染色家に一年前依頼した着物がなかなかできないので連絡を取った
忙しすぎて忘れていたらしい
夏物なので
「では来年の夏に間に合わせてくださいね」(生きているかなあ)
いそがしい原因をアレコレ語ってくれた
それは呉服業界の「負」の部分だった
ご自分が染めた着物の説明を展示会に出かて解説をする。そうしないと自分の着物が売れない。そおうやって日夜出かけていたら作品を作る時間は限られる。個人の依頼は後回しだ
彼だけではなく多くの染織家が現場にたって着物を販売している
作家自身の個展であれば現場に立つのは理解できる
呉服業界は自分自身の勉強不足を棚に上げ、作り手に販売を頼んでしまうというケースは平成に入って頻繁になった
「本音はどうなの?」
「そりゃあ行きたくないですよ」
「作るプロがいて売るプロがいるこれが自然のことでしょうに、断れないのかしら?」
「そうすると自分の着物は後回しになって、現場にいる人の物を売っていくんです」
「そう思い込まされているんではないの?ご自身何が大事かしっかり考えてくださいね」
やや厳しいチャ子ちゃん先生
それからしばらくして
「染め上がりました」
「えっ」
「お渡しする場所がこちらです。いらしていただけますか?」
なんとピアノ練習室を指定してきた
昨年工房に伺ったときアップライトのピアノが据えられていて
「オヤピアノはどなたが?」
「私です一昨年から先生についています」
「30分聴いてください」
シューベルト、ショパン、べーとべンンを7曲暗譜で力強く弾く姿に感動をした。マイナス言語を吐き続けている彼とは姿が一致しない。然も2年でこの7曲をものにした
「音が明るく力強く情緒の表現が胸に響きます、これが本当のあなたなのね!
ぜひこの姿で生きてくださいよ、作品もきっとみんなの心をもっと打つようになるわ!」
嬉しかった。本当の彼はこんなにも力強く明るい人だった、作品ももっともっと素敵になると確信する
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