く~にゃん雑記帳

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<奈良県立美術館> 開館40周年記念「曾我蕭白と中近世美術の精華」

2013年08月15日 | 美術

【豊かな表情と静寂な雪景色「竹林七賢図襖」8面】

 奈良県立美術館(奈良市)で「曾我蕭白と中近世美術の精華」と銘打った開館40周年記念館蔵名品展(9月22日まで)が開かれている。一番の注目は三重県立美術館から出品される江戸時代の絵師・曾我蕭白の水墨画の大作。全国の13県知事でつくる「ふるさと知事ネットワーク」の美術館交流によって実現したという。

    

 曾我蕭白(1730~81)は京都の商家に生まれたが、その生涯についてはあまり詳しく分かっていない。同時代の京都には土佐派や狩野派のほか、与謝蕪村、伊藤若冲、池大雅、円山応挙ら名手が活躍していた。その中で蕭白は型にこだわらない独自の画風を確立した。画壇の中では異端の画家と位置づけられていたようだ。

 三重県立美術館からは前期に「竹林七賢図襖」8面(上の写真㊧=部分)、後期に「松に孔雀図襖」(下の写真)と「許由巣父図襖」各4面が出品される。蕭白は伊勢の国を少なくとも3回訪れたとみられる。斎宮(伊勢神宮に仕えた斎王の御所)だった旧永島家には蕭白が滞在中に描いた襖絵44面が伝わり、その全てを現在、三重県立美術館が所蔵している。

 

 展示中の「竹林七賢図襖」(25日まで)もその1つ。中国・三国時代の魏の国の賢人たちが酒を飲み交わしながら談笑する場面を描いている。墨の濃淡を使って表現したユーモラスな表情と外の雪景色の白さが印象的。枝垂れた笹竹からは雪の重みまで伝わってくる。後期に展示する「松に孔雀図襖」(27日から)は老松の前に孔雀が颯爽と立つ構図。

 蕭白作品はこのほかに奈良県立美術館所蔵の「美人図」「架鷹図屏風」「関羽図」「滝山水図」の4点が展示されている。「美人図」(上の写真㊨=部分)は昨年、県指定有形文化財に指定されたばかり。蕭白にしては珍しい着色画で、細かく引き裂いたような手紙を口にくわえた着物の女性が描かれている。顔の白さ、着物の青、帯の緑、裾徐(よ)けの赤と、色彩の対比が美しい。

 蕭白絵画は米ボストン美術館のコレクションが有名。昨年から今年にかけ国内4カ所を巡回した「日本美術の至宝展」には蕭白作品11点が出品され、中でも巨大な「雲龍図」 の迫力は圧倒的だった。それに比べると、出品点数が5点と少なくやや物足りなさが残ったものの、三重からやって来た襖絵や「美人図」を間近に目にすることができたのは収穫だった。

 蕭白以外では女性の幽霊を描いた長沢芦雪の「幽魂の図」、優雅で品のいい芸妓姿を描いた山口素絢の「妓婦図」、老夫婦が大きな亀に酒を飲ませる葛飾北斎の「瑞亀図」などが印象に残った。「伝淀殿画像」や伝雪舟「秋冬山水図屏風」、呉春「風雪三顧図」、喜多川歌麿の大判錦絵「隅田川舟遊」、東洲斎写楽の「市川男女蔵の奴一平」なども出品されている。

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