このような状態からから包丁を
再生させる。約80年前の包丁。
トンテンカンとカナシキとツチで
柔らかく冷鍛し、歪みと刀身の曲
りは直した。
削り成形で切先も付けた。
でもって、研いだ。これは研ぐ前。
裏の下地研ぎ。
刀工の鍛冶押しみたいなもん。
裏の下地研ぎパート2。
鎬がつるっぺただった。
いわゆるベタ研ぎされてしまっ
てたのだ。だから鎬を付ける。
一旦、中砥でさらって、凸凹を
確認する。この青くなった部分
は、1500番のペーパーで擦ると
砥石目がよく見えて判断できる。
こうして、確認しながらまた砥
石を戻して、凹部分の平面を出
していく。
番手の荒い砥石で押しただけで
は、面一の平面が出たかどうか
が荒い砥石目の反射で判断しに
くい場合があるからだ。
日本刀の研ぎではこんなことは
しない。これは包丁研ぎの中で
私がやっている独自の方法で
修復用の特殊研ぎだ。
一旦曇らせてからペーパーを軽
くかけると状態がよく見える。
ようやく鎬を立てた。
まあ、こんなものか。
あとは、青砥の中砥石で整え
て、最後は8000番で仕上げ、
研ぎをかける。
そして、刃付けだ。
どうにか再生の目途が立った。
鎬も立った。
先が見えたから一段落という
事で重畳。
出来る限り研ぎ減らさないよ
うに気遣いながらの成形だっ
たので、結構神経使った。
この日本の包丁というのは江戸
時代に日本人が考え出した形な
のだが、これが今は世界の包丁
のスタンダードになってるのだ
から、うちらの先祖もなかなか
やるぜ。
ということで、研ぎは了。
背景が映ってる。
これが・・・
こう変身。
刃付けしてから試し切りした。
背筋寒くなる程の切れ味。
これにて、一件落着。
黒猫の人懐っこさというのは
必ず寄ってきて膝猫になるし。
黒猫は遺伝的に性格が穏やか
キジトラさんは隠れ好き。
素麺がめちゃくちゃうまい。
母の包丁を研ぐ。
「武峰作」。かなり古い。
土佐刃物は安価で切れ味鋭い作
が多い。
邑田武峰(1939年生)は15才で
土佐の打刃物鍛冶の戸梶一族に
入門したという。狩猟刀や包丁
は切れ味で有名だ。
武峰は切れ味が良く「カミソリ
武峰」の異名を持っている。
覇気がある字体。
金剛砥2種と大村砥で押して
姿を決めていく。
鎬線は荒砥の段階で出す。
天草砥でラインを整える。
表面に鎚目によるうねりがあるの
で、なかなかラインが決まらない。
うねりを完全に除去するほどに
真っ平に研いだら、薄い地鉄が
なくなってしまう可能性が高い。
人造砥#1000と#1300で砥石目
を整える。
裏も黒打ちの鎚目が残っている
ため、これ以上平面を出すと
地鉄が無くなってしまうので、
ここらあたりで止めておく。
あとは砥石目を整えるだけだ。
鎬はこれ以上立てられない。
切先はすでに地鉄が無くなって
鋼が大分露出し、日本刀の焼刃
の「返り」のように見えてきた。
天然ではなく人造#6000で刃を
合わせて、試し切りをしてみた。
最初、ティッシュを丸めて刃を
あてたが、あまりの切れ味で手
を切りそうになった。カミソリ
のような切れ味だ。
今まで手にした包丁で、やはり
武峰が一番切れる。気持ち悪い
程の切れ味。
無抵抗でヌーッと切れる感じで
はなく、意思を持っているかの
ように勝手に切り進んで行く。
この作は「カミソリ」の名の通
りだ。
刃長さ四寸七分。
使い勝手がとてもよい長さ。
刀身は相当使い込まれていたが、
これは切れる。
良い刃物。
作者は昭和14年生まれ。
これはうちの普段使いの包丁。
母は包丁マニアで、数十口を
持っている。私は10口程だが、
当然、両方合わせると本数に
見合った研ぎの回数となって
くる。
常に包丁研いでいる感じ(笑