
お昼過ぎ、奥さんとお買物に行きました。昨日はお肉だったし、今日はサカナかな? お鍋でもいいんだけど、お休みの日は飲んではいけないというルールがかすかに残っているし、日曜の夜にお鍋は避けてほしい。たぶん、サカナかな、みたいな気持ちでしたか。特に欲しいものはなかった気がします。
いや、すでに柑橘王の私は、2個で250円のいよかんを買ってもらってたし、昨日ははっさくを3つで250円を買ってもらってました。もう買わなくてもよかったんだった。
奥さんは、今日のおかずは何にしようという漠然としたテーマがあったんですね。私の頭は、プランがなかった。ただの消去法で、肉はいらない。野菜は毎日食べさせてもらっている。安いブロッコリーでもあればいいけど、こちらもなかなか簡単ではありません。適当なサカナはないかな? というところでしたか? 奥さんは、安くておいしいリンゴをゲットしたようでした。
さあ、サカナコーナーが近づいてきました。黒いダウンのコートの、小ざっぱりと髪を後ろでまとめた女の人の後ろ姿が見えます。その向こうで小さい男の子の声が聞こえてきました。
「ホタルイカ、ホタルイカだよ、これ買おう。」ものすごく積極的な声です。声だけでなくて、品物に手を出しているようでした。どれでもいいから、とにかく買い物かごにホタルイカを入れてしまいたいようでした。
ホタルイカに飢えてたのではなくて、最近も食べたようなことを話していたと思います。その上で、今日のお買物では「ホタルイカを買おう」という強い意志が感じられました。
「それはやめておいて、カツオにしよう。今日はカツオを食べよう」とお母さんは説得しています。それを聞いて、手をひっこめて、止めようかとしている感じがありました。ちゃんと聞き分けられるみたいでした。
でも、ちゃんと言うだけのことは言おうと思ったのか、「ホタルイカ、ほしいよ。ここにあるのぜんぶ食べるよ。ホタルイカー!」

お母さんは、もう一度「今日はやめとこう」と言ったでしようか。
私は、奥さんの影に隠れて、なんと強い意志の言葉だろうと感心して、小さい子なのに、そんなにホタルイカ食べたいのか。お酒も飲まないだろうに、すごいなあと感心していました。
その感心もずっと続いていて、「ホタルイカ」を呼ぶ声は止まらなかった。一度通り過ぎて、またサカナコーナーにもどり、またも連呼。ものすごい情熱でした。お母さんとしては、彼の熱を冷まして、諦めるまで粘り強くお店の中をグルグルしていたようです。
うちの買い物も行ったり来たりを繰り返して、それなりに時間がかかるんですけど、この母子はうちよりもレジに来るまでに時間がかかり、グルグルしていました。レジまで来たところで、まだこの子は「ホタルイカ、ぜんぶ食べるよ」という主張をしていました。

こんなに好かれるなんて、ホタルイカも本望でしたね。富山湾ではなくて、福井から来たホタルイカたちでしたが、ぜひ買ってもらいたかっただろうな。
私は、「食べてもいいかな? そんなに彼が言うんだもんな」と思ったのに、あの子ほどのつよい情熱もないし、まだまだ甘いと反省して、今日はホタルイカはやめました。あまりに強い情熱があると、白けてしまうところがあったんでしようか。まあ、どっちにしろ、私に強い情熱がありませんでした。これが食べたいという情熱、ある時もあるんだけどなあ。