国際センターや東北大学川内キャンパスの街路樹が黄金に染まっている。銀杏の木と曙杉(メタセコイア)。持っている図鑑によると、銀杏も曙杉も中国原産で、銀杏は室町時代に、曙杉は、戦後の1949年にカリフォルニア大学のチエイニーという先生から皇室に献上され皇居に植えられたのが始まりだとか。
それにしても、どこにいっても曙杉は高く聳えて天を突きさしている。渡来してからわずか70年の間に、全国のアカデミー系、公園に植樹され皆、大きく立派にまっすぐ育っている。
中国南西部原産ということで、さぞかし原生林は壮大な森を形作っているのだろうと想像するが、実は地質学でいう新第三紀(2303万年から258万年前の間)の化石として日本でもあちこちに発見されていて、かつて北半球の高緯度地帯に生えていたものが、絶滅してしまい、いわば「化石の木」とされていたものらしい。
ところが、1946年(敗戦直後だ)、その化石とされていた杉と同種の苗が中国の大学で見つかり、それが湖北省に生えている「水杉・スイサン」と呼ばれているものであることが、判明した。
その苗を、チエイニーさんが持ち帰り、日本にもおすそ分けをしたということらしい。いわば、258万年後の里帰りの樹だったのだ。なんとも、壮大な時間の里帰りの樹。この樹を見る目が違ってきた。そういえば、今思い出したが、すぐ近くの広瀬川の河床にその化石が眠っているのではなかったか。午後に行って確かめてこよう。
曙杉(メタセコイア)
曙杉
銀杏(雌株には雄株が寄り添う)
銀杏も曙杉も、スギやマツと同じ「裸子植物」の仲間だが、どちらも美しくカラマツのように黄葉する落葉樹だ。ただ、どちらも触れてみると柔らかい葉なのだが、銀杏は単葉、曙杉は針葉に分類され、銀杏は、雌雄異株、曙杉は雌雄同株ということになっている。
あの独特のにおいを放つギンナンが秋の空を赤く染め、風が吹くたびにポタポタ落ちて、根元の舗装道路や草むらをオレンジに染めている。拾って、臭い外種皮を丁寧にとって、内種皮を香ばしく焼けば、あの美しい緑の実をいただくことができるのだが、ときどき老いた男女が拾っているのを目にするものの、オイラにはそんな勇気はない(ほどくさい、それにかぶれる)。同じくカラスも小鳥もクマも見向きもしないのだというが、銀杏は何を考えて、そんな防御機能を実に託したのだろう。(そうか、内種がおいしすぎて、みな食べられてしまうのかも。)
それにしても、市販のギンナンは高いな、茶わん蒸しに1,2個入っているだけで高貴な食感をもたらす高級食材なので、目の前のタダで散らばっている実を拾いたいのだが・・・・あの老婆のように袋いっぱい取りだめる勇気なし。(ゴム手袋、マスクのいでたちで、臭い張本人の柔らかな外種皮をその場ではがして袋に入れ、広瀬川の河原で一つ一つ洗って、別の袋に入れ持ち帰ればいいか・・・)
そんな物欲めいた、想念に囚われながら、
空を見上げる。銀杏の空、曙杉の空が高い。秋もいよいよ深まる。
雌株に鈴なりのギンナンが赤い。