kenroのミニコミ

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課税の構造を変えて格差をなくす試み 「21世紀の資本」

2020-06-18 | 映画

れいわ新撰組党首の山本太郎氏が東京都知事選への立候補を明らかにした。その山本氏が本作の宣伝を無償で買って出た。「720頁の本を僕も読んでいません。でも映画はオススメです」。恥ずかしながら私もトマ・ピケティの原書は読んでいない。竹信三恵子さんの『ピケティ入門 「21世紀の資本」の読み方』(2014年 金曜日)だけである。

簡単に言うとピケティの主張は、現在の資本(主義)の実態は、世の中全体の儲かり方より金融資産を多く有する大金持ちの儲かり方の方が多いから、それを正して「健全な」資本(主義)にしようというものである(間違っているかも?)。確かにウオール街を占拠したオキュパイ運動では「(あんたら1%の人間が富を独占し、一方)我々は99%だ!」との主張だった。1%の人間が富を独占しているというのはこの映画でも示される。世界の金持ち上位50人の内訳はアメリカ22人、中国8人、日本1人だとか。それをもって映画のパンフレットで高橋洋一嘉悦大学教授(数量政策学者)は「日本の実情を見る限り、格差は他の先進国ほど酷くないし、格差是正のための税制も完全とは言えないものの、他の先進国よりまし」であり、「日本は世界の先進国の中では比較的平等な国であ」り、「日本でよかったとも思うだろう」「日本のような高負担の相続税や資産課税は、本作では言いたいことを既に一部実践していることを誇らしく思うだろう」と日本エライ!である。が、本当にそうか。

格差が日本よりひどい国として想定されているのはアメリカと中国か。実態としてそういう部分もあるかもしれないけれど、「比較的平等」なら生活保護を受けられないで餓死するとか、今回のコロナ禍で働く場やつながりを失い、自死する人はいないのではないか。まあ、数量政策学者の人が見る「数量」にはそういう数量に入らない人は無視していい存在なのもしれないが。

産業革命を経たヨーロッパでは労働者の賃金を抑えて搾取しまくりの政策が破綻し、労働者の賃上げ要求とともに物価もどんどん上がっていく。そういった労賃や物価といった目の前の変動する資本と無関係で財産を溜め込み、受け継げたのが、領主や金融保資産有層である。フランス革命で王制は倒れたが、労働者が解放されたわけではない。さらに労働者の国を目指した共産主義思想はソ連やベルリンの壁崩壊で潰えた。中国は共産主義ではなく「国家資本主義」である。

米アマゾンCEOの離婚に伴う財産分与が7兆円であるとか、日本ではネット通販大手の社長が月旅行を募集しているとか。ホンマかどうか分からない部分も含めて、世界の金持ちはとんでもない財産を有していそうだが、本作で厳しく追及されるのはタックス・ヘイブンである。パナマ文書はそういった世界の富裕層(企業)が、課税のない(やわい)国に本社登記をなし、税を逃れてきた実態にも言及し、ピケティは「本社登記地ではなく、売り上げをなした場所それぞれの売り上げに応じた課税を」旨、グローバルな課税連携を主唱する。それはある意味、世界それぞれの地域で富を貪る資本主義とは相容れず、むしろ国際的な社会主義とも見えなくもない。また不動産や株、投資などの金融資産への課税強化も訴える。

このような現代の極端に富が集中する世界は80年代のサッチャリズムとレーガノミクスによるものが大きいとの前提も解説された。それに乗っかったバブル期だった日本は「失われた」世代を生み出し、いや国そのものが「失われた」時代を生き続けている。国の借金はもう誰も見たくない、考えたくない額に達している。アベノミクスは浜炬子同志社大学教授によると実態経済の伸張や国民の富は全然増えていないという意味でアホノミクスなそうな。ピケティの矢は日本にも届くであろうか。

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