万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

農村戸籍も一党独裁の欠陥の現れ-”農村票”がない中国

2015年12月11日 10時17分41秒 | アジア
中国政府、ブラックチルドレン1300万人に「戸籍」付与へ
 中国政府は、一人っ子政策の闇とも言える無戸籍者(黒孩子)を救済するために、戸籍を付与する方針を決定したと報じられております。この方針、先日の一人っ子政策の廃止とも関連しており、既に生まれている二人目の子の”追認政策”であるのかもしれませんが、人身売買、臓器売買、不法移民…等の減少に繋がることを願うばかりです。

 ところで、中国の戸籍問題は、無戸籍児に限られているわけではありません。最大の問題は、都市戸籍と農村戸籍の区別にあります。等しく”中国国民”でありながら、属する戸籍によって受給できる社会保障や行政サービスが著しく違っているのです。日本国の高度成長期を振り返りますと、都市部の発展に比例するかのように、農村部の生活水準も大幅に向上しています。都市と農村は共に豊かさを享受しているのです。その背景には、民主的選挙制度における”農村票”の存在がありました。選挙やロビー活動を通して農村の声は政治の舞台に確実に届けられ、政治サイドがその声を無視することは殆ど不可能なことであったのです。それでは、仮に、中国が民主的国家であったとしましたら、どうでしょうか。現在、都市部の富裕層は13億の全人口の内のわずか1割程度に過ぎず、残りの大多数の中国国民は農村戸籍の人々です。この状態で民主的選挙が実施されるとしますと、中国の政治地図は一変し、結果として、差別的な農村戸籍を維持することはできなくなることでしょう。

 今日、都市部の繁栄の陰で、農村戸籍の人々は、現行の戸籍制度に対する不満を高めているとも伝わります。不条理で不平等な戸籍制度の存在もまた、中国の一党独裁の欠陥の現れであると共に、平等を掲げて建国した共産主義国家抱える矛盾の象徴でもあると思うのです。

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コメント (2)
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