リタイア暮らしは風の吹くまま

古希を迎えて働く奥さんからリタイア。人生の新ステージで
目指すは悠々自適で遊びたくさんの極楽とんぼ的シニア暮らし

2008年10月~その2

2008年10月31日 | 昔語り(2006~2013)
ああ、僅差、僅差

10月16日。いや、くたびれた~。午前中に起きて、朝食が済んだらすぐ仕事。期限は日本ではお昼にあたる今日の午後8時。微妙というよりもちょっとやばい量が残っている。火曜日は選挙があったし、きのうは銀行の用事があったし、その間、間に納品した仕事にケチをつけるやつがいたし・・・。ケチがついたと言っても、元の原稿から肝心要の情報が抜け落ちているんだから、水晶玉を持っていないこっちは困る。そりゃあ書いた本人にしてみれば自分がよく知っている「ジョーシキ」なもんで、誰でも知っているはずと思って、ぽろりと失念してしまうんだろうけど、そんなことちっともご存じないこっちはほんっとに困るんだよなあ。まあ、こういうことはどこの誰にでもよくあるものなんで、しょうがないけど・・・

トイレの時間も惜しんで必死。日本人が作成したワープロ文書の常なんだけど、フォーマットはどんどん崩れていく。なにしろ一貫していない。頭を揃えるのにタブを使ったり、スペースを入れたり。項目番号を自動で入れたり、手動で入れたり。とにかく「はちゃめちゃ」。まあ、タイプライター文化がなかったところなんだからしょうがないとしても、細かいところまできちんと整っていないと気になる潔癖症の日本人のイメージとはずいぶん大きなギャップがあるのがおもしろい。おそらくは、見た目が整っていればそれで満足なんだろうと思うけど、こっちは肩がこってしまうんだよなあ・・・

疾走するF1カーのごとくエンジン全開で仕事をしているうちに、今日はカレシの英語教室の日だということに気が。早めに夕食をして、送り出さなければならない。いやあ、えらいこっちゃ。とっても間に合いそうにない。だけど、カレシが出かけてからまたぶっ飛ばせばいいか。ラッキーなことにまだ月曜日の七面鳥が残っているから、玉ねぎとピーマンとマッシュルームとでソテーにして、生クリームとスパイスを絡めて、ペンネと混ぜ合わせて、できあがり。所要時間30分足らず。これがけっこうこってりしておいしい。こらない料理ほど感激するほどおいしかったりするから、人間の味覚は不思議。

おとといの選挙。うちの選挙区は現職が僅差で勝利。う~ん、残念!と思ったら、最終得票は次点との差がなんと、なんと、たったの32票。共に16000票台で32票の差。ワタシもカレシも次点だった候補(というよりは政党)に投票したから、うわ~、惜しかったなあ、と慰めあって?いたら、選挙法の規定で自動的に再集計されるという。ふ~ん、32票ねえ。どうかなあ。逆転勝利ってことにならないかなあ。

結局、仕事は期限の30秒前に送信ボタンをクリック。ああ、くたびれた。こっちも鼻の差どころか、首の皮一枚ってところ。ふむ、ベガスでちょっとスロットマシンでもいじってみようか。バカあたり、するかな?

2、4、6で数えるお金

10月17日。おや、雨模様。まあ、10月も半分を過ぎたし、これが普通のバンクーバーの秋ってところだけど。ミニの休暇の前だし、日本はすでに土曜日だから、仕事もどうやら一段落で、おおむね「用足しの日」・・・。

まずは銀行へ行って、開設したばかりのアメリカドル建て口座からラスベガスでの軍資金?をおろす。近頃のアメリカのお札は、昔からずっとどれもこれも同じ緑色(それで俗称「greenback」)だったのが、最近のお札を見ると、緑が基調なのは変わらないけれども額面ごとに違う色がほんのりと入っている。なぜなのかよくわからないけど、カナダでもアメリカでも一番よく使われるのは「20ドル札」。カナダでは1ドルも2ドルもかなり前にお札からコインに変わっているけど、アメリカではどちらもまだお札。小銭の感覚でおつりをもらっていると財布が1ドル札で分厚くなってしまう。でも、2ドル札はまれにしかお目にかからない。去年はサンフランシスコでたまたまおつりに混じっていたけど、アメリカ人は縁起が悪いと言っていやがるらしい。まあ、日本でも、話に聞く2千円札にはついぞお目にかからなかったなあ。

カナダの2ドルはお札だった頃も、白と金の二色のコインになってからも、日常生活で普通に使われている。最近は金色の1ドルコインよりも多く出回っている感じがするくらいで、こんなところにも長期的な物価の上昇が反映されているのかもしれないけど、1ドルコインの通称「loonie」が良くないということも考えられるかなあ。裏のデザインが北極圏の水鳥loon(アビ)なんだけど、これをloonieとやると俗語で「きちがい、とんま」。なぜ、そういう通称がつきやすいデザインを選んだのかというと、元々公募で当選したのはvoyageurという、かって先住民との交易で川や湖を往来した小船の船頭のデザイン。金型ができあがって、さて鋳造開始ということで、クーリアで造幣所へ送ったら、なぜか行方不明。それで急遽デザインが今の「アビ」に変わった。まあ、小額とはいえ一国の通貨。そんなんでいいのかなあと思ったけど、大臣が引責辞任したとか、担当者が解雇されたという話は聞かなかったし、紛失した金型は数年してクーリアの倉庫で見つかった。のんびりさがカナダのいいところでもあるけど、過ぎたるは何とかというよなあ。

