いろいろあって、バンナの森の夕闇をおとづれるのは1年ぶり。
5月の午後7時から午後8時ごろまで、バンナ公園ホタル街道の森は、もっともにぎやかな時を迎える。日没直前までイワサキヒメハルゼミの大合唱で大いにざわめき、リュウキュウコノハズクが目覚めの気勢を上げるやリュウキュウアカショウビンが眠りの前にして、未練がましく唄を歌う。在来のリュウキュウカラスが集団でねぐらに帰ろうとしているし、異端のインドクジャクもかまびすしく遠くで奇声を発する。
日が暮れると、示し合わせたようにそれらの音環境は静まりをみせ、なにやら不思議な金属音の虫がカタカタと合唱を始める。(この正体がつかめていない。) カエルの仲間もいるのだろうか、さらに、午後7時30分をすぎて、闇が深まると、ぽおっと、ひとつ、ふたつ(学問上は一頭、二頭というのだそうだ)の白みを帯びた黄色の電気信号が草むらを低空飛行し始める。ヤエヤマヒメボタルだ。午後8時までの30分間、ふらふらと沸いては水平に、あるいは垂直に、あるいは回転しながら、呼吸のリズムに合わせて明滅する。
わずか30分で光るのをやめるというのは、その時間帯だけで、恋の相手を見つけ得るのか、あるいは、多量のエネルギーを放出するために体力が続かないのか、それは、ホタル君に聞いてみないと分からないが、わずか、5日から、1週間の成虫寿命のうち1日の30分間だけ、恋の相手を見つけるために一生懸命に灯をともす姿勢には、悲しみというより羨望という表現しか見つからない。
去年のようには、足繁く通えないだろうが、そろそろ梅雨を迎えるこの5月。やいまの森の恋の主役たちに「生きるとは何か。」を教えてもらいに行こう。
緑色の光跡は、キイロスジボタルか、美しい。
さらに、数枚を重ね合わせるとにぎやかな集団見合いのシーンと相成る。