ケン坊のこんな感じ。
キーボーディスト、川村ケンのブログです。




心臓移植を待つ女の子、みどりちゃんのことを書いたのが、昨年の4月15日のことでした。

あれから約一年が経ち、ちょっと嬉しい、みどりちゃんの近況を知ることができました

一人の小さな女の子の為に、沢山の善意が集まって、みどりちゃんは今年、自分の足で立って、桜を見ることができたとそうです

 

 

昨日、アメリカの医療保険制度を描いた映画、「シッコ」を観ました。シッコとは、Sickoで、英語で病気をいう”Sick”に”o”を付けて、「”ビョーキ”な奴等」とか「狂人」「変人」というような意味を表すスラングだそうです。ずっと観たかったんですが、チャンスを逃していて、たまたま昨夜、ケーブルテレビでやっていたので、観ることが出来ました

考えさせられる、とかいう以前に、アメリカの医療保険制度のあり方に、首が90度曲がるばかり

国民皆保険が無いゆえ、高額の保険金を支払える人のみが保険医療を受けられ、保険に加入してない人は、怪我をしても、病気になって医者にかかることができない。いや、勿論保険に入っていなくても病院には行けますが、医療費がべらぼうに高いのです。

 

木材を加工中に、誤って二本の指の先を切り落としてしまった人に、「中指は600万円、薬指は120万円ですが、どうしますか?」と訊き、この患者さんは、お金が無かったので薬指だけの接合を頼みました。

911テロで被害者の方々の為に働いた人たちが、塵灰による呼吸器疾患で今も苦しんでいても、これをケアする制度はありません。当時、大統領が「彼らこそヒーローだ」と賞賛したこうした人々も、保険に入っていなければ、他の無保険者人たちと同じです。苦しんでいます。身体的にも、そしてまた、精神的にも。

さらに、薬が高いのです。発作を抑える吸入用の薬が、一本120ドル、一万二千円もするのです。

マイケル・ムーア監督は、彼らを「忌むべき社会主義国家・アメリカの仮想敵国」である、キューバで治療させるという行動にでます。この流れにはドキドキ(・・・なんだか、誤解を恐れずに言えば、どこかワクワクさえ)しました。そして、911の英雄がキューバの地で涙を流して現地の人たちに感謝し、友情のハグをしているのです。あんなに、アメリカが嫌っている国で、です。

そしてなんと、さきの吸入薬(まったく同じもの)が、キューバでは5セント(5円程度)、だというのです。120ドルという薬代というは、・・・一体誰に支払われたお金なのでしょうか。「これは一体どういうことなの?納得いかないわ!」と、それまでアメリカという国を信じていた女性は首を振りました。

 

途中、カナダ、イギリス、フランスなどの無料医療制度などを取り上げていました。

アメリカから川を一本隔てただけの、カナダのとある州では医療費が無料でした。患者さんも待ち時間も無く、医療内容にもとても満足している、というインタビューが取り上げられていました。

では医者が無料で治療して貧乏しているのかというと、30代の医者が年収二千万を稼ぎ、一億円の家を建て、クルマ(外車)と家族(奥さんと子ども)を持っていました。

イギリスでは、無料どころか、病院に来た患者の為に、かかった交通費を支払ってさえいました。福祉が徹底しているのは聞いたことがあります。前に僕がサポートしていたイギリスのバンドのボーカリストは、失業中に一軒家を建てた、と言ってましたし。国が補助してくれたんだそうです。

フランスでは、やはり医療保険制度の充実は勿論ですが、有給休暇が短くても年に4~5週間、長い企業では8週間もあるとのことでした。それ以外に、出産をしても、無期限で職場への復帰を保障してくれたり、さらには新婚旅行の為にも一週間、引越しの為にでも2日間の有給休暇が出るのが当たり前なんだそうです。そして、一週間の平均勤務時間は35時間とのこと。これでも生活には余裕があるそうです。「申し訳ないくらいだよ」と、皆、ワインを楽しみながらのインタビューでした。

 

もちろん、この映画はアメリカの制度の悪い面の酷い面をより辛辣に取り上げ、他国の良いところを、もしかしたら実際よりもより良く見えるカタチで描いているかもしれません。つまり、少し情報、映画的表現に偏りがあるかもしれないのです(同監督の映画は多かれ少なかれ、これは言われますよね)。ですので、詳しくはまた調べてみたいです。

例えば、この映画だけを観たら、「フランス、いい国だなぁ」、と誰もが思うと思うんです。でも、彼の国は、ここ十数年、若者の雇用問題とか失業問題で大変なはずです。映画には描かれない暗部だって、あるはずだとは思うんです。

 

ただそれでも、入院費が払えなくなった患者を、タクシーにのせ、「グッドラック」とだけ言って、ボランティア・センターまで運ばせて「捨てる」・・・。アメリカのこんな実情を映像で見せられると、ゾッとします。