補助通貨にしても、カナダでもアメリカでも、1セント、5セント、10セントというところまではいいとしても、その次にクォーター(4分の1)と呼ばれる25セントが来る。日常で一番良く使われるのが25セント硬貨、2ドル硬貨、20ドル札なんだけど、硬貨やお札の組み合わせの基本が「1」と「5」の日本人にとっては、この「2」のつくお金が中途半端なものに映るらしい。だけど、偶数で2、4、6・・・というのはけっこう数えやすいんじゃないかなあ。銀行では、「お札の単位はどれがいいか」と聞くから20ドル札と指定したら、テラー君が20ドル札を、「2、4、6、8、100」と5枚数えてカウンターに置き、次に「2、4、6、8、200」、「2、4、6、8、300」というように、5枚ずつ100ドルごとに数えて渡してくれた。見ているこっちも思わず、「2、4、6、8・・・」と首をこくこく振りながら数えてしまうから、我ながらおかしくなる。ちなみに、ワタシは今でもお札を日本式に半折りにしてペリッ、ペリッと手前に数えている・・・と思っていたけど、いつのまにやら北米式に横へシュポッ、シュポッとさばいて数えることが多くなって来たらしい。お金の数え方もいろいろにお国ぶりが出るからおもしろいなあ。

大枚のお金を抱えて、次の用足しはヘアカット、その次は2日分の野菜の手当て。ああ、遊びに行くってどうしてこう忙しくせわしないんだろうなあ・・・

便利なはずなんだけど

10月18日。土曜日。世界の株式市場の、まるでバンジージャンピングを見るような上がり下がりも週末でひと休み。そうでなきゃあ、くたびれるだけでやってられないもんね。神様だって、天地創造に6日間もがんばって、7日目には休みをとったんだから。

カレシは明日のフライトのチェックインの作業。便利な世の中になったもので、オンラインでチェックインすると、出発時刻の2時間前に空港へ行かなくてもすむ。アメリカ行きは、バンクーバー空港で入国審査と通関手続きを済ませられるのはいいんだけど、チェックインしたらすぐに入国管理の方へ行けといわれる。それもそれでいいんだけど、国際線ターミナルの一角にあるアメリカ行き出発ラウンジにはろくな食べ物屋がない。ましな食べ物屋がある国際線のラウンジとは(事実上アメリカ入りしてしまったわけで)つながりがないから、へたをすると目的地に着くまで飲まず食わずになってしまう。でも、先にチェックインして搭乗券を印刷して行けば、入国管理に向かう前に出発ロビーでけっこうまともな食事ができる。出発時間が早いときはこれがほんとに天の助け・・・

ところが、何かがうまく行かないらしく、カレシはイライラ、カリカリ。やっとこさ座席指定のページに入ったら、「別々の席しか空いていない!」。きのうは通路側の座席を前後に取ったほうがいいかなんて聞いてたくせに、今度は席が別々になるとおかんむりって、どういうことかいな。まあ、画面をのぞいてみたら、窓際と真ん中のつながった席があるじゃないの。「ボクは通路側じゃないといや」と、だだをこねながらあれこれいじり回しているうちに前のページに戻れなくなってアウト。頭のてっぺんから立ち上る煙が見えるような・・・。

最初からやり直しで、こんどはまずチェックイン。「おい、パスポートの番号がいる」と。あわてて金庫からパスポートを出してきて渡す。チェックインの手続きが完了したところで、座席指定のページに入ったら、機内のエコノミーセクションの前の方に緑色の座席がひとかたまり表示されている。最初のときは表示されていなかったという。どうやらオンラインでチェックインしたら選ばせてもらえるらしい。ただし、1人10ドルの別料金とか。ふ~ん、燃料費の高騰で四苦八苦している航空会社の増収作戦というところか。ほとんどが空席のまま。二人で20ドルだし、ということでカレシの望み通り「通路側と中央」の席を指定。「チケット代は払ったし、チェックインして搭乗券も取ったから、どうやって10ドル取るんだろう」と、カレシ。「それは航空会社の問題」と、ワタシ。「おい、クレジットカード持って来てくれ!」と、カレシ。あわてて財布を取りに二階へ・・・前にも何度かやっているんだから、必要なものを揃えてから始めたらよさそうなものなのになあ・・・

それでもなんとか準便万端が整って、あとは簡単に荷物をまとめるだけ。やれやれ。すっかりホリデイモードになって来年のシンガポールとオーストラリアへの旅行の話を始めるカレシ。たった3時間の飛行でたった3日の旅行だというのにこのさわぎ。はたして大丈夫なのかなあ。まあ、あわてさせられたおかげで、金庫に入れてあるパスポートを忘れずに出せたし、去年サンフランシスコで使い残した150ドルも出したから、まあ、いっか。ついでに3年前に買ったUSドル建てのトラベラーズチェック200ドルも見つかった。でも、アメリカではいつでもATMから現金を引き出せるから、これは来年の「海外旅行」で使うことにしよう。

さ、「お出かけ前に」と飛び込んできた仕事をさっさと片付けて、デスクの上をちょっと整理整頓しよ・・・

ビバ!ラスベガス

10月22日。ああ、眠たいなあ。なにしろ午前9時の飛行機に乗るために朝の6時に起床。その前の二晩はあんまりよく眠っていないから、とにかく眠い。眠いけど、なんか眠れないような・・・。別にギャンブルにうつつを抜かしていたわけじゃないんだけど、ラスベガスと言うのはそんな「眠らない街、眠れない街」って感じのするところ。ま、あそこは大人がつかの間の白日夢をむさぼるテーマパークだもんね。

