僕たちは一生子供だ

自分の中の子供は元気に遊んでいるのか知りたくなりました。
タイトルは僕が最も尊敬する友達の言葉です。

あっぱれ

2006-10-02 | Weblog

星野道夫さんという今は亡きすばらしい写真家がいる。

俺は星野さんがアラスカで動物を撮っている所をテレビで見てしか知らない
ので、動物写真家だと思ってるけど、専門分野が何なのかは分からない。
ただ、ネットで見た限りではそんなところでほぼ正解やと思う。

ところで、俺がこの星野道夫さんに興味を持ったのはその言動にとても共
感したから。この人はアラスカで白熊の素晴らしい写真をたくさん撮られて
るんやけど、その全ての写真は護身用のライフル等を持たずに氷上にテン
トを張り、好機を待って撮影している。

あの厳しい気候のアラスカ、動物の頂点に君臨する白熊でさえ、食べ物
はほとんどなく、人間などは格好のエサになってしまうであろう、その条件
の中でなぜ護身用のライフルさえ持たずに撮影するのか?

少し記憶があいまいやけど、星野さんはこう言っていたように思う。
「動物には相手を見分ける能力があるのです。危害を加えてくるか、こな
いか。危害を加えないと判断すれば、彼らから攻撃を加えてくることはあり
ませんが、ライフルを持っていれば彼らはきちんとその臭い(雰囲気)を嗅ぎ
分けて、逃げ出すか攻撃を仕掛けてきます。だからライフルを持っていると
いづれにしても彼らの自然な生態を撮ることができない。私は自然を撮る
仕事をしている訳で、そういう大自然の力を信じていますし、信じているか
らこそ、写真が撮れるのです。
」と。

もう、これを聞いた時、なんと素晴らしい信念を持った写真家なんだろう、
と感激したことを覚えている。

その何年か後、星野さんはアラスカで白熊に襲われ、命を落とされた。
亡くなられた方に対して失礼なことやけど、その時俺はその死に様にまで
感動した。なんという見事な死に様かと。谷川俊太郎さんが言った「僕は
自分の生が墓石になってくれることを願っている」をそのまま体現したその
姿は「あっぱれ」というしかない。星野さんが襲われた詳しい状況は知らん
けど、俺は、白熊は単にお腹がすいていただけで、星野さんはただの食料
に過ぎんかったんやと思う。
星野さんの信念が間違っているなんてこれっぽっちも思わないけど、動物
たちは単純に、生きるために、
そんな信念をいとも簡単に裏切ったりもする。
だからこそ、
大自然はこんなに厳しくも美しく、人間はそれに従わなければ
ならない。

「ライフルを持たない」。たったひとつでも信念を貫くことで、こんなにも大き
く大切なことを語れるのだと、星野さんは教えてくれた。