チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

着物が繫ぐもの 250

2019年10月21日 10時53分06秒 | 日記
最近帯留めが大流行のようだ

現在のような「お太鼓結び」というのは近年にできた形で
だいたい帯の結び方は自由気まま女の数だけ帯の形があると言われたものである
古い浮世絵なんかを見ると本当にいろんな帯結びが描かれているし、帯の幅も長さも様々である
ここまで自由に帯を結んでいたのは、やはり着物が日常着であったからこその話

今は標準の結び方として「お太鼓結び」が一般的、この結び方を巡って人々は苦労している。後ろで形を作ることが難しいのだ

昔の人は肩甲骨をよく使い、動かしていたので、後ろで結ぶなんて平気
今は肩甲骨が固まって動かない人が多いので後ろで作業することはとても困難
そのために「前結び」という帯結びも開発された

というより「前結び」のほうが歴史的には古い結び方だ、後家さんとか遊女が前結びをしていたという絵画がたくさん残っている。

花魁はどうして前結びなのかと取材をしたことがある。なるほどという回答を得た。差し障りがあるので公には書かない。聞きたい人は毎月第2,3,4火曜日に行われる「日本人だったら着物でしょう?」のおはなし会にどうぞ

さて
帯留めの話だった
明治維新で「帯刀禁止令」が発令されて、刀の装飾を引き受けていた彫金師たちの仕事がなくなり、知恵者の発案で帯留め、かんざしの装飾品製造に精を出した。その頃に作られた帯留めは芸術品だ。

当時帯締めはほとんどが丸ぐけだったが、手組みの組紐ができ帯留めとの対で大流行。彫金師は腕を競い季節のもの、動物、植物、昆虫、気象、目に映るありとあらゆるものが帯留めに反映された。彫金だけでなく、珊瑚、塗、宝石、木彫りと発展していく

帯留めは主張が強いので合わせる帯は限定される。この2つのしのぎ合いが着る人の美意識を高めることにもなったのだと思う。

宝石などで財を競うか、美意識を主張するか、狭い面積の中での思い入れも着物を着る人の醍醐味かもしれない
コメント
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