ラスベガスのマッカラン空港に到着して、登場ラウンジで待っている人たちを見回したら、ふむ、笑顔がない。み~んなくたびれた顔。そっかあ、大当たりした人はいないんだろうなあ。夢を見終わって現実に帰って行く。夢の何日間かがハッピーだったら、それはそれでいいと思うけど。

二度目のラスベガス。今回のホテルはべラジオ。踊る噴水のショーのあるところ。着いてすぐその夜のレストランを予約して、次の夜の予約をしに目当てのレストランのあるMGMグランドまで出かけるのに、ちょうど噴水の前を歩いていたら「ドドド~ン」。思わずカレシにしがみついてしまった。音楽にもよるけど、たまたまイントロの威勢のいいのにあたったらしい。いや、心臓が止まりそうなくらいびっくり。でも、まだ日があるから、あまり人は集まっていない。やっぱりライトアップした夜の方がスペクタクルだよなあ。クライマックスには水が一気に数十メートルも噴きあがって、一瞬止まったかと思うと、霧のようになってうっとりと落ちてくるのは、なんともセクシーな恍惚感・・・。

ラスベガスのホテル王スティーブ・ウィンが「向かいの競争相手(パリス)にショーを無料で提供した」と悔やんだとかで、新しく作った「ウィン」はホテルの前に人工の山を作ってしまった。もっとも、向かいのパリスに泊った義弟一家は、せっかくストリップに面した部屋があたったのに、目の前にエッフェル塔がでんと立ちふさがって、噴水ショーはよく見えなかったそうな。このエッフェル塔は実物の二分の一だという話なんだけど、やっぱりテーマパークなんだなあ。作り物っぽい感じがするけど、それもラスベガス。テーマパーク化を進めた張本人のウィンが今度はもっとエレガントな大人のリゾート化を目指しているらしい。この、常に変身しながら生きる魔法の生きものみたいなところもラスベガスの真髄かな。

ラスベガスは砂漠の中のオアシスだから、砂漠につきものの不思議な現象が起きる。その極め付きが距離感。高層ホテルがずらりと並んでいるせいか、どこへ行くにもつい「すぐそこ」という錯覚が起きる。ところが遠い。歩いても、歩いても「すぐそこ」は遠い。まさに砂漠の蜃気楼。ホテルの設計はだいだいどこも客室用エレベーターからロビーへ抜けるのにカジノの中を通らなければならないようになっているから、部屋を出て外に出るまでがこれまたやたらと遠い。そんなことを忘れていたもので、着いた午後にハイヒールのままでMGMグランドまで歩いて往復。おかげで前代未聞の靴ずれ大発生。翌日は靴を履き替えて歩いたけどすでに遅し。水ぶくれの数は8つ。夜のハイヒールでのレストランまでの往復はきつかったなあ。3日目はバンドエイドをべたべたと貼りまくってなんとかしのいだけど、踵の水ぶくれは破れてじくじく。どうもくるぶしまで炎症が起きているらしく、帰ってきてもまだびっこをひきひきの状態。っとに、極楽とんぼはしょうのないやっちゃ・・・。

それでも、連日目がくらくらするような30度近い熱気の中で、おいしいものをよく食べ、バーでよく飲み、シルクドゥソレイユのショーを観て、足の痛さも忘れて遊びモードを満喫したワタシはえらいよなあ。

一夜明けたら日常だった

10月23日。二人とも少々寝不足が続いていたから、早く寝ると意気込んでいたのに、我が家の眠りなれたベッドにもぐりこんだのは午前2時半。いつもよりは格段に早いんだけど、目が覚めてみたら午前11時半。まあ、三泊四日の旅が疲れる年になって来たのかもしれないけど、ラスベガスで買ってきた安眠の新兵器のおかげもありそう。久しぶりに良く眠った気分で目が覚めた。

もう15年ほど使ってきた安眠用のサウンドマシンが少々疲れて来たのか、ちょろちょろという湧き水のサウンドにかすかな玄関のチャイムのような音が混じるようになっていた。これでは心地よい眠りを誘うはずの脳波がかき乱されるばかり。そこでラスベガスのファッションモールで見つけたBrookstoneの店にあったのが新型のサウンドマシン。「リラックス」、「お休み」、「元気復活」みたいな感じの3種類のプログラムがあって、4つずついろんな音を出す。「お休み」で気に入ったのが「雨」。しとしと、ぴとぴと。これをベッドのそばにおいて一晩中かけておくわけ。家の中で聞く雨の音ってすご~く気持ちが安らぐから不思議。(古い機械はオフィスで使うことにした。「田舎の夕べ」なんてのもいいかなあ・・・)

ラスベガスではとうとう一度もギャンブルはしなかったけど、よく食べた。おしゃれな「おまかせ」コースのある日本食のYellowtail(べラジオ)、ランチで入ったPho(トレジャーアイランド)のベトナム料理のフォ、ニョッキがおいしいイタリア料理のFiamma(MGMグランド)、アイルランド風パブNine Fine Irishmen(ニューヨークニューヨーク)のアイリッシュシチュー、そしてラスベガス名物の「バフェ」(べラジオ)。どのホテルでもバフェは目玉。あっちのホテルのバフェ、こっちのホテルのバフェ、と食べ歩く人もいるくらい。

