キースの来日二日目の大阪公演は、大変残念なことになってしまったようです。
勿論、これを「めずらしい、貴重な体験」、と捉えることも可能だとは思いますが・・・。
少なくとも、初めての方にとっては、まったくもって悲しい夜になってしまったこととお察しいたします。
ニュースや、ネットの掲示板等の書き込みでしか知ることはできませんが、本当に、胸が痛みます。
また、関西にお住いの緑ちゃん倶楽部の会員様が、この大阪公演に行かれておられました。
先日、レッスンにお越しになり、
「川村さんが緑ちゃん倶楽部の課外授業でキースを取り上げていたりするので、(知ってはいたのだけれど)改めて興味を持ってキースを聴いて、今回、初めて友人とキースのライブに行くことにしました」と、
嬉しそうにチケットを見せてくれたのです。
なんと、一列目のど真ん中。
僕も、思わず「うわー!すごいなあ!いいなあ!」と大興奮してしまいました。
「初めてのコンサート、どんなところを聴いたら良いですか?」とお訊きいただきましたので、まだまだ未熟者ではありますが、僕なりに、「こんなところに注目すると楽しいかもしれませんよ」などと、お話もさせて頂いたのです。
その後、メールも頂戴し、「より一層、楽しみになりました!」と大変喜んで頂いていたので、
僕も本当に大阪公演が大成功に終わりますよう、心から願っておりました。
・・・といいますか、30日の公演がとても素晴らしかったので、大阪公演も素晴らしいものになるだろうなあと、確信すらしていたのです。
キース自身、フェスティバルホールは音響が良く大好きだ、と言っていたと記憶しておりますし、あの上機嫌がそう簡単に崩れるとは思ってはおりませんでした。
それが・・・こんな悲しいニュースを見ることになってしまうとは。
何があったのか、詳しいことは、また、真相はわかりません。
ただ、配慮無きノイズ(咳やクシャミ、携帯の音、物を落としたりする音)は、キースのコンサートにおいては、
・・・演奏そのものに、けっこうなダメージを与えるのですよね。
キースの長いファンなら、知らない訳はないと思います。
ただ、コンサートは初めての方などだったら、わからないかもしれませんよね(普通、咳をしたらダメ!なコンサートなんて、あんまりないですものね)。
また今回は、客席を埋めるために、招待客もいたようなことを書いてあるところもありました。
ならばこそ、・・・キースファンでない観客も混じっていたのならば、主催者側から、しかるべきアナウンスが、再三でもあるべき、だったように思います。
今回の公演では、30日の公演でも、携帯の電源に関することくらいで、とくに咳やノイズに関しての注意はありませんでした。
しかし、先日も書きましたが、これはたまたまかもしれませんが、30日の公演では、客席はおおむね、キースの音楽に協力的だったように感じました。
以前は、「咳をするときはハンカチで口元を押さえるなどの配慮をお願いします」という立て看板があったりもしました。
「そんなうるさいこと言わなくても。もっと気楽なものでしょう」
「ジャズなんて、もともと酒場の音楽じゃん。」
「なにを偉そうに。」
そんな声もありますよね。
でも、キースがやっているソロコンサートには、尋常ではない集中力が必要なのです。
(ちなみに、ソロコンサートは、ジャズではないです。先日も、ある曲は、ドミソのトライアドで終わりましたよ。しかも、トップがド。←このびっくりな感じ、分かる人はわかって頂けるかと。しかし、キースだと・・・天国のように美しかったです。)
僕たちは、そこに居合わせて、キースのピアノを聴き、僕たち一人一人の心の動きという熱(伝わると思います)を送り、
かつまた同時に、音を出して邪魔だけはしないことで、一緒に音楽を創るのです。
「ひとりで、防音室にでも入ってピアノ弾いていればいいじゃない。」
こんな声もありますね。
しかし、あのインプロヴィゼーションには観客が必要、なのですよ。
キースは咳をするな、という言い方は、基本的にしません(昨日は言ったようですが)。
咳をしてもいいタイミングなら、「どうぞどうぞ」と、水のグラスを片手に、冗談っぽく言うことがよくあります。
ただ、ピアノの音は邪魔しないで欲しいんだと思います。
よく、ビル・エヴァンスの名作「ワルツ・フォー・デビー」を引き合いにだして、
「ビルは、こんなにもざわついた酒場でこんなに素晴らしい演奏をしたのに、キースときたら」
といいますが(特に最初の方で、客席の声、グラスのぶつかる音などが聴けます。また、これが臨場感があっていいんですけどね)、
・・・実は、ビルは、このざわつきが嫌いで、このアルバムは好きではなかったそうです。
ただ、それにしても超名盤ですから「とりあえず、ピアノの入ったジャズというものを一枚聴いてみたい」と仰るなら、このアルバムをお勧めします。
そして、キースは(勿論、ビルエバンスからの影響はたくさん受けている人ですからい、リスペクトはあるはずですが)、・・・自分の演奏の場そのものは、静かなコンサートホールに移したんですね。
そして、僕たちも、キースの演奏を聴きに、静かな(はずの)コンサートホールに聴きに行くわけです。
先日30日、席につくと、先にお越しになられていた宮城先生は、「わたし、昨日からちょっと咳がでるので、予防でこのマスクと、あとのど飴を舐めるけど、ごめんなさいね」と、ハンカチを手に仰って下さいました。
僕も、念のためののど飴、そしてハンカチを手に「もちろんですとも」と。
すくなくとも、僕と宮城先生は、一度も咳をすることなく(わずか数名を除く、他の大勢のお客さんも同じく)、キースの演奏に耳を凝らしました。
静寂に響く、キースの音。
なんと、幸せな時間だったことでしょうか。
また、大阪の皆さんに、是非ともあの至福の時間を味わって頂きたいと、心から思います。
キースも、きっと、それを望んでいると、僕は思うのですけれども。
僕はまた、明後日6日に、キースに会いに行ってまいります。
のど飴とハンカチと、抱えきれないほどのワクワクの気持ちを持って。
(トップの本は、発売されたばかりの本で、昨日届きました。アルバム・レビュー本ですので、キースのディープなファン向けかもしれません。しかし、こういうのを読んでおりますと、アマゾンでポチッ、が多くなって大変です。聴きたいの、大杉です。)
ではー。