日々雑感「点ノ記」

備忘録(心の軌跡)

エスピー ○○○ ハイフン エスピーエー などの声の意味する所

2012年08月03日 | インポート
大村市竹松遺跡の発掘作業現場では、トータルステーションという、測距、測角一体型の記録装置付き測量機械を使って、2名のアルバイト作業員が測量作業をしている。

その時に、反射プリズムを持って回っている作業員が、アルファベットと数字の組み合わせた言葉を発して、ピンポールに取り付けた反射プリズムを、掘り出した遺構の穴などに立てている姿を見た事があるだろうし、その声が耳に入ることもあるだろう。

最初に反射プリズムを立てている作業員が、「エスピー ニーマルイチ ハイフン エスピーエー」などと言う。

その後に、器械を操作している作業員が、「ニーマルイチ エスピーエー」と復唱し、、しばらくしてから、「ハイ」と言う。

その後に反射プリズムを立てている作業員が、反射プリズムを立てている場所を少し移動してから「エーダッシュ」と言う。

その後に器械を操作している作業員が「エーダッシュ」と復唱する。

またしばらくしてから、器械を操作している作業員が「ハイ」と言う。

その直後に反射プリズムを立てている作業員が「チェンジ」と言う。

以下は、このような一連の声の流れで、どんな事をやっているのかという説明。

最初に反射プリズムを立てている作業員が、「エスピー ニーマルイチ ハイフン エスピーエー」などと言う時の、最初のエスピーは、サイト(site) ピット(pit) の頭文字のSPを表す。

サイト(site)は遺跡を意味し、ピット(pit)は小さい穴や細かい穴状の遺構のことを意味する。

その後のニーマルイチ はピット番号が201番である事を言っており、その後にハイフン(横棒)が入る事を表す。

その後のエスピーエーのエスピーは、セクション(section) ポイント(point)の頭文字を表す。

最後のエー(A)は、そのピットの断面図や平面図を測定する際の起点側のセクションポイントである事を言っており、その後に言うエーダッシュ(A´)は、そのピットの断面図や平面図を測定する際の終点側のセクションポイントである事を言っている。

セクション(section) は切断面を意味し、ポイント(point)は点を意味する。

反射プリズムを立てている作業員が言っている記号や番号を、トータルステーションの器械を操作する作業員が記録装置に入力してから、それぞれのピットの該当地点の三次元座標値を取得するための観測を行なっている。

観測というのは、トータルステーションの望遠鏡の中の十字線の交差位置の中央に、目標地点に立っている反射プリズムの中央部を視準するように、器械の上部固定ネジ等を操作して合致させ、データ格納ボタンを押すということになる。

その事によって、目標地点の三次元座標値を計算するために必要な水平角、鉛直角(高度角)、斜距離などのデータが記録装置に自動的に格納される事になる。

最後に、反射プリズムを立てている作業員がチェンジ(change)という事によって、他のピットの測定に変更する(移行する)という事を意味している。

その他にも、トータルステーションの器械を操作する作業員が、「はい」という言葉だけを間断しながら言っているのを聞くこともあると思う。

その時にはピットの位置と形状の略測を行なっており、反射プリズムを持っている作業員が、ピットの位置と概略の形状を把握するために、円形気泡管によって鉛直に立てている反射プリズムの位置を移動させながら立てており、器械を操作する作業員が、それらの位置を追跡しながら測定して、それらの測定データが格納されるたびに「はい」と言っている。

ひとつのピットの測定が終わると、反射プリズムを持っている作業員が「チェンジ」と言って、他のピットの測定に変更する(移行する)という事の指示を出しているという事になる。

以上の事柄を把握して、腰をかがめて、ねじり鎌で土を削っている時に聞こえてくる測量作業員が発している声に耳を傾けてみれば、測量作業班の作業員が、今どんな測定をしているのかが認識できる。

今は、観測データが電子的に記録される便利な時代になったが、以前は、水平角や鉛直角(高度角)を観測手簿に手書きで記録して、光波による距離測定機能なども無かった頃には、鋼巻尺で斜距離を測り、その斜距離と鉛直角(高度角)から計算によって水平距離を求めて、それによって算出された水平距離と水平角から、必要地点の座標値を計算していた。

ボタンの操作手順さえ間違わないようにすれば、観測データが自動的に格納されて行き、それらの格納されたデータを専用のパソコンソフトに流せば、観測によって得られた座標値を含む図面などの出力も容易に実行できる。

便利すぎるような有難い時代に生かさせてもらっている。



豊田一喜





















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