昔ね、あれは確か、小学校に入ったとかお祝いか何かだったのでしょうか……
家に、ピカピカの図鑑セットが届きました。
フルカラーで(あたりまえか)、全20巻とかあって、たぶん、それなりのものだったのではないでしょうか(図鑑のレベル差はよく分かりませんが)。
当時、僕は、貝を集めていました(・・・海月、じゃないよ(笑))。
今なら、焼いて美味しいハマグリとか、からだに良いシジミとか好きですが(笑)、
そういう二枚貝とかではなくて、
大きな巻貝とかが好きでした。
サザエは今でも大好きですけれども(←食べる話ばっかりかい)。
拾ったものばかりではなく、お土産にもらったりした僕にとってはとての珍しい形のものとかがキレイで、
何とはなしに取り出して眺めていたりしたこともありました。
耳に押し当てて
「海の音がする……」
なんてね。
全然、しないんですけどね。
“コーッ”ってノイズしかしない(笑)。
で、その図鑑が届いてすぐ。
たしか、もうその日だったと思うのですが、
僕は、
「海の生物」だったか、「水の生き物」だったか、ずばり、「貝」だったか忘れましたが、
とにかく、貝が沢山載っている図鑑をケースから出して、
片っ端から、自分の持っている貝と比べて、
「あ、これ、持ってる!おんなじ!」
と分かったら、その貝の写真に「丸」を付けたんです。
小さい「丸印」じゃなくて、その貝の写真をまるごと囲むように、大きく、がっしりと、
赤いクレヨンで、次々に(笑)。
でも、貝って、見た目が似てるのが沢山あるんですよね。
ちょっとした模様の違いで、ほんとうに数えきれないほど。
なので、途中で、
「あれ?…僕のは、こっちか。」
と、また似たようなものが出てくると、それに丸をする。
「あれれ?これも、こっちだったか」
クレヨンですからね、前のは消えません。
どんどん、赤い丸が増えていくんですよ。
運の悪いことに、貝を入れていた袋には、小さくて薄い、良く海岸で見るような二枚貝なんかも幾つか交じっていて。
これなんか、もう、子どもには、全然判別つかないのですよ(笑)。
なので「こっちか」「これか」「これだ」と、丸、丸、丸、丸。
最終的には、完全に、僕の持っている数(たぶん、せいぜい30個くらいだったと思います)の数倍~数十倍の丸が付きました。
ピカピカの図鑑に、べたべたのクレヨンの丸が。
また、そんなにキレイな丸も書けない時期ですから、はみ出たり、曲がっていたり、ひょうたんみたいになっていたりもしてました。
もう、彼女は覚えていないかもしれませんが……、
その日の夕方くらいに、
母が「図鑑、届いた?もう見た?どう?面白い?」と僕に訊いてきたのです。
そこで僕は、
褒めてもらいたくて
「見てみて!これ、見て!ほら、持ってるの、丸付けたんだよ!」
と、その……クレヨンで真っ赤になった貝の図鑑を、母に見せたんです。
そしたら、
なんか、
怒られたんですよ(笑)。
そう厳しくではなかったと思いますが、
なんとなく、褒めてくれるか、と思っていたので、少し切なくはなったのを覚えています。
なんて叱られたのかは、ぜーんぜん覚えてないんですけど。
で、母が、濡らしたフキンだかタオルだかで、その丸を拭き取ろうとして擦ったら、
クレヨンの丸が、ダーって横に、にじんだんです。
僕は、その丸がにじむ瞬間を、確かに見た覚えがあります。
で、その光景を見ながら
「なんか、悪いことをしたなあ」
と思いました。
「ごめんね」
って言ったかどうかも、覚えていませんけど。
もちろん、それから、ずーっと、その図鑑は手元にありました。
でも、
赤くにじんだクレヨンの丸のついた、その、「海の生物」だったか、「水の生き物」だったか、ずばり、「貝」だったかの巻は、
それ以降、あまり開いた覚えがありません。
貝も、その後、あまり集めなくなっちゃったかな。
僕は、本を買うと、マーカーペンとか、なければ普通の鉛筆でもボールペンでも、線を引きます。
できれば、赤と青の色鉛筆が一番。
マーカーと違って、項目とか、自分の「なるほど」具合に比例して、線の強さに差がでるあたりが、味わいも感じますしね。
もう、心置きなく、線を引きます。真っ赤にします(←なんのトラウマだ(笑))。
あ、譜面を作るときも、必ず、赤と青のこの色鉛筆が必要です(←譜面の時は、本当に無いと死活問題なくらい大事です。)
ほーら、こんなに短くなるまで使うんですよ。
エコでしょう。
……って、こんなに何本も削っちゃってるんじゃ、エコじゃないですかね(笑)。
いえね、「あれ!?どこにいったかなあ」ってなるんですよ。
なんで、必要な時、見当たらないんでしょうねえ。
これとか、ハサミとかって。
ではー。