要するに食べ放題なんだけど、べラジオのが最高と言う評判になっているらしい。アリゾナ州あたりから来たらしい典型的なアメリカの郊外族と見える人たちが、カニの足やスモークサーモンといった、日常の食卓にはのぼらないものをおなかいっぱい食べている光景が見られる。まあ、カニの足といっても冷凍したものをアラスカから仕入れたらしいのを縦半分に割って出しているけど、塩気が強い上にいささか乾き気味で、お世辞にもおいしいとは言えない。それでもこれが目玉アイテムで、テーブルに殻を山と積み上げて一心不乱に食べている中年夫婦もいた。うん、これも非日常の楽しみなんだもんね。

ラスベガス最後の食事は空港で食べたメキシコ風の朝ごはん。典型的なボリューム過剰にはちょっぴり辟易するけど、食べきれなくてもトマトやチョリゾを使った味はけっこうおいしいと思う。早朝のことでまだ目が覚めきっていなかったらしいカレシ、30ドルちょっとの勘定に40ドルも払ってしまった。なんと30%のチップ。ふつうなら5ドルでたっぷりなのに・・・。「よく見えなかったんだよ~」と口をとんがらせるカレシ。まあ、アメリカのお札はどれも同じように見えるからしょうないよなあ。まあ、Fiammaでの予め胸のポケットに入れておいたのをど忘れして、財布を見て「クレジットカードがない!」と慌てたのに比べたら、チップを5ドル払いすぎたくらいで目くじら立てることもないか。アメリカ経済に貢献しとこ。

バンクーバーでアメリカの入国手続きを済ませたところで、やおら旅行バッグを床におろして、あっちのポケット、こっちのポケットを開けてごそごそとなにやら探し始めたカレシ。入国管理官がブースから身を乗りだして、「何やってんだ、怪しいぞ」みたいに見ていた。「ポケットが多すぎる」とは言うけどなあ。マルタの空港で同じことをやっていたら、いつの間にか自動小銃を持った警察官がそばに来て、じっと見下ろしていたっけ。ワタシが「亭主というものは」みたいな顔をしてひょいと肩をすくめて見せたらニヤニヤして行ってしまったけど、自動小銃なんて間近で見たことがないからドキンとした。カレシとの旅はある意味で珍道中になるから楽しいんだよなあ。

本の虫は金食い虫

10月24日。けっこうよく眠って、旅の疲れ?も順調に回復。一番被害のひどかったかかとの靴ずれもまだ濡れてはいるけれど、くるぶしの腫れが引いたから大事に至らず回復中かな。朝食を終えてすぐに不在通知の入っていた小包の引取りと野菜の買出し。かかとのないクログを突っかけてでかけた。

小包はイギリスはロンドンにある「Folio Society」という60年の歴史を持つ出版社からのもので、ほぼ1年分の注文本とおまけの本が詰まった段ボール箱がイギリス郵政公社の郵便袋に入っていて、口を閉めたところに大きな荷札をくくりつけてあった。まあ、イギリスの郵便袋なんてなんだかかっこいいから、捨てないでとっておこう。

Folio Societyはいろいろなジャンルの本を特注の挿絵と共に中性紙に印刷して、ハードカバーの特別装丁で出版しているけど、どっちかというとコレクター向けの本なのですごく高い。会員制で、毎年秋になると出版目録が送られて来るので、最低4冊注文して会員権を更新する。更新すると、注文した本の他に豪勢な本が何冊かとしゃれたダイアリーがおまけとして送られてくる。前に数年かけて豪華な本皮装丁の「名作百選」シリーズを買ったのがコレクター本に魅せられた始まり。皮装丁の本は開いたときに立ち上る匂いだけでもうっとりした心地になる。イギリスの大邸宅なんかにあるライブラリーを見るともうただただため息のため息。公爵さまのライブラリーの足元にも及ばないけど、いつも本に囲まれているワタシは幸せ者。カレシも時々これはというのを引っ張り出しては、通称「ライブラリー」というトイレでのんびりと読んでいる。ワタシも引退したらひねもす読書三昧なんていいかなあ・・・

ハロウィーンまで1週間。野菜を買いに行ったら、オレンジ色のかぼちゃの山。大きいすぎるなあと思いつつ店の中に入ったら「ジュニア」があった。赤ちゃんの頭くらいの大きさで、食べるんだったらこっちの方がずっとおいしい。お化けランタンを作るようなばかでかいものは水っぽくてまずいのだ。ジュニアは2個で3ドルなので4個買って来た。マジックで顔を書くくらいだったら、後で食べられるなあ。かぼちゃが出回るのは今だけだから、かぼちゃスープをどっさり作って、冬ごもりに備えなくちゃね。

世界経済のメルトダウンとかで、不況風が突風みたいに吹き始めたのだろうか、クリスマスカタログが毎日どさどさと届く。小売業界にとっては厳しいクリスマス商戦になりそうだなあ。26年前の大不況は若かった私たちにも厳しかったけど、デパートではクリスマスイブになってもレジに客の列がなかった。今年もそうなるんだろうか。経済は不況と好況を順繰りに繰り返すから「景気循環」という言葉がある。人生のどの段階で不況に遭遇するかはまったく運まかせ。生活基盤を構築中の若いときに大不況に遭ってしまうと一番きつい。老後の準備をしている時期もきつい。その点から考えたら、潤沢な年金をもらっているカレシは幸運なわけだけど、それでも長い人生で何度も不況と好況をくぐってきて今この段階で不況に出遭ったというだけの話。好況でインフレが昂進すれば年金生活は厳しくなるのだ。ある意味、景気循環は現世の「輪廻」のようなものだろう。まあ、USドルのクレジットカードも届いたし、できるところで少しは貢献しようね。

