風速30メートル
12月17日。あ~あ、何だか知らないけど風邪もよう。日曜日の夜になって、別に飲みすぎたわけでも食べ過ぎたわけでもないのに、な~んか胃がむかつきだした。それからな~んとなく寒気。クリスマスカードを書き終わっていなかったけど、もやもやとした気分でさっぱり進まず、あきらめて早寝。10時間も寝たのに目が覚めてもまだ自分がそこにいない感じ。まずいなあと思って起きたとたんに今度はおなかを下して、朝食の最中にちょっと咳き込んだら、ああああ。慌ててバスルームに駆け込んだけど、ひと晩たっても胃の中にあんなに残っているとは思わなかった。
カレシが入れてくれた薄い紅茶だけの朝食の後で、銀行、郵便局、そして青果屋と回る。クリスマス前1週間だというのに郵便局には行列が見当たらない。十年一昔の前は小包の山やクリスマスカードの束を抱えた人たちで長蛇の列だったのに、ずいぶん世の中も変わったと思ったけど、たぶん世の中が変わったというよりはこの地域の住人の構成が変わったせいだろう。今はおそらくインド系と中国系が半数以上で、あまりクリスマスカードを送らないのかもしれないし、だからぎりぎりになって郵便局に駆け込む必要もないのだろう。おかげで待たずにすんで楽ちん。来年はもうちょっと早めに始めようと、例年のごとく「決意」して、青果屋へ。こっちはけっこう混んでいた。ふむ、やっぱり食べる方が先だもんね。
こんなときの夕食はとろっとしたリゾットが一番。今夜は三色ピーマン。もうちょっときりっと決まる味が何か欲しいなあと、戸棚を探してスライスした黒オリーブの缶を見つけた。(ふらふらしながらまだそんなことを考えている自分がおかしかった。)結果は上々。ストックと黒オリーブの薄い塩味だけで、後は塩は不要。おなかにやさしいほかほかリゾットのできあがり。カレシは「うん、おいしいよ」とお皿いっぱい食べた。
朝から空っぽだったおなかがいっぱいになったら、今度はモーレツな眠気。ベースメントのソファにころんと横になって2時間ほど寝たら、体中がカッカ。熱を測ったら38.3度。こんなに熱を出したのって久しぶり。うわっと熱が出てしまったら、たいていあとは早い。クリスマスツリーを飾って、コンサートに行って、料理の準備・・・まあ、お正月の準備並みに忙しいこの季節。どうせ風邪を引くなら、今のうちに引いておいた方がいいってことだよね。この風邪も風速30メートルで「早送り」してしまおうっと。
だけど、これも「よる年波」なのかなあなんて考えてまたおかしくなる。あの徹夜と超長時間の後の体調の乱れががまだ尾を引いているのかもしれない。年明けの1月にはもう仕事が並び始めたけど、2008年は「徹夜撲滅の年」にするぞ。あ、予定を書き込もうにも、まだ来年のカレンダーも買っていない・・・
さあクリスマスだ
12月18日。たっぷりとよく寝て、起きてみたら、あれ、風邪はどこ?胃腸の具合もほぼ普通、筋肉痛もどこへやら、熱も普通。ほんとに「風邪」だったのか。そういえば喉の痛みも風邪特有の咳もなかったっけ?ふ~ん、あれはいったい何だったんだ・・・?
何だったにしろ、ほんとに風速30メートルで吹きぬけてくれて助かった。今日こそはクリスマスツリーを出さなくちゃ。毎年1度のこととはいえ、これが大仕事。我が家の玄関はベースメントと1階の中間の高さにあるので、玄関の下の空間が納戸になっている。でも、半端な高さなもんで、チビの私でもちょっと身をかがめないと頭がつかえてしまうし、カレシにいたっては90度お辞儀になって、1分もしないうちに腰が痛いと言い出す。その納戸の奥の奥の床に置いてあるのがクリスマスツリーの箱。そこに到達するためには、入口から奥までごちゃごちゃと積んであるガラクタをカレシとバケツリレー式で取り出して、次に飾りが入った2つの段ボール箱を運び出して、それから大きな箱からよっこらしょとツリーを引っぱり出し、最後にガラクタを戻す、という年末大掃除のようなことになる。
我が家のツリーは高さ180センチ強の人工のものだけど、一瞬本物の木かと思ってしまうくらい良くできている。買ったときに「ライフタイム(寿命中)保証」となっていたけど、ツリーの寿命なのか、メーカーの寿命なのか。ツリーの方はもう十何年もまだ若木のように元気だけど、たぶんメーカーの方はとっくに「寿命」が過ぎて(倒産して)いるだろうなあ。ツリーをスタンドに立てて、枝を広げると、クリスマスの気分がしてくる。3本のライトをつないで点検。無事点灯。なぜか上、中、下と接続する順序が決まっていて、うっかり入れ替わると点灯してくれない。「上」のライトをツリーに巻くには踏み台を上がったり、下りたりのエアロビクス。
納戸から出した不用の段ボール箱を解体していたカレシは、勢いに乗って家中の空き段ボール箱を集め始めた。おお、まさに瓢箪から駒とばかりにオフィスのあちこちに貯まりに貯まっていた空き箱をかき集めてあげた。カレシはみんなナイフで解体してリサイクル場へ。近所の新築工事現場では雨模様の中で土台のコンクリート打ちの最中。セメントミキサーの轟音はコンプレッサよりもすごい。ははあ、さてはうるさいからひと息つきに逃げ出したなあ。まあ、動機はともあれ、たまった段ボールの廃棄処理ができて何より。ところが、やけに時間がかかっているなと思ったら、段ボールと一緒にユティリティナイフを捨ててしまって、慌てて新しいのを買ってきたんだそうだ。「する~っと落ちていってしまったんだ」と。ありゃ・・・
夕食後にいよいよツリーの飾りつけ。軽く200個以上はありそうなのをずらりとテーブルに並べる。今年の新顔はアイルランドで買ったアイリッシュジグを踊るレプレコンとケルト模様のボール。カレシは横目でテレビのホッケーの試合を見ながら、軽い飾りを担当し、私はちょっと工夫がいる重い飾りを担当。人工のツリーは枝を曲げられるから便利なのだ。カレシは「かけるところがなくなってきた」とうろうろ。だけど、いつもなら一人で2時間はかかる作業も二人なら半分の時間。仕上げはツリーのてっぺんにエンジェルをのせる儀式(?)。お、今年もきれいにできたじゃないの。後はサンタを待つばかり?
