万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

アメリカの憲法修正14条の見直し―アメリカ市民と州市民

2010年08月09日 15時00分45秒 | アメリカ
「米国で生まれれば国籍」に異議=憲法修正14条、見直し要求も(時事通信) - goo ニュース
 アメリカを筆頭に、移民国家では、国籍法に属地主義を採用してる場合が多く、アメリカ国内で生まれた全ての子は、両親の国籍に関係なく、アメリカ国籍を取得することができます。しかしながら、不法移民問題の深刻化を受けて、共和党の議員の中から、憲法修正14条で定められている声が上がっているそうです。

 ニュースでは、属地主義の修正要求と報じられていますが、改正要求の対象が憲法修正14条であることを考えますと、この要求は、国籍に関する州の権限強化の要求なのではないかと思うのです。何故ならば、修正14条とは、直接に属地主義の原則を定めたものではなく・・・

「合衆国において出生し、あるいは、合衆国に帰化し、また合衆国の管轄権に服するすべての者は、合衆国、および、当該人が居住する州の市民である。いかなる州も、合衆国市民の特権、または、免除を制約するいかなる法律をも制定し、強制(enforce)してはならない。いかなる州も、法の適正手続きなしに、人の生命、自由、財産を奪ってはならないし、また、合衆国の管轄権にあるいかなる人に対しても法の平等保護を拒否してはならない。」

 とあるからです。アリゾナ州での不法移民取締強化法の制定とその後の連邦裁判所の判断という一連の流れからしますと、修正が求められている箇所とは、(1)アメリカ合衆国の国民=州市民とする部分、(2)市民権に関する州の法律制定・強制権の制限、もしくは、(3)不法移民に対する法の平等保護の何れか、または、全てではないかと憶測するのです(もちろん、これは、筆者の憶測に過ぎません!)。つまり、州に独自に州市民を認定する権限、あるいは、独自に法律を制定する権限が認められるようになれば、州のレベルで、属地主義への制限を課すこともできることになります。

 アメリカ市民と州市民の問題は、アメリカの国家像の将来の行方を占う上でも、極めて重大な議論を提起していると思うのです。

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