リタイア暮らしは風の吹くまま

古希を迎えて働く奥さんからリタイア。人生の新ステージで
目指すは悠々自適で遊びたくさんの極楽とんぼ的シニア暮らし

2011年4月~その2

2011年04月30日 | 昔語り(2006~2013)
切手になったラスベガスの自由の女神

4月15日。金曜日。寝つきが良くなくて、最後に片目を開けて時計を見たのが午前7時ちょっと過ぎ。やっとぐっすり眠ったと思ったらすご~くヘンな夢を見ていた。きのうドン!と降って来た超特急の仕事を超特急でやっつけてベッドに飛び込んだせいかなあ。といっても、認知症の研究だったから、あまり夢とは関係がなさそうだけど。後でDream Dictionaryでちょっと調べてみてみたら、どうやら自愛とか自己受容とかいう意味合いがあるらしい。なるほど、しばらくゆらゆらしていたもんね、ワタシ。元の能天気な自分に戻れたと言うことかな。でも、極楽トンボが墜落しないように羽をばたつかせなければらないのは、極楽にも地獄の風が吹いて来ることあるってことか・・・。

いつものように新聞サイトを見ていたら、あっと驚く?珍ニュース。アメリカ郵便公社(USPS)が去年12月に発行した44セントの普通切手の図柄になった「自由の女神」の写真がニューヨークの港に立っているものではなくて、実はラスベガスのホテル「ニューヨーク・ニューヨーク」の外に立っている1/2サイズの「模造品」のものだったという話。切手収集家が気づいたそうだけど、すごい観察眼だな。もっとも、切手を見たら、銅像の顔の青緑色の色調が均一にきれい過ぎて何となくうそっぽい感じはする。MSNBCの記事なんか、「若いラスベガスのモデルはフレッシュな顔だが、124歳のニューヨーカーは老けていて、鼻や頬にしみが見える」と。2度読み直して、うわ、巧妙なtongue in cheek(皮肉たっぷり)の表現だ、これ。

ニューヨークのご本家はスターテンアイランドへ行くフェリーから見ただけだけど、ラスベガスの自由の女神はホテルの敷地の角にあるから、すぐ足下から見上げられる。初めてラスベガスに行ったときの印象が「大人のテーマパーク」だったので、自由の女神も何となく軽く見えた。後で東京湾のどこかにあるらしい自由の女神を見たときにはさらに軽くなって見えたな。(ダイエットしたのかもしれないけど・・・。)それはともかく、期せずしてファイバーグラスのコピーが普通切手に「採用」された当のホテルは「ラスベガスのカジノリゾートして初めて郵便切手になったことはとても名誉なことです」と大喜び。一方、指摘された間違いをあっさり認めたUSPSは(画像を提供したGetty Images社のせいにしながらも)「1847年から切手を発行して来て、間違いはごくごくわずかですよ」とけっこう涼しい顔。この「ラスベガス版自由の女神」の切手、もう30億枚も印刷してしまったので回収はせずにそのまま流通させるとか。郵便事業の財政が厳しいからなのかどうかは知らないけど、ま、おおらかでいいよね。ふむ、来月シアトルに行ったら記念?に何枚か買って来ようかなあ・・・。

さて、明日は2丁先のメインストリートの「Punjab Market」と呼ばれるインド系商店街でシーク教徒の始祖の生誕祭を祝うパレードがあって、例年、我が家のあたりは駐車する場所を探す車が行き交い、「ハッピー何とか」というバナーを引っ張った飛行機が午後いっぱい我が家の上空をぐるぐる低空飛行する。最近は、インド系人口が郊外のサレーに集中したあおりで商店街が寂れつつあるせいか、ひと頃のように飛行機が4機もぶんぶん飛び回るようなことはなくなったけど、イライラさせられることには変わりはないから、トラックのバッテリの充電がてら郊外のメープルリッジまで脱出することにした。園芸センターをのぞいて、ママのご機嫌伺いをして、マリルーとロバートの家で食事をして、帰りは午前様だろうから仕事は休み。たまには遠出して、違った風景を見て、もやもやをふっ飛ばさないとね。

食べまくり、しゃべりまくりで息抜きとガス抜き

4月17日。日曜日。天気はいいのにまだちょっと低温。ゆうべ(というよりけさ)の帰宅は午前2時半。週末でもさすがにこの時間になると交通量が少ないから、ハイウェイを110キロでぶっ飛ばして、何と40分で家に着いた。普通に行くと1時間半はかかるのに。

きのうは朝食後にすぐ家を出て、まずはマリルー推薦の園芸センターへ。いやあ、でっかい。フレーザーバレーの農場地帯を行くとオランダ語名前の看板や郵便受の表札が目に付く。このあたりが開拓された頃にオランダ系の人たちがまとまって入植して来たんだろうと思うけど、この園芸センターも「Amsterdam」という名前。何棟もくっついた巨大な温室が「売り場」。花壇を作るシーズンだから、パンジーやペチュニア、マリゴールドといった花の苗がずら~っと並んでいる。頭の上では日が差したり、陰ったりするたびに、屋根がギイギイと音を立てながら開いたり、閉まったり。でも、連休前の週末だし、このところ平年より低温だったせいもあってか、あまり人が入っていなかった。カレシが「ボクが植えるから好きなのを選びなよ」というので、ミックスカラーのマリゴールド、金柑とかパパイヤとか果物の名前がついたネメシア、それとヘリオトロープを、カレシに言われた通り「つぼみができかかっているもの」を選んだ。たしかについきれいに花が咲いているものを選びがちだけど、それでは庭に植える頃には花が終わっているよね。花の苗は「青田買い」に限るということかなあ。

次はママのところ。この前会いに来たときと比べると格段にかくしゃく度が上がっている。室内では歩行補助器は不要だし、ほんのちょっと耳が遠いけど、記憶もずっとシャープ。なんとなくボケたように感じられたのは、やっぱり怪我と入院で一種の薬漬け状態になっていたせいなんだろうな。来月には94歳。この分だと100歳の誕生日パーティの計画を始めて大丈夫みたい。カレシが「エリザベス女王からバースデイメッセージがもらえるね」と言ったら、「その頃にはチャックの代になっているんじゃないのかしらね。あの子は失敗作だったわねえ。お祝いなんか欲しくないわよ」とママ。チャックと言うのはもちろんチャールズ皇太子。ふむ、ママの見立ては厳しいなあ。(ウィリアム王子については、「とってもいい子ねえ。ダイアナはいいお母さんだったのねえ」という評価。)ま、エリザベス女王はいたって健康そうだから、母后のように100歳になってもまだ現役で女王をやっているんじゃないかと思うけどな。ママが折れた大腿骨を支えるのに股関節から膝上までスチールの棒が入っていると言ったら、カレシ曰く、「へえ、筋金入りなんだ」と言ったのでママも大笑い。まさに、ママは筋金入りの「強い女性」だよね。

ママはカレシがトイレに入っている間にちょっと声を落として「Are you doing OK?(うまく行ってる?)」と聞いてくれて、うんと言ったら、「Good(良かった)」と。ずっと昔、カレシが結婚して半年もたっていない前妻を離婚してワタシと結婚すると言ったときに、一番先に(アジア人である)ワタシの「動機」に疑問を投げかけたのはママだったらしい。でも、実際にワタシが海を渡ってきて、週末ごとに顔を合わせるようになって、まっ先にその「動機への疑問」を捨ててワタシを家族に受け入れてくれたのもママだったと思うし、ワタシたちの関係がどうしようもないと思うところまで来ていたときにも、ママは無条件でワタシの味方になってくれた。(義弟、義妹、甥や姪たちもそうだった・・・今考えたら、孤立無援になったカレシがちょっとかわいそうだったかな。)今になってすばらしいお姑さん(と義家族)に恵まれていたんだと感動しているちょっとずれた「嫁」のワタシだけど、ママには100歳なんていわずに、できることならワタシが死ぬまでいて欲しい。

ママの夕食の時間になったところでお暇して、さらに先のマリルーとロバートの家へ。まだ雪をかぶっているゴールデンイアズの山が見えて、心地のいい家。階下を間借りしているマリルーの親友のブレンダも加わって、ローストビーフをおなか一杯食べ、リッチなトライフルをデザートにたっぷり食べて、そのまま窓際のテーブルでワインを飲みながら、政治情勢に始まって、ああだこうだとおしゃべりなんだかディベートなんだか。ロバートとカレシの間に熱烈な論議が始まり、ロバートが席を立っている間にブレンダとカレシが熱烈な論議を始め、とにかくにぎやか。夜中をすぎたところで、ロバートがブレンダと議論を戦わせていたワタシの肩をポンと叩いて、「おい、これで世界の問題の半分は解決したぞ」と言うので、「あ、おめでとさん」と握手。ワタシも久しぶりに熱く語りまくって、ガス抜きをした気分。ああ、ちょっと気持がすっきりして、やっぱり「ここ」がワタシの居場所なんだなあ、ワタシはひとりじゃないんだなあと、つくづく幸せな気分。

さて、気分が少し晴れたところで、やる気を奮い起こして、仕事にかからなきゃ・・・。

六十肩なんてありえるの?

4月18日。月曜日。いい天気で、気温も少しは上がって来たような気配。正午ぐらいにのんびりと起きて、やっと1日。分残っていたシリアルとミルクで朝食。今日はどうしても買い物に行かなければ、明日の朝食がない(といっても、ベーコンポテトにするとか、いっそのこと自家製の塩鮭で朝粥というのもわるくないんだけど)。

とにかくまずは今日の夕方が期限の仕事を片付けて納品しないことには次に進めないから、そそくさとオフィスに引っ込んで、仕事、仕事。やっぱりまだどこかで何となく欝っぽい自覚症状があって、仕事に気が入らない。何とかエキスがどうの、薬効がどうのと、ちんたらちんたら。それでも、午後4時には完了して「送信」をクリック。やったぁ~。木曜日の朝に寝ている間に来た通販の注文品。保管している郵便局は6時まで開いているから、ね、すぐに行かないと。カレシは「うん、うん」と生返事。へ、明日でもいいの?カレシ曰く「温湿布のパッドがいる!」と。だったら取りに行って来なきゃ、向こうから歩いて来ないけど。(どうして男ってこういうことになると腰が重いんだろうなあ。若いオンナノコのことになると俄然軽~くなっちゃうのに・・・。)

それでも観念?してか、近くの郵便局まで車で行ってひと抱えもある(だけどわりと軽い)段ボール箱を引き取って来た。中身はカレシの新しい(底が)屋外/室内兼用のスリッパと、車のバッテリが上がったときにジャンプスタートさせるための小さな非常用電池2個、そしてカレシお目当ての温湿布のパッド。カレシは2ヵ月くらい前に背中を掻こうとして肩のすぐ下の筋肉がガキッと行ったのが、直るどころかだんだんに肩まで痛むし、寝返りをしたときに痛みで目が覚めるようになったとこぼしていた。四十肩とか五十肩と言うのはよく聞くし、ワタシは40代後半に同じように筋肉をガキッとやったのがこじれて右肩がガチガチに凍ってしまったことがあるけど、カレシはもう60代の終わり近く。ふむ、六十肩と言うのは聞いたことがないなあ。

六十肩は聞かないけど、どうも経過はワタシの四十肩とよく似ている。ワタシの場合はガキッとなってから完全に肩が凍結するまでに1年とちょっとで、一時は手術の案も浮上したけど、理学療法で対処と言うことになって、近くの療法士のところに週1回通って解凍するまでに約1年半。何しろ上腕が脇についたまま頑として動かない。動くのは肘から先だけで、腕を曲げても首を傾げなければ指が耳たぶに届かない。あのときがさすがに一生このままかと思って暗澹とした気分だったな。でも、腕のいい療法士が少しずつ解凍してくれて、最後には95%機能回復。そのときに補助的な運動具として教えられて作ったのが今でもオフィスにあるロープとプリーを使った簡単なしかけ。プリーを取り付けてある柱を背に、ロープの両端を持って、水平に腕を広げて、プリーの力で腕を上げたり下げたりするだけなんだけど、けっこう利き目がある。

