怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

小林信彦・萩本欽一「ふたりの笑タイム」

2022-08-06 11:24:45 | 
東京生まれのお二人。
小林信彦は小学生の頃から日劇を中心に劇場に出入りしていて生の舞台を見ている。戦後は勃興期のラジオテレビの構成作家として制作現場に関わっている。当時は少し先輩に青島幸男とか井上ひさしとかが活躍していました。
そんな経歴なので劇場全盛時代の喜劇役者たちを舞台上、舞台裏を含めて生で見てきている。
そんな経験は既に「日本の喜劇人」をはじめとしたいろいろな本になって紹介されています。
渥美清について書いた「おかしな男」とか横山やすしについて書いた「天才伝説」は買って読んで記憶があってまだ本棚の奥にあるはず。今度探して再読してみます。
萩本欽一についてはもう誰もが知るコメディアンですが、自分の知らない喜劇役者について小林を訪ねて聞いた記録がこの本。
二人の知る往時のテレビ番組の舞台裏とか浅草の喜劇役者たちの姿を縦横無尽に語ったこの本は面白いわけがない。

最初はテレビ創世記の番組のお話。「九ちゃん」とか「シャボン玉ホリデー」「ゲバゲバ90分」の制作現場の様子を小林が当事者として語る。「九ちゃん」はあまり覚えてないけれど「シャボン玉ホリデー」とか「ゲバゲバ90分」はよく見ていました。でもそれらはアメリカの番組のパクリだったというのは、そんなもんかと思うとともに当時の(今もかもしれませんけど)アメリカのエンターテイメントの素晴らしさを実感します。
話はそれからコント55号についてへ。小林の見た日劇でのコント55号のコントからテレビ放送の話になり、前田武彦のやっていた「お昼のゴールデンショー」から「コント55号の世界は笑う」とかは生で見ていました。ところでコント55号の実質活動期間は5年、解散ではないけれどコントの仕事を休んでいただけというが、印象的にはもっと活躍していた。コンビでなくても萩本、二郎さんとそれぞれ活躍していたこともあり、それだけコント55号というインパクトが強かったんでしょう。
因みに、ゲバゲバでも世界は笑うでもビデオはほとんど残っていなくて当時はビデオテープが貴重で録画したテープの上に重ね取りしていたからとか。
クレージーキャッツの話では谷啓と植木等の話が中心ですが、演奏も上手くて(よく知られているように谷啓はスイングジャーナルの人気投票でずっとトロンボーン部門の2位か3位だった)、生で見るとドリフトは段違いというのが小林の評。谷は青島に言われてプール付きの家に住みでっかい外車に乗っているのだが、要らないと思っているシャイな人。フランキー堺も大豪邸だったそうですが、三井家のお坊ちゃまだそうです。コメディアンとジャズはリズム感から親和性があるみたいで、萩本も修業時代にまずドラムを習えと言われて1年間習ったとか。
浅草喜劇と言えばエノケンなのだが、萩本は直接は観ていない。小林も浅草では日劇で観ているのだが、戦前の浅草の3大勢力は、エノケン、ロッパ、ターキーで、私は何れもテレビで少し見た覚えはありますけど、特に印象残っていないな。
戦後の浅草のコメディアンは伴淳三郎と益田喜頓ですが、伴淳三郎のアジャパーは子どもの口にも上っていました。天下一のぼけつっこみコンビの三木のり平と八波むと志と言われると三木のり平はともかく八波むと志はほとんど記憶にございません。
そこから萩本も関わるのですが、浅草の劇場で人気の出たコメディアンが続々テレビに出るようになってトリオ・ザ・パンチとかトリオ・スカイライン、ナンセンストリオとかはテレビでよく見ていました。
萩本世代の浅草コメディアンのあこがれの人は、渥美清なんですけど、小林との関わりは「おかしな男」という本にまとめられているように深い。テレビ版の寅さんについても触れているのですが、映画と比べて断然ハチャメチャで、映画になっていい人になったというのですが、第1作はそれなりにハチャメチャで映画が回を追うごとにいい人になって行ったというのが私の印象です。
その渥美清が目標にしていたのが森繁久彌だそうで、フランキー堺も藤山寛美も何とか森繫さんを乗り越えたいと思っていたと言われると改めて森繁久彌の偉大さを感じます。
ところで小林も萩本も酒は飲まない。植木等、谷啓も渥美清も結核をやっているから飲まなかったみたいで、萩本は酒を飲めないというのはどれだけ仕事にと言っていますが、絶えずコントを考えている身では飲んでいる暇はないか。二郎さんは飲みまくるみたいでしたが、余り考えていないからか。
もう10年もすると歴史としてしか分からない人ばかりになってしまうのでしょうけど、多少とも同時代として体験した人には面白い必読本でした。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする