kenroのミニコミ

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ロシア美術紀行4 エルミタージュ美術館その1

2005-09-19 | 美術
収蔵作品数だけならルーブル、メトロポリタンを凌ぐ300万点を要するエルミタージュ美術館は文句なし、世界屈指の規模である。最初にそのような世界的規模の美術館であるのに、洗面所の数が少ない、レストランがない(お粗末なカフェがあるだけ)、チケットブースが少ないなどインフラが整っていないという不満を述べておこう。しかし、それでも一度は行って見なさいとすすめたい。
まず、その巨大な建築群。「群」と記したのは、同館がピョートル大帝の娘エリザヴェータ・ペテロヴナ女帝の時代にコレクションがはじまり、エカチェリーナ2世の時代に一気に増えた収蔵品のため、冬宮から、小エルミタージュ、旧エルミタージュ、新エルミタージュ、エルミタージュ劇場とおよそ100年をかけて規模を拡大していったからである。
規模に圧倒されて、その内部を一々見て回る余裕などないが、18世紀の建築家バルトロメオ・フランチェスコ・ラストレッリや彫刻家B・カルロ・ラストレッリといった偉大な造形作家の大胆かつ優美なデザインに引き寄せられる。ロシア建築特有の壁や柱、窓枠に金箔をふんだんに使っているのに少しもくどい感じがしない。むしろ巨大な建築物を引き締めているようにさえ見える。洗面所が少ないものであるから、同じ階段、回廊を行ったり来たりしたが、何度見ても飽きない洗練の極みである。
収蔵作品の見所はいくつもある。まずレオナルド・ダ・ヴィンチ。イタリア・ルネッサンスの作品は多いが、「聖母子(リッタのマドンナ)」「花を持つ聖母子」でダ・ヴィンチの才能に感嘆していたら、フィリッポ・リッピやラファエルロの作品も同室にあり声を失う。
16世紀はティツィアーノと17世紀のレンブラントの「ダナエ」対決。各地域ごとに展示が分けられており、一度見たものに引き返すのは大変だが引き返したくなるほどに、それぞれの筆致を比較して楽しみたいという欲求にかられる。ネーデルランドではブリューゲル(子)の「東方三博士の礼拝」、スペインのエル・グレコは「使徒ペテロとパウロ」、フランドルではルーベンスの「地と水と神の結合」など、聖書やギリシア神話のストーリーを少しかじっているだけでも十分楽しめる場面が、これでもかと押し寄せて来る。回廊の天井とそこかしこに陳列してある彫刻に見とれていたら先に進めないのが難だ。(つづく)  画像はレンブラントの「ダナエ」
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