大きな仕事をしていた社長
政治家たちを陰で動かしていた男
荒くれ男も一目置いていた男
女に無茶苦茶持てた男
大金持ちであもあった男
或る日美しい女性に心から惹かれ、その女をいかに世に出すかの影武者となり、土地を購入家を建てその女のために精魂傾けた
ある事件があり女はその男を裏切った
男はすべてを女に渡し、それだけではなく家族とも別れ、無一文で一人山里離れたところに、もともと持っていた小屋に落ち着いた
傷心の日々をそこで送る
心変わりをしない「心友」たちが訪れ慰めていた
自然に囲われたその土地で少しずつ傷も癒え、畑づくり、家づくりをぼちぼちと一人で行ううち、「自然が自分を癒してくれる最高の家族」と気が付き、自分と縁ある人々がここにきて心が落ち着くようになれば、もっとこの自然は喜ぶだろうと、地元の人たちとの仲間づくりも始め、広大な土地が整ってきた
味噌も作る梅干しもつける、漬物もだ、料理の腕も上がる、すべてが自給自足、お金も労力もみんなが持ってくる、遠い土地から珍しいものが送られてくる、一人でひっそり暮らしているのではなく、毎日誰かが来てて語り、労働をして帰る
しかも世界情勢にも詳しく、ニュースソースも最新のものがはいってくる、今でも政府の要人たちが訪れているようだが、彼らには喝を入れているらしい
「隠居ではなくこういうのを何て呼ぶのかしら」
「チャ子ちゃん先生この状態は隠遁だ」
ほんとうの隠遁は、訪ねてくる若い人たちをきちんと教育することだという
だから引きも切らず人伝えに聞いた若者が入れ代わり立ち代わり訪れては、日本とはどういう国か、お前らはどう生きねばならないかの教えを受けて、勇躍それぞれの仕事場に戻っていく
「お金は必ずついてくる、大丈夫」
彼を見ているとまさしくその言葉通りだと思う