第143話. 夏の湖畔 

2018-07-22 22:31:59 | 花鳥風月
湖畔人です。

鳥好きの私としては、冬の旅鳥のタゲリが湖畔からいなくなってしまった後は、タゲリロスに陥ってしまって、湖畔の楽しみも正直半減してしまうのですが、稲が茂った一面緑色の湖畔も美しい事は美しいのですが、一方、緑色の稲や草の陰にいるであろう鳥達の活動は全く見えないですし、中々微妙な感じなのです。蓮の花も咲き始め、美しいと言えば美しいのですが、蓮の花はとても大きいので、白鳥から受ける印象と似ていて、その大きさからまるで人がそこにいるかのような存在感、威圧感を受けてしまって、単に美しいなと鑑賞できる対象でもないのです。
ただ、夏の湖畔は鳥が見えない代わりに、日が長い分夕日の美しさを長く楽しめはします。時々刻々と変化する夕方の空と雲は、同じ状態を保つ事は一度も無く、鮮やかな色彩と雲の形状の大きな変化を楽しむ事が出来るのです。特にこの時期は入道雲が見れますので、夕日を浴びて、モクモクとした濃い陰影を作る大きな積乱雲はまるで人格を持つ存在のようで見ていてとても面白いです。
夕暮れの湖畔は、特に、日が落ちた後に、ピンクとオレンジの中間の鮮やかな色、朱色?というのでしょうか、その鮮やかな朱色の光線が空中の雲を広い範囲で朱色に染め上げて行きます。そしてその朱色に染まった空の色が、今度は、そのまま広い範囲の湖面に映し出され、湖面が朱色を含む暖色系の色を中心にした淡くメタリック調の色に輝くのです。部分的に黄色や紫、水色が交じり合って、それを揺らめく波が複雑な色彩の模様を湖面に作り出して行きます。更に、この時期には魚達の産卵があるのか、魚群が一部背鰭を見せながら固まって忙しなく動いて細かな小波を起こしている箇所が複数箇所見られる為、それらの波紋が水面の波の形状をより細かくより複雑にする事で、様々な色彩が交じり合い、湖面の表情をより複雑でより幻想的なものにして行くのです。遠くの対岸にある山々は黒いシルエットを見せ、その手前の湖面が淡い暖色系に輝き、その上を低空で横切る鷺達の黒いシルエットが動いて行く様は、まるでモネの絵画のようであり、この自然の作る絶景に身を浸していると、日常の喧噪をしばし忘れて、大きな癒しを頂けるのです。身近にあるとても贅沢な時間です。
夏の夕暮れの湖畔は中々のものですので、避暑を兼ねた水辺の散策をお勧めしたいと思います。

湖畔人

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