【原産地は熱帯アメリカ、和名「檀特(だんどく)」】
カンナ科カンナ属の1科1属の多年草。中南米の熱帯アメリカ原産で、日本にはインド、中国を経て江戸前期に渡来してきた。和名は「檀特(だんどく、だんとく)」。北インドの檀特山(現在のアフガニスタン)の名にちなむ。ただ、一般にカンナと呼ばれるものは19世紀半ば以降、フランスやイタリアを中心に品種改良された「ハナカンナ」で、日本には明治末期に渡って来た。
カンナの名は学名から。ケルト語やギリシャ語で「杖」や「葦」を意味するという。ハナカンナの品種は多く、花色も赤、白、ピンク、橙、黄、濃紅、絞り咲きなど多彩。草丈は1~2mにもなる花壇用のほか、小型で鉢植えに向いた矮性種もある。芭蕉に似た大きな葉にも茶褐色の銅葉や黄色のストライプ模様が美しい斑入りなどがある(写真は北九州市立白野江植物公園で撮影)。
花弁に見えるのは雄しべが変形したもので、花期は盛夏から晩秋まで長い。カンナは秋の季語。硬くて光沢がある種子は楽器のマラカスに使われる。観賞用のハナカンナとは別に、根茎を食用や家畜の飼料にする「ショクヨウカンナ」もある。江戸期に渡来した檀特は花がやや小さく、鹿児島の薩南諸島から沖縄にかけて半野生化しているという。沖縄では「マーランバショウ」と呼ぶ。
カンナは〝平和の花〟として全国の小中学校などで植栽の取り組みが活発になっている。原爆で一瞬に焦土と化した広島では75年間、草木が生えないといわれた。だが、その僅か1カ月余り後、爆心地から約800mの所で真っ赤な花を付けたカンナを、朝日新聞のカメラマンが偶然見つけ写真に収めた。その白黒写真はいま広島平和記念資料館に「焦土に咲いたカンナの花」として展示されている。
2004年、その写真を目にした創作浄瑠璃作家、橘凛保(りほ)さんがカンナの生命力に感動。「カンナは平和を祈る〝バトン〟になれる」と〝カンナ・プロジェクト〟を立ち上げた。この9年間、自費で球根を購入したり株分けしたりして小中学校に配ってきた。同時に平和講演会も開いてきた。平和を考える〝教材〟としてカンナの輪が着実に広がっているというわけだ。
カンナは各地の「市の花」や「町の花」にもなっている。宮崎県の延岡市、串間市、福岡県大川市、神奈川県二宮町、茨城県利根町、境町……。長野県須坂市や高知県土佐市、千葉県白井市などには〝カンナ街道〟も整備されている。富山県砺波市では1日から「となみカンナフェスティバル」(9月8日まで)が始まった。1万株のカンナでつくった大迷路が人気を集める。「檀特花何度聞いても忘れ草」(正岡子規)。