たとえば、地質年代で「新世代・鮮新世」に区分される300万年前から堆積した地層が、1年に1cmづつ積もるとして、3万メートル地下に、300万年前に生きていたメタセコイアの化石が眠る。今のわれわれは、そのメタセコイアのあったところから3万m上空に住んでいると想像することもできるし、地球に反射した光の300万光年の先に、青いメタセコイヤが風にそよいでいると想像することもできる。
約230万光年旅すると、われわれ天の川銀河のお隣、アンドロメダ大星雲に行きつくという。いまアンドロメダ座の膝あたりにボヤっと見えている「さかなのくちのかたち」の雲は、鮮新世の地層に眠る化石のようなものなのかもしれない。このアンドロメダから放たれる光の光源をたよりに光速で旅をすると、あちらの世界の地球と似た惑星で変な生き物たちが遊んだり、戦ったりしている姿を見ることができると想像することもできる。やがて、人工生命体に埋め込まれた「人類の英知」は、100万年という時間を100時間にも置き換えらながら旅するのであろう。今、眠りから覚めれば、第二の地球(浄土とも楽園とも称される)に着陸するところである。
彼の残したものを読み進めると、宮澤賢治というヒトは、地球の日本のイーハトーブの花巻という小さな街に住んでいながら、地球の奥底や宇宙空間の果てに至る「時の地層」という第四次元を自由に行き来しながら、あのような物語や詩を作ってたいたんだなと、なんか愉快になる。
宗教とフィールドワーク、加えて当時の科学的知見の吸収が、第四次元を大循環する賢治ワールドという物語創生の礎となったのだろう。返す返す、何とも不可思議なヒトなのである。
北帰行 2019.3.22 沖永良部島
(沖泊)
くさはらに くさいろてんと 波は春
(田皆岬)
春の岬 案内文字は 時に消され 灯台の灯は 朝に消される
銀輪の 異音はどこから来るのかと 北緯二十七度の 波音を聴く
かぜねこ