きょうのはいらいと
12月19日。今日はいつも掃除屋留守番に来てくれるシーラをディナーに呼んである。雨の中を野菜を買出しに行って、帰ってきたら青空。変な天気だけど、来週もずっとこんな調子らしい。ホワイトクリスマスの可能性はどうも限りなくゼロに近そう。東部は豪雪でてんやわんやらしいから、それに比べたらバンクーバーのずぶぬれクリスマスはめんどうがなくていいかもしれない。
のんびりしているのにクリスマス前のラッシュ仕事が入ってくる。「前にやっていただいた件の続きです」といわれれば、「入らないんですが」とはいいにくい。先方もそれを知っていて押してくる。クライアントも長く付き合っているとお互いのスタイルがわかってくるからおもしろい。わかっていても極楽とんぼは「う~ん」と言いながら腕をまくってしまう。困ったもんだ。それでも今日は休みということにして、午後早めにムサカを作り始めた。シーラが到着して、カレシはまずバンクーバー随一と私が太鼓判を押すマティニを作ってサービス。それからキッチンでおしゃべりしながらギリシャ風サラダを作り、ダイニングテーブルに移って、シーラの手土産のワインで乾杯。ディナーに招待したのは初めてだけど、シーラとはもう長いつきあいだし、カレシとは同い年だから、いろんなことで話が弾む。イギリスで生まれて何かと苦労の多い人生だったらしいけど、根っからハッピーな性格で、私にとっても心強いお姉さまみたいな人だ。楽しい時間があっという間に時間が過ぎてしまった。
明日はヘアにハイライトを入れに行く日。これ、日本では「メッシュ」というらしいと聞いて調べてみたけど、どうも同じものではないような気がする。まあ、掲示板で「メッシュを入れた女がいて」と書いてあったのを見たときは、思わずセットした髪型が崩れないように頭全体に被せていたネットのことを想像してしまった。メッシュというのは地の色と違う色を筋のように入れるテクニックらしいけど、だったらなんでストリークとかストライプとかじゃないのかな。よくわからない。ハイライトも筋のようにいれるんだけど、だいだいは地より明るい色で、筋も幅が広いからメッシュとは違うようだ。まあ、どっちでもいいんだけど。
私はワインレッドを入れてもらっている。カレシが「もっと入れてもいいんじゃないの」というくらいの量だけど、色合いはすごく気に入っている。日本では「いい年をして」といわれる年なので、当然白いものが増えている。そこでまず全体を黒くカラーリングして、その後でハイライトを入れる。そうしないと三色染めになってしまうわけで、私は気にならないないんだけど、スタイリストのアンナが「ダメダメダメ」。いつまでも美しくあることはけっこうな大仕事なのだ、うん。
カレシはネイバーフッドハウスのコンピュータをチェックしに行くという。年が明けたら、生徒さんを3人ずつのグループに分けて、英語教室の後にインターネットとEメールの使い方を手ほどきするんだそうな。ネットが使えるようになれば、カレシの英語レッスンのサイトを利用して宿題を出せると目論んでいるようだ。しばらくずぼらをして更新していないらしいけど、このサイトはかなりアクセスがあるという。最初の頃はバンクーバー案内なんてよけいなページを作ってメールを受けられるようにしていたけど、日本女性狙いで悪名高い男が同じようなサイトで同じことやっているといったら、誤解を招きたくないからと削除してしまった。誰に誤解されるのが心配だったのかは別に聞かなかったけども。ふむ、あの悪名高かった男は未だに同じことをやっているんだろうか。いくらなんでも、もう39才で通りっこないだろうけどなあ・・・
エレガントな夕べ
12月21日。夜から雪模様という予報で、あれあれと思っていたら、昼から白っぽい雨粒が落ちてくる。今日は楽しみにしている恒例の「四季」を聞きに行く日。雪なんて降ってもらっては困るんだけどなあ。まあ、そんな願いが通じたのかどうか、一応雨は止んでくれた。でも、カレシは朝からまたおなかの調子が悪いと、トイレに篭ってばかり。トイレを「ライブラリー」としゃれ込んで、何か読むものを持って入るのはいつものことだけど、でも大丈夫かな。ダウンタウンでするはずだった友だちとの久々のランチもキャンセル。今夜の夕食はまたおなかにやさしいものを考えなくちゃね。
きのうはいつもより派手めにハイライトを入れてもらってきた。「うちのツレアイがもっと入れたらいいよと言うから、盛大に入れちゃって」と頼んだ。確かに、自分の頭は鏡でしか見えないけど、カレシはいやでも朝から晩まで見てるわけだしね。外は毎日が曇り空の冬。クリスマスシーズンでもあることだし、ここはひとつ「亭主の好きな赤烏帽子」でうわ~っと明るくしてしまおう。実際に仕上がってみたら、自分の顔まで明るく見えて、心も軽くなって、うふふ。