温湿布のパッドは電子レンジで温めて何度も使えるジェルタイプで、これで十分に肩を温めてからロープでの自家療法をやろうというわけ。療法士の説明を思い出しながら、背中を伸ばせ。腕は肩で持ち上げない。一方の手でゆっくりロープを引いてもう一方の腕を持ち上げる。痛みを感じたらそこで引く手を止めて、ゆっくりと腕を下ろす。は~い、よくできました。実際のところ、カレシの左腕は水平までは上がるけど、それより高くは上がらないから万歳ができない。ふむ、思ったより進行していたな。前後には動くし、利き腕ではないから、痛み以外はあまり支障がなくて、腕が上がらなくなっているのに気がつかなかったんだろうな。ワタシも利き腕でない方だったから、車のギアシフトができない以外に不便があまりなくて、気がついたときには完全冷凍になっていた・・・。利き腕でないからふとした怪我をしやすいのかもしれないけど。

というわけで、即席療法士になって、とりあえず最低1日。1回、ジェルパッドでしっかりと温めてからロープ運動を日課にしなさい、と処方箋?を出した。だって、最悪の場合にがっちりと固まってしまって手術が必要なんてことになったら、待機リストに載って、いつまでも、いつまでも・・・。(ワタシの膝の手術は承諾のサインをしてから待機すること1年だった。)人の助言は聞かない主義のカレシもさすがにそんなことになったらたまらないと思ってか、まじめにワタシの指示を聞いて、くそまじめな顔でロープを引いて、カラカラとプリーを回しているからおかしくなる。んっとに、もう、男ってのは・・・。

複雑怪奇?それともただ変なだけ?

4月19日。火曜日。やっと春が定着したかというような天気もよう。春眠と言うわけじゃないけど、起き抜けからもやっと眠い。どうもせっかくぐっすり眠っていたのに、カレシのドタドタと階段を駆け下りる足音で目が覚めたらしい。カレッジの学生か誰かが家の外に車を止めようとしていたので、飛び出して行って追い払ったということらしい。(居住者専用区域で学生は駐車できないのはたしかだけど、そう杓子定規にしなくても・・・。)ここのところ、カレシもなんかちょっとヘンな時がある。肩の調子が思わしくなかったせいか、それとも他にストレスになっていることがあったのか、それはカレシのみぞ知る。ストレスがかかるとパニックを起こしやすい、ある意味でアスペルガー的な面があるけど、簡単にそうと言い切れない複雑な面もあるから、ま、そういう「性格」と受け止めて、最善の対応をするのが良策。

もちろん、何事も経験ということで、毎日観察しながら付き合っていないとなかなかそこまではわからない。最近の若い人たちはすぐに「価値観が違う」と言って投げ出そうとするようだけど、実際は価値観とは別の次元の「性格」の問題だと思うんだけどな。カレシはイギリスとスコットランドを主に、ウェールズ、オランダ、ドイツの血が入っている「雑種」なんだけど、思考パターンにはすごく日本的だなあと感じるところがけっこうある。おおむね悲観的な性格で、自己主張が苦手で、被害者意識が強くて、マイナス思考に陥りやすい。カナダと言う「欧米社会」で生き辛さを感じていたらしいのはそのせいかもしれないな。ワタシが根本的に楽観的な性格で、行動で自己主張するたちで、叩かれてもおいそれとは引っ込まない曲がり杭だから、よけいにそう感じるのかもしれないけど、それでワタシには日本の社会は生き辛かった。でも、カレシが日本で生き易さを感じるのかとなると、他人に合わせることを自分の主体性に対する脅威と感じるらしいから、答は「ノー」だと思うな。

ま、人間というのはほんとに心理的に複雑怪奇な動物で、その複雑さもまさに千差万別だと思うから、誰であっても人種や文化という要素を外して、ひたすら個々の「人間」として付き合おうとする所以で、「○○人」と言う括りは単に「平均的」あるいは「多数派的」○○人の総称でしかないんだけど、人間はおもしろいもので、他には「同じ」を求めつつ、自分は他とは「違う」と主張したがる人たちも多いように思う。その人の「かくありたい自分」像が反映されているのかもしれないけど、心の深いところに自分は埋没したくない、自分を認めて欲しいというか、一種の「見捨てられ不安」とでも言えそうな気持があるのかもしれない。人間はほんとにパラドックスの塊だな。

そんなヘンなことを眠たい頭でつらつら考えながらの朝食の後、コーヒーを飲みながらしばらく『On The Road』の続きを読み、コンタクトレンズを入れたり、夕食の食材を決めたりの一定のことを済ませてから、いつものように血圧を測ったら、99/58。そんなのありえないとばかりに深呼吸をして、もう一度測ったら101/60。おいおい、いくらなんでもこの年では低すぎじゃないのかなあ。リラックスし過ぎかなあ。リラックスのし過ぎといっても、ここんところ数週間はかなりの精神的ストレスが続いていて、ちょっと欝っぽい感じだったんだけどなあ。ワタシの心臓、だいじょうぶなの?脳にたっぷりと血を送っているのかいな。ふむ、ちゃんと血が巡っていないから、いつも哲学にも禅問答にもならないようなことがいつも頭の中をぐるぐる巡っているのかなあ。あんがい、血圧が低すぎると怖い病気になるんじゃないかと大まじめに気にしてみたら、少しは上がったりして。

ああ、ほんとに人間という動物は生理的にも複雑怪奇だけど、あっちでもこっちでも常識から外れて、血気盛んなワタシは・・・う~ん、ただのヘンな人かもしれないな。

おかげで血の巡りも良くなって

4月20日。水曜日。今日もいい天気。普通に起きて、普通に朝食をして、普通に朝にすることをして、今日はなんだ、普通じゃないのという血圧。きのうはトレッドミルでスピードを上げてばんばん走ったから、血の巡りも少しは良くなった感じ・・・。

今日はダウンタウンへのお出かけデー。来月のコンサートがちょうどシアトルでの会議と重なってしまったでの、別のコンサートに変更してもらいに行くついでに所得税申告書を税務署に送信する承諾書を会計事務所において来るつもりだったのが、カレシが濡れ落ち葉よろしく一緒に来るというので、ついでのついでに貯め込んであった使い終わりのプリンタやコピー機のトナーのカートリッジをStaplesのリサイクル箱に入れて来ようと言うことになって、デスクの下やクローゼットをかき回して集めること8個。運びやすいように箱から出してバッグに積めたので、オフィスは空き箱の山。あ~あ、市のリサイクルデポに持って行かないと、足の踏み場もないごみ屋敷になってしまいそう・・・。

ダウンタウンではまず運よくStaplesのまん前に駐車。道路は一方通行で、駐車規制の標識を見たら、道路の右側は朝と午後のラッシュ時間帯が駐車禁止、左側は朝だけ。しめしめ、3時を過ぎても止めておける。重たいバッグを担いで店の中の窓際にあるリサイクルボックスにカートリッジをどさどさと放り込み、ついでにカレシが持ってきたインクジェットのカートリッジの山も放り込んだら、レジの人が「リサイクル、ありがとうございます」と、Stapesのえらく派手なエコバッグをくれた。(回収したカートリッジにトナーを詰めて再生して自家ブランドで売るのかもしれないな。)派手すぎるバッグをトートに押し込んで、その足でバンクーバー交響楽団のボックスオフィスへ。来月14日。のチケットを27日。のVSOポップスの「コットンクラブの夕べ」というジャズコンサートのチケットに交換してもらった。次は会計事務所へ行って受付の人に封筒を渡し、最後のHマートへ回って、主にアジア系の野菜類を調達。車に戻ったら、メーターにはまだ40分も残っていた。ちょっともったいない気もするけど、用事は全部済んでしまったし・・・。

グランヴィルからそのまま橋を渡ってブロードウェイまで来た頃、カレシが「駐車スペースがあるかどうか良く見て」と命令。え、何で?ときょとんとするワタシ。「Danielに行くためだよ」とウィンクするカレシ。あ、そっか。カレシがワタシの分まで食べてしまったチョコレートの埋め合わせね。ここでも午後の駐車禁止のない側にある店のすぐ近くに止められて、おまけにメーターには20分も残っていて、ダウンタウンで使い残した時間の半分を回収した形。ダークチョコの詰め合わせと、復活祭だからおまけに鶏卵サイズのダークチョコのイースターエッグの袋。ふむ、10個くらいは入っていそうだな。こんなにチョコを食べたら鼻血が出るぞ(と、子供の頃によく母に言われたっけ)。でも、ダークチョコは酸化防止作用のあるポリフェノールが豊富だからヘルシーなんだとか。ココアがヨーロッパに登場したときは「滋養ドリンク」扱いだったくらいだし・・・。

食材をフリーザーから出すのを忘れてでかけたので、今日のとっさのメニューは冷蔵庫をかき回して、白菜とたけのことねぎのチゲにししとう、山菜入り粟がゆの完全ベジタリアン。粟はもの珍しさにつられて買ったものだけど、カレシが「米のご飯よりいい」と大いに気に入って、今ではキノアやカーシャ(そばの実)、韓国の七穀米などと並んで我が家の雑穀料理の定番のひとつ。たしかに白米よりも栄養価は高そうだし、ご飯よりも軽くてさらりとした食感がいい。でも、日本にいた頃には粟を見たことも、食べたこともなかったなあ・・・。

総選挙の行方、ホッケーの行方

4月21日。木曜日。今日もいい天気で、どうやらやっと春らしい感じになってきた。明日から復活祭の週末だもんね。朝食のテーブルで、今年は春が遅いなあと言う話をしていた。たしかに。でも、去年は5月、6月になって雨がちで低温だったような気がする。早々にオリンピックに合わせて来てしまって、息切れしちゃったのかもしれないけど、去年は夏でもあまり長時間クーラーをかけることがなかったような気がする。そのせいで、イチゴもラズベリーもブルーベリーも地物の季節が短かったし、トウモロコシなんかやっと地物が出て来たと思ったら、あっという間に内陸産のものに代わったし・・・。

週末はのんびりと思っていたら、終業時間の間際に駆け込みでばたばたと2件。ま、割と小さいから良いかと思っていたら、日本が始業時間になったとたんにばたばたとまた2件。やれやれ、四連休はあっけなく「仕事日」になってしまった。でも、腕まくりをしてがんばれば二連休くらいは確保できるかな。もっとも、だらけなければの話だけど。エイギョウはやりたくないぐうたらな極楽とんぼは、秋の日のヒグマのように川上で大きな口を開けて、遡上してくるサケが飛び込んでくるのを待っている。なんかちょっとしまりのない構図だけど、それで20年以上もけっこう豊漁でやって来れたのは奇跡といえば奇跡なのかもしれない。

さて、総選挙の投票日まであと10日。ほど。保守党の支持率はほとんど変化がないけど、先ごろ自由党のイグナチエフがインタビュー番組で、「保守党が過半数を取れずに第一党になった場合、自由党は他党の協力を得て政権を組織することができる」と言ったのは命取りになりそうな大失策。保守党に「それみろ、やっぱり連立政権を作るつもりでいるじゃないか」と攻撃する材料を与えてしまったのは大失策だと思うな。イギーは「連立の意図ではなくて、カナダ憲法の仕組み上、可能だということを説明しただけ」と釈明しまくっているけど、国民にとっては、第二党が連立政権を作れるかどうかよりも、その「連立」の中にカナダからの独立を党是に掲げるケベック連合が関与することの方が問題なんだけどな。なにしろ、ケベック連合は、出て行くと言いながら夫の生活にあれこれ口出しする妻のような鬱陶しい存在なんだもん。

