いただいたコメントの中に、とても真摯なもの、好意的に受け取っていただいているものを沢山見受けることができで、とても嬉しく思っています。
僕はただのいちミュージシャンではありますが、同時に、というかそれ以前に、いち日本人して、いち大人として、気になることがあって、今まで不勉強だったが故に、今になって知っておきたいと思うことが山ほど出てきてて、そして、その時点での自分の考えをまとめたり、記録として残しておくために、時折、難しい話になるのが分かっていても、ここに書き綴っています。・・・まぁ、そういう話に限らず、ラーメンや餃子の話なども、間違いなく、僕にとってとても気になることの一つ、なのではありますが(笑)。
でも、僕が「なんでだろ」って思ったことを、「そうそう、私もなんでだ?って思ってた」と伝えて下さったり、「なるほど」とか、「なかなか勉強になる」などと言っていただくと、書いてる僕もとっても励みになります。僕自身、勉強になってます。いつも言ってますが、これも読んでくださる皆さんのおかげなんですよ。ありがとうございます。
さて、そんなわけでですね、今日も固めで行きますよ(笑)。どうしても、もうちょっとだけ昨日のブログの補完をしたいんです。ユダヤ人が迫害されてきたこと、そして、ヒトラーが何故あんなことをしたのかって事について、もう一つ書いておきたいことがあるんです。せっかくここまで読んでいただいちゃったからには、もう少しお付き合いいただいて(ニヤリ)、ってか(笑)、是非知っておいていただきたいな、と思いまして。・・・出来るだけ簡単に書きますね。出来るかな(笑)。
嘘の一種に、「デマ」というのあります。これは「デマゴギー」という言葉の略で、「政治的な目的で意図的に流された嘘」ということです。そして、あのホロコーストはこの「デマ」が、一つの引き金になっていたんです、というお話です。さて。
「シオン賢者の議定書」という、数ある偽造文書の中でも、「史上最低の偽造文書」とされているものがあります。聞きなれない言葉かと思いますが、簡単に言えば「ユダヤ人を悪い民族だという事にしてしまおう」、という目的で1900年頃にロシアで出版された書物です。
これは、あたかも極秘に入手されたもので、「ユダヤ人の長老たちが、世界征服の陰謀を企み、また世界を影から操るために、密かに開かれた会議の議事録である」、という触れ込みで、出版されました。そして、瞬く間に世界中に広まりました。人々は「隠された秘密」、なんて話が大好きですからね。
この文書には、世の中の都合の悪いことは全部ユダヤ人のせい、と書かれています。今で言う、怪文書の類ですね。
「自由主義思想は秩序や公を破壊するためのユダヤの陰謀。ダーウィンの進化論やニーチェの思想も、教会の権威を失墜させるためのユダヤの陰謀。マルクス主義もユダヤの陰謀。メディアやスポーツやポルノも大衆を白痴化させるためのユダヤの陰謀。自由、平等、博愛も、革命を起こし国を滅ぼすためのユダヤの陰謀。」
といった具合です。よく分からない言葉は、とりあえず読み飛ばしてくださって結構です。僕も全部が全部、まだちゃんとは説明できませんから(笑)。