軽めの夕食を済ませて、お出かけの準備。一目惚れして買ったミッドナイトブルーのドレス。藍色の無地のドレスの上に、同じ色のビーズとシークインを散らした藍色の花のアップリケを右肩から左の腰まであしらった同じ色のドレスを重ねてある。どちらもジョーゼットだから軽くて、フレアの裾が両サイドだけ長くなっているところがおもしろい。なんだかチャールストンを踊れてしまいそうな楽しいドレス。おめかしすると背筋もすっきり伸びて気分がいい。「その年でそういうドレスが着れてラッキーだね。でっぱりまくりのおばさんが多いのにさ」とカレシ。おいおい、失礼しちゃうなあ。この年の女は誰だってでっぱりがあるのよ。そのでっぱりをぐいっと引っ込めて、ずっと引っ込めたままでいられるためにふだんから鍛えているんじゃない。逆説的だけど、おとなのエレガンスは何よりもまず筋力があってこそなのだ。(男もだよ・・・)
休憩時間に運動がてらごった返すロビーを(背中を伸ばして)しゃなりしゃなりとそぞろ歩きをしていたら、年配の男性からにこやかに「グッドイブニング」と声をかけられた。でも、知らない人。とっさにとっておきのスマイルで「グッドイブニング」と返して通り過ぎたけど、あれは誰だったんだろうなあ。人違いだったのかもしれないけど、不思議。まあ、クラシックコンサートならではのちょっぴりエレガントなひとコマだったかも。
コンサートマスターがリードする「四季」はパワフルの一言に尽きる。ずんぐりしていてアイルランドで羊を追いかけていたら絵になりそうな感じの人だけど、ニューファウンドランドの人だから早くからケルト音楽のフィドルに馴染んできたはずで、それが大地を踏みしめるように弾くパワーの源なのだろう。音がソフトになると今度はついこちらが全身を緊張させて身を乗り出してしまう。「四季」はやっぱり「夏」が一番好きだ。中でも怒涛のような第3楽章はたまらない。押し流されてたまるものかと、どこかにしがみついていたはずなのに、最後はすっと手を離して素直に怒涛にのみ込まれてしまう。そのときの恍惚とした何ともいえない解放感ときたら!ああぁぁ・・・
キティちゃんに光あれ
12月22日。起きてみたら地面はちょっとだけで雪景色だけど、雨と風。天気予報でも、相当な低気圧が団子になって控えている。いつからクリスマスは嵐のシーズンになったんだろう。「立冬」というものがない西洋暦では、冬至が公式に冬の始まり。だけど、この日からどんどん日が長くなるんだから、冬の終わりでもいいような気がする。実際のところ、ろうそくやイルミネーションで「光」を演出するクリスマスは、冬至の到来を祝ったゲルマン人、ケルト人の祭にさかのぼる。冬至を境に「蘇る太陽の光」と、東方の三賢者をイエスのもとに導いた「ベツレヘムの星」とがどこかで重なったのだろう。人間にとって「光」の持つ意味は深い。夜の「闇」と対比するほどにその意味合いが浮かび上がってくる。
日本では、内閣と国会でUFOが襲来したらどうするなんてことを議論しているらしい。え、エイプリルフールじゃあるまいしと思ったら、どうも本気らしい。いい年をしたオトナがUFOの存在を信じるとか信じないとか、おまけに政府の公式見解とやらが出たというもので、おなかを抱えて笑った。平和(ボケ)な国はいいなあ。年金大問題も「偽」や「嘘」に象徴される社会も、北朝鮮もアメリカも中国も、いや~なものみんな、イタイのイタイの飛んで行け!ひょっとしたら、と思ってロイターズの「Oddly Enough(ありえな~いニュース)」のページを見たら、やっぱり出ちゃってる。「今週、日本の政治家は空飛ぶ円盤に関する議論で多忙でした」とか「防衛大臣はゴジラが暴れだしたら軍隊を出動させると約束しました」とか。内外に国の未来に関わる難問が山積しているというのに、政府と議会が熱心にUFO論争って、やっぱり平和ボケ・・・
掲示板に「大人の女性にハローキティがウケる理由は?」というトピックがあった。こっちも前からどうしてなんだろうと思っていた。とにかく「かわいいもの」好きで何にでも「ちゃん」をつけたがる幼児的な習性なのかなと思っていたけど、親子三代で「キティラー」なんて何となくカルトのようでもある。でも、カルト性では息の長い人気の理由は説明できそうにないなあと思っていたら、「無表情だから」、「口がないから」という書き込みがあって、ギョッとした。子供向けのキャラクターとしてのメーカーなりの計算があったらしいけど、それがオトナにアピールしたということらしい。つまり、自分の感情に逆らってこないし、向こう側の感情に対応しなくてもいいし、口がないから愚痴も言わなければ自慢話もしない。自分の感情だけを従順に投射させてくれるキティちゃんに、大人でいること(あるいは大人を演じること)に疲れた心が癒されるというわけかなあ。
