チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

着物が繋ぐもの 447

2021年09月05日 09時54分04秒 | 日記
夫唱婦随、加藤史郎さん夫妻
帯の仕立て職人になって65年
「15歳の小僧時代を入れるとそういうことになるかな」
「小僧時代は何年?」
「10年だよ」
「そんなに長いの?」
「帯の仕立ては3年で覚えたね、行商があるんだよ。当時は自転車で都内をぐるぐる回ったね」

師匠の家に28人が住み込み、そのうち男は二人、どうしても荷物持ちになる。仕立てて届けて、仕事をもらってくる。一日一本は仕上げる
今でもその速度はキープ。足の指に布を挟んで縫っていく針運びの速さは格別

奥方もその住み込みの仲間
「お二人とも可愛かったのでしょうねえ」
「うんそうだよ」
(・_・D フムフム

お二人とも80を超えた、奥方は60歳まで現役だったが、注文が少なくなり手を休めている
お礼奉公を2年して独立、新たに仕事を取らなければならないが、その行商の時代に営業のコツを覚えた。その成果ですぐ新しい得意先が出来、常に6人以上の弟子を抱えていた。そしてその弟子たちがまた独立していき、時代も着物を着る人が少なくなり、注文数も減って今は一人

チャこちゃん先生は、きちんとした帯の仕立てをする人を長く探していた
特に名古屋帯をぴちっと、ぴちっと仕立てる人に中々巡り合わなかった。特に縮緬の帯に納得がいかないまま過ごしていた時「名人がいる」という話で早速縮緬の帯を注文。出来上がりの美しさ、ぴしっとした仕立て上がり、締めたときの心地よさ、そしてお太鼓の丸みが形よく決まること、すっかり御贔屓だ、大フアン。届けてくれるたびどんな雪の日でも素足
「冷たくないの?」
「指を使うからね、あったかい靴下や足袋履くと指がねむっちゃうよ」

この言葉は仕事場に行って分かった
加藤さんのぴしっとした仕立ては足の指が大活躍、布を指が引っ張りそのことは体全身を使うということだ。素足で指を鍛えているのだと納得
表の生地と帯芯のなれ合いを生かすため、布を縫う時の針の音色を聞き分けるときも、足の指で布を引っ張っていないとわかりいくい。足の指をぃつも敏感にしておくのだ。素足でいることは帯づくりに欠かせない

昭和の時代は、職人がキチンお仕事をしていれば家を持てた時代だったなと思う。加藤さんは杉並に家を建てたのが30代後半。自分の仕事に信頼と自信をもって生きて来た。ふたりの素晴らしい笑顔の写真をわたしのFBにあげている。いつまでも見ていたい二人の笑顔。この顔がこれからの時代のみんなに訪れるといい

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