このところ東芝だ、日本郵政だとかが海外企業を買収した結果、すったもんだの末、予想外の大きな損失を出し話題となっている。過去にもNTTだのキリンなどの失敗例があり、日本企業はなぜこんなに海外企業の買収に失敗するのかという記事も出ている。
日本国内ではもうこれ以上の成長が見込めず、有り余る内部留保のはけ口に海外へと投資先を物色した結果なのですが、日本企業の企業文化がなかなか理解されないし、言葉の壁もあって欧米の企業のようにうまくいかないのは当然と思っていました。
ところがこの本によると本家の海外企業でも70~80%の買収は失敗に終わっているとか。日本だけの話ではなかったんだ。
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買収は簡単で手っ取り早く企業のサイズを大きくする手段と考えられているのだが多くの会社を所有することと大きな組織を作り上げることは違う。成功している企業は社内の複数のビジネス活動や組織の個々の部分を高い次元で調和させていることが多い。だがほとんどの企業では買収プレミアムが高すぎて(ある研究ではプレミアムは50~70%とか)支払った金額以上の価値を生み出すことができないし、現実に生み出していない。
買収を考える経営者は買収対象企業にいる無能な経営者を追い出して、自分が経営すれば大きな価値を生み出せると考えている。でもアカデミックな研究では買収案件のうちの7割は企業価値を損ねていて、この傾向は何十年にもわたって続いているとか。
経営者は自分を過信してうぬぼれているとしか言いようがない。でも新聞雑誌やマスコミはその経営者を称賛しているんだよね。東芝でも郵政でも西室さんが隠然たる力を持って進めてきたとか言われているけど企業買収に行こうとしている時にはその決断力とビジョンを褒め称えていたんですよね。
「CEОオブ・ザ・イヤー」で表彰されたスター経営者のその後を追った研究によると最初のうち株式市場では株価はわずかに上昇するが8か月もたつと8%低く評価されてしまう。期待値が高い分だけ応えられないのだ。会社の業績を比べてもよい影響も悪い影響も与えていなかった。
因みに成功した経営者は本当に有能かと言うと好業績を上げている経営者はリスクとリターンの関係を理解していなくからとか。トップに来ているのはラッキーなだけのおバカさんかも。
ところで経営者は誰もが経営者を追い出したくなるほど業績がドン底な時だけでなく、比較的良好な時にも辞職しているとか。面白いことに業績が比較的高い時に経営者が辞めた企業は、その後急速に業績が悪化している。自分のイメージを守るための逃げ時を知っているということか。そう言えばマクドナルドの原田某は経営が下向く直前に退任し、その後のマックの悲惨な状況はよくご存じで。
ビジネス書のベストセラーで「エクセレント・カンパニー」とか「ビジョナリー・カンパニー」という名前に記憶のある人もいるだろうが、取り上げている好業績企業がとても高い企業文化を持っているというのだが、因果関係から言うとまとまりのある企業文化は企業の成功の原因ではなく結果。独善的で視野が狭い企業文化を作ってしまうと新しい環境に適応するのを拒んでしまう。エクセレント・カンパニーで分析した当時世界で最も優れた企業43社は、今では3~4社しかリストに残らない。
これまでも目標管理だのゼロベース予算だのY理論だのZ理論だのありとあらゆる経営手法が導入されてきたが、ほとんどが一過性の流行りの経営施策。何の役にも立たず今となっては意味がないのだが、こういう手法を導入する経営者は革新的で適任だと他人の目には映る。結果、経営者が流行りの経営手法を導入すると経営者の報酬は増えていた。まあ、経営者でなくても管理部局は新しい施策をどんどん取り入れて現場を翻弄するのだけど、そういうことをやるとやっている感というか頑張っている感が醸し出されて、効果を検証されたわけでもなくても言い出した人は出世するんですよね。
なんか読んでいると欧米のグローバルスタンダードの経営なるものがいかにいい加減かがわかってきます。短期的な業績向上や利益にしか目がいかずに、アナリストやコンサルタントとゆるやかな利益共同体を作っている中で、おだてられうぬぼれて企業買収やリストラに励んでいる経営者。
株式会社は誰のものかという議論でも法的には株主のものであっても、株主は保有株の範囲の有限責任しかもっていない。往々にして企業が破たんする時には株式価値以上の負債を抱えているのだし、株主の権利はその意味では限定的としか言いようがない。企業は多くのステークホルダーを抱えていてその責任を負わなければいけない株主がすべてではない。明快ですね。