何だかどほーんとあいた真っ暗な闇をのぞいたような気がする。今、日本では寺社仏閣から観光名所まで、猫も杓子もライトアップ、ライトアップらしい。陰影を愛でた日本文化はどこへ行ってしまったんだと思うけど、あんがい、この闇があまりにも暗いから、もう障子を通した柔らかな光ではどうにもならなくなってしまって、ああいうキンキラの「ライトアップ」ブームになったんだろうか。つまりは、キティちゃん人気とライトアップがどっかでつながっているということなのかなあ。冬至の今日は真っ暗な闇夜が一番長い日。でも、明日からまぶしい太陽の光がどんどん増えて行く。キティちゃんにも光あれ・・・
リスペクトはニッポン語
12月23日。静かな、静かな日曜日。そっかぁ、月曜日の日本はまたまた三連休。おかげでクリスマス前の飛び込みはこれっきりになりそう。やれやれと思いつつ、だらだらと仕事。このプロジェクト、始まったのはいったいいつだったっけ。春だったかな。「例の件です~」と、まとめて入ってきたり、パラパラと入ってきたり。EXCELとPOWERPOINTが多いからダレてしまう。私の日本語もこの頃はかなり怪しいと思うときがあるんだけど、若い人たちなんだろうか、この人たちの日本語はやっぱりヘンだ。簡潔を旨とするべきPOWERPOINTのスライドにばっかていねいな敬語が並んだと思うと、今どきはやりのら抜きが出てくる。TPOもへったくれもあったもんじゃない。
若者言葉というのはどこにでもある現象だけど、今の日本語はとにかく空っぽの丁寧語、敬語の羅列ではないかとさえ思て、背筋がむずむずして来る。日本語は話し手の「気持」を相手に伝える言語だったはずで、だからTPOの難しい敬語がある。でも、なんだかちがうんだよなあ。チャラチャラしたおギャルに「~させていただいていますぅ」なんて言われても、さっぱりお育ちが良さそうには見えない。要するに、相手に対する敬いも何も微塵も感じることなく、ただ「セレブ」や「お嬢様」になったつもりなんだろうけど、つもりがもろに露見しちゃうところが滑稽なのだ。わかってもいない敬語を使っても、映画のセットと同じようにつっかい棒した表だけのチャチな「豪華さ」でしかないんだけどなあ。
誰かが「たかがファッションに目くじらを立てることもない」といっていた。言葉さえもファッション感覚でまとってしまうわけかあ。かっこさえよければ意味なんかどうでもいいってことか。すごい文化だと思う。言霊というでしょうが。心のない言葉はどんなにていねいでも虚ろにしか響かないんだけどなあ。芸能界から出たらしい「リスペクト」という言葉もしかり。どんな意味で使っているのかはよくわからないけど、「日本語ではいいにくいから」、「日本語にぴったりの言葉がないから」と理由はいろいろ。日本語じゃあ「尊敬している」なんて照れくさくて言えないよ、という心理は何なんだろう。これもよくわからない。
英語のRESPECTには「尊敬する」という意味もあれば、「尊重する」という意味もある。人の権利を妨げないという意味もある。また、そっちのいうことは「リスペクト」するけど、こっちにはこっちの考えがあるの、という意味にも使う。つまり、多様性を肯定しつつ自分の独自性を保つ言葉だ。多様性を肯定することは、異なるものも認容することにほかならない。日本だったら「空気を読めないやつ」という烙印を押されるかもしれない。まあ、疲れる気遣いがいらない「和」には安らぎがあるかもしれないけども、多様な自己主張がうまくまとまって形成される「和」の方がずっと強いと思うけどなあ。
ま、ご当人たちはそれでいいんだろうから、とやかくいうこともないか。まかり間違っても、海外向けに翻訳される原稿を書くような「お仕事」にだけは、うっかり迷い込んでしまったわ~なんてことだけはないように祈っておくか。まずはありないだろうけれども、リスペクトしきれないってこともあるわけで・・・
クリスマスイブ
12月24日。まぶしいくらいのクリスマスイブの朝。ちょうど起き出して、さて朝食というところへシーラとジェシーが今年最後の掃除にやってきた。「あら、間に合って起きたのね」とシーラ。シーラは我が家の鍵を持っているし、セキュリティのコードもちゃんと専用のを設定してあるもので、「寝坊したら掃除機でベッドから吸い出してしまうわよぉ」と脅かされている。私たちがキッチンでのんきに朝食をとっている間に、ジェシーはオフィス、シーラは二階のバスルーム。終わったあとはクリスマスボーナスの入ったカードを渡して、ハッピーニューイヤー。また来年もよろしくね。
ダラダラやっていた仕事は今日午後が納期。「東京標準時」の時計を睨みながら猛ダッシュで仕事をしていると、クリスマスのデザートにクレムブリュレを作るというカレシがいろいろと質問をしに下りてくる。いつもと違うレシピを使っているらしいけど、んっとに今やらなくちゃダメなの?しまいにカリカリしながら、それでも午後3時半(日本時間午前8時半)に納品完了。イェーイ、いよいよクリスマス休みだ!