あまのじゃく経済学

10月26日。土曜日に出かけなかったからか、あまりそんな感じがしないけど、今日は日曜日。10月最後の日曜日。来週の日曜日には延々8ヵ月も続いた「夏時間」が終わる。めんどうだから12ヵ月ずっと夏時間にしてほしいんだけどなあ。それに、「夏」の間は午後5時だった日本の午前9時が標準時に戻ると午後4時になる。仕事が詰まっていたりするとこの1時間の「短縮」はすごく痛い。まあ、3月になるまでの束の間の「標準時間」なんだけど・・・

きのうからなんとなくだらんとしていたカレシ。のどが痛い、せきが出る、関節が痛い。熱を測ってみたら38度。あらまあ、風邪を引いてしまったらしい。ラスベガスで拾ってきたのか、翌日の英語教室で拾ってきたのかはわからないけど、かなり深い咳をしているなあ。去年の夏にアイルランドから激烈な風邪をおみやげに帰って来て以来だけど、ぐずりたいのをコントロールできているところはエライなあ。ふむ、ワタシも鼻のずうっと奥の方がなんだかむずむずする。どうも鼻血が出ているような感じだから、また副鼻腔炎かなあ。咳が出るのはタバコの煙が漂うカジノの中を何度も通ったせいかと思っていたんだけど・・・。

週末になってひと息ついた株式市場。月曜日はアジアから開ける。今週はどっちの方へ行くのかなあ。日本のバブルのときは株価のチャートを見て「右肩上がり」(向かい合っているから左肩じゃないのかと思ったんだけど)と呼んでいたけど、今は世界のどこも俗に言う「going south」、ひたすら南へ向かっている状態。こんなときに円高が一人歩きしていて、「日本はすごい、日本のひとり勝ち」と素直に喜んでいるボクちゃんたちもいるらしいけど、実際は日本経済が強いってわけじゃないんだよなあ。でもまあ、どうでもいいじゃん。せっかくの円高なんだから、留学でもワーホリでもいいからどんどんカナダに来て強い円をじゃんじゃん使ってよね。今がカナダ経済に貢献して「ど~だ、ニッポン人はすごいだろ~」と優越感にひたる絶好のチャンスだよ~。

お金はゼロサムゲームで天下を回る。不況のときはお金を持っている人にどんどん使ってもらえばいい。みんながお金を使わなくなってしまったら、誰もモノを作らなくなる。誰もモノを作らなくなったら、工場はいらないし、原料もいらないし、人手もいらない。もちろん、お金がなければ欲しいものを買えないことは確か。でも、住んでいる国には少なくとも国民を飢え死にさせないだけの社会福祉制度があるんだから、お金を持っている人間がいたら、ムカついていないで、煽て上げてでもそのお金を使ってもらった方が得策に思える。高級車も、ブランド品も、大邸宅や豪華マンションも、高級レストランでの食事も、何でもいいから、お金の流れが滞らないようにどんどん使ってもらえばいい。お金は使われてなんぼのもの。不況になってお金も器量もない人は「金があるからって偉そうにするな、自慢するな、(オレ/アタシを)見下すな」とうるさいかもしれないけど、そういうのは放っておけばいい。不況だからこそ、余分なお金があるなら遠慮せずにどんどん使わなくちゃ。でないと死に金になっちゃうよ。

とはいってもなあ、人間はどうしても周りを見てしまうし、見れば比べてしまうし、嫉妬深いし、おまけに欲張りときているし・・・

守護天使の掌のうちで

10月27日。10月最後の週、「夏時間」最後の週。月曜日の秋晴れのいい天気。(株式市場はどうもそうはいかないようだけど。)本格的に風邪を引いたカレシ、熱は下がったもののせきが取れないもんだからいたくご機嫌ななめ。パパにそっくりの悪態のつき方でおかしくなってくるけど、これでもご当人はぶっちぎれないようにがんばっているんだから、極楽とんぼ医院の女医さん兼看護婦さんはやさし~くにっこり。

今月末は四半期ごとの消費税の申告期限。またいつものように前回からさぼりっぱなしの帳簿処理が3ヵ月分。そんなにたくさん伝票があるわけではないけど、めんどくさいことには変わりがない。そういうときに限ってたて続けに仕事が入ってくるから、よけいにめんどくさい気分になる。しばらくごぶさたしていたところまで「お変わりありませんか」と来るから、どうなってんだろうなあ。まあ、この先どっちの方へ行くのかわからないご時世だから、仕事があるってことには感謝しなきゃ。なにしろフリーランス稼業は「no work, no money」。そういう「保証ゼロ」の稼業を20年近くもやっている間に、ドットコムバブルが膨らんでつぶれ、イラク戦争が始まり、SARS騒動がおき、円高が円安になってまた円高になり、カナダドル高になってまたアメリカドルの方が高くなり・・・地球はくるくる回っている。いちいちおたおたしたってしょうがない、怖いもへったくれもあるもんかという度胸みたいなものも付こうというもの。

もっとも、30年若かったら、そんなさもわかったような顔はしていられないだろうなあ。今から30年前は猛烈な二桁インフレで、ストが多発して賃上げも二桁。銀行の金利も二桁。毎年今頃売り出される貯蓄国債の金利はなんと年19%だった。おりしも不動産バブル。売りに出た家の前に行列ができて、買ったその場で行列の後ろの人に売ったとかいう、嘘かほんとかわからない話も聞いた。そんな過熱状態がいつまでも続くわけはなく、危ないと警鐘を鳴らす人も出てくるけど、そういうときの人間はめくらも同然。だから破綻は突如としてやってくる。

1980年代初めの不況は、そろって公務員だった私たちにとっても戦々恐々たる毎日だった。高金利のときにせっせと貯めたお金を頭金にしてバブル崩壊で暴落した家を買ったけど、公務員だからといって安泰という状況ではなかった。そんな状態でストが始まって二人とも無収入。たまったものではないと、ワタシが民間に転職して「経済基盤の多角化」。ワタシがいた職場で相当な人数がレイオフされたのはわずか半年後のことだった。(数年後には部局そのものが廃止されてしまった・・・。)転職先は日本でふくらみつつあったバブルのおかげで上司の羽振りが良かったから、秘書のワタシも割と厚遇された。その職場を見限ってフリーランスの看板を出したのは、その日本のバブルが崩壊し始めた頃・・・。

こうやって見ると、なんかいつも危ない橋が壊れる一歩手前を走って来たような感じがするなあ。でも、先の先が読めていたわけじゃないのだ。水晶玉なんか持っていないから、自分の目(経験値)で読める範囲より先はいつも五里霧中だもの。うん、ワタシにはすばらしい守護天使がついていて、宇宙のどこかでは幸運の星が瞬いているんだろう。だったらちょっとやそっとのことでへこたれることはないなあ。不平や不満を言ってもしょうがないか。明日の自分がどうなっているかわからないのに他人の一寸先が見えるわけがないから、人を羨むのも妬むのも骨折り損のくたびれもうけってことだなあ。ワタシはどうやら今日も守護天使の掌の間をのんきに飛び回っているらしい。シアワセなやっちゃなあ・・・

旅に出た~い

10月28日。おお、今日もいい天気だ。株式市場はど~んと跳ね上がって、円はすと~んと落下。なんだかだんだん見慣れてきたような感じがするけど、なんだかんだ言っても株も債券も持ってないから、ただの野次馬。明日はまた下がるんだろうなあ~と、のんきに考える。お隣のパットは株が下がって退職資金が目減りしてしまったとこぼしていた。とっくに退職してひとり暮らしだから、肩をすくめて「なんとかなるもんさ」と。そうだなあ。私たちの周りの同年代の友だちもみんなそんな感じ。たぶん、年の功ってやつかな・・・

けっこうご時世を反映するような金融関係の仕事がぽんぽんと飛び込んで来る。おいおい、不景気の予想を真に受けて、カレシの「増収」をあてにしてちょっぴりのんびりと息抜きするつもりだったんだけどなあ。今日の郵便に入っていたクルーズのちらし。北ヨーロッパ10日間なんてのがあって、二人で「いいなあ~」。デンマークのコペンハーゲンに始まって、スウェーデンやエストニア、ポーランド、ドイツ、ロシアのセントペテルブルグ。地中海のクルーズもいいけど、北欧は魅力的だなあ。往復の飛行機代を入れても二人で1万ドルくらい。そのくらいは何とかなるだろうなあ。だけど、スケジュールは来年の8月。2月に南半球への大旅行があるから、う~ん、しんどいね。ま、次の機会もあるだろうけど。

おりしも所属する協会から2011年の会議はシアトルかロサンゼルスに絞られてきたという発表。ふむ、ハワイじゃないのかあ。まあ、シアトルなら車で行けるから便利だよね。来年の秋はニューヨークだから、トロントでも遊べるかなあ。2010年は、春の会議は日本の宮崎。ちょうどワタシの誕生日。仲良しの友達を誘って、おばさんトリオで盛大に温泉にでも行けるかなあ。2011年の秋の会議はボストンということで、念願のニューイングランドは今から楽しみ。ニューイングランドからはかなりの「お雇い外人」が北海道開拓に来ていたから、いわば北海道文化のルーツのひとつのような親近感がある。いちどでいいから絶対に行ってみたい土地なのだ。あらまあ、これではいつまでたってもバルト海のクルーズなんて行けそうにないなあ・・・。

旅の話のときだけかな、もうちょっと若かったらと思うのは。ヨーロッパを歩いてみたかった。北米大陸を車で走破してみたかった。自ら選んだ「ワタシの国」を、西の端から東の端までつぶさに見て歩きたかった。もうちょっと若かったらなあ。だけど、道を歩いて近づいてくる森は美しいけど、その全容はわからない。森をぶじに通り抜けて、振り返って見て、やっとその大きさがわかるような気がする。若さだけでは見ることができないものも、きっとあるはず。なんだか、むしょうに旅に出たい気がして来た・・・。

ヒーロー君たちは今日も

10月29日。今日はちょっとばかり曇り空。この分だとハロウィンは雨かなあ。裏のワイリー家のいたずら盛り小僧のフィンレーとラクランが楽しみにしているハロウィン。窓にいかにも幼い子供らしいかぼちゃの絵を貼って、庭にはパパの作品らしいでっかいお化けかぼちゃと幽霊の飾り。ハロウィンが来て、いよいよ夏時間の終わり。一気に年の瀬に突進だなあ。

カレシの風邪は咳が落ち着いてきたと思ったら今度は鼻づまりだそうで、首がいたい、背中が凝る、胸の辺りが痛いと、まあ、細かな実況中継。だけど、見たところは元気がよさそう。うん、ぐちぐち言っていれば気分がよくなるらしい。元々ネガティブな人にはそれが一番の薬なのかもしれないなあ。もっともいつまでも続くとさすがのワタシも少々イラッチになってくるんだけど、ま、ポジティブを押しつけてもネガティブな人にはあんまり効果がないみたい。どうもネガティブな人はネガティブにぐちぐち、ぐだぐだやっている方がハッピーらしいからおもしろい。うん、ここは一発ユーモアでぼわ~んとかわしちゃお・・・

なんだかやたらと「ごぶさた」筋からの引き合いが続いて、おかげで11月はもう半分埋まってしまった。こっちはあまりねじり鉢巻モード歓迎とは言いがたいのに、それでも、商売っ気を出してOKを出しては自分の首を絞めているんだから何をかいわんや。ポジティブもすぎれば何とやら。おまけに日本語訳をやってみる気があるかなんていわれて、「考えてみます」。考えるもへったくれもあるのかなあ。ブログを読み返してみたかぎりでは、日本語がどうもという気がする。なにしろ、饒舌にして、冗長。まあ、原稿というものがあるから、むやみに長ったらしくはならないんだけど・・・。よく寝て考えてみよう。

アメリカの大統領選まであと1週間。カナダの連邦総選挙が終わってまだ2週間で、バンクーバーでは市長・市議会選挙まであと2週間。州議会補欠選挙もやっているけど、幸いどこかよその選挙区の話。もう、今年は選挙疲れだよなあ。カレシはテレビのニュースを相手に「論戦」。このあたりはパパにそっくりなんだけど、パパはむかっ腹を立てて毒づくだけなのに対して、カレシは「理論武装」して毒づいているからおもしろい。まあ、野次馬とんぼの観察によれば、世の男と言う男はみんなあらゆる問題を快刀乱麻に解決する策を持っているのに、政治家だけはなぜかまったくの無為無策なのもので、歯がゆくてイライラ。子供の頃にヒーローものの漫画を読みすぎたんじゃないのかなあ。ほんとに男っておもしろい動物・・・

素手で世界を破滅から救えるってのに、全国津々浦々のヒーロー君たちはケープをひるがえして打って出るでもなく、きっと今日もテレビの前でうつらうつら。おかげで、世界は今日もあっちこっちで勃発する問題に、もぐら叩きのごとく応戦にてんやわんや。んっとにしょうがないなあ。ここらでヒロインが総結集したらいいかもしれないけど、どっこい世界のヒロインたちはヒーローのケープの洗濯とタイツの繕いでそんな暇がないか。でなければ、家事と育児の分担をめぐって家庭戦線は風雲急とかで、千年一日のごとく、今日も時は流れる・・・。

『TIME』誌に金融危機が結婚にどんな影響をもたらすかという記事があった。ストレスに遭遇したとき、女はそれを語ることで対処するけど、男はひたすら逃避するんだそうで、浮気が増えるらしい。なるほど。だけど、心配はご無用。不況のなると男は「ぽっちゃり型」の女性にひかれるの対して、女はストレスになって大食いする傾向があるそうで、結果として互いの欲求がうまく一致するようになるから、めでたし、めでたし。やがてみんな夫婦円満で、経済危機と共に離婚の危機も去って・・・てなことになるとしたら、人間て、実にうま~くできているもんだと思うけど、はて・・・?

魔女の心のうち

10月30日。うひゃあ、月末が目の前。外はちょっぴり暗い雨模様。ま、秋だからしょうがないんだけど。午後のうちに納期の仕事を片付けて、夕食後は経理係の仕事。あしたは四半期の消費税の納付申告の期限だけど、帳簿の方は前回の6月末からまったくの手付かず。ま、これも相変わらずのことだから、あわてることもないか・・・。

カレシの風邪は順調に回復しているはずなのに、な~んとなく不機嫌。どうやら明日のお昼にある元の職場の仲間とのランチ/コーヒーの集まりにOKしたらしい。行くといったらそれで決定だろうと思うけど、どっこいほんとうのところはあまり行きたくないらしい。行きたくもないのに「イエス」と言っておいてぐだぐだと機嫌が悪くなるのがカレシだから、知らん顔で放っておいたら「何か機嫌でも悪いの」と来たもんだ。やれやれ、自分の不機嫌さを人に反映して、その人のせいで自分が不機嫌なのだという方へ誘導しようとするから始末が悪い。ま、カレシの場合は、メロディにも何もなっていない口笛を吹き出すと「赤信号」。さんざんいたい思いをしてそのあたりを会得したワタシは、「え、別に機嫌は悪くないけどなあ。月末でちょっときりきり舞いはしてるけど、いつものことだしぃ・・・」と、おとぼけ。

いやななら「ノー」と言えばいいだろうにと思うけど、カレシは他人にはすなおに「ノー」と言えない。はっきりノーといって嫌われたくないらしい。嫌われたくないというよりは、嫌われるのが怖いんだろうと思う。端的に言うなら、小町に書き込まれる切々とした悩みをカレシに重ねてみると、なんだかこの人は生まれるべきところを間違ったんじゃないかと思うほど日本人的な一面でもある。だからといって、日本で暮らしたって「水を得た魚」のようにはなれそうにない。そういうあたりは日本の挫折感を嫌ってカナダに来たのに、その「水」になじめないでイライラしているポストバブルっ子にも似ていなくはない。何もかも捨ててでも夢の国ニッポンへ行きたがっていたときに、「じゃ、行きなさい」と送り出していたら、今頃はどんなことになっているだろうと考えることが今でもときどきある。

