ダイエットに関係なし=當瀬規嗣解説
ダイエットに興味をお持ちの方々の間で「褐色脂肪組織」が注目されているようです。白あるいは黄色い皮下脂肪と違って、褐色をしているのでこの名があります。褐色脂肪組織は生まれたての赤ちゃんの体にたくさんあって、その細胞が持っている脂肪を燃やして、ひたすら熱をつくる役割を持っています。皮下脂肪がまだほとんどなく、脳の体温調節力が未発達の赤ちゃんの体温を維持していると考えられています。褐色脂肪組織は成長するにつれてだんだん少なくなり、成人になるころにはほとんどなくなります。代わりに皮下脂肪と脳の体温調節力が成人の体温を維持します。褐色脂肪組織が働くと熱をつくるので、計測上、基礎代謝が増えると考えられます。ところで、今たいへんな誤解がまん延しています。「褐色脂肪組織を増やしてダイエットしよう!」というのです。これは全く可能性のないウソ話と言えます。そもそもお話ししたように大人には褐色脂肪組織がほとんどありません。また、医学において褐色脂肪組織を増やす手だては全く見つかっていません。運動して増える、などというものではありません。さらに褐色脂肪組織が基礎代謝を増やすのは組織で発熱量が増えるためで、他の皮下脂肪を減らす作用ではありません。つまり褐色脂肪組織が増えても、それだけで体重は減らないのです。医学知識をうわべだけ聞きかじって、都合よく組み立てたウソ知識を利用して、お金もうけしようとしている人がいます。断じて許すことはできません。(とうせ・のりつぐ=札医大医学部長)