kenroのミニコミ

kenroが見た、読んだ、聞いた、感じた美術、映画、書籍、舞台、旅行先のことなどもろもろを書きなぐり。

ハプスブルク3国美術紀行4 ハンガリー

2011-09-14 | 美術
ハンガリーやブダペストに恥ずかしいくらいなんの知識もなく訪れた。ハンガリーの歴史、それも1956年のハンガリー動乱であるとか、ましてや音楽音痴のこの身にとってリストの生涯などに興味があったわけでもない。今回訪れたチェコはビール、オーストリアはワイン、ハンガリーもワインらしいと、食い意地のはった者にはその程度の興味対象であったハンガリー。では美術の世界では。
ハンガリーの一般的な知識どころか、美術でもこちらの不明を恥じるほど充実した美術館だったというのが正直なところである。ただ、言い訳すると、世界の美術館ガイドなど、それも比較的大きく、詳しいガイドを見ても、ハンガリーの美術館のことはほとんど紹介されていないし、ハンガリーの画家も取り上げられることはまずない。であるから、ハンガリーの美術館、画家のことを問われても…。
思い直して、感想を言うとブダペストの美術館はすばらしい。規模もコレクションも十分である。国立西洋美術館は、いわば、ハンガリーの印象派の作品を集めたところ。ハンガリー印象派についてのこちらの知識のなさ、情報の少なさもあって、知らない画家ばかりだ。その分、予断もなく新鮮。印象派というともちろんフランスであるが、ルノワールはこう、モネはこんな感じ、ドガは…と決めつけて見てしまうが、ハンガリーの印象派なんぞ知らないこちらの強み? 反対にああこれはモネ風だとか、ピサロを思いおこさせるとか、モリゾが描いているのではとか、勝手にフランス印象派中心主義に堕して、分かったような気になっている。ただ、悲しいかなハンガリー語はもちろん分からないし、あっても小さな英語表記を事細かに確かめる時間もない。しかし、機会があればハンガリー印象派(というか、要するに近代絵画)の専門書にもあたってみたいと思う(もちろん日本語でお願い)。
国立美術館は、中世の祭壇画から現代美術までカバーする、まさに「国立美術館」の名に恥じない威風堂々たるコレクション。展示の仕方は決して洗練されているとは言い難いが、その分、押し寄せるほどと感じる作品数に圧倒され、また、うれしくもある。中世の祭壇画がこれほど集められているのも驚きであるが、同時に、その状態の良さも特筆もの。宗教的にはロシア正教に与せず、カトリックの強かった故か。これで終わりかと思ったら、まだ奥に広がる規模の展示室に王宮を美術館にするという試みは、もちろんブダペストだけではないが、王宮の美術館としての不便さを維持しつつ、その広さを有効に活用するという意味ではブダペスト国立美術館は、驚きと期待と、そしてその広さと複雑さのため、いくばくかの心地よい疲労を感じるのは致し方ない。いずれにしても、西洋先進国?の多くの大美術館が歴史的区分によって、そのハコを変えているのに反して、おそらくは、美術にかけるお金もそれほどではないハンガリーの首都の美術館が、1500年にもわたるコレクションを一堂に展示する贅沢さもまた、ブダペストならではの楽しみである。「草津よいとこ~一度はおいで」のドイツ語版で「ブダペスト グーテンプラッツ アイマール コーメンジー」というパロディがあるとかないとか。いや、ブダペストの二つの美術館には「一度はおいで~」である。(ゴシック様式の美しいマーチャーシュ教会)
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