スペイン・カタルーニャ地方、沖縄、そしてスコットランド。現在世界で独立の動きが強い3大地域をあげたつもりではない。が、ほんの最近、独立を住民投票でノーとしたスコットランドには興味があった。まあ、ほんの2日の観光だが。エジンバラは7月下旬だというのにとても寒かった。予報では最高気温が16度、最低気温が9度と出ていたあたり日本とかなり違うということは分かってもらえると思う。
エジンバラは街を南北にニュータウンとオールドタウンに分かつが、ニューといっても18世紀に開発されたという全体的に旧い街。坂の上がオールドで低いところがニュー。ヨーロッパのいずれも街もそうだが、バリアフリーとはほど遠い。それでもエジンバラ城や聖ジャイルズ大聖堂は美しい。大聖堂はゴシック様式とはいえ、北仏にあるような見上げるほどの高さはない。ステンドグラスが美しい。ゴシック様式と書いたが、高さがそれほどないのもうなずける、12世紀から建設を始めたというのであるからロマネスク様式の時代から始まったのだ。そしてスコットランドといえばメアリー(・スチュアート(朝))女王。悲劇の女王とか、その美貌ゆえさまざまな策略を弄した、あるいは、のまれた女王とも称されるが、宗教改革の波でプロテスタント勢力の波に押され気味のカトリック、ヘンリー8世のときにローマ・カトリックと袂を分かちイギリス国教会を設立した時代。ところが、カトリックのメアリーはチューダー朝側のエリザベス1世から謀反の疑いをかけられ19年幽閉ののち処刑されたという。そのあたりが、物語として今も語り継がれているのであろうが、スコットランドの反イングランド感情の複雑な露呈が今回の独立投票であったのかもしれない。ただ、貧しい英語力でネイティブとも交流できなかった身には、そのあたりの微妙な感性を知ることができなかったのが淋しい。スコットランド紙幣は、同じポンドでありながらロンドンなどイングランドでは使用できないという。同じ国なのか、違う国なのか。シチズンシップという、ナショナリティーとは違うところで市民権をはぐくんできたブリテンのあり方が垣間見えるとともに、そうはいってもグレートと一括りにすることによって、結局はイングランドもスコットランドも王制のもとに傅く姿にも見えた。
王室が好きなのは、居であるロンドンに勝るとも劣らないエジンバラは(広大なホルリードハウス宮殿とその庭園というか森)今も女王が滞在する場となっており、映画「クイーン」でヘレン・ミュラン扮する女王が、森で野生の鹿に出会うシーンがあるほど手つかずの自然にあふれている。だからだろう。ロンドンに並ぶ重要地として、ナショナル・ギャラリーを擁し、その規模ははんぱではない。ルネサンス以前から、西洋絵画の王道とばかりにラファエロ、ティツィアーノ、ティントレットと続く。レンブラントの自画像、フェルメールもある。ロンドンと規模的には雌雄つけがたいが、同規模の眼福といってよい。そういえば、西洋絵画の名品が紹介されるとき、結構「スコットランド国立美術館蔵」となっていたりする。ここまで来る価値のある美術館。そして避暑の地だ(エジンバラの7月の最高気温は16度から20度程度、最低気温は9度から13度程度!)。(スコットランド・ナショナル・ギャラリーのレオナルド・ダ・ヴィンチの習作とされる作品)