途切れとぎれに『菅笠日記』を読んでもう何年になるでしょう。早く宣長さんを松坂に帰してあげなきゃいけないのに、なかなか帰り着けないですね。まだ宣長さんは吉野を歩いているみたいです。いくら何でも、何年もかけたら吉野から帰って来れるのになあ。まあ、気長に旅していきますね。 このやしろ(社)のとなりに。袖振山(そでふるやま)とて。こだかき所に。ちひさき森の有りしも。同じをりにやけたりとぞ。御影(みかげ) . . . 本文を読む
くるるまで見るとも。あくよあるまじうこそ。また雲ゐ桜といふもあり。後醍醐のみかどの。この花を御覧じて。新葉集 こゝにても雲ゐのさくら咲きにけり。たゞかりそめの宿とおもふに。とよませ給ひしも。 世々をへてむかひの山の花の名にのこるくもゐのあとはふりにき。 (満開の吉野のサクラは)日が暮れるまで見たとしても、飽きることはないでしょう。雲居のサクラという、帝さまたちのいらっしゃった所のサクラという . . . 本文を読む
前回、宣長さんは、お父さんとやっと気持ちで通じ合えたと思ったんですよね。そのあと、どうするんです? 歩きの旅だから、すぐには帰れないしな、また、あれこれ見て帰るんですか? どうなんだろう。 かの度は。むげにわかくて。まだ何事も覚えぬほどなりしを。やうやうひとゝなりて。物の心もわきまへしるにつけては。むかしの物語をきゝて。神の御めぐみの。おろかならざりし事をし思へば。心にかけて。朝ごとには。こな . . . 本文を読む
いよいよこの「菅笠日記」の一番大切なところにやってきました。宣長さんは、ここでお父さんのことを偲ぶために、ずっと旅してこられたのです。 短歌も詠みますよ。涙も流しますよ。しんみりとだけど……。歳月の流れもかみしめちゃいます! もうお父さんととことん心の交流をしなくちゃ! ゆきゆきて。夢ちがへの観音などいふあり。道のゆくてに。布引の桜とて。なみ立る所もあなれど。今は染か . . . 本文を読む