万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国が唯一隠し切れないもの-それは環境汚染

2015年12月01日 17時00分33秒 | 国際政治
PM2.5濃度、基準の28倍に=今冬最悪の大気汚染―中国・北京
 中国当局が発表する情報が信用ならないことは、もはや常識化しています。特に、政府にとって都合の悪い情報は悉く隠されており、国民は、真実を知ることは出来ません。

 ところが、唯一、中国の政府当局が隠そうとしても、隠し切れないものがあります。それは、凄まじいレベルに達している環境汚染です。本格的な冬を前にした首都北京は、既に基準の28倍という高い濃度のPM2.5に汚染された空気に覆われており、昼なお暗く、100メートル先も見えない状態なそうです。視界不良をもたらす大気汚染は、たとえ当局が否定したとしても、全ての北京市民に、深刻な大気汚染の発生を知らせています。また、中国国内では、”がん村”と呼ばれる高度汚染地域も出現しており、土壌や水質汚染による住民の健康被害も隠しようもありません。”がん村”の場合は視覚情報を伴わないため、諸外国に対しては情報遮断が可能ですが、中国国民に対して、長期に渡り、環境汚染による癌患者の発生を隠し通すことは困難です。口伝えであれ、地縁血縁を通して、健康被害の実態は伝わってゆくことでしょう。現在、国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)がパリで開催されておりますが、この席で、地球温暖化のための途上国支援を表明した習主席に対して、中国国内では、「自国の環境汚対策を考えるべき」との批判の声が既に上がっているとも報じられています。中国国民にとりましては、環境汚染問題こそ、自らの生命や身体に係わる重大事なのです。

 中国政府は、共産党の組織的腐敗や謀略による事件など、政治絡みの情報については、情報統制手段を駆使さえすれば、国民に知られることなく秘密裏に処理できると考えていることでしょう。しかしながら、環境汚染については、改善が実感できるレベルの汚染対策を採らない限り、国民の不満を解消することは出来ません。中国の共産党一党独裁体制は、環境汚染によって滅びる可能性もないわけではないように思えるのです。

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コメント (2)
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