昔東欧とくくられていた地域が現在ではオーストリアを含めて、チェコ、ハンガリーとともに中欧と呼ばれるらしい。チェコは、チェコスロバキアから分離したことはもちろん知っていたが、そのプラハの春以外になんの知識もない(「プラハの春」も実はよく知らない。加藤周一の「言葉と戦車(を見すえて)」を聞きかじっていたくらいである。)
今回そのチェコ、オーストリア、ハンガリーを訪れたのでその報告を。言うまでもなくハプスブルク帝国の3国であり、チェコはボヘミア国王フェルナンド1世の時代から(16世紀)20世紀の独立まで500年間の支配を経ているが、ハンガリーほどハプスブルク家人気(正確には皇妃エリザベート人気)はないようである。むしろ、ボヘミア王国が西欧列強の支配から逃れる、チェコ(スロバキア)が、独立していくその重みと民族の独立性が謳歌されていたに違いない。その典型がスメタナの「わが祖国」であろう。
生半可な歴史知識はさておき、美術の世界でいうと、近代の成功者はやはりミュシャ(チェコ語では「ムハ」)。ムハ美術館はとても小さい。ミュシャは言うまでもなく、パリに出て女優サラ・ベルナールのポスターを描いて大成功、その象徴主義の技法は、ムハ美術館に所蔵する原画等で垣間見えるが、如何せん規模は小さい。ミュシャは挿絵画家なのであるから、「画家」とは言っても、たった一枚の画布に己の筆をたきつける人ではなく多くの場合その作品はリトグラフである。から、原版をもとに多くの印刷物が出回り、ムハ美術館に行かずともミュシャの作品には多く触れることができてきた。
もっとも、熱烈な愛国者であったミュシャは、チェコスロバキア独立(1918年)のために多くのデザインをチェコスロバキアのために制作したそうで、ムハ美術館にもそのあたりの展示があったやもしれぬが、展示の貧相さと英語説明を読む力量、根気がなく流してしまったので詳しくは分からず仕舞い。ミュシャはあくまでパリで成功したのであり、チェコ(スロバキア)で活動したのではなかったし、作品がチェコに留め置かれたのでもないから、ミュシャの生涯の作品群に触れるのは難しかったのかもしれない。その点、パリのロダン美術館などとは違うと思うが個人美術館の成功あるいは不成功事例を検証してみるのもおもしろい試みかもしれない。
チェコは王宮の一角に国立美術館は設えられてはいるが、規模も小さく、目立った作品もなかった。聞けばチェコは信仰率がとても低く、最大のカトリック信仰が26%ほど、無宗教が50%を超えるという。近代以前の絵画はキリスト教である。その基盤がないとなると筆者が興味を持つような作品も、作品群を収める美術館も発達しなかったのかもしれない。王宮の聖ヴィート大聖堂などのステンドグラスはもちろん美しかったのだけれども。これから訪れるウィーン、ブダペストに期待しよう。
美術とは関係ないが、ビール、ワインはとても美味しかった。
(聖ヴィート大聖堂)
今回そのチェコ、オーストリア、ハンガリーを訪れたのでその報告を。言うまでもなくハプスブルク帝国の3国であり、チェコはボヘミア国王フェルナンド1世の時代から(16世紀)20世紀の独立まで500年間の支配を経ているが、ハンガリーほどハプスブルク家人気(正確には皇妃エリザベート人気)はないようである。むしろ、ボヘミア王国が西欧列強の支配から逃れる、チェコ(スロバキア)が、独立していくその重みと民族の独立性が謳歌されていたに違いない。その典型がスメタナの「わが祖国」であろう。
生半可な歴史知識はさておき、美術の世界でいうと、近代の成功者はやはりミュシャ(チェコ語では「ムハ」)。ムハ美術館はとても小さい。ミュシャは言うまでもなく、パリに出て女優サラ・ベルナールのポスターを描いて大成功、その象徴主義の技法は、ムハ美術館に所蔵する原画等で垣間見えるが、如何せん規模は小さい。ミュシャは挿絵画家なのであるから、「画家」とは言っても、たった一枚の画布に己の筆をたきつける人ではなく多くの場合その作品はリトグラフである。から、原版をもとに多くの印刷物が出回り、ムハ美術館に行かずともミュシャの作品には多く触れることができてきた。
もっとも、熱烈な愛国者であったミュシャは、チェコスロバキア独立(1918年)のために多くのデザインをチェコスロバキアのために制作したそうで、ムハ美術館にもそのあたりの展示があったやもしれぬが、展示の貧相さと英語説明を読む力量、根気がなく流してしまったので詳しくは分からず仕舞い。ミュシャはあくまでパリで成功したのであり、チェコ(スロバキア)で活動したのではなかったし、作品がチェコに留め置かれたのでもないから、ミュシャの生涯の作品群に触れるのは難しかったのかもしれない。その点、パリのロダン美術館などとは違うと思うが個人美術館の成功あるいは不成功事例を検証してみるのもおもしろい試みかもしれない。
チェコは王宮の一角に国立美術館は設えられてはいるが、規模も小さく、目立った作品もなかった。聞けばチェコは信仰率がとても低く、最大のカトリック信仰が26%ほど、無宗教が50%を超えるという。近代以前の絵画はキリスト教である。その基盤がないとなると筆者が興味を持つような作品も、作品群を収める美術館も発達しなかったのかもしれない。王宮の聖ヴィート大聖堂などのステンドグラスはもちろん美しかったのだけれども。これから訪れるウィーン、ブダペストに期待しよう。
美術とは関係ないが、ビール、ワインはとても美味しかった。
(聖ヴィート大聖堂)