井上章一と言う人は面白い人です。
世評高い「京都ぎらい」を読んで、そのユニークな視点に目が開かれた思いでした。
大学は京大の工学部で建築史が専門なのですが、今では日本史だけでなく西洋史に対する深い造詣からの歴史学者が思いもつかないような発想で、新たな歴史のミカタを提示しています。今では国際日本文化研究センター所長なのですが、初代の梅原猛と少しキャラは違いますが歴史文化のオーソドックスな学会に対する立ち位置は、後任としてふさわしいのではないでしょうか。
実は今回歴史番組で超売れっ子の磯田道史との対談ですが、磯田さんも今では国際日本文化研究センター教授なので、この対談は職制上は上司と部下の対談です。でもお二人ともそんな遠慮も忖度もなく議論はあちこち飛躍しながら盛り上がっています。
ところであまり面白かったので、早速この本に先行する井上章一との対談本2冊も借りてきてしまいました。最初の本は本郷和人との対談の「日本史のミカタ」、次は佐藤賢一との対談の「世界史のミカタ」です。これで年末年始は楽しめそう。

最初に目次を見ればわかるのですが、「歴史のミカタ」で取り上げられているのは日本史、世界史の中で本当に多岐にわたっています。
源頼朝からカエサル、信長・秀吉・家康、フランス革命にナポレオン、さらには現代史までカバーしていて田中角栄と中曽根康弘までまな板に乗っています。
因みに磯田さんは中曽根の回想録「自省録」の聞き役として15回インタビューをしているそうです。その時の経験から政治家の話には語られることと語られないことがあると言うことがあると実感。古文書を読む時には心しておくことなのでしょう。
歴史のミカタには公にできることの裏に恋愛とか性愛があると言う視点が大切で、ここらの人間の本性まで深く切り込んだ歴史のミカタは知識量と発想が半端ない井上先生の独壇場。教科書的に用語とか年号とか事実だけをいくら知っていても歴史を理解したことにはならないし、楽しむことはできない。
この本でこんな歴史のミカタがあるんだと楽しく読むことができました。
次はシリーズの最初の本の「日本史のミカタ」です。対談相手は中世史が専門の本郷和人さん。当然ながら史料に裏付けられた手堅い説を本郷さんが展開するのですけど、井上章一さんが人間性の本質から類推される説得力ある議論に押され気味でタジタジとなっています。
自分が住んでいる地域や働いている地域に否応なく影響を受け考え方や研究も縛られることもあって、日本の歴史学会の中に関西と関東とで派閥があって、京都史観、関東史観と言われ日本史のミカタで大きな対立があるみたいです。
でも井上さんのミカタはそこを飛び越えていて、西洋史の豊富な知見と類推から、日本に古代はない、室町幕府は絶対王政で、明治維新は三井などの豪商が幕府に見切りをつけて討幕派に資金援助して支えていたブルジョア革命とか。本郷さんがいろいろ疑問点を言っても西洋史の豊富な事例を持ち出して日本だけのミカタを論駁している。日本史における朝廷と幕府との関係をどうとらえるのかについての議論は面白い。結構日本史のミカタの根本かもしれません。それにしても鎌倉幕府を広域暴力団・関東北条組と言うのは、むき出しの暴力とその内部抗争の激しさを見ると言いえて妙かも。
「世界史のミカタ」は作家の佐藤賢一さんとの対談。実は佐藤賢一さんの本は読んだことがないのですが、西洋史が専門で「小説フランス革命」とか「ナポレオン」を書いています。あとがきでも書いていますが、井上さんは梅棹忠夫の「文明の生態史観」に圧倒的感銘を受け、ミカタにはその影響が色濃く出ています。
因みにこの梅棹忠夫の「文明の生態史観」は私も学生時代に読んで目を開かれる思いをした記憶です。今でも本棚の隅にあると思いますので今度引っ張り出して読んでみてみましょうか。
ユーラシア大陸の中央の遊牧民族がゲルマン民族大移動とか匈奴の侵攻とかで大陸両端のヨーロッパと中国に大きな影響を与えている。陸の時代の覇者たる遊牧民の影響力から見た、古代から中世、そして海の時代への移行とルネッサンス、フランス革命と明治維新、帝国主義と民族主義、ファシズムまでを議論白熱。教科書にはのらないであろうミカタがどんどん出て来て話が盛り上がります。
トレビアな知識も満載で、硬い議論ではないので、正月休みを楽しむことができました。