選挙戦終盤で党首が「禁句」を口にして旗色が悪くなって来た自由党に代わって、社会主義を掲げる万年野党の新民主党が野党第一党になりそうな雲行きになって来た。特にケベックで支持率を伸ばしていて、地盤を侵食されているケベック連合が大慌てらしい。新民主党のレイトン党首はモントリオールの英語圏地区の生まれで、世論調査でもハーパー首相に次いで「信頼できる」政治家の評価を得ている。やれやれ、イギーはさっぱりだねえ。世論調査でも自由党の支持率はじりじり下がり、一方でイギーの信頼度は低迷しっぱなし。毛並みはいいし、経歴だって名門ハーヴァード大学の教授だった「有識者」なんだけどねえ・・・。

ハーパーはクールで(油断がならないけど)頭脳明晰な実務家と言う印象で、レイトンは(ちょっと油断はならないけど)真摯な人間という印象だけど、イグナチエフは油断がならないどころか、いつも「こんなこともわからないのか」とイライラしているような印象で、しゃべっているのを聞いているだけでこっちまでイライラして来る。前の選挙のときから保守党の広告で「マイケル・イグナチエフはあなたのために帰って来たのではありません」なんて攻撃されてるけど、ほんとに何だってハーヴァード大学教授の職を投げ打ってまでカナダに帰って来たのかなあ。ま、どうなるかは投票箱を開けてのお楽しみだけど、すぐに離婚する!と騒ぐ我の強い奥さんはなしにしてほしいな。

ところで、バンクーバー・カナックス。プレーオフで3連勝して第1ラウンド通過にあと1勝なのに、シカゴで7対2の大負けの後、帰ってきて今夜は5対0の大負け。おいおい、どうなってんの、キミたち?選挙よりこっちの方が気になるじゃないの。優勝候補チームが第1ラウンドで早々に敗退しちゃったら、暴動が起きるかもしれないよ。プロスポーツは強いもの勝ちなんだから、しっかりせんかい、こら。

翻訳者はつらいよ

4月22日。金曜日。今日はグッドフライデイ。キリストが磔刑になった日。まあまあの天気。国境は朝からアメリカへショッピングに出かける車が長蛇の列。昼前にはもう待ち時間が3時間半になったとか。週末いっぱい48時間以上出かければ1人400ドルが免税になるし、今はカナダドルが高いし、アメリカ側はモノの種類が豊富で値段も安め。だけど、3時間半ものろりのろりと進んでいたら、どれだけのガソリンを燃やすことになるやら。おりしも今日はアースデイなんだけど・・・。

この週末は元々遊ぶ気満々だったので、仕事に捕まったとは言え、「ごちそうモード」はそのまま。まず今日はコーニッシュヘンを丸ごと1羽使って「サムゲタン風ポトフ」を作ってみる。近頃のコーニッシュヘンはずいぶん大ぶりになったから2人で1羽。昔はもっとやせていて小ぶりだったのでスーパーのパッケージにも2羽入っていたもんだけど。空っぽのおなかにもち米や刻んだナツメやにんにく、しょうが、にら、さらに銀杏や松の実、クコの実を詰め、今回は粉末の高麗人参茶をたくさん使って、大なべでゆっくり。後で付け合せにする大根や青梗菜、にんじん、ねぎを入れて、仕上げはスープをちょっと煮詰めて少しとろみをつけたソース。柔らかくなった鳥は包丁でえいっと左右2つに切り分けて、野菜とソースを添えてできあがり。デザートはチョコレートのイースターエッグ。本物の卵くらいの大きさで、中空だけどかなり厚い。何だか太りそうな予感・・・。

体がぽかぽかしたところで、クライアントからという質問に回答を書く。校正、編集を経た後でも、ときたま発注元から質問が来ることがあって、当然「アフターサービス」として対応する。社内で扱えない翻訳だけ外注するところや英語人社員がいるところから質問が来ることはまずなくて、見直しだけしてそのまま採用するところと、書き直しをするところがある。後者の場合、ウェブサイトなどでみごとな「日本的英語」に書き直されているのをときたま見つけることがよくある。英語を母語とする人が訳したものでもおかまいなしで、英語人の同業者たちが「何でヘンな英語に直すんだ」と口を尖らせる所以だけど、どうも「英語ができる」日本人は他人の翻訳を頭から信用しないところがあるらしい。ま、ワタシは翻訳会社の校正を経て発注元に納品された時点で、後は「そちらの責任でお好きなようにどうぞ」という方針だし、翻訳者の名前が出ることはないから、いくらだも気の済むように書き直してもらってかまわないんだけど。

そうやって書き直された英語を見ると、くそまじめというか几帳面というか、なくても良いと判断して入れなかった単語が入っていたり、英語では不要の語を漢字はこうだからと入れたり、書き直し作業の心理状態を想像するだけで実におもしろい。日本人の「英語観」も時代と共に変化していて、若い人ほど「あ=A」、「い=B」といったバイナリ思考の傾向が強くなっているように見える。たぶんゆとり教育を受けたデジタル世代なんだろうけど、訳がその人が知っている「あ=A」でないと「間違っている」と言い出す人もいるから、機械翻訳以前の「化石的翻訳者」はため息の連発。まあ、たいていの場合は「間違い」の指摘や疑問に対してきちんと根拠を説明すればわかってくれるから、こういうバイナリ族はまだ極端な例だと思いたいけど・・・。

だけど、英語、されど英語で、ときにはええっと絶句するような質問も飛び出すからおもしろい。きちんと英語らしい英語に訳したものを書き直して、添削してくれと言って来たところがあったし、レビューを頼まれたらしい英語の先生らしい人が150項目も「英文法の誤り」を指摘して、真っ赤なファイルを送ってきたところもあった。このときはどれも英語の先生の方が間違っていたんだけど、相当の自信を持って書き直したらしい長い小節は支離滅裂の意味不明。さすがに頭に来たから、カレシにレビューのレビューをやらせて、英語で批評を書かせたら、翻訳会社は何となくうれしそうだったからおかしかった。きっと前にも「英語の権威」の先生にいじめられていたんだろうな。あの英語の先生、まだ翻訳のレビューの仕事をやってるのかなあ。

一番ケッサクだったのは、冠詞や定冠詞を取ってもいいかと言う質問。きれいな写真入りのパンフレットの英語版を作ろうとしたのはいいけれど、英訳がレイアウトにうまく収まらなかったらしい。「このtheは外していいですか」って、それはできない話っすよ。ダメダメ!ま、その代わりに日本語原稿に散りばめてあったくすぐったくなるような美辞麗句の形容詞の訳をがんがん減らして、すっきりさっぱりの文書にしてあげたけど、これは英語をビジュアルに「見て」いた特殊な例かな。ここまできたらもう言語のコミュニケーションって何なんだろうと疑問を抱いてしまうけど、翻訳稼業もなんだか太鼓持ちみたいなところがあって、つらいところだよねえ、ったく・・・。

ものは言い様とはよく言ったもので

4月23日。土曜日。まあまあの天気。予報の最高気温はまだちょっと低めだけど、最低気温の方はほぼ平年並みになって来た。いよいよ本格的な庭仕事の季節。外で忙しいカレシを横目にワタシは少しは静かな環境で仕事に集中できる・・・かな?

やや重い腰を上げて、仕事の算段。テーマはどうやらお金の話。まあ、一応はお金と法律に関することがワタシの「専門分野」ということになっている。と言っても、ワタシは門前の小僧。昔、翻訳者志望の若い日本人女性たちと話をしたことがあって、「大学はどちら?」と聞かれたから、行かなかったと答えたら、「うっそぉ。ありえな~い」と言われてびっくりしたことがあった。ありえないって、目の前に10年以上フリーでちゃんとご飯を食べられるだけ稼いでいる人間がいるんだから、ありえないはずがないでしょうが。ま、ずっと昔の同僚でなんにつけても「Never!」を連発する人がいたから、「ありえない」という驚愕表現もありえるんだろう。あのお嬢サマたちも今頃は「アラフォー」と呼ばれる年令になっているけど、その後どうなったのかな。ちゃんと学歴にふさわしい専門分野で夢を叶えたかな。まっ、それはどうでもいいとして、お金と法律と科学の仕事はおもしろいから「専門」にやる分野・・・。

原発事故のおかげで福島県の人たちがあちこちで心ない差別やいじめを受けているという。住居が避難区域に指定されて早々に立ち退かなければならない人たちが、引越し業者に断られて動くことができないというニュースもある。ワタシは絶対にそういうことが起きると思っていたから驚かないけど、法務省が「根拠のない思い込みや偏見で差別することは人権侵害につながる」という声明なるものを出したということはそれだけ深刻だということなんだろう。だけど、人権侵害に「つながる」って言い方は何なんだろうなあ。人権侵害に「つながる」ということは、放射能を検出したけど「直ちに」健康に害はないと言うのと同じで、福島から来た子どもをいじめても「直ちに人権侵害にはならない」と言っているように聞こえるけど、じゃあ、どこまでやったら人権侵害になるのかな。まったく、事なかれ主義者が「まあまあ、そこは事を荒立てずに・・・」(あまり表立ってやってもらっては困る)と言っているようで、やな感じ・・・。どうして「根拠のない思い込みや偏見で差別することは人権侵害です」とはっきり言えないんだろう。

社会が未発達で教育水準の低いところでは「根拠のない思い込みや偏見」による差別が起こり得るというのはわかる。所詮人間も動物だから、未知のことや自分が理解できないことに対して不安や恐怖を感じるのは当然だと思う。でも、そういう動物的感覚を理性と知性を育てることで克服しようとして来たのが人間で、その手段が教育だったんじゃないのかな。「考える」ということは洪水のような情報を弁別して取捨選択する能力でもあると思う。それがなければ溢れる情報に踊らされるだけの「無知」な人間になってしまう。世の中の「いわれのない」偏見や差別は人々の無知に根ざしていることが多い。だけど、世界的にも教育水準の高い日本は知的にも先進国であるはずなのに・・・。福島県人に対する差別のニュースは海外のメディアにも載るようになってきたけど、ここでも「偏見に満ちた海外メディアの報道」と批判するのかな。

どこで見たか忘れたけど、原発の最初の水素爆発のニュースが海外で大々的に取り上げられていたときに、日本のマスコミは1日。中東京圏の「計画停電」のニュースばかり集中的に流していて、その後別の爆発があったときにも「停電」のニュースが多かったのは情報操作があったからではないかとコメントしている人がいた。日本で国内と海外のニュースを読み比べる人がどれだけいるか知らないけど、わざわざ元からでっち上げ記事満載のタブロイド新聞の記事を例に挙げて、海外のマスコミは嘘の報道をしているとか、おもしろおかしく騒ぎ立てているとか書き立てていたのは日本のマスコミの方。最近になって水素爆発が起きた頃は危機的な状況だったと政府が認めたとか何とかいう記事を流していたけど、原発から国民の注意を逸らそうという意図があったかどうかは政府と東電とマスコミのみぞ知る。ま、「ものは言い様」というし・・・。

極楽とんぼ亭:復活祭の日曜ディナー

4月24日。復活祭の日曜日。小雨もよう。あちこちで子供たちを集めてイースターエッグハントの行事がある。そのトップはホワイトハウスのエッグハントで、庭園のあちこちに「隠された」2000個もの色をつけた固ゆで卵を招待された子供たちが探し回る。要領よく次々と見つける子もいれば、なぜかひとつも見つけられなくて泣き出す子もいて、例年のことながら見ていてほほえましい。どこのでも見つけられない子や幼い子は大人が誘導してやるので、最後はみんな卵を見つ出してハッピーエンド。

復活祭は初期のキリスト教がヨーロッパに伝播する過程で土俗信仰の春(再生)を祝う行事が取り入れられたものだそうな。北欧の冬至を祝う風習を取り入れたクリスマスと合わせて。みごとなマーケティング手法のお手本みたいなものだと感心する。ま、それはそうとして、グッドフライデイに続いて、復活祭もちょっとだけご馳走を・・・。