取締役会とCEОとの関係とか日本の法制度と少し違うところがありますが、欧米流の経営学のいかがわしさが親しみやすい洒脱な文章で伝わってきます。300ページほどのハードカバーですけど読む価値ありです。
日本国内ではもうこれ以上の成長が見込めず、有り余る内部留保のはけ口に海外へと投資先を物色した結果なのですが、日本企業の企業文化がなかなか理解されないし、言葉の壁もあって欧米の企業のようにうまくいかないのは当然と思っていました。
ところがこの本によると本家の海外企業でも70~80%の買収は失敗に終わっているとか。日本だけの話ではなかったんだ。
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買収は簡単で手っ取り早く企業のサイズを大きくする手段と考えられているのだが多くの会社を所有することと大きな組織を作り上げることは違う。成功している企業は社内の複数のビジネス活動や組織の個々の部分を高い次元で調和させていることが多い。だがほとんどの企業では買収プレミアムが高すぎて(ある研究ではプレミアムは50~70%とか)支払った金額以上の価値を生み出すことができないし、現実に生み出していない。
買収を考える経営者は買収対象企業にいる無能な経営者を追い出して、自分が経営すれば大きな価値を生み出せると考えている。でもアカデミックな研究では買収案件のうちの7割は企業価値を損ねていて、この傾向は何十年にもわたって続いているとか。
経営者は自分を過信してうぬぼれているとしか言いようがない。でも新聞雑誌やマスコミはその経営者を称賛しているんだよね。東芝でも郵政でも西室さんが隠然たる力を持って進めてきたとか言われているけど企業買収に行こうとしている時にはその決断力とビジョンを褒め称えていたんですよね。
「CEОオブ・ザ・イヤー」で表彰されたスター経営者のその後を追った研究によると最初のうち株式市場では株価はわずかに上昇するが8か月もたつと8%低く評価されてしまう。期待値が高い分だけ応えられないのだ。会社の業績を比べてもよい影響も悪い影響も与えていなかった。
因みに成功した経営者は本当に有能かと言うと好業績を上げている経営者はリスクとリターンの関係を理解していなくからとか。トップに来ているのはラッキーなだけのおバカさんかも。
ところで経営者は誰もが経営者を追い出したくなるほど業績がドン底な時だけでなく、比較的良好な時にも辞職しているとか。面白いことに業績が比較的高い時に経営者が辞めた企業は、その後急速に業績が悪化している。自分のイメージを守るための逃げ時を知っているということか。そう言えばマクドナルドの原田某は経営が下向く直前に退任し、その後のマックの悲惨な状況はよくご存じで。
ビジネス書のベストセラーで「エクセレント・カンパニー」とか「ビジョナリー・カンパニー」という名前に記憶のある人もいるだろうが、取り上げている好業績企業がとても高い企業文化を持っているというのだが、因果関係から言うとまとまりのある企業文化は企業の成功の原因ではなく結果。独善的で視野が狭い企業文化を作ってしまうと新しい環境に適応するのを拒んでしまう。エクセレント・カンパニーで分析した当時世界で最も優れた企業43社は、今では3~4社しかリストに残らない。
これまでも目標管理だのゼロベース予算だのY理論だのZ理論だのありとあらゆる経営手法が導入されてきたが、ほとんどが一過性の流行りの経営施策。何の役にも立たず今となっては意味がないのだが、こういう手法を導入する経営者は革新的で適任だと他人の目には映る。結果、経営者が流行りの経営手法を導入すると経営者の報酬は増えていた。まあ、経営者でなくても管理部局は新しい施策をどんどん取り入れて現場を翻弄するのだけど、そういうことをやるとやっている感というか頑張っている感が醸し出されて、効果を検証されたわけでもなくても言い出した人は出世するんですよね。
なんか読んでいると欧米のグローバルスタンダードの経営なるものがいかにいい加減かがわかってきます。短期的な業績向上や利益にしか目がいかずに、アナリストやコンサルタントとゆるやかな利益共同体を作っている中で、おだてられうぬぼれて企業買収やリストラに励んでいる経営者。
株式会社は誰のものかという議論でも法的には株主のものであっても、株主は保有株の範囲の有限責任しかもっていない。往々にして企業が破たんする時には株式価値以上の負債を抱えているのだし、株主の権利はその意味では限定的としか言いようがない。企業は多くのステークホルダーを抱えていてその責任を負わなければいけない株主がすべてではない。明快ですね。
取締役会とCEОとの関係とか日本の法制度と少し違うところがありますが、欧米流の経営学のいかがわしさが親しみやすい洒脱な文章で伝わってきます。300ページほどのハードカバーですけど読む価値ありです。