・・・えー、さて。こんなものをでっちあげて、世間に広めて、一体誰が得をするのか。はい、これはつまり、支配層です。独裁的な政治家達です。ユダヤ人を悪者にすることで、「こんなに悪い事を企んでいるユダヤ人を排除しよう。そうすれば、世界は良くなるのだ。だからそのために、オレは頑張るんだから、皆も、・・・オレの言うことを聞け」という事です。政治を、オカルト(目で見たり、触れて感じたりできないもの)に頼ったわけです。人は、オカルト的なものに案外弱いのです。都市伝説なんかも、結構みんな好きですもんね。
「外に敵を作ることで、内側の連帯感を強くする」、というのは政治に限らず、世間でも良く使われる手段です。誰かを悪者に仕立て上げることで、身内の結束を強くする。まぁスポーツの試合なんかも、こういうことですよね。スポーツならまだしもなんですが、これって、教室でのいじめや、公園の有閑奥様コミュニティなんかでも見られる現象だったりしませんか。こういうときに悪者にされたものを、「スケープゴート(身代わり、生贄)」、って言いますが、人はこのように差別したり、よそに蔑む対象を常に求める生き物でもあるんですね。残念なことに、程度の差こそあれ、どうしても差別意識があるっていうか。
さて、この本の出版で、世界中が大騒ぎになりました。アメリカの大手自動車会社のフォード社長もこれを信じきって、挙句「国際ユダヤ人」なる反ユダヤの本まで書き、これがまたベストセラーになりました。そして、当然ユダヤ人に激怒され、訴えられ、・・・最後に「ごめんなさい」するわけですが。とにかく、大騒ぎ。
しかし、いかんせんこの「シオン賢者の議定書」は、元々がでっち上げであったので(分かりやすく言えば、ナポレオンの世界制服論を「ユダヤ人の」に書き換えただけのもの)、1921年には「こんなの嘘だ!だってほら、」と、タイム紙が証拠を挙げてスッパ抜いたわけです。(・・・なぜか日本では、1993年にまでなって、またさきのフォード氏の「国際ユダヤ人」が発刊されています。なんじゃそりゃ?です。)
しかし・・・、ヒットラーは、この偽造文書を大いに利用します。彼は、こう言い放ちました。
「文書が偽もの?それがどうした?歴史的に真実かどうかはどうでもよい。内容が真実であれば、体裁などどうでもよいのだ。そこに書かれている内容はユダヤ人を説明するのに適している」
彼にしてみたら、嫉妬からくる動機を上手いこと裏づけしてもらったカタチになったわけです。軍人たちや民衆も、すっかり扇動されました(ヒットラーは演説が異常に上手だったそうです)。そして・・・あの悲しき600万人の大虐殺が行われます。これゆえ、「史上最悪の偽造文書」と言われているわけです。言ってみれば、書物(偽造だとはいえ)が、人殺しに大きく加担した、というわけです。
もう一つ、この問題の理解の為に書いておきたいことがあります。さっきの偽文書は1900年頃のもの。ホロコーストの起爆剤にはなってしまったけれど、ユダヤに対する迫害は、もっとずっと昔からあったわけです。そこで沸き起こる疑問・・・「あのさ、そもそも、なんでユダヤ人ばっかりがこんなにずっと悪者にされるのさ?」とういうことです。これは宗教が絡んできますので、根が深く、宗教的部外者である僕達日本人には、なかなか(体感としては)理解しづらい問題です。しかし、これはこの問題を考えていく上で、とても大事なポイントだと思うんです。
その答えは、新約聖書にあります。イエス・キリストは磔にされて殺されましたが、ではそもそも、キリストを裏切ったのは、誰だったでしょう?