もしも、あのとき・・・もしも。いや、東京でのカレシはきっと半年ももたなかっただろう。いくら白人はモテるといっても、当時ごまんといたらしい若い「ジャパ行き君」と50代半ばを過ぎようというおじさんがまともに競争できるはずがないでしょうが。だけども、だけども、今でも心のどこか隅っこで、あのときに好きなようにさせてやればよかったかなという気持があって、それは決して「やさしさ」なんかではない。むしろ、異国で夢破れて悶々とする姿に「ざまあみろ」と言ってやりたかった、我ながら怖くなるくらいのイジワルな気持なのだ。まあ、人の性格は治らないというから、カレシの「虫」がまたぞろむずむずし始めたら、そのときはきっと迷わず「いってらっしゃ~い。さいなら~」ってことになるかもしれないなあ。

と、あらまあ、なんだかこわ~いことを考えているワタシ。だって、魔女の出番のハロウィンなんだもん・・・

雨のハロウィン

10月31日。目覚ましが10時45分に鳴り出して、10月最後の日が始まった。朝から雨・・・

帳簿の整理が9月末日まで終わったのが真夜中のちょっと前。ちょっぴり気取って言うと、第3四半期は国内からの受注がゼロだったため、消費税(GST)の徴収額もゼロ。一方、インターネット接続料を始め、電話料金など毎月発生する経費について支払ったGSTは合計して約39ドルであった。申告書に収入、徴収税額(ゼロ)、経費関連の控除額(ITC)の額を書き込んで、後はマイナスがつく小計以外はゼロの羅列。最後に還付請求の欄に約39ドルの金額を書き込んで、申告準備完了。そこでちょうど真夜中。

ネット申告ができるから便利~と、思いきや、なんと24時間受付じゃないのだ。今どきネットでそんなのないでしょうが。そうはいっても、歳入庁のサイトには「運営時間を確認してください」なんて書いてある。クリックしてみたら、太平洋時間帯は「月曜日から土曜日までは午前2時30分から午後11時」となっている。てことは、午後11時から午前2時30分までの間はサイトをシャットダウンしちゃうってことなんだ。お役所仕事にもいろいろあるけど、1日に20時間30分しか稼動しない税務署サイトなんて、マジぃ?あきれながらも「午前2時32分」にログオンして申告。確認番号が表示されて、2分で完了。納付するにしたっていつもごく小額なんだから1年に1度にしてくれれば楽なのになあ。(でも、そうなったらなったで経理係のワタシちゃんは1年に1度、きっと徹夜で帳簿整理をやることになるんだろうなけど・・・。)

目覚ましで早起きして、朝食もそこそこにカレシとモールへ。元同僚の親睦会に出るカレシをレストランの外において、道路向かいの銀行へ。デビットカードをスワイプして暗証番号を入力すると、テラーの画面に口座情報が表示される。そこで、まずラスベガスで使い残してきた380ドルをUSドルの口座に入れ、翻訳料の小切手を貯蓄口座に入れ、小切手口座からキャッシュを出す。「他にご用は」と聞くから、「口座を全部回ったから今日はおしまい」と言ったら、3件分をまとめた長いレシートをプリントしている間に、おもちゃのバケツの中からハロウィンのミニチョコを1個選ばせてくれた。となりの窓口のテラーは魔女のコスチュームを着ていたけど、かわいくてちっとも怖くない。それにしても、ハロウィンが子供の伝統行事から大人の「お遊び」イベントになったのはいつからなんだろうなあ。

モールに戻ってクリニークのカウンターで前回買い忘れたローションを買う。チュイが「ほんとは75ドル以上だけど」と言いながら、銀色のちょっとかっこいいトートバッグをくれた。11月から2ヶ月もの休暇をとって、ふるさとのベトナムへ行くんだそうな。わあ、いいなあ。トートバッグの取っ手にぶら下がっている小さなポーチに携帯を入れて、カードショップへ。カレシは「20分くらいで終わる」といっていたのに、うんともすんとも言ってこない。まあ、いやいやながらでも、行ってしまえばいつもちゃんと楽しんでいるわけで、だったらぐちぐち言わずに最初からすなおに行けばいいと思うんだけど、そこんところが・・・。

クリスマスカードを二箱買って、ワタシ書箱の郵便物を引き取って、バッグが重くなったから、車においてくることにした。雨は本降り。車のトランクにバッグを入れて、電球がポッ。「トランクを開けるキーがあるなら、モールの駐車場へ車を移せるでしょうが」と。路上駐車になったのはそもそもがカレシのせっかちのせい。おかげでこっちはずぶ濡れとんぼ。カレシに知らせようと携帯を出してみたら、20分くらいのはずがもう1時間以上経っている。あはは、男同士の「お茶」だっておしゃべりは楽しいものなんだよね。それからまた30分近く経ったところで「終わったよ」と電話してきた。スーパーで落ち合ったカレシはご機嫌のいいこと。買い物をして家に帰ったら、やおら脚立を持ち出して来て、たまった落ち葉で雨水が溢れているポーチの屋根の雨どいの清掃。着替えもせずに始めたもので、新品のジーンズが・・・

ハロウィンの夜。雨だというのに家の外ではやたらと花火やかんしゃく玉の炸裂音がしている。去年の今ごろは空港で飛行機が搭乗ブリッジから離れなくなって、「誰かがトリートを忘れたから空港の魔女にいたずらされたんだよ~」なんてしゃれていたっけなあ。この週末はインド人の「ディワリ」のお祭だから、花火は続くんだろうなあ。