テクノロジーが人々の生活を豊かにしてきたことは紛れもない事実であり、多くの人々に未来への夢も与えてきました。機械の導入により今日では目を覆うばかりの過酷な重労働も殆ど目にしなくなり、医科学の発展も病に苦しむ多くの人々を死の恐怖から救ってきました。テクノロジーの人類への貢献を知れば、誰もがその発展に期待するのですが、テクノロジーを取り巻く今日の状況を見ますと、科学技術というもののリスク面が際立ってきているように思えます。
生成AIの登場により、人々から職を奪う存在として人工知能の危険性が強く認識されている一方で、テクノロジーの重大リスクとして本日の記事で問題とするのは、ウイルス研究の分野です。何故ならば、ウイルス研究には、軍事大国による共謀、あるいは、世界権力による謀略の形跡が確認できるからです。
新型コロナウイルスが登場した際に真っ先に出所として疑われたのが、中国の武漢ウイルス研究所でした。何故ならば、同研究所は、世界でも数えるほどしかないバイオセキュリティー・レベル4の最も有毒性の高いウイルスを扱う研究所であり、かつ、人民解放軍との関係も指摘されていたからです。生物化学兵器については、第二次世界大戦以前にあって既にその非人道性が問題視さており、1925年には「ジュネーブ議定書」にて使用が禁止されました。また、現在では、1975年に発効した「生物毒素兵器禁止条約」により、開発、生産、保有、取得の何れの行為も禁止されています。NPTとは異なり、一部の諸国に合法的な保有も許してはおらず、いわば、戦時といえども決して使ってはならない‘禁じ手’とされているのです。
ところが、生物化学兵器の開発が国際法にあって禁止行為、即ち、国際社会における犯罪‘でありながら、現実には、軍事大国では密かに生物化学兵器の研究がなされてきたことは公然の秘密です。ソ連邦時代からロシアは密かに生物化学兵器を開発してきたとされていますし(アメリカの関与において問題視されているウクライナのウイルス研究所もソ連邦時代からの流れ・・・)、中国も、人民解放軍と武漢ウイルス研究所との関係が示すように、生物化学兵器の開発に着手していたと考えざるを得ません。生命体である敵国国民のみを’消滅‘させ、相手国を無傷のまま占領できるのですから、攻撃側にとりましては、都市やインフラ等の物理的な破壊を伴う通常兵器よりも遥かに’合理的‘な兵器なのでしょう。
そして、ここで注目されるのは、武漢ウイルス研究所で行なわれていたとされるウイルスの機能獲得実験というものです。機能獲得実験とは、自然界のウイルスに人工的な遺伝子操作を施すことにより、異なる機能を持たせようとする実験です。同実験にあって問題となるのは、そもそも既存の有害ウイルスに対して機能改変の操作を加える必要性があるのか、という根本的な疑問です。もちろん、ウイルスの中には人々の健康を増進したり、進化ウイルス起源説があるように、ウイルスの遺伝子が感染者のDNAに逆転写されることで、人類が更なる進化を遂げる可能性も皆無なわけではありません。しかしながら、機能獲得実験が行なわれていたのは、とりわけ危険性の高いウイルスを扱うBSL4の研究所である以上、生物兵器として使用するために、感染率、重症化率、並びに、死亡率の高いウイルスを開発したとしか考えようがないのです。
しかも、武漢ウイルス研究所には、アンソニー・ファウチ氏が所長であった国立アレルギー感染症研究所(NIAID)が業務委託した非営利団体「エコヘルス・アライアンス」を介して資金が提供されています。アメリカとしては、ウイルスの機能獲得実験は、生物化学兵器が使用された場合、その治療法や対策を予め準備するために必要である、と強弁するするかもしれません。しかしながら、この言い訳、共同研究の相手が‘仮想敵国’なのですから通用するとも思えません。否、大多数の人々が、軍事大国間の‘共謀’、もしくは世界権力の‘陰謀’を疑うことでしょう。
非人道的で残忍なテクノロジーの開発に口実を与えてしまうのも、戦争の悪しき一面なのです。そして、近現代の戦争が極一部の金融・経済勢力による私的利益の追求や世界支配を目的として仕組まれているのであるならば、人類は、先ずもってこの‘からくり’を冷静に解明すると共に、戦争回避の道を全力で探るべきではないかと思うのです。