消毒をするように呼びかけられ、

スタッフが手にかけてくれたり、マスクの無い人にマスクを配布するなど、細かい心配りが行き届いていた。

小劇場だからできたのかもしれない。

前日の公演中止のがっかり感をしっかりと回復させていただいた。

【昭和レトロな喫茶店 邪宗門】

さて、2本の演劇をハシゴした私たち。

コーヒーでも飲んで帰ろうか、ということに。

友人は以前このあたりに住んでいたとかで、思い出の喫茶店に行ってみよう、と行ってみたところ、目的のお店は残念なことにすでに閉店。

それならば、とやってきたのがこの「邪宗門」

「あった」と友人は胸をなでおろす。

ドアをあけると、上品な老婦人が素敵な笑顔で「いらっしゃいませ」

押入一間分の長さで2階まで上っている感じのはしごのように急な階段を上って2階の窓際の席へ。

結構背中の曲がった先程の老婦人がトレイをもって上ってくる。

「大丈夫

と、心配になるけれど、毎日何度も上り下りしているんだろうなあ・・・

店内は、昭和にタイムスリップしたようなレトロモダン

昔の映画に出てくるような・・・

気持ちもレトロになって、ウインナーコーヒーなんて頼んじゃう。

友人はウイスキーが入ったアイリッシュコーヒーを。

カップも素敵

お手洗いはお店の外に出て、向かい側の建物の中。

商店街で共同らしい。

遠い昔、ど貧乏だったころ、とんかつ屋をやっていた実家のトイレがこんなふうに外にあり、夜とかめっちゃ怖かったな~、などと思い出す。

居心地の良さについつい長居してしまった。

午前中から演劇を観るのってなかなか無い。

とっても贅沢な時間を過ごさせていただきました。

一日も早く、コロナ騒ぎがおさまって、平穏な日々が戻ることを祈るばかり。

大変な中、上演された皆様、お疲れ様でした。

次回作を楽しみにしています


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