・・・日本は、大丈夫かなって。

「それはアメリカの話でしょ」

えぇ、でも。たしかに、国民皆保険制度はあります。機能もしてると思います。僕たちは風邪を引いても、怪我をしても、安心して病院に行けます。いざとなったら、救急車も呼ぶことに躊躇はないでしょう。

でも、日本という国が、絶対に医療保険や福祉に手厚い国だ、とは、これで十分だよ、とは、この映画を観るとあまり思えなくなるかもしれません。

医療の問題を通してですが、いくつかの国においての、「国と国民」というものを浮き彫りにしてくれます。

世界、国、国民、政府、個人。こういう問題を考える上でも、一見の価値のある作品だと思いました。

 

「結局、人は皆、同じ船の客なのだ。どんな違いがあるにせよ、一緒に泳ぐか、沈むしかない。意見の違いを乗り越えて助け合っていくしかないのだ。」

マイケル・ムーア監督の言葉です。

 

意見の違いを乗り越えて助け合っていくしかない、のです

 

ではー。 

 

 

---追記。---

いつもこちらをご覧になってくださっている方から、このようなコメントを頂きました。

 

「今、世間では国保難民が増えているのはご存知でしょうか?保険料が払えず100%の治療費も払えないで病院に行けない人の事です。私も公の場で言う事では有りませんが社保にも国保にも加入していない難民の一人です。前の会社を辞め社保から抜け、収入が減った私には保険料を払う余裕が無くなったからです。国保は社保や扶養から抜けた年から遡って保険料を徴収するのでこの不況下では以前に増して支払うのは困難になりました。本来なら加入義務、支払い義務が有るのですから支払うべきなのは解っています。保険料を支払わない人が居る事で加入している方の負担が増えるのも解っていますし、何かあった時の自分や家族の為にも加入、支払いはしなければならないのも解ります。けれど、現状は厳しいです。携帯を持っているなら解約してでも保険に回すべきなんですけどね…。

日本の保険制度も専門家から見れば将来の破綻は簡単に予想出来る位の危うい物だそうです。此れから先日本はどうなるのでしょうか?では。」

 

こちらのコメントは匿名ではありませんでしたが、僕の判断でお名前は伏せさせていただきました(判断は僕に委ねていただきましたので)。

貴重なご意見、ありがとうございました。自分の無知を恥じると共に、とても考えさせられるコメントでした。

 

国保難民。

 

お時間がございましたら、是非、こちらの動画をご覧いただけたら、と思います(25分ほどあります)。

NNNドキュメント'09 「シリーズ「命の値段」(2) 増える国保難民

 

番組によりますと、2008年の保険料滞納世帯、いわゆる、国保難民は、約453万世帯、なんだそうです。これは全加入世帯の、20.9%にもなるのです。5世帯に1世帯が、保険に加入していない(できていない)、ということです。

 

また、各自治体で保険料(や、他にも、市民税、区民税といった各種税金の設定)が違うというのは知っていましたが、

所得200万円の世帯(40代の両親と子ども二人)の年額保険料は、

東京・多摩市では21万9800円

大阪・寝屋川市では、50万3900円

生まれた場所によって、こんなにも違うのです。

生まれた場所でこんなにも、という違いに驚くというのは勿論ですが、そもそも200万円の所得で、この保険金額は。

この上、さらに、所得税などの各種税金、さらに国民年金等を支払うわけです。これでは、手元に残る可処分所得は100万円を割るかもしれません。

現実問題、親子4人がこれで一年間生活できるのか、ということです。つまり、この50万円を支払ってしまって、やっていけるのか、ということでもあります。僕なら、あなたなら、どうするでしょう。この現実は、決して他人事ではありません。

さらに、やむおえない事情で保険料を滞納した場合でも、遡って徴収されるばかりか、延滞金として、年14%強の利息まで取られます。

例外的な方もいらっしゃるとは思いますが、それでも人はおしなべて必ず、何がしかの病にかかったり、時には不意な怪我にも見舞われるものだと思います。でも、保険証が無かったら。

 

昨日の映画を見て、「アメリカ、酷いな」などでは無かったのです。

「日本には、国民皆保険制度があり、機能している」などと書きましたが、訂正します。機能、していませんでした。

 

日本にも、保険証が交付されず、ましてや、十割負担の全額の医療費など払えずに(保険金が払えないような人に到底、払えるわけがありません)、安心して医者にかかれない人、病気になることへの恐怖に怯えて生きている人が、こんなにも沢山いるということを知りました。

こうした方々のために、「無料・低額医療」を行っている病院も紹介されましたが、まだまだとても十分ではないのが現状です。

 

番組の最後のセリフは、救いのないものでした。

「這い上がるのは難しい。これが、この国の現実です」

 

 

 

・・・日本!

 

では。



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