なぜか今年のクリスマスイブのスペシャルメニューは、ちらし寿司にマグロの刺身、エビ入りの茶碗蒸し。日本食はロジスティクスが大変。茶碗蒸しはありあわせのティーカップで作る。タマゴ3にだし1ということだけはずっと前に大失敗をして以来よく覚えているから、まず計量カップにタマゴをといて、分量を計って、ええと、これが3ならだしの量は・・・?だしを作って計量スプーンで加える。こんなへっぴり腰を母が見たらきっと笑い転げてしまうだろうなあ。(であがった茶碗蒸しはちょっと硬め・・・ふ~ん。)
次に、刺身のツマはどうしよう?大根はあるんだけど、かつら向きなんてできっこない。それで思いついたのがカルパッチョ風。うす~く、うす~くスライスしてちょっと塩をふる。なんかもの足りないもので、ビーツもうす~くスライスして、ちょっと酢で味付け。クリスマスカラーは赤と緑。ビーツが赤なら、緑はほうれん草といこうか。軽くお浸しにして、真ん中に細く切った赤と黄色のピーマンを入れて、のり巻きにしてしまった。四角の白いお皿に厚切りのマグロといっしょに盛り付けて、隅に茶碗蒸しのティーカップをおいたら、おお、彩り鮮やかなしゃれたディナーじゃないの。カニと菊の花のちらし寿司は仲良しの友だちからのプレゼント。カレシがいい音を立ててシャンペンを開けた。クリスマスイブにかんぱ~い。
ディナーでおなかがいっぱいになって、真夜中のランチはキャンセル。いよいよ2日の休み。いや、3日は取れるかも・・・なんてとらぬ狸の皮算用していたら、仕事納めまでにどうしてもという狸が飛び込んで来てしまった。けっこう大きいからクリスマスの翌日ボクシングデイの休みは返上ということになる。まあ、ノーと言えばいいのにいわないからこうなるんだけど、カレシは「そ~ら、ボクがいった通りだろ」と高笑い。私はあやうく忘れるところだったバゲット作りにかかり、カレシは毎年どっかのチャンネルが放送するアラステア・シム主演の『クリスマスキャロル』。あんまりコマーシャルばっかりなのでぶつぶつ言っていると思ったら、「DVDを買うからいいや」とテレビを切ってしまった。一日だけになってしまったクリスマス休みの明日・・・腕まくりして、よく飲んで、よく食べよっと。
ちょっぴり白いクリスマス
12月25日。クリスマス。朝から嵐模様だったのが、午後になって雪が混じりだした。そのうちに地面も屋根もうっすらと雪化粧。やった~。ほんのおしるしだけどもホワイトクリスマス。何度も窓の外をのぞいては気分が弾む。やっぱりクリスマスは北国のお祭なのかな。
朝食を終わって、二人から二人へのプレゼントを開ける。といっても中身が何は初めからわかっていたんだけど、それでもクリスマスプレゼントだから開けないでツリーの下においてあった。ひとつはスライサー。スーパーのデリでハムやベーコンをスライスしてくれるあの機械を小型にしたタイプ。レストランでも使えるように設計したというだけあって、デパートで売っているチャチなプラスチックのブランド品とは比べものにならないくらいがっちりした作り。値段もそれなりに張るけれど、最近はどうも「安ければいいというもんじゃないなあ」と感じることが多いのも事実。高いから良いわけじゃないけど、安くて良いというものにはあまりお目にかからないような気がする。ま、自家用のスライサーがあれば、ハムやベーコンを丸ごと買って来て好きなようにスライスできるし、ロースト用の肉を買って来て、ちょっと凍らせれば、ブルコキ用のスライスも作れて、キッチンの楽しみが増えるというもの。
もうひとつの「プレゼント」はパスタメーカー。これはイタリア製の手動のキカイ。どんと重くて、頑丈そうだ。生地を作って、ローラーで伸ばして、スパゲッティやリングィーニにカットする。ついでに円形、四角、幅広にカットできるお遊び風の道具も買ったので、これでグルメなラヴィオリを作ろうと狙っているわけ。パスタのルーツは中国の麺だもの、中華風ラヴィオリや和風ラヴィオリもできそう。ん、それって餃子のことかなあ?カレシはあしたさっそくパスタを作るんだと大張り切り。食べる楽しみが増えるってのはいいもんだ。
さて、そろそろ鴨のローストに取りかかる時間・・・。ハッピークリスマス!