前菜はだいぶ前にコースディナーのアミューズブーシュとして作って好評だったアスパラガスのしょうが風味ポタージュ。付け合せのアスパラガスを蒸すときに切り落とした下の方を冷蔵庫にためておいて、まとまったらスープにする。しょうがをひとかけら落として、ピューレにする前に取り出して、仕上げはミルクかクリームとしょうがのリキュール。

[写真] 鴨の胸肉ロールのコンフィ、蒸し野菜添え
メインは鴨の胸肉のコンフィ。皮を取って、バタフライにして、燻製にした胸肉の薄切りを巻き込んで、ひたひたの鴨の脂に沈めて、ゆっくりとオーブンで調理。(その間に仕事をひとつ片付けて納品。)付け合せは春らしいレインボーにんじんと小いもを蒸しただけのかなりシンプルな料理。鴨をふたつに切ったら、思いがけなくきれいな渦巻き模様になっていた。燻製にかなりの塩気があるので、タイムやオレガノで風味をつけるだけで塩は使わない。コンフィはローストすると硬くなりがちな腿肉で作ることが多いけど、胸肉でもおいしい。

[写真] 五色豆サラダ(ひよこ豆など5種類の豆とたまねぎ、かいわれ)
サラダ担当のカレシが量り売りの豆を少量ずつ買ってきて、前の夜から水に漬けておいて、ゆでたのを冷やして「五色豆サラダ」にした。早めに作っておいてドレッシングの味をなじませる。ひよこ豆、ピント豆、白いんげん、赤いんげんと、もうひとつ名無しの豆。量り売りなので、品番しか書かなかったから、どれがどれかわからなくなってしまったそうな。でも、缶詰の豆を使ったものよりさっぱりした口当たりでおいしかった。

復活祭に欠かせないのがチョコレートでできたウサギと卵。Lサイズくらいのダークチョコの卵は袋に10個か12個入っていたはずだけど、いつの間にか「イースターバニー」が食べてしまったみたい。

さて、明日は極楽とんぼ亭のシェフの誕生日なんだけど、どうしようか・・・。

極楽とんぼ亭:マイハッピーバースデイのディナー

4月25日。誕生日。しっかり仕事をしてゆっくりと休みにするはずが、だらだらしているうちに今日まで繰り越してしまった。(誰か、ねずみのねじを巻いてくれないかなあ・・・。)まあ、とりあえず、とにかくまじめに仕事をして、終わったのが午後4時。は、間にあった・・・。

誕生日のディナーのメニューは朝方ちょっと目が覚めたときに何となくイメージしてあったので、急いでフリーザーをかき回して必要なものを出してきて、水を張ったボウルに入れておいて解凍。その間に36年の年季入りの電気釜を持ち出して来て、ご飯を炊き、いろいろと下ごしらえを始める。

今日のメニュー:
 アミューブーシュ(アスパラガスのムース)
 ムール貝入りの茶碗むし
 オレンジラフィーのフライパン焼き
 ミニ茶巾寿司の取り合わせ
 (サラダ)

[写真] きのうの復活祭のディナーの前菜にしたアスパラガスとしょうがのポタージュがほんの少しだけ残ってしまったので、後で何かに使おうと取っておいた。1人分のカップ一杯にもならないから思案していて思いついたのが、寒天で固めてゼリーにすること。粉末の寒天をスティックの半分くらい使って、スープと合わせてシリコーンのマフィン型に入れて冷やし、アスパラガスの穂先を半分に割ってさっとゆでておいたのを飾りに載せたら、おしゃれなムースができあがった。

[写真] ミニの茶碗蒸しは卵1個で作る。殻なしのムール貝を2個解凍しておいて、卵汁に1個ずつ。蒸し器にかけて最後のあたりで飾りににんじん、クコの実(中国名からゴジベリーと呼んでいる)、かいわれと刻みねぎを載せてちょっと春らしい感じ。

[写真] オレンジラフィーは寿司に使う分を切り分けておいて、ひと口サイズを2枚ずつ、塩とこしょうで下味。しめじと長ねぎといっしょにフライパンに入れてバターで焼き、お皿にカレシ菜園産のレタスのつまみ菜を敷いて、魚には緑色の枝豆とオレンジ色のとびこで彩りをつけた。

[写真] 今日のメインはミニサイズの茶巾寿司。材料はまぐろ、さけ、すずき、オレンジラフィー、ほたて、とびこ、明太子、サーモンキャビア。ラップにねたを広げて、ひとつまみのご飯を載せ、包んでぎゅっとひねる。サーモンキャビアだけは力を入れるとつぶれてしまうので、急遽焼き海苔を出して来てミニチュアの握りを作り、ついでに余ったとびことねぎで小さなのり巻。かいわれを散らしたお皿に並べたらけっこうサマになっている。わさびを別に出したら、カレシには「ご飯をたくさん食べないでいろいろ食べられる」と好評。

復活祭四連休の最終日のディナーは春に生まれたワタシらしい?彩り。「レストランへ行くより楽しめた」と、バスケットの中に最後に残ったイースターバニーをくれたカレシ。あの、ワタシ、バースデイガールなんだけど。でも、自分の誕生日にこれはと思うものを即興で作って食べるのもなかなかいい趣向だったな。

遠い目、遠い空、遠い道のり

4月26日。火曜日。今日からまた1年がんばろう・・・なんて意気込むわけではないけど、誕生日の翌日はいつも何となく改まった気分になるから不思議。自分が曲がりなりにもこんだけ生きて来たということを実感するからかなあ。生きているって、やっぱりいいよね。生きていればこそいろんなことができるし、もっといろんなことをやれる可能性も生きてくるわけだし・・・。

きのうの今日で、ご馳走三昧の連休明けの休養の日。仕事の予定が入っていないと言ったら、「今日がきのうだったらよかったのにな」とカレシ。まあ、そこはフリーの自営業の宿命ってもんで、仕事のある日は週日、仕事のない日は週末。そういえば、高校を出て就職した会社では誕生日に休みをくれた。でも、船舶代理店で入港する船の予定に合わせて船積書類のタイプをするのが仕事だったから、週日だったワタシの誕生日は「休日出勤」で夜遅くまで残業。当時の労働基準法では女性と未成年者の深夜勤務は禁止されていたのに、船は勤務時間内に入港して、勤務時間内に出港してくれないからと、夜遅くまで残業。夜中を過ぎたこともあって、1ヶ月に100時間くらい残業したけど、午後7時になれば誰かが勝手にタイムカードを押してくれるから、記録上は「退勤」。残業代は1円も払ってもらえなかった。10ヵ月後に辞める理由ができて「辞める」と言ったら、「来月は忙しいからいてほしい」と来た。おじさんたち、冗談がきついよ・・・。

実はその気になれば3月の末までいることもできたんだけど、ま、血気盛んな19歳のこと。課長のたっての懇願?を一蹴して、なぜか抱えきれないほどのプレゼントともらって、「おめでとう」と言われて退職。家に帰って母に「結婚退職だと思われたんでしょ」と言われてびっくり仰天。社会デビューしたばかりでやりたいことがたくさんあるのに、結婚なんて冗談じゃない。おもしろがって笑ってはいたけど、内心は大人ってなんて気持悪いことを考えるんだろうとむかむかしていた。昭和40年代の19歳は今と違ってまだまだ初心だったということかなあ。成人してから、札幌で再就職した外資系企業も別の意味でびっくりが多かった。スウェーデンの会社で、営業所開設のための募集人数は「1名」。大学卒業予定の応募者が何十人もいたのに高卒のワタシが実務経験を買われて採用になったし、学歴が同じなら男女の賃金格差がなくてけっこう高給だったし、貸し切りバスで行って温泉に1泊する毎年の社員旅行に参加するのに「出張」の名目で飛行機で行ったし、もちろん残業なんかない。もう、何もかもが雲泥の差だった・・・と、遠い目。

カレシを英語教室に送り出して、プレゼントにもらった天体望遠鏡にレンズを付けて筒先を窓の外に向けた。まだ日があって明るいんだけど、んんん?何にも見えない。いや、何か見えてはいるけど、望遠鏡を向けた方にあるのは木の枝で、見えているのは幾何模様的な楕円形の何か。ヘンだなと思うと、まず分解して中をのぞいて見たくなるのがワタシ。鏡筒の先をぐいとひねったらリングが外れ、筒先が取れた。筒の中をのぞいたら、ふむ、主鏡はちゃんとある。おかしいなあと思って手にしていた筒先を見たら、あら、斜鏡があるべきところにあるのは接着剤の跡だけ。反射望遠鏡は斜鏡がなければ、エンジンはあってもバッテリのない車と同じで100%無用の長物。いくら子供用とはいえ、接着剤で取り付けるというのはすごい手抜き。光学機器ではちょっと知られたメーカーなんだけどなあ・・・。

教室から返って来たカレシに望遠鏡は欠陥品だったと伝えたら、「キミが見ていたカタログのが売り切れだったんで、探してシアーズのサイトでデザインとスペックが同じのを見つけたんだけど、値段がカタログの半分だったからヘンだと思ったんだ」と言う話。とりあえずダウンタウンのシアーズへ持って行って返品して、返金してもらうことにした。「おもちゃみたいなのじゃなくて、まともなものを選びなよ」と言うカレシ。う~ん、でも大人用だと初心者向きでも高いよ。卓上型はなさそうだし、本格的なのだともっともっと高いよ。「いいよ」とおおようなカレシ。じゃあ、三脚式のしっかりしたのを買ってもらおうかなあ。「いいよ。トラックに積めるから」。いや、そんなに大きくはなくてもいいんだけど、やっぱり口径が4インチか5インチくらいあった方がいいかなあ。それならちゃんとアルビレオが見えると思うけど、うんと高いよ・・・。

プレーオフ第1ラウンドで3連勝の次に3連敗して、もう後がなくなったバンクーバー・カナックス、もしも負けて怒ったファンの暴動が起きたら大変と警察が警戒する中、第7戦を延長ピリオドでやっとこさ勝ち抜けた。スタンレー杯への道のりはまだ遠いのに、やれやれ・・・。

ラニーニャの春は荒れもよう

4月27日。水曜日。正午前に起きたので、シーラとヴァルが掃除に来る頃までに朝食を終わって、食器を食洗機に片付けて、掃除の準備完了。「やけに早いわねえ」とシーラ。「雨が降るんじゃないの」とヴァル。ま~さか~。

しばしホッケー談義に花を咲かせた後、家の掃除にかかった2人を残して、IGAまで魚と野菜の買出しに行く。午後のうちに行くと魚のカウンターが営業中なので、これを何枚、あれを何尾というように選んで防水紙に包んでもらえる。カウンターが閉まった後はトレイにパッケージしたものを買えばいいんだけど、普通に売れるものしかないし、何よりもこのトレイがめんどうくさい。そのままフリーザーに入れると場所をとるし、外してパッケージし直すと一度に大量の空トレイを捨てることになる。今日はけっこういいものがあって、アメリカなまず、スティールヘッド(ます)、ひらめ、ロックフィッシュ、オヒョウ、アヒ。包んでくれたおばさんが「今日は大漁でいいわねえ」。

このスーパーでは年に1度か2度、有名ブランドの食器やグラスをくれるキャンペーンをやって、レジで買い物10ドルごとに1枚スタンプをくれる。期間内に貯まった枚数に応じて商品を無料でもらえるしくみで、キャンペーン用に特注したものだろうけど、これまでにロイヤルドルトンやヴィルロイ&ボッシュ、ジノリといったブランドの食器やグラス、カトラリー、ボウル、ロースターといったものをかなりもらっている。また白い食器が並んでいたので見たら、今度はカーラのグラタン皿やキャセロール、ロースター。うん、カーラってドイツのブランドだったかな。どれもまっ白できれい。特に2.1リットル容量のポットのようなキャセロールが気に入ったけど、必要なスタンプは70枚。でも、キャンペーン期間は7月の中旬過ぎまでなので、何とか貯まりそうかなあ。