・・・はい、どっかで聞いたことがあると思います。キリストの12人の弟子の一人、ユダ、でしたね。お金を受け取って、キリストを神と認めない側(キリストのことをよく思わない側、敵側)の人間に売ったのです。
新約聖書にこういう事実が書かれている以上、キリストを絶対の神とするキリスト教の人々にとっては、ユダは裏切り者ということになります。そして、名前からもおわかりのとおり、このユダを祖先とする民族というのが・・・ユダヤ人、ということなのです。
「でもー、だからと言って・・・」、と宗教観の薄い僕たちの感覚からすると、ちょっと完全には分かりづらいところはありますよね。一人の裏切りが、2000年も尾をひくなんて。しかし、やっぱりこれも延々と続く迫害の一因なんじゃないか、とは想像でききそうです。なんたって、こちらは偽造文書ではなくて、書いてあるのが聖書ですから(ちなみに、実際にキリストを磔にし、処刑を行ったのは、ユダヤ人ではありません。ローマ帝国の人間でした)。
はい、そしてまたとっても大事なポイントです。ユダヤ教もキリスト教も同じ「聖書」を信じてるのに、なんでこんなことに?という疑問が出てくるかと思います。これは、・・・現在、聖書には旧約と新約、とおおざっぱに二種類あります。そしてユダヤ教でも聖書を信じますが、これは「旧約聖書」の方だけで(なので、彼らはたんにこれを「聖書」といいます)、そしてさきの裏切りやキリストの死に関して書かれている「新約聖書」は彼らにとっては、聖書ではありません(ユダヤにとっては、そもそもキリストは神ですらありません。キリストが救世主として、唯一の神になるのは、新約聖書以降のお話だからです。)。そして、キリスト教徒は旧約も新約も、両方聖書としています。ここ、ほんと難しいところですが、今日のところは、二種類の「聖書」という書物があるんだけど、ユダヤ教とキリスト教のそれぞれの「聖書とする定義」は違うんだね、とだけはなんとなーく覚えておいてください。
そして勿論ね、まだ、これだけでもないとも思うんです。彼らは、聖書以前に国を失って散り散りになってしまった時点で、世界中どこに行っても常にマイノリティ(少数派)でしたから、マジョリティ(多数派)からは虐められ、阻害されたりするわけです。とくに、新約聖書を信ずるキリスト教圏内においてマイノリティ、しかも周りに同化することなく、民族性を頑なに守り続ける人々というのは、・・・想像に難くありませんね(差別にあうのは、常にマイノリティです)。その頑なさは、民族性を守るためには絶対に必要なことであって、しかし同時に不幸を呼び込む要因にもなった、と言えるのだと思います。なにせ、今程度の国際感覚すら無い頃の話です。国を持たないということは、ゆえに常にマイノリティであることを強いられるというのは、とても辛いことだったんだろうな、と思えます。さきの偽造文書だって、これは近代のものですが、その長い歴史的な「何処に行ってもマイノリティ」ゆえに(同時に、宗教的な敵愾心もあったでしょうが)標的にされた、とも言えると思うのです。
そして・・・、これはまったく余談ですが、マイノリティだったが故、彼らは職に付くのが大変難しかったそうです。昔は医者や、教師、聖職者が一番優れた「聖なる職業」だったのですが(今でも教師が聖職と言われる所以です)、ユダヤ人はそういった職業にはつけるべくもなく、誰もなりたがらない、一番穢(けが)れた職業とされた「金貸し」などの仕事に付くくらいしか仕方無かった、と言います。しかしこの「金貸し」というのは・・・、そう、今で言う「金融業」です。今、世界の経済界でユダヤが強いのには、こんな起因もあるのです。
歴史って、さくっと読み解こうとしても、ナハナハ、じゃない(笑)、なかなかどーして、そう一筋縄ではいかないものです。でも、実はいろんな事が、どこかでちゃんと繋がってたりもします。そして、今日も歴史は現在進行形で作られ続けています。そして僕も、あなたも、一緒になって歴史を作っている一員なのです。これって、とっても興味深いことだと思いませんか。
はい、お疲れ様でした。ユダヤって、っていう事と、彼らがなんで迫害されてきたのかって事について、僕なりにざとではありますが書いてみました(当然、こんな程度で語りつくせるわけはありませんが、ひとまず基本的な、取っ掛かりの部分くらいは書けたかなー。でも、間違いがあったら教えてくださいね)。しかし、この問題も勿論まだまだ終わったわけでも解決したわけでもありません。依然、続いているのです。そしてそれは、イスラエルに限らず、世界中でね。そして例えば日本にもユダヤ人は住んでいるし、逆にイスラエルにも沢山の日本人が住んでいますし、遠くて、僕達にはなんの関係ない国(そんな国は無いけれど)の話じゃないと思うんです。これからも色々と動きがあることでしょう。一緒に、見守っていきましょうね。
空を見上げると月が出ていたので、パチリ。タイトルだけはなんかロマンティック風ですが、・・・ラーメン食べた帰りでした。あはは(笑)。こんな寒い日には、一際、うまーでした。って、昨日と同じシメで失礼しました(笑)。
ではー。