ボクシングデイは何の日
12月26日。カナダではクリスマスに続くボクシングデイの今日も祝日で二連休。昔のイギリスでこの日にクリスマスのボーナスやプレゼントを入れた箱を使用人や下層階級の人たちに渡したからBoxing Dayなんであって、スポーツのボクシングとはまったくの別もの。いわば年末ボーナスの日といったところ。カナダではいつのまにか大型店の激安セールの日になっている。ひと昔はクリスマス商品の売れ残り一掃セールだったんだけど、今はエレクトロニクス製品が目玉。アメリカの感謝祭翌日の金曜日と同じように、早朝から店の外には長い列ができて、開店と同時にお目当ての商品を目指して店内になだれ込む光景がニュースで流れる。気の早い人は前夜から並び始めるというからすごい。まあ、一種のお祭で、値段は超激安ではあるけど、ほとんどは売れ残りの旧モデル。在庫一掃大セールであることには変わりがないということかな。この頃は1日では足りなくて、「ボクシングウィーク」のセールも登場している。
いつもなら我が家のボクシングデイは胃の休養日といったところ。二人だけのクリスマスは気楽なもので、ディナーの準備をしながら前菜を食べ始める。スモークサーモンとサーモンキャヴィア、鴨のむねの燻製、グリーンオリーブのタペナード、いろいろなチーズと午前3時半に焼き上げたバゲット。今年のドリンクはピスコサワー。ペルーやチリのピスコというブランディがベースで、卵白を加えてシェイクするので表面に白い泡が漂う。けっこうさわやかな味なもんで、たくさん飲めてしまいそうなキケンなカクテルだ。
ディナーメニューはフレンチオニオンスープ、鴨のローストにオレンジソース、ポテトガレット、彩りに蒸したオクラ。鴨はジュリアチャイルド方式でまず大鍋で蒸してよけいな脂を出し、野菜やワインを入れてさらに蒸してからオーブンで焼く。手間がかかるけど、オーブンの中に脂が飛び散らなくて後始末が楽でいい。オレンジソースは、ガーリックと一緒に鴨に詰めてあったオレンジからジュースと取って、ロースターの底に貯まった肉汁を入れ、さらに別に絞ったジュースとオレンジゼストを加えて作る。今年はグランマルニエを入れてみたら、ブランディよりもちょっと甘くてこってりした味になった。鴨は七面鳥のようにスライスできる肉がないから、キッチン鋏を使って手羽側2つ、足側2つに切り分けた。けっこうな大きさになるからお皿の上ではどんと豪華に見える。ローヌ川のワインといっしょに、クリスマスの乾杯。
食べ疲れて、飲み疲れて、DVDを見て、お風呂に入って、デザートのクレムブリュレにたどり着いたのはなんと午前2時半。表面の砂糖に焦げ目をつけるのは料理用のブロートーチ。ライターに使うブタンガスで高温の炎を出すもので、いつかこれでベークドアラスカを作ってみようかと思っている便利ツール。砂糖はあっという間に溶けて、ちょうど加減のいい飴色になる。トーチで熱くなった容器の縁が冷めるのを待つ間、ポートワインをちょっと1杯。今年はちょっぴり雪景色のおまけもついて、まずまずのクリスマス・・・。
ボクシングデイ・・・今年の私はラッシュ仕事とのスパーリング。がんばって早々とノックアウトしてしまおう。
極楽とんぼはつちのえね
12月27日。雪になったり、雨になったりで、どうもマザーネイチャーは落ち着きがない。どっちにするか決めてくれればいいものを、と思うけど、まあ、別に出かけるわけではないから、どっちでもいいのかな。ボクシングディを返上し、今日も朝から仕事、仕事だったもんなあ。クリスマス直前に飛び込んで来た皮算用の狸がが今年最後の納品になった。やれやれ。
日本では今日が仕事納めで、仕事始めはどこも7日だから、これから10日くらいは静かだろう。もっとも、こっちは置き土産的な仕事がぞろぞろ入っているから、こっちは正月休みどころではないかもしれない。元々こっちのお正月は元旦だけで、一番のイベントは大晦日。夜中のカウントダウンまで飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎをやる、いわば西洋流の「忘年会」といったところ。クラッカーを鳴らし、紙ふぶきを散らし、除夜の鐘の代わりに「蛍の光」を大合唱。Auld Lang Syneは古きよき昔のために旧友と酒を酌み交わす歌なんだけど、教育勅語みたいな歌詞を付けたのは誰なんだろう。
来年の干支はねずみ。私は年女。早くから「来年は還暦なのよ~」と触れて回って来たけど、調べてみたら、還暦というのは満60歳になる年の1月1日に迎えるものなんだそうな。十干十二支の組合せが一巡して振り出しに戻るということで、いわば第二の人生のスタート。新しい年、新しい人生、か。なんか胸にぐっと来る感じがする。十干はつちのえ(戊)。陽の「土」。山や堤防のような動かぬ大地なんだそうだ。うひゃあ。「戊」は「障害をおかして無理やりに進む」という意味合いがあるそうで、植物が固い地面を押し上げて芽を吹き出すさまも象徴するらしい。同時にねずみの「子」は種の中に新しい生命が芽生えるさまを表しているという。「大山鳴動ねずみ一匹」ということもありえるけど、なんだか戊子はすごい干支だなあ。
とにかく前進あるのみというのは当たっているかもしれない。おうし座でもあるから、まさに「突撃猛進」の人生を送るために生まれて来たってことかなあ。それがどういうわけで極楽とんぼになっちゃったんだろう。まあ、この極楽とんぼにはリバースギアがないみたいだけど。
戊子の来年の運勢をググって、いいとこ取りしたらこんな感じになるらしい。
☆全体運: 明るくて天真爛漫。探究心もあって几帳面で誠実な人柄。(えぇ、面映いなあ・・・)ただちょっと考えが浅いところがあり、人に利用されやすいのが難点。(あちゃ・・・)
☆金運: 確実に財をなしますが、安直に情けをかけて金銭的な損害を受けることあり。(私って意外とケチなんだけどなあ・・・)
☆恋愛・結婚運: この人と決めたら、ずっと思い続けるタイプです。(カレシ、喜んでちょうだい!)