大きなトートバッグ2つとさらに予備のエコバッグ2つに買い物を詰めてもらって、カートを押して外へ出たら、うわっ、土砂降りの雨。来たときはそんな気配はなかったのに。それっとカートを押して駐車場の車のところまで走って、大急ぎでトランクに詰めたけど、髪の毛はびっしょり。背中もジャケットの雨が滲み込んで冷たいのなんのって。トートバッグの一番上になっていたシリアルの箱やスタンプのカード、レシートまで濡れてしまった。ヴァルが雨が降るかもなんて言ったからかもしれないな。車の中でも髪の先から滴がぽたぽた。でも、10ブロックも行かないうちに小降りになって、家につく頃にはほぼ止んでいたから、なんだか濡れて損しちゃった・・・。

出かける前には10度を超えそうになっていた玄関ポーチの温度計が6度に下がっていた。もう5月だというのに、6度はないだろうと思うけど、ラニーニャの春は荒れ模様。郊外の農場地帯では低温のせいで地面が水漬け状態のおかげで作付けができないでいるとニュースで言っていた。ああ、今年もイチゴもブルーベリーもとうもろこしも旬の季節は短そう。ジャガイモはすでに数週間の遅れが出ているそうだし、園芸品も3週間くらい遅れているそうで、園芸センターでは閑古鳥が鳴いているらしい。「苗の方は少しくらい低温でも気にしないけれど、この天気では人間の方が庭に出る気になれないんですよね」とは、園芸センターの店長のコメント。うん、趣味の園芸ってお天気のいい日にやるもんだもんね。

さて、ホッケーの方は、今日モントリオールが第7試合延長戦でボストンに負けて8強が揃い、明日からプレーオフ第2ラウンドが始まる。土俵際のうっちゃりで切り抜けたバンクーバーはナッシュヴィル・プレデターズと対戦。予想ではバンクーバーが5試合で勝つそうだけど、ま、競馬の予想と同じで、どんな番狂わせがあるかわからない。総選挙の方だって、新民主党がどういうわけか津波のような上げ潮に乗ってしまって、獲得議席数の予想はめちゃくちゃ。金曜日の期日前投票には前回選挙のときよりも35%も多い200万人が全国各地で長打の列を成して投票したと言うからすごい。レイトン党首は遊説先で盛んに「私が首相になった暁には・・・」とやり始めたし、それを自由党のイグナチエフは「レイトンは首相になるのに必死なあまり・・・」とやり返して、何だか荒れ模様の雲行き。どうなるんだろうなあ、ホッケーも、選挙も・・・。

人災も天から降ってきた大災害?

4月28日。木曜日。外でモーターの音がしてかなり早くに目が覚めた。すぐ外のようだから、ガーデナーのジェリーが歩道の芝生を刈りに来ているんだろうと思っているうちにうとうと。11時半くらいに起きてみたら、カレシはとっくに起き出していて、キッチンのテーブルにジェリーの請求書が置いてあった。今月は2回で税込み53ドル76セントなり。

歩道と車道の間の芝生は市有地なんだけど、芝刈りは境界を接する家のオーナーの義務ということになっていて、我が家は角地だから全長が50メートル近い。昔はカレシが手押し式の芝刈り機で刈っていたけど、けっこう手間がかかるもので、15年くらい前に芝刈り機が壊れたのを機会に向かいのマージョリーの芝生を刈りに来ていたジェリーに我が家の側も刈ってもらうことした。だいたい4月~11月ぐらいまで1週間おきくらいに来て、月末にその月の請求書を郵便受けに入れて行ってくれる。家の前後の庭も全面芝生と言うところが多いから、芝刈り代行サービスを利用する人はかなりいるだろうな。市に固定資産税を払っているのに市有地の芝生を自腹を切って刈るというのも何だかなあと思うけど、ま、週末を芝刈りに費やさずに済むことのメリットの方が大きいような気がする。

日本ではゴールデンウィークの始まり。駆け込みでどさどさっと仕事を置いて行かれたけど、ま、ぼちぼちやることにして、まずは第1四半期の統合売上税の申告。連邦税と州税に分かれていたときは、連邦税だけを抽出するのにかなり手間がかかったけど、統合された今はレシートから売上税の数字を拾って、電卓でピコピコっとやるだけでいい。仕事のログから3月末までの売上額を拾い出して、カナダ歳入庁のサイトにアクセスして、事業者番号と会計期間と送られて来ていたアクセス番号を入力して、画面のフォームに数字を打ち込む。カナダ国内での仕事がないから売上税の徴収額はゼロ。実際に入力する数字は売上額と経費にかかった税金の額だけだから申告手続きは1分で完了。今期も経費にかかった売上税12%が全額還付される。遅ればせながら6月末に統合売上税に関する州民投票があるけど、廃止派が勝って元のように2つの売上税に別れることになったら、まためんどくさいことになるなあ。しかも、合わせて12%は変わりがないのに、還付されるのは連邦税5%だけになるし・・・。

新聞サイトを回っていたら、原発関連の賠償を巡ってすでに訴訟が起きているらしく、東京電力側が原子力損害賠償法にある「異常に巨大な天災地変」による賠償免責に該当するという見解を出していると言う記事があった。契約書などによく出て来る「Force majeure(不可抗力)条項」に似た条項だろうけど、要するに、福島原発の事故は巨大地震と巨大津波と言う「異常に巨大な天災地変」によるものだから、東電には賠償責任はないと言うことらしい。放射能汚染も風評被害も精神的苦痛もみんな補償すると言っているエダノさんは「責任は東電にある」と言ってるけどな。東電としては、社長がわざわざ福島まで行って土下座して謝って回って来たんだから、もういいじゃないかってことなのかなあ。雁首そろえてせ~のと頭下げて、謝ったんだから後は水に流せって、それはないんじゃないかい?

東電は常務以上の役員報酬を50%カットすると発表したのに大臣がそれじゃ足りんと言ったら、社長が「50%は大変厳しい数字」(だからこれでカンベンしてよ~)」と言ったそうな。去年の役員報酬は平均して3400万円だそうだから、半分になっても1700万円で、飢え死にする心配はないと思うけどなあ。役員の半分の半分ももらっていない社員なんか年収を20%も減らされるそうなのに、リッチな役員には事態が収束して落ち着くまで報酬をゼロにする!と言うくらいのガッツはないのかあ。1700万円になったら厳しいって、あんた・・・。

そういえば、何日か前にニューヨークタイムズに日本の原発政策と事業での官僚、電力会社、原子炉メーカー、監督官庁の「呉越同舟」ぶりを書いた長い記事があった。かなり深くリサーチしてあって、監督する立場にある官僚が電力会社に天下りし、技術者が保安院などの監督官庁に「天上がり」して、それぞれの馴れ合いで利益を追求した結果、「原発の安全」は二の次、三の次になっていたという話が、わかりやすく書かれていた。原子力損害賠償法の免責理由には「巨大な天災地変」があるのはわかるけど、まさか「巨大な人災」も天から降ってきた災難のうちだとは思ってないだろうなあ・・・。

花嫁はみんな世界一美しい

4月29日。金曜日。なぜか寝入りばなにカレシのいびきがすごくて、寝付いたのはそろそろ外が明るくなる頃。せっかく眠ったのに、復活祭の四連休のおかげでごみ収集日が金曜日に移動して、早朝からリサイクルトラックが来てドシャンガシャン。静かになったと思って寝直したら、ごみのトラックが来てゴーッ。しばらくして反対側から収集するのにまたゴーッ。結局、2人とも正午前に起き出した。ま、いい天気だし、今日はいろいろと予定があるから、いっか・・・。

早寝するつもりが、寝酒にレミを傾けているうちに午前3時を過ぎて、ロンドンでウィリアムとケイトの結婚式が始まる時間。(ウィリアムは未来のカナダ国王でもある。)テレビをつけたら、ちょうどケイトがウェストミンスター寺院に到着するところ。うん、シンプルでいいドレスだなあ、花嫁はこの日みんなきれいで輝いているよねえ、なんてぶつぶつ言いながら見ていたら、向かいのカレシがしょぼい冗談を言ったり、関係のない皮肉を言ってみたり、とにかくワタシの注意を逸らそうとする。ワタシの方は理由はわかっているし、理解できているつもりだけど、やっぱりうるさいから、グラスを持ってテレビのまん前に移動して「立ち見」。(カレシはあきらめずにワタシの回りをうろちょろ・・・。)

大司教が正式に結婚の成立を宣言したところまで見て切り上げたけど、ワタシは愛し合っていることが伝わってくるカップルには、王子も庶民も関係なく心から祝福を送りたい。浮気や暴力のような不幸せが待っていると知っていて結婚する人はいないはずだと思う。(お金や生活の安定が狙いなら話は別かもしれないけど、それでもやっぱり幸せになれると思って結婚するんだと思う。)どれだけ愛し合っていても、未来にどんなことが待ち構えているかは誰にもわからない。でもまあ、あの2人はきっと幸せにやって行くという気がするな。

起きて昼のニュースで改めて結婚式のビデオを見ながら朝食。きらびやかで豪華な結婚式を望むわけではもちろんないけど、ああ、ワタシも家族や友達の祝福に包まれて、花嫁として輝いて、華やぐ結婚式をしたかったなあ・・・と、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけだけど、心の奥の奥でチクンと感じる。まあ、40年近くも経ってしまった今となっては、夢は純粋にきれいな夢のままで心の中にしまっておくのが良いことはわかっているから、来世に生まれ変わったら、結婚の誓いで臆せず、迷わず、心から「I do」と言ってくれる王子様を見つけることにしよう。でも、そうは思ってもどんな人なのかまったく想像がつかないから不思議だな。あんがい、来世で恋に落ちてみたら、全面改訂版の「カレシVer. 2」だったりしてね。まっ、それも悪くはないと思うけど・・・。

朝食後、ダウンタウンに欠陥望遠鏡を返品しに行き、隣のビルにある眼科に行って2人揃っての検眼の予約を入れ、Whole Foodsによって買い物。カレシが毎年の恒例になった観があるボランティアの感謝状をもらいに行くので、早めの夕食を済ませて、モールまで送ってもらい、終わってから迎えに来てもらうまでの2時間半、銀行へ行ったり、買い物をしたり、ウィンドウショッピングをしたり・・・なんだか1日。中歩き回っていたもので、ひざも股関節もだるくて痛い。はあ、花嫁だ結婚式だと乙女チックな夢を見ているような年かいな・・・。

食べ物の恨みとえんどう豆とプリンセス

4月30日。土曜日。4月最後の日。ということは、もう1年の3分の1が過ぎたってことか。早いね、ほんと。5月と言えば初夏だろうに、カナダの大平原のマニトバでは時ならぬ大雪。積雪量が多かったために融雪で河川の水位が上がって、大規模な洪水が予測されて必死に対策を講じているのに、この大雪でさらに水量が増えるんだろうな。土嚢を積み増しても間に合わない地域が出てくるんだろうな。地球温暖化の顕著な特徴は台風やハリケーンのような熱帯性の暴風雨や、集中豪雨や豪雪、竜巻といった異常気象がさらに異常化することだそうだけど・・・。

今日は何とか平年並みの14度。カレシは庭仕事に午後いっぱい大車輪。夕食の支度の時間になって、ひと抱えもありそうなビーツの葉を持って入って来て、一挙手一投足に「イテテ・・・」。うん、庭仕事は全身運動だもんね。体中がコチコチだと言いながら、それでも「気分がすっきりしていい」とご機嫌。ビーツの葉は黄色のピーマンといっしょにごま油で炒めて、炒りごまをパラパラ。お皿にちょこっと載ったのを見て、「えっ、あれだけがこれだけになっちゃうのか」とびっくり。まあ、葉っぱの野菜は調理するとすごく減量するけど、ボリュームが減るおかげで、サラダで生食するよりもずっとたくさんの量を食べられるという利点がある。

