【ヒガンバナ科 その名は葉の形と狐色の花に由来!】
本州から九州にかけ日本各地の山野に自生するヒガンバナ科の球根植物。真夏の7月後半から9月にかけて、葉が落ちた後に花茎だけがすくっと伸びて、色鮮やか濃いオレンジ色の花を付ける。遠目にはヒガンバナにもユリのようにも。早春、根元から伸びる細長い葉を剃刀(かみそり)に見立て、花色がこんがり焼けた狐色に似ていることから、その名が付いたそうだ。
「怖れては遠目にみたる花なりき キツネノカミソリ群れる初秋」。歌人の鳥海昭子は葉がない花姿と不思議な名前から、幼い頃、怖いイメージを抱いていたという。登山道脇などに突然、明るいオレンジ色の群落が現れると、まさにキツネにつままれたように感じるかもしれない。花びらは6枚でやや反り返る。球根は強い毒性を持つが、ヒガンバナと同じく生薬「石蒜(せきさん)」として漢方治療に用いられる。
大阪府茨木市の「車作の森」にキツネノカミソリの群生地が広がる。十数年前までは荒れた林だったが、地元のボランティアが里山を取り戻そうと杉や桧の間伐、下草刈りなどを続けてきた。その結果、光が下まで届くようになって群落が見られるようになったそうだ。今では観察路も整備されている。今年は8月17日に観察会を開く。
埼玉県新座市では市営墓園内の川沿いの斜面に群生地が広がり、地元住民が保存会をつくって保護活動に取り組んできた。今では「市場坂キツネノカミソリの里」の愛称で親しまれ、新座の真夏を彩る風物詩になっている。ここでも毎年8月に観賞会を開いているが、今年は18日に開催の予定という。
近縁種に「オオキツネノカミソリ」がある。花がやや大きく、雄しべが花弁の外まで長く飛び出しているのが特徴。その群生地が九州の山間部に多く残っている。佐賀・長崎両県にまたがる多良岳は作家・登山家の田中澄江著「日本花の百名山」でも取り上げられた。福岡・佐賀県境の井原山(いわらやま)の群落も国内最大規模。熊本県五木村の仰烏帽子山(のけぼしやま)や佐賀県唐津市の八幡岳などの群生地も人気を集める。