ついでに牡牛座の運勢を見たら、総体的に来年は発展性の運気なんだそうな。金運良し、仕事運も良し、健康運も上々だとか。まあ、当たるも八卦、当たらぬも八卦。いいとこ取りするに限る。でも、全部ぴったり一致したら信じてもいいかなあ・・・
頭って重いのよね
12月28日。朝から頭全体が痛い。ゆうべカレシが私の頭をつかんでひねったせいだ。じゃれついていて手加減というものを忘れるときがあるから困る。子供じゃないんでしょ?いい年の大人が力を加減できないってどういうことなの?と、いってみたところで、「え、ボクのせい?」。もう・・・
頭痛がするのはずっと前に脱臼した頚椎が少しずれたせい。あれは1986年の秋。カレシが一人で日本へ行ったころ。ベッドの中で猛烈なくしゃみをしたら、首がギクッとなった。そのときはまだ筋を違えた程度に思っていたけど、だんだん頭痛がひどくなって、寝ていても動くたびに激烈な頭痛で目を覚ました。カレシを空港で見送ったときは猛烈な吐き気までしていたけど、うきうきしていたカレシはまったく気がついていなかった。帰りに空港の人に「大丈夫か」と声をかけられるくらい真っ青で、今にもぶっ倒れそうだったのに。家に帰って、ひとりぼっちで泣きながらゲエゲエ吐き続けたっけ。月曜日にやっとドクターに見てもらったときは左腕が半マヒ状態だった。即刻物理療法士のところへ。第2頚椎が外れているということで、その場でなんだか荒っぽい療法で元の場所に戻してくれた。「頭って重いのよ~」と。
首周りの筋肉を鍛えておけば、少しずれたくらいなら温湿布でかなり早く治ってくれるからいいんだけど、やっぱり手加減を考えてもらわないことには危なくてしょうがないなあ。それに、へたして病院に行くようなけがでもしたら、DVじゃないかと疑われてしまいかねないよ。遊びならなおさら力を加減しなくちゃ。私は生身の人間なの。ぬいぐるみじゃないんだってば。で、あなたは5才児じゃないの。大きくて力のある大人なの。あ~あ、頭がずきずきする。もう、ほんとにわかってんのかなあ・・・
まあ、カレシはなんとなくしおらしく、やたらとやさしいところを見ると分かってるのかな。「どこが痛い?マッサージしてあげようか?」とスリスリ。だけど、マッサージはちょっと危ないからやめとこ。仕事が並んでいるんだし、大晦日にはイアンとバーバラが来ることになっているんだし、これ以上悪くなったらお手上げ。カレシよ、そぉっとハグして、やさし~く、やさし~く、背中をさすってね。それが一番のくすり・・・
たいくつ虫がでたぞ
12月29日。目が覚めたら、ん?頭痛は遠のいている。首筋はまだ危なっかしい感じがするけど、どうやら大丈夫そう。今年最後の土曜日、といっても何が特別なわけじゃないけど、まだ来年のカレンダーを買っていないから、それだけで「今年最後の・・・」と急いた気分になってしまう。日曜日にでも何とかしなくちゃ。
お昼のニュースを見終わって、やおらクリスマスの残りの鴨でコンフィを作り始める。コンフィは肉をじっくり脂で煮込んだもの。前の日に、フリーザーにためておいた燻製の鴨の皮を細く切って脂を煮出してあった。冷蔵庫でひと晩、上に白っぽく固まった脂はかなりの量。電子レンジでちょっとゆるめて、鴨の足と胸肉をどっぷりつける。完全に被らない分はサラダ油を足して、低め温度のオーブンに入れる。レシピはもちろん生の鴨を使うんだけど、すでにローストしたものでもうまく行くかどうかはわからない。
1月2日午後が納期の仕事の段取りにかかっていたら、何だかうろうろしていたカレシが「あのさぁ」。え、なあに?ボク、どうしてかすごく退屈なんだ。え、あなたが退屈って、まさか。いや、何となくヒマなんで今から買い物に行こうよ。え、今すぐ?うん、土曜日で今ごろは混んでいるのは分かってるんだけど・・・。はは~ん、ほんとうに退屈しちゃっているなあ。英語教室が休みのせいだろうけど、することがなくなってしまったのかな。昔から「退屈なのは想像力が足りないからだ」と言ってたもので、退屈だから遊んでとは言い出しにくいらしい。そういうことなら、夜になってまた雪が降り出すかもしれないし、今のうちに行っておこうか?
遠いほうのスーパーは毎年11月から25ドルにつき1ドルの七面鳥クーポンをくれる。有効期限は31日。今年は23ドルたまった。夏から出していたRoyal Doultonのディナーセットのスタンプも、ちょうど一人前5点セットを二人分もらえる数がたまったからちょうど引換え時。大晦日のディナーの材料を買うついでにもらってこよう。スーパーはやっぱり混んでいたけど、カレシは買い物リストを片手に文句も言わずにぶらぶら。今年は4キロ半ほどの小さめの七面鳥があった。7キロの大物はやっぱり保存も大変、料理も、食べるのも大変。これなら二人に手ごろな大きさだ。ディナーセットは白地に銀色の上品な縁取りで、つい受け皿付きデミタス2個のセットまでおまけに買ってしまった。
気温はプラス1度ほど。雨とも雪ともつかない天気の中を帰ってきた頃にはコンフィができ上がっていた。思ったよりもよくできていて大成功。脂の中でゆっくりと煮込むもので、かなりのこってり料理になるけど、すっかり柔らかくなった鴨はとっても深い味になっていた。ローストしたものでも作れるとわかっただけでも大満足。
カレシの退屈虫はまだ落ち着かないのか、今度は「映画を見ないか」と上からお声がかかって来る。仕事、始めたほうが良さそうなんだけど、ま、いっかぁ・・・。は~い、今行きますって。
通りすがりのふれあい
12月30日。日曜日。12月30日。正午を過ぎて目を覚ましたから、早めにお風呂に入って就寝したおかげで10時間も眠った勘定。二人とも何となくダレて疲れていたってことか。いつも休みも何も関係なく仕事と(大半手抜きではあっても)家事が待っている方は、あんまりダレているヒマはない方だけど、週2の英語教室が休みになったカレシの方はもろにヒマで退屈でお疲れということらしい。まあ、何にもしなくてもいいってのはあんがいすごく疲れることなんだなあと実感・・・
仕事を始めようとするけど、システムがやたらとのろい。あれ、こっちもダレてしまったのかな。しかたがないからまたデフラグを始める。それほど散らばっているようには見えないけど、そこがWINDOWS、後で何をやっているかわかったもんじゃない。しばらかくかかりそうだし、お天気もいいことだし、モールへカレンダーを買いに行くことにした。来年のカレンダーがなければ、3つか4つか、ひょっとしたらそれ以上ある仕事の納期を忘れてしまいかねない。
モールへ行くまでの道は日曜日のせいもあって静か。犬を散歩する人。どこからか漂ってくる甘い香り。家族や友だちが集まっているのかな。窓際にきれいに飾ったツリーの見える家。まだ芝生のいない庭にサンタクロースの飾り。きっとクリスマスに間に合って新居に引越しできたのだろう。どの家でもみんなこの1年にいろんなことがあったんだろうなあ。歩いていると、車で通っていては見えない人間の生活が見えてくる。何だか心の中で「ハロー」と声をかけたくなるから不思議。お一人様になったら、こうして道を歩いて、生活している人たちの息づかいに触れてみよう。家々の明かりからちょっぴりずつ人の心地をおすそわけしてもらって、極楽とんぼは幸せな気分になると思う。
モールは駐車場はほぼ満杯。開いた場所を探してうろうろしている車がいる。モールに入れて、ボクシングウィークのセールでかなりの人出。カレンダーの出店ではこれはというものはほとんど売れてしまっていたけれど、キッチンのとカレシのと私のと、まあまあ気に入ったのを3枚。新年ぎりぎりのせいか半額になっていた。デパートの地下にある郵便局で私書箱をチェック。税務署からの「重要なお知らせ」。読んでみたら、なあ~んだ、零細個人事業主の私にはまったく関係なし。スーパーによって、きのう買いそびれたベーコンと私専用のシリアルとチーズを買った。今年はヨーロッパ輸入のチーズが山積みだけど、なぜかアメリカ産のクリスマス限定のものは品薄も品薄。去年は余っていたのに。どうもアメリカとカナダのモノの往来が最近はあまり自由でなくなりつつあるような気がする。「北米自由貿易協定」なるものがあるというのに、これもテロリズムの世紀だからなのかもしれない。
冬至を過ぎて1週間。日の出は午前8時8分、日没は午後4時22分。冬至より6分日が長くなっているとはいえ、北緯49度の太陽は午後3時を過ぎるともう低く傾いて、急に冷え冷えした感じになる。通りすがった紳士が「Happy New Year」。私も「Happy New Year to you too!」紳士はサンキューといって歩いていった。あの人には来年はとってもいいことが待っているのかなあ。車だったらありえない、通りすがりの人と人のほんの一瞬のふれあいはすばらしい。気持がぽっと温かくなって、歩く足取りに弾みがついた。人生第1ラウンド最後の年、2007年もあと1日を残すだけ・・・
大つごもりは巣ごもり
12月31日。大晦日。曇りがち。お天気チャンネルをみたら、天気図に等圧線がびっちり。また嵐が来るらしい。12月に入ってこれで6つか7つめ。ときどき背景が真っ赤な「警報発令中」の画面に切り替わる。だけど、今までのところは嵐が北の方にそれがちらしく警報も空振りが多い。今度もそんな感じだけど、思いがけず予報があたったりして・・・
大晦日は年に1度、地球って本当に丸いんだなあと実感する日。朝起きてテレビをつけたら、シドニーでの新年を祝う花火、香港での花火、北京での花火と、続々と元旦を迎える風景が映し出されると、なんだか急かされているような気分にもなるけど、順序ってものがあるから、まずは大晦日の準備から始めなくちゃ。バンクーバーは日本標準時より17時間も後。まあ、そんなに急いで年を取ることもないし・・・とは後塵を拝するもののふてくされかな。
午後の早いうちに酒屋と青果屋を回る。酒屋はいつもの何倍も人が入って、ビールの1ダースカートンを両手に下げたり、ジンやウォッカの大びんを抱えた人たちがレジに長い行列を作っていた。ひょっとしたら酒屋は大晦日が1年で一番の書き入れ時なのかもしれないなあ。今年は「In is new out」とかで、ホテルなんかのお仕着せの大晦日パーティよりも、家に友だちとディナーを楽しむのが流行らしい。人口の3割を占めると言われるベビーブーム世代が熟年になって、どんちゃん騒ぎはくたびれるだけになったのかな。それに、好景気とFood Channelの影響が重なって、グルメショップやおしゃれな料理道具の店が増えた。そんなこともホームパーティ志向を後押ししているのかもしれない。立食の料理を食べて、飲んで踊っては若い人たちにまかせておいて、大人はゆっくりと行く年を語り、来る年を思う・・・やっぱり年ってこと?
我が家も、今年は30年近い付き合いのイアンとバーバラの夫妻を呼んで、しゃぶしゃぶディナー。前菜はスモークサーモンと大根のカルパッチョと混ぜ寿司のロール。メインはビーフと白菜。副菜には茶碗蒸し。クリスマスの茶碗蒸しが固かったのは、卵とだしの比率を逆に覚えていて、おまけに計算違いまでするという失敗。もう一度作って、極楽とんぼ亭シェフの名誉を挽回せねばなるまい。さ~て、そろそろ仕込みを始める時間。シャンペンを冷やしておくのも忘れないようにしなきゃ。2007年もあと8時間あまり・・・