カレシには調理した野菜はあまり好きではないという「偏食」があって、にんじんでもカリフラワーでも生で食べたがる。それでいつも何種類もの野菜が入った大量のサラダを作っていたのが、最近になって生野菜の硬い繊維質が少々負担に感じられるようになって来たらしい。元々ストレスが消化器系統にてきめんに現れる性質なんだけど、加齢と共に胃の消化能力が低下して来たのかもしれない。柔らかい摘み菜だけにしたり、みじん切りにしてサルサにしたりと、けっこう自分で工夫しているものの、一度に食べられる野菜の量が少なくなるから、今度は野菜不足になりそうだとうるさい。そこで始めたのが、「葉っぱ野菜は調理すればサラダよりもたくさん食べら
れて効率的!」という洗脳作戦。まあ、軽く蒸した野菜は何でも食べるから、「生食偏向」の原因はどうやらこてこてのイギリス人だったおばあちゃんがママに伝授したイギリス式のくたくたになるまで茹でた野菜の食感が嫌いということにあるらしい。ワタシもイギリスのパブで大量に盛られて出て来るべちゃべちゃのグリーンピースに閉口して、旅行から帰ってきてしばらくは見るのも嫌だったっけ。食い物の恨みは恐ろしいと言うから・・・。

今日はホッケーのプレーオフ第2回戦の第2試合。試合が終わらないうちに行けば酒屋は空いているだろうと予測して、第2ピリオドが半分過ぎた頃に出かけた。まず、土曜日の夕方というのに、交通量が少ない。うん、みんなテレビにかじりついているということ。酒屋へ行ってみたら、案の定、閑古鳥が鳴いている。スタッフが試飲会などをやるコーナーにある大きなテレビで試合を見ながらなにやら仕事をしている。テレビの音声を広い店内中に流しているので、レジでは客待ちのスタッフがホッケー談義。のんきといえばのんき。土曜日でもあるから、試合が終わった後でどっと客が来るんだろうな。バンクーバーが勝てば、ビールは飛ぶように売れるはず。まあ、しばしの憩いみたいなものか。ワイン1ケースとジンやウォッカを買い込んで、レジの人に「第3ピリオドが始まる前に帰らなきゃ」と軽口を叩いての帰り路は、「みんなどこへ行ったの?」というくらい閑散としていた。ほんとうにピリオドが始まる寸前に帰り着いてしまった。もっとも、その後、同点に持ち込まれて、延長ピリオド2回で負けちゃったけど・・・。

真夜中のランチはここのところジンを切らして飲めなかったマティニ。ウィリアムとケイトの背景や馴れ初め、交際のドキュメンタリーを見ながら、ふと、ケイトさんもグリーンピースをくたくたになるまで茹でるのかなあと思った。カレシ曰く、「あたりまえだろ、イギリス人なんだから」。でも、ウィリアムはイートン校や大学の寮でそういうのを食べ慣れているだろうから、愛妻料理をおいしいよって言いながら食べるんだろうなあ。「お姫様とえんどう豆」の現代版か・・・。


2011年4月~その1

2011年04月16日 | 昔語り(2006~2013)
昔、租界と言う言葉があった

4月1日。金曜日。小雨模様。今日から4月。懸案の仕事が確定しないままで日本が週末に入ったから、少なくとも日曜日の夜までは完全週休2日。といったところ。きのうの朝牛乳を使い切って、買いに行くのをすっかり忘れてしまったので、今朝の朝食は卵とトースト。カレシがスクランブルエッグにするというのを、ワタシがきのこがたくさんあるからオムレツにしようと提案して、最終的にワタシがきのこを炒め始め、カレシが卵を溶いて入れ、ワタシが形を整えて、きのこオムレツができあがって、オレンジジュースにトーストに乗せたオムレツにコーヒーが今日の朝食・・・。

仕事がないんだから家事のひとつもやればいいのかもしれないけど、仕事の時間はワタシの時間と言うことにしてあるから、やる仕事がなければその時間はまったくの「フリータイム」。(だから、いずれ引退しても「専業主婦」になるなんてありえないわけ。)ワタシのフリータイムだから、せっかく休みの週末はここぞとばかり「だらけモード」。小町横町をのぞいて、「外国人配偶者持ち」の人への食文化の違いに関するトピックを読んでみる。「食についての好みを共有できないこの悲しさ」と言うけど、食べることは生物の基本的な営みだから、好みを共有しなければならないものではないと思う。もちろんどの国にも特有の「食文化」というものがあるけど、根本的には人種や文化にかかわりなく「何でも食べる(食べてみる)人」と「食べなれたものしか食べられない人」がいるだけではないのかな。「味覚のツボ」が一致すれば、他のところでわかり合えていなくても、一組の男女としてやっていけるのではないかという気がする。裏を返せば、味覚のツボが一致していなくても、愛情があれば好みの違いを尊重し合えるんだろうと思う。まあ、「共有」と言っても、必ずしも双方向の取引を意味しているわけでもないようだけど。

日本に住んでいる小町の住人の特徴のひとつに、海外組が「日本人は~」と言う表現を使うと即座に「みんながそうではない。ひと括りにするな」と反応するのに、海外のことになると「欧米人は~」とこれまたえらく大雑把な括りをする性向がある。ステレオタイプ化は人種や文化を問わないけど、共通しているのはいつも密に接触している人たちについてはあまrそういう括り方をしない傾向があることかな。たとえば、通勤や買い物で毎日東京の雑踏の中を往来している人たちは、いやでも他人は自分と違うことに気がつくだろうと思う。違いが見えるからこそ、誰それは非常識だの、マナー違反だの、うざいだのと言えるんだと思う。だけど、海を隔てた「外国」の雑踏の中の「違い」は見えない。それでたまたま会った人や映画やテレビで見たことがその国の代表になってしまう。逆に、日本の日常から遠く離れて暮らしている日本人にも日本の細かな違いは見えなくなるから、「日本人は~」というくくりになってしまうんだろうな。森の中を歩いて1本1本の木を見ているのと、遠くから森を見ているのとでは、見えるものが違っていてあたりまえだと思うけど。

ところが森の中を歩いていても木を見ないのか、あるいは歩きやすい遊歩道をひたすら歩いているのか、森の木が1本1本違うことがわからないらしい人たちもいる。植民地時代にはあちこちにヨーロッパ人の「租界」ができて、外国に住んで生活しているのにまるで自国で暮らしているかのように振舞う人たちがそこにいた。植民地時代は終わったけど、二十一世紀になってもある意味で「租界」は健在なように思う。たとえば、人種の壁、文化の壁、言葉の壁、制度の壁を挙げて「○○(人)は~」と不興をかこっている人たちは、日本人にしろ、何国人にしろ、精神的な「租界」に住んでいるのかもしれない。まあ、それが快適でいいというのなら、Never the twain shall meetでもしかたがないかな。どこかにひょっと思いがけなく一致する「ツボ」はあるのかもしれなけど、食べる人と、食べず嫌いの人とがいるわけで・・・。

政治的配慮って何なんだ

4月2日。土曜日。正午ぎりぎりに起床。うっ、まぶしい。道路向こうの桜は散り始めている。完全に休みの週末は、ほんとに何にもしないで、食べて、ぐうたらして、また食べて、寝て・・・。もっとも、一度燃え尽きたワーカホリックの焼けぼっくいだから、いつまでのんびりとだらけモードでいられるかはわからない。

新しいコンピュータをセットアップしてもらってから1ヵ月。旧システムからの引越しもほぼ完了。何かふわふわと頼りならないキーボードにも慣れたし、Windows 7とOffice 2010の勝手もわかったし、タッチスクリーンの操作もコツがつかめた。全体的に「なかなかいい」。特に「いい」のがあれこれとのぞきまわっていて見つけたゲーム。おなじみのソリテアの他に目新しいものがいくつかあって、中でも「Mahjong Titans」というのにがっちりはまってしまった。要は、亀とか猫といった6種類のパターンに積み上げた麻雀の牌をペアを探して取り除いて行ってクリアするゲームで、両側を挟まれている牌はだめと言うルール。ソリテアもそうだけど、これもマウスを使わずに指先で画面をタッチするだけで遊べるから快適そのもの。ジグソーパズルのような感じもして、こういう模様合わせ的なパズルが大好きなワタシは1回やってすっかり病みつき。し~らない。

ゲームをひと休みして新聞サイトを見ていたら、産経にスーツ姿で皇居のお堀を泳いで渡った男が逮捕されたと言う記事があった。震災の政府の対応を批判する「直訴状」を持っていたそうな。どういう「批判」なのかわからないけど、政府や役所のもたつきぶりにしびれを切らしたとしたらわからないでもないな。同じサイトにワシントン支局長が地震と津波で大被害を受けた仙台空港の復旧に空軍の特殊パラシュート部隊を送り込んだアメリカ軍に度肝を抜かれたという話を書いていた。実戦を経験した部隊はやることが違うと感心している。続けて、原発事故処理での日米首脳会談で、日本の外務省の発表とホワイトハウスの発表の表現に微妙な違いがあることを指摘していて、次々と連鎖して発生する問題に有効な手を打てないでいる日本側にアメリカが苛立っていると推測していておもしろい。原発事故や同時テロを経験して、着々と対策を立ててきたアメリカの協力をためらう「合理的理由」を政府に問いかけている。メンツの問題と言うなら言語道断だ、と。

同じ産経のサイトに内閣の原子力安全委員会が原発事故処理に当たっている作業員の「造血幹細胞」の採取は不要と決めたのは作業員の命よりも政治的配慮が優先されたのではないかという記事があった。事前に造血幹細胞を採取しておけば、万が一大量に被爆して造血機能が破壊された場合でも移植して造血機能を回復させることができるそうで、医学の専門家が内閣に直参して採取を提言していたと言う。それを不要と決めた委員会は、作業員への精神的、身体的負担増や国際機関の合意がないこと、国民の理解が十分に得られていないといった理由に挙げているそうだけど、ある野党議員の見方では「被曝を前提とするほど危険な場所で作業していることになれば、国民の不安感や諸外国の不信感をあおることになりかねないという政治的配慮があるのではないか」ということだった。つまり、そんな危険な作業じゃないから心配ないと言いたいのかな。だったら、原発は安全でクリーンだよ、放射能が出ていても健康には害はないよ、と安心させるのと同じじゃないの?