世評高い「京都ぎらい」を読んで、そのユニークな視点に目が開かれた思いでした。
大学は京大の工学部で建築史が専門なのですが、今では日本史だけでなく西洋史に対する深い造詣からの歴史学者が思いもつかないような発想で、新たな歴史のミカタを提示しています。今では国際日本文化研究センター所長なのですが、初代の梅原猛と少しキャラは違いますが歴史文化のオーソドックスな学会に対する立ち位置は、後任としてふさわしいのではないでしょうか。
実は今回歴史番組で超売れっ子の磯田道史との対談ですが、磯田さんも今では国際日本文化研究センター教授なので、この対談は職制上は上司と部下の対談です。でもお二人ともそんな遠慮も忖度もなく議論はあちこち飛躍しながら盛り上がっています。
ところであまり面白かったので、早速この本に先行する井上章一との対談本2冊も借りてきてしまいました。最初の本は本郷和人との対談の「日本史のミカタ」、次は佐藤賢一との対談の「世界史のミカタ」です。これで年末年始は楽しめそう。

最初に目次を見ればわかるのですが、「歴史のミカタ」で取り上げられているのは日本史、世界史の中で本当に多岐にわたっています。
源頼朝からカエサル、信長・秀吉・家康、フランス革命にナポレオン、さらには現代史までカバーしていて田中角栄と中曽根康弘までまな板に乗っています。
因みに磯田さんは中曽根の回想録「自省録」の聞き役として15回インタビューをしているそうです。その時の経験から政治家の話には語られることと語られないことがあると言うことがあると実感。古文書を読む時には心しておくことなのでしょう。
歴史のミカタには公にできることの裏に恋愛とか性愛があると言う視点が大切で、ここらの人間の本性まで深く切り込んだ歴史のミカタは知識量と発想が半端ない井上先生の独壇場。教科書的に用語とか年号とか事実だけをいくら知っていても歴史を理解したことにはならないし、楽しむことはできない。
この本でこんな歴史のミカタがあるんだと楽しく読むことができました。
次はシリーズの最初の本の「日本史のミカタ」です。対談相手は中世史が専門の本郷和人さん。当然ながら史料に裏付けられた手堅い説を本郷さんが展開するのですけど、井上章一さんが人間性の本質から類推される説得力ある議論に押され気味でタジタジとなっています。
自分が住んでいる地域や働いている地域に否応なく影響を受け考え方や研究も縛られることもあって、日本の歴史学会の中に関西と関東とで派閥があって、京都史観、関東史観と言われ日本史のミカタで大きな対立があるみたいです。
でも井上さんのミカタはそこを飛び越えていて、西洋史の豊富な知見と類推から、日本に古代はない、室町幕府は絶対王政で、明治維新は三井などの豪商が幕府に見切りをつけて討幕派に資金援助して支えていたブルジョア革命とか。本郷さんがいろいろ疑問点を言っても西洋史の豊富な事例を持ち出して日本だけのミカタを論駁している。日本史における朝廷と幕府との関係をどうとらえるのかについての議論は面白い。結構日本史のミカタの根本かもしれません。それにしても鎌倉幕府を広域暴力団・関東北条組と言うのは、むき出しの暴力とその内部抗争の激しさを見ると言いえて妙かも。
「世界史のミカタ」は作家の佐藤賢一さんとの対談。実は佐藤賢一さんの本は読んだことがないのですが、西洋史が専門で「小説フランス革命」とか「ナポレオン」を書いています。あとがきでも書いていますが、井上さんは梅棹忠夫の「文明の生態史観」に圧倒的感銘を受け、ミカタにはその影響が色濃く出ています。
因みにこの梅棹忠夫の「文明の生態史観」は私も学生時代に読んで目を開かれる思いをした記憶です。今でも本棚の隅にあると思いますので今度引っ張り出して読んでみてみましょうか。
ユーラシア大陸の中央の遊牧民族がゲルマン民族大移動とか匈奴の侵攻とかで大陸両端のヨーロッパと中国に大きな影響を与えている。陸の時代の覇者たる遊牧民の影響力から見た、古代から中世、そして海の時代への移行とルネッサンス、フランス革命と明治維新、帝国主義と民族主義、ファシズムまでを議論白熱。教科書にはのらないであろうミカタがどんどん出て来て話が盛り上がります。
トレビアな知識も満載で、硬い議論ではないので、正月休みを楽しむことができました。