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一昨日のライブの日。
事前に貰っていた当日タイムテーブル表で、リハーサルと本番の間が2時間ちょっと空いていることを知っていましたので、ある写真展を見に行こうと決めていました。
新宿まで、吉祥寺から快速電車に乗れば15分程度。駅すぐそばのコニカミノルタギャラリーで開かれていた、広河隆一さんというフォトジャーナリストの写真展、「人間の戦場40年」。広河さんのことは、チェルブノイリ原発事故の件で10年以上前から知っていましたが、今回の写真展のことは、ドラマー阿部さんのブログで知ったんです。
広河さんは、「人間の尊厳が冒されている場所」を「戦場」と定義して、いわゆる戦争、紛争地域だけでなく、さまざま、広義での「戦場」を写真に切り取って、僕達に静かに訴えかける短い文を添えておられました。
紛争、迫害、民族、政治、軍隊、嘘、放射能、隠蔽、家族、父親、母親、子供、病、死。
僕は、一枚一枚の写真を見、その文を読むたびに、「ふざけんな」、と声を上げたくなるような憤りと怒りで一杯になりましたが、それと同時に、・・・頭のある冷静な部分で「やっぱりな」という思いが写真の数だけどんどん噴き出して、身体中をずっとぐるぐる駆け巡ってました。
「くそっ、・・・やっぱり僕は何にも知らないんだな。」
焦りを感じました。
僕達の知らないところで、こんなにも悲惨なことが起きている。でも、広河さんのような一部の勇気あるジャーナリストが伝えてくれない限り、僕達はなかなかその「現実が存在する」ことにすら気付くことすら出来ないまま。自分から知ろうとしないかぎり、勝手に入ってくる情報ではないんです。野球やサッカーの勝ち負けや、どこそこにお洒落な高層ビルが建ちました、なんて情報とは違ってね。
僕達が日常接している主なメディアである新聞や雑誌、ラジオやテレビなんかは、実は大きな圧力下にある「報道商売」ですから(ちなみに、余談ですが・・・特に今は報道と宣伝の境が無いですよね。まぁテレビの民放なんかは少なくたって80~90%が何かの宣伝が絡んでいるような気がしてます)、その圧力をかけることのできる一部の「誰か」にとって都合の悪いことは、まず報道出来ない。握りつぶされるんですね。良識ある誰かが義憤にかられて、掴んだ「何か」を報道しても、「いやー、まずいよー、あれは」ってことになったら、それで終わり。「あの事件、そう言えばあの後、どうなったんだ?」って思うニュースって、覚えがありませんか?沢山ありますよね。報道すると、誰かが損をする、しなければ、その誰かが、得をする。じゃあその誰かって、・・・おわかりですよね。
本当の「報道の自由」なんて、無いんじゃないかな。あそこら辺には。
元をたどっていくと、僕はやはりあの大戦に考えが行き当たります。原爆、敗戦、東京裁判、戦後教育。そして、いつのまにか日本はアイデンティティを失っちゃったんだな、って思っちゃうんです。人と違う言葉をあげることを、怖いと思う国に。それどころか、知ることすら怖がる国に。知らないでいても、まぁ幸せだからいいんじゃない、って思うような、利己的な国に。
報道の自由どころか、じつは、言論の自由すら、保障されていないんじゃないでしょうか。「保障します」っていう場所に辿り着く前に、大抵は身近な所から反発をくらい、吊るし上げられて、コテンパンにされてしまうでしょう。それに打ち勝つ勇気は、並大抵ではないでしょう。
広河さんは、勇気と、ジャーナリストとしての誇りと、そして何よりもそれを見つようとするアイデンティティ、そしてそれをカタチにして人に伝えようとする実行力のある人なんですね。見に行って、本当によかった。とっても、勉強と、刺激になりました。しかもこの写真展は、無料で公開されてたんですよ。損得じゃないんですね。
そしてこれは、最近読んだ本で知ったのですが。
今の世界の人口は、約66億人です。
ではその内、現在戦時下にいる人々って、どのくらいいると思いますか?
ちょっと考えてみて下さいませんか。
100万人でしょうか、5000万人、いや、・・・1億人でしょうか。
いかがですか?何となく、想像できましたか?
・・・実は、
23億3000万人、いるんです(2005年のデータ。Armed Conflicts Report)。
そう、世界で3人に1人が、今戦争をしている国にいるんですよ。住んでいるですよ。そして勿論、そのほとんどは、一般民衆です。爆弾や銃の恐怖におびえ、自由の利かない暮らしの中で、毎日身の危険を感じながら、手に入らない仕事や食べ物のことに心を痛めながら、何かを守ろうと、生きているんですよね。
こんなこと、平和(ボ○)な今の日本に生まれた人間には、僕には、あなたには、どうでもよくて、知らなくてもいいことなんでしょうか。
でもじゃあ、一体何ができるのか、と良く聞きますが、・・・「知ることが出来る」んですよ。全てはそこからではないでしょうか。例えば温暖化問題だって、今は随分の人が知るようになりました。エコロジーを沢山の人が自然と考えるようになった。きっとあなたの身の回りでも、何かが変わりましたよね?こんなふうにね、
知ることは、必ず、意味があることなんですよ。
ではー。