もしもワタシが作業員だったら、造血幹細胞を採取しておいてもらった方が、たとえ「万が一」のことがあっても命が助かる可能性があると思って少しは気が楽になると思うけどな。国民に不安感を与えないためとか何とかいう「政治的配慮」で生き延びられる可能性を奪われるのはやりきれない。「万が一」は決して「ゼロ」ではないんだから。日本の人はそういう自分たちのメンツが何よりも大事な政府や官僚にもっともっと憤らないと、1日。わずか2食で毛布1枚のごろ寝という過酷な条件で、放射能を浴びながら事態の収束に努めている人たちがかわいそう。

誰が言ったのかには諸説があるけど、民主主義においては「The people get the government they deserve(国民はその程度に相応の政府を持つ)」と言われる。そうだとしたら、日本国民のメンツにかかわる問題だと思うんだけど。

仕事人間に仕事がないとどうなる

4月3日。日曜日。よく眠ったけど、ヘンな夢を見ていた。オフィスのようなところから道路に出て、車に乗り込んで、ダッシュボードにあるメモの住所へ向かっていた。道路なのになぜかやたらと歩行者がたくさん歩いていて、みんなてんでにぶらぶらと車の前を横切るもので、運転しにくいったらない。なぜか車に知らない人(男!)が乗っていて、ワタシが「カレシを迎えに戻らないと」と言ったら、「歩いて行くだろうからいいよ」と言い、ワタシが「住所の場所は遠いから歩いては行けないよ。戻らなきゃ」と言ってハンドルを切ったところで目が覚めた。何だったんだろうな。それよりも、車の後部席にいつの間にか乗っていた男、いったい誰なんだろう。いきなり人の夢に出て来て、名乗りもせずに運転しているワタシに指示したりして、ちょっと失礼だと思うけど・・・。

曇りがちでちょっと肌寒い日。カレシは庭仕事。ワタシは遊び仕事。先々週だったか、ニューヨークの会社から小さい仕事が入って来て、何か見覚えがあると思っていたら、たいぶ前に同じ会社のサンフランシスコのオフィスに出したトライアルの原稿と同じ、尻切れトンボの契約書。トライアルならそう言えばいいのに。改めて訳すこともないので、トライアルでやって「A」の評価をもらった文書と同じだから無料ですと元の翻訳を送っておいた。トライアルと言わずにトライアルをやらせるなんてちょっと人が悪いと思うけど、この分野は「無料トライアルはノー」という人が多いらしいし、こっちのレートに同意したし、何か予期される案件があって人を集めておきたかったのかもしれない。先週ファイルに入れるので最新のレジュメを送れと言って来た。お、脈がありそうかな。アメリカの主要都市の他に、ロンドンやパリ、フランクフルト、ストックホルムにもオフィスがある会社だし、法律分野の仕事をもらえそうだし、ここは送っておこうか。

庭仕事で食欲倍増したカレシは、早くから「腹が減った~」。ちょうど良く今夜はボリューム料理。鶏のもも肉を使って実験的にサムゲタン風に煮込んでみることにした。シンガポールで買って来たアジア料理の本に基本的なレシピがあるし、ちょっとググってみたらバリエーションとでも言うのか、「サムゲタン風何とか」がたくさんある。それをざっと見渡して、我が家の「試作品」は、鶏ももともち米、しょうがとにんにく、大根と長ねぎ、冷凍庫にあったぎんなん、ナツメの代わりにプルーン、そしてスライスした高麗人参。塩で味付けして、白コショウを少々。少しとろみのある、あっさり味のスープができ上がった。これにカレシが庭から採ってきたビーツの葉とシメジを炒めたのに照り焼きにしたイワナを載せて、何風だかわからない「晩御飯」。でも、カレシは「もっとないの?」というくらい「サムゲタン風チキンスープ」がいたく気に入って、実験は成功。高麗人参ともも肉がまだ残っているから、次は「サムゲタン風七穀粥」なんて作ってみようかな。(ついでに、もち米の袋を眺めて、ちょこっとお餅ができないかなあと夢想しているワタシ・・・。)

何となく体中がほかほかとした気分になって、オフィスに戻ったら、先週からの未確定案件は「なし」で確定したとのメール。お、と言うことは明日の夜までは休みの延長。なんかうれしくなって、またぞろゲームを始める。どうしちゃったんだろうな。この何週間かで、一気に仕事への情熱が冷めてきたのではないかと言う危惧の念が一瞬だけにしろ頭をもたげてくる。どうしたんだろうな、21年もがんばって仕事をして来たのに。もっとも、ワタシは自分のことを「翻訳家」と呼んだことはないし、漠然とでもファッショナブルな職業に就いている気分になったこともないから、たぶんワタシの情熱は自力でのんびりとした老後を送れるための「金稼ぎ」の方に向いていたのかもしれないけど。ま、仕事が入って来るまで、おいしいものを作って食べて、遊んで、大いにだらけて、エネルギーを蓄えて次の波に備えよう。(ニューヨークにレジュメを送ってしまったし・・・。)

うん、まずはきんぴらごぼう作りから始めようか。ゲーム三昧はそれからということにして・・・。

放射能は困るし、電力不足も困る

4月4日。月曜日。雨。ずいぶんよく降った。ワタシもずいぶんよく寝た。午前3時を過ぎると眠くなって来て、普通に4時過ぎにベッドに入ると、すと~んと眠ってしまう。仕事がないから脳もリラックスしているんだろうな。いつもなら就寝時間ぎりぎりまでこき使われているからなあ。

今日も仕事戦線は静かな気配。どこも予算の新年度でもあるし、原発問題が落ち着くまでには数ヵ月はかかるというし、ひょっとしたらしばらくは静かな状態が続くかもしれないな。ということは、この数年の間ずっと棚上げして来た「趣味」を再開しても大丈夫ってことかな。そう言ったら一番乗り気なのがカレシで、どこそこへ行こうだの、何それをしようだの、今からもうぬれ落ち葉になりそうな気配。ま、ほんとうに急に仕事が途絶えるようなことがあっても、65歳定年まであと2年のところまで来ているし、それまでの生活を十分に補填できるだけの蓄えもあるし、二人とも完全に隠居になったときのためのミニ予行演習みたいなものだと思えばいいかな。濡れ落ち葉は外(ボランティア)に出て日に当たれば適度に乾くだろうし・・・。

新聞を見ると、アメリカの景気は割と良い方向に向かっているようなのに、カナダドルは相変わらずのバカ上がりで、今日の対米ドルレートは1ドル3セント以上。福島原発の問題で原油や天然ガスの需要増を見込んでいるのかな。その対米ドルで日本円が下がって来ているから、こっちはダブルパンチ。秋には対米ドルで90円くらいまで下がるかもしれないというから参っちゃうなあ、もう。だけど、そんなに円安に振れていいのかな。もちろん、日本の政府としてはこれからソニーやトヨタにプレステやアニメやプリウスをじゃんじゃん輸出してもらって稼いでもらわなければならないから、輸出の足かせになる円高は望まないだろう言うことはわかるけど。

わかるんだけど、円安になったら輸入しているものの価格が上がる。日本はこれから原子力に代わる発電源として石油や天然ガスが必要になるだろうし、被災地の復興のための建設資材も国産だけでまかない切れるはずがないし、放射能汚染が広がればこれまで以上に食料品を輸入しなければならなくなるというときに、円安になったら困らないのかな。どれも日本国内の生産で十分にまかなえるから大丈夫ということなのかな。輸入価格が上がるということは、日本国内の消費者にとっては生活物資が値上がりするということで、国産品がみんな安全だと言い切れるかどうかわからない状態では、間に合ってますも何もないだろうに。その上で復興の財源にすると言って消費税率を上げられたら、生活者の家計にはダブルパンチ。もっとも、円高をいいことにあれもこれもと買い占められたら、今度はこっちが困るかもしれないな。

新聞にLos Angeles Timesから転載した記事があって、福島原発で作業状況や、食品や魚から検出された放射能のデータ、政府の対応などを長々と伝えていたけど、その中で全国紙の読売新聞が実施した原発に関する世論調査の結果を月曜日に発表したという一節があって、福島原発事故による不安にもかかわらず、回答者の半数近くが現存の原発を維持することを支持していたと書いてあった。えっ、原発反対が多数じゃないの?と思って、早速読売のサイトを探してみたら、あった、あった。(URL) 「今後、国内の原子力発電所をどうすべきか」という問いに、46%が「現状を維持すべきだ」と答えている。記事には電話による全国調査とあるだけで、調査対象者の人数や誤差限界の数字が記載されていないから、統計としての有意性にちょっと問題があるけど、それでも、東電が喜びそうな意外な結果。ふむ、放射能が飛んで来るのは怖いけど、さりとて電気をふんだんに使えないと生活に支障が出るし・・・二十一世紀の選択は難しいな。

新聞記事、最後に「ちょっとポジティブなニュース」として、NHKが漂流する屋根の上から救助されたワンちゃんが飼い主と再会したと報道したという一節で閉められていた。歴史的な悲惨な災害でみんな暗い気持になっているときだからこそ、アップビートな話で締めくくっているのは、いかにもハッピーエンドが好きなアメリカ人らしい。

だから円高にしなきゃと言ったでしょ

4月5日。火曜日。雨は止んだけど、けっこう肌寒くて、午後になっても10度まで行かない。予報を見ても、最低気温が零度近くまで下がっている。ずっと東部や大西洋岸で大雪を降らせて暴れていたラニーニャ嬢が今頃になって「そういえば、あっちの方へはご無沙汰だったわ~」なんて思い出したわけじゃないだろうな。温室では野菜の苗がどんどん伸びているってのに、今頃こっちへのこのこと来られても迷惑なんだけど。(冬中だって来られたら迷惑だけど・・・。)

朝食後、まずメールだけチェックして、(中サイズの)トートバッグを担いでモールに急行。金曜日の夜に買い物に行ったときにチェックした私書箱に「保留メールあり」のカードが入っていたので、まずは溢れた郵便物の引き取り。モールは水曜日から金曜日の3日。だけ午後9時まで開いているから、その時間前に買い物に行けば私書箱を溢れさせることはないんだけど、スーパーが真夜中まで開いているもので、つい早く行きそびれる。今日もカウンターのお嬢さんに「保管料を取った方がいいんじゃない?」と言ったら、「ほんとねえ。We should!」とウィンク。ずっしりと重い(ほとんどがカタログの)郵便物の束を引き取って、今度はスーパーへ。金曜日の夜に行ったときにカレシが自分のリストに書いてあったオレンジジュースを買い忘れて、今朝の朝食が最後。増量するのにグレープフルーツも使ってしまったから、明日の朝のために緊急調達。トートバッグが重くて肩に食い込むので、とりあえず冷凍のを1個だけ。

帰り道の地下鉄駅の前に食べ物の屋台が出ていて、焼きそばや牛丼、その他アジア食を売っている。近くにカレッジがあるからけっこう需要があるだろうな。屋台といえばホットドッグが定番だったのを、市がコスモポリタンなバンクーバーでそれはないだろうと、エスニックフードの屋台を奨励し始め、メニューや衛生管理などの審査をして営業許可を出している。出店場所は抽選か何かで決まるらしい。きのうからダウンタウンで新たに19台が営業を始めたそうで、ラジオ局のサイトがそれぞれの出店場所のリストを載せていた。ギリシャ、ベトナム、インドと結構バラエティがある中に「たこ焼き」を見つけてびっくり。場所はペンダーストリートの800番地台のブロック。「和風」ホットドッグで成功したJapadogの二匹目のドジョウになるかな。たこ焼き大好きのカレシを引っ張って行ってみなきゃ・・・。

早い夕食を済ませて今日から再開する英語教室へカレシを送り出して、ゆっくりと新聞めぐり。ロイターズに「円安は日本経済の重荷になるかもしれない」という分析記事が載っていた。平時なら円安は日本企業の強い味方だけど、今は円高の方がトリプル災害からの復興に貢献するのではないかと言う話。ほら、きのうワタシが言った通りでしょ?と、わりと鼻高々にカレシを相手に円高推進論をぶってみたら、経済学専攻だったカレシは「それはそうだけど」と肯定しておいて、「でも、日本じゃ誰もキミの言うことなんか聞いてないよ」と否定。ま、そりゃそうだな。ワタシは経済学者じゃないし、えらい評論家でもないし、いや、ワタシという人間が日本には存在してないもんね。それでもやっぱり円高に誘導すべきだと思うんだけど、あんがい外国投資家が東電とか日本株を売り払って東京市場から逃げ出しているせいで円安に振れていることもあり得るし、実際はどうなるんだか・・・。

放射能汚染した水を大量に海に放出したせいで、農業に次いで今度は漁業が風評被害。そうなると思ったけど、築地が茨城の魚の引取りを拒否したという話。築地市場としても売れそうにないからしょうがないということなんだろうけど、フランスの研究所と大学が予測した汚染水の拡散を見ると、放射性物質の濃度は薄まりはしても、「汚染水」は仙台湾まで届いて、さらに広がって行く。大地震と大津波であれだけの被害を受けた宮城の人たちが、また今度は放射能汚染という災害に見舞われる(現に、漁ができなくなっている)わけで、すごくやりきれない気持になる。政府は農業も漁業も、すぐに「補償する」といとも簡単に言っているけど、この分だとものすごい額になるんじゃないのかな。身内から借りたとはいえ借金率200%の国のいったいどこにそんなお金が埋まっているんだろうな・・・。

いろいろ比較研究してみると

4月6日。水曜日。いい天気だけど、やっぱりまだちょっと低温。寝ても寝てもまだ寝たりない気分で、正午過ぎに起床。カレシが階段の下から「今日は1ドル4セントだってさ」と、昼のニュースで流れたばかりの対米ドルレートを教えてくれる。ああああ。仕事なんかしたくなっちゃうなあ、もう。円高と同じで、カナダドル高は輸出産業にはきつい。かく言うワタシも端っこの端っこだけど、一応は輸出ビジネスだから「働けど、働けど・・・」みたいになってしまう。何とかしてくれないかなあ。

でもまあ、もうすぐ復活祭の連休だし、高くなったカナダドルを持ってみんな大挙して国境の南へショッピングに行くんだろうから、消費者が潤うと言うことではいいことなのかな。ワタシもどさっと来た通販カタログを見てネットで越境ショッピングしようかな。もちろん、みんなが南へ行ってしまうと肝心のカナダ側のビジネスが困るし、アメリカドルが安くなればアメリカ人はカナダに遊びに来なくなって観光産業も困ってしまう。つまり、あちらが立てばこちらが立たずで、国際経済はややこしい。年末でには1ドル10セントくらいまで行くと言う予想もあるから、しばらくはヒマな方が気が楽かもしれない。

原発危機も、見ていると何だかあちらを塞げばこちらで漏れるみたいなことになっているようで、Damned if you do, damned if you don’tというか、すべてが「苦渋の選択」らしい。Bloombergのコラムでウィリアム・ペセクが「日本人も怒りを抑える限界に来ている」というような、なかなかおもしろい洞察をしていた。データを改ざんしたり、リスクを過小評価したりの毒企業なのに、役員たちは今も給料をもらっているし、首にもならないでいる。ソフトバンクの孫社長が100億円もの私財を寄付したのに、東電の役員からは新聞記事になるような寄付があったという話は聞かないのはどういうことだ、という論調。たしかに原発危機対処の手際の悪さや「不安を煽らないように」という一見ありがたい理屈を建前にした「隠蔽体質」を傍から見ているとじれったくなる。でもまあ、いろんなビジネス文書を翻訳していると、何も東電だけじゃないし、財界だけじゃないし、それに昨日今日始まったことでもないことはわかるんだけど。

ヒマな方が気が楽だなんて言っていたら、Talk of the devil(噂をすれば)で、あ~あ、右からも左からも仕事の話。アメリカから来た日本語のテープ起こしを含むプロジェクトはかなり大きそうだけど、サンプルを聞いてみたら全然わからなくて愕然となった。英語なら何年も上級秘書として口述テープのタイプをやっていたからまだ自信はあるけど、日本語の口述タイプはやったことがない。それでもかっては同時通訳だってできたんだから聞き取れるはずだと思うんだけど、日本語で話をしているのはわかるのに、いくら音量を上げて、耳をかっぽじって聞いても、意味のある言葉として聞き取れない。日本語を耳で聞くことがほとんどないから、ボケてるのかもしれないけど、こりゃだめだ。翻訳の方ならやれると返事をしておこう。それにしてもなあ・・・。

読売の見出しに『海外の大衆紙、恐怖心あおる誇張報道』というのがあった。読売くらいの大新聞なら、欧米のいわゆるタブロイド紙と呼ばれる大衆新聞が日本の(東電みたいな会社にお勤めのリーマンおじさんたちが電車の中で読んでいるエロっぽい写真満載の)大衆週刊誌と同じようなもので、無知な人たちが読むものだということぐらい知っていそうなもんだけどな。ふむ、海外のマスごみに注意を逸らそうとしたりして、何か魂胆があるんじゃないの?怪しいな。まあ、CNNもビジュアルに似たようなことをやってるけど。それにしても、この3週間はジャーナリズムの比較研究のような面もあって、ワタシには大いに勉強になった。

夕食後、遠い方のスーパーへ野菜や魚の買出し。魚もたくさん、野菜もたくさん。何日か前に日本から飛来したと思われる放射性よう素が海草や雨から検出されたというニュースがあったけど、ワタシが(自分の周囲を)見る限りでは放射能が怖いからと言って魚や野菜を敬遠している人はいないな。マクドナルドよりも数が多いと言われるスシ屋の商売に香港の場合と同じような影響が出ているのかどうかは知らないけど、日本からの食料品の輸入はほんとに微々たるものなので、輸入停止になっても日本食産業以外は気づきもしないだろうと思う。今ホットなニュースはカナダ連邦議会の総選挙。カナダ人が自分たちの政府を選ぶイベントだからカナダのメディアと国民の関心が集中するのは当然だと思うけど。

翻訳者はマゾヒスト・・・NOT

4月7日。木曜日。いい天気。起床は正午前。きのうの真夜中のランチに即席サムゲタン風お粥を作って食べたせいか、すごく快適に眠った気がする。

Globalの正午のニュース。日本で大きな余震。津波なし。原発に異常なし。窒素を注入する作業を継続中。韓国では放射能雨を心配して学校が休校。カナダドルの対米ドルレートはまた上昇。総選挙は保守党、自由党ともちょっとした「ダメージコントロール」モード。この好天は週末まで続き、気温も上昇。ただし、来週はまた雨になってやや低温。NHLホッケーは地元カナックスがこともあろうに最下位チームに2連敗したあげく、プレーオフ直前になってフォワードのトレスが4試合も出場停止になって、監督もGMもいたくおかんむり・・・エトセトラ、エトセトラ。うん、ワタシはGlobalローカルの昔ながら?の1時間のニュース番組が好きだな。

大きな事件や事故や災害のニュースが「煽り」のような印象を与えるようになったとすれば、ケーブル放送に「24時間ニュース専門ネットワーク」ができ始めて以来じゃないかと思う。毎日24時間ニュースを流し続けるといっても実際は15分くらいのサイクルだから、事故や災害の映像がテレビの画面に約15分おきに、これでもかというように繰り返し、繰り返し映し出される。映像が悲惨であればそれだけ見ている人の感情に与える衝撃は大きい。日本に同じ形式のチャンネルがあるかどうか知らないけど、なじみの薄い人たちが煽情的に感じるのはありだと思うな。カナダのCTVやイギリスのBBC Worldを見慣れているワタシだって、「もういいよ」と言う気分になることが多いもん。

もういいよとげんなりした協会の理事会選挙もなんとか無事に終わって、国籍条項だの公職選挙法だのを持ち出した真性KYのご仁は大差の最下位で落選。やれやれと思ったら、駅裏の赤ちょうちんおじさんはまだひと言多い。昔、(一緒に飲むには楽しい人だけど)石頭の一言居士のアメリカ人会員がいたけど、この日本人会員もそれに勝るとも劣らない一言居士だなあ。おまけに軽妙洒脱な切り口が売りだと思っているような節もある。それで駅裏の赤ちょうちんの中年サラリーマンを連想してしまうわけで、それが実際の人柄なのか、あるいは「ネット人格」なのかどうかは実物を見たことがないからわからない。それでも「もういいよ」というくらいわずらわしいから、しばらくはKillフィルタを外さずにおこう。

ほんとにコミュニケーションは難しい。言語と文化を共有する人間同士でさえツーカーで通じ合えずに誤解や軋轢が生まれるんだから、同じ言語をしゃべっていても文化が違えばうまくカチッとはまらないところがあるだろうし、文化が同じでも言語が違えば同じようなものだろうと思う。言語も文化も違うとなったら、やっぱり高飛びのバーのように一段も二段も高くなってあたりまえなのかもしれないな。好きでやっているとは言え、2つの言語、2つの文化の石壁の間にがっちりと挟まれて、イタリアの諺のように「Traduttori traditori(翻訳者は裏切り者)」と疑いの目で見られながらも、言語、文化その他諸々の「異種」コミュニケーションの取り持ちに苦心している翻訳者も通訳者も、ちょっとマゾっぽいところがあるのかもしれないという気がして来たけど・・・。

森の外にいる人には森しか見えない

4月8日。金曜日(だよね)。今日も好天で、気温も春らしくなってきた。きのうカレシが「下着がなくなった」と言い出したので、今日はまず洗濯機を回す。この1年以上新しい下着がいると言ってなかった、アナタ?「下着がない」とか「新しいのがいる」と言い続けていれば魔法みたいにボッと現れるとでも思っているのかなあ。案の定、洗濯機を回しておいてモールにあるデパートに買いに行くはずだったのに、天気がいいから庭仕事をしたいので、買い物は夕食後にしよう、と。ま、金曜日はモールが午後9時まで開いているけど、行く方に賭けるか、行かない方に賭けるか・・・。

去年の夏に連邦と州の売上税を統合したHSTが導入されてから反対派が要求していた住民投票。どうやら7月上旬に郵便投票で賛否を問うことが決まった。施行から1年後と、後出しもいいところだけど、地元ラジオ局がネットでやっている世論調査ではHST廃止に賛成と反対がほぼ互角になっている。へえ、去年はあれだけ猛烈な反対が巻き起こって、キャンベル州首相の引退につながったのに、やっぱり喉もと過ぎればと言うことなのかな。元々HSTの打撃を受けたのは州税のPSTが非課税だったものだけで、日常のたいていのものはそれまで連邦税(GST)5%と州税7%だったのが合わせて12%の売上税になったにすぎないから、結局はさほど大きな影響を感じなかったのかもしれないな。遅ればせの住民投票、どんな結果が出るか・・・。

市役所が住宅地で抗議活動のための構築物や看板を設置することを禁止する条例改正をしたのはいいんだけど、その改正作業で中国政府と相談したことがリークして問題になっている。事の起こりは、高級住宅地の片隅にある中国領事館の外にずっと前から法輪功の団体が中国での弾圧に抗議して小屋を作っていた。中国はカナダ政府やバンクーバー市に抗議して取締りを要求し、市は新しい条例を作って小屋を撤去させた。ところが法輪功の訴えで最高裁判所がその条例は憲法違反と判断して改正を命じ、その期限が後10日。に迫ったところで改正した条例を発表したわけなんだけど、主権国家であるカナダの1州の1都市であるバンクーバーの市役所が外国の政府にお伺いを立てるなんて、アエリナ~イ。ま、そういうことがありえてしまうのが我が街のお役所の不思議なんだけど、何億円もする住宅を買いまくっている中国本土からの移民が注目されているときだし、11月の市長・市議会選挙、おもしろくなりそう。

春の観光シーズンのピークだというのに、福島から遠く離れた京都でも外国人観光客が激減しているそうで、「外国人は日本全体が危険だと思っている」と嘆いている。でも、海を隔てた外国の人には北の端から南の端までひっくるめて「Japan」なんで、そのJapanで大地震があった、大津波があった、原発事故があって放射能が出ている・・・そう聞いただけでJapanは危ないと思ってあたりまえだと思うよ。日本人にはカナダは西の端から東の端までひっくるめて「カナダ」であって、たまたま出会った人を見て「カナダ人は~」となるのと同じことだと思うけどね。森の中にいる人には松も杉も柳も見えるだろうけど、その外にいる人には「森」しか見えないってこと。

メキシコで新型インフルエンザが発生してカナダ西岸に飛び火したときに、まるで北アメリカ全体がウィルスが蔓延する危険地帯のように騒いで、旅行をキャンセルしまくっていたのは誰なんだろうなあ。煽らずに客観的な報道をしろと外国のメディアにいちゃもんをつけているけど、インフルエンザのときに、北アメリカから飛んで来たというだけで、物々しい衣装で客をバイキンのように扱っているところをテレビで流すパフォーマンスをしたのはどこの国だったかなあ。ま、森の中の木には森の外は見えないってことでもあると思う。

日本では、『福島県民お断り』という張り紙をしたガソリンスタンドがあったり、福島の人がレストランやホテルで断られたり、車に落書きされたