(来週の老親の帰国を控えて忙しくなるので、忘れないうちに書く)
Wiki に書いてあるのでこういうタイトルにしたが、地元の発音ではチッシュルブまたはチシュルブ、あるいはチクシュルブである。グーグル先生は「次の検索結果を表示しています:チチュルブクレーター」と言ってくるが、これは地元的には間違い。
さて、約6,600万年前、小惑星が現在のユカタン半島あたりに衝突し、第5大量絶滅の引き金になったと考えられている。
このときの衝撃でできたのが、ユカタン半島の誇る観光資源セノーテである。洞窟の中に綺麗な水が溜まってて、洞窟に降下してったり泳いだりできるアレですね。メリダから一番近いところにあるセノーテは、地上にあって洞窟らしい部分は水中でちょっと横に伸びてます。
ちなみにこのセノーテがあるのはツィビルチャルトゥンという遺跡で、チチェン・イッツァみたいな春分のときどうのこうという建物や、民家跡(土台)や、よくある段々の僧院などのほかミニ博物館とこのセノーテがあって、こじんまりしてる割にてんこ盛りだしメリダから近いので結構おすすめです。
が、小惑星の「衝撃」でできたんで、衝突した中心点あたりにセノーテは一切なく、あわれプログレソ市はその恩恵に預かれないのである。
あ、この図はユカタン半島の北半分くらいの部分です。で、落下の中心点とされているのが、プログレソ市内のチシュルブという地域。小惑星は、直径15キロくらいとか言われている。
セノーテがユカタン半島にしかない理由はこちら。
以前はもっと、市が作ったけど誰も見向きもしないような、コンクリブロックのそっけないものだった。そこで、近年観光客誘致に熱心な市がひねり出したのが、恐竜と結びつけること。
プログレソの海岸通りに博物館を作ったり、恐竜オブジェを配置したジュラシック散歩道を作ったりした。
さらにトークイベントをするというので、行ってきた(前振り長かった)。第一部が「チシュルブクレーターと大量絶滅」、第二部が「クレーターの研究は何に役立つか」みたいな話。
プログレソの工科大学院(こじんまりしている)で開催され、そこの学生がちらほら、地元の高校生が先生に引率されてどさっと、その他の大学生っぽい子たちがちらほら、一般客はなんと、我々(老父とあたし)のみであった。面白かったのに。
地元のネット報道メディアの記事なんで写真が小さいですが、1枚目が第一部の講師で、4枚目が第二部の講師。2枚目と3枚目は同じ写真で、我々も写っている。うまい具合に変なアジア人がいるってことで、「いろんな客が…」に使われましたねw。
ちなみに講師はメキシコ国立自治大学から呼んだ博士で、チチュルブと発音していた。マヤ語の xu(チシュルブ=Chicxulub)が発音できないか無視してるか学会ではチュで通ってるのか知らないが。地元では、マヤ語を話さないスペイン語人もみんな、ちゃんとシュと発音する。
地元を愛する移民としてクレーターには以前から興味があったんだが、今回トークイベントで初めて知ったことがあった。
まず! 隕石が落ちた中心点は「現在の」チシュルブのあたりで、当時はユカタン半島そのものがない! 現在の半島部分の形そのまま海の色が薄くなっているが、「ああ、隆起した(海面が下がった?)んだな」と分かる部分は、海底だったのである。
なんとなく地面が押されてセノーテが…みたいに薄ぼんやり考えていたので、ちょっとびっくりした。関係ないけど、ヒマラヤで貝の化石が見つかったりするんですよね、あれと同じロマンを感じる。
それから、みんな大好きティラノサウルス=Rex がいたジュラ紀は衝突よりずーっと前で、衝突は後期白亜紀。チシュルブ隕石が原因で絶滅した恐竜は、飛ぶやつとか嘴や首が長いやつとか、犀みたいなやつとか。ってか、時代名はいた生物で分けてるのか。まぁつまり、市が作った「ジュラシック遊歩道」という名前はちょっと違う…と講師が苦笑いしていた。
あと、衝撃の大きさを比較するのに「みんな、気温45℃で暑い暑いって言ってますね〜。この隕石が衝突したときのレベルは500℃くらいです」という比較にはみんなへぇ〜って感じだったが、「ヒロシマの10億倍です」に反応したのは我々だけであった。広島の原爆を知らない子もいたんじゃなかろうか。
メキシコのとことん地方州のこれまた地方都市(人口たったの5万人程度)の高校生、考えたら当たり前かも。むかーし修学旅行で見学したの、それこそショックだったので、500℃くらいの話で納得しないでぜひ衝撃を受けてもらいたかった。
その他、写真を…。
周りの子たちは絵じゃなくて字になるととたんに横を向き出してたが、資料の方が面白かった。
要は、チシュルブクレーターの研究は、環境問題や生物学など幅広い学問に役立っているという話を詳しく。
講師以外に、会場となった大学院の教授やら事務方やらと、博物館で展示するアニメーションを作った大学生チームなど。プログレソ市からの感謝状ですね。
メキシコの標高2000mの高原にある古代都市テオティワカン。10万人が暮らしたという、南北アメリカ大陸最大の都市遺跡だ。紀元前1世紀から始まり6世紀まで栄えた。高さ65mの巨大ピラミッドなど、100年以上前から発掘が行われてきたが、いまだにナゾが多い。これだけの大都市にもかかわらず、見つかっていない「王の墓」。しかし近年、発掘された地下の大トンネルから、王に迫る証拠が続けて発見されている。
(今日から1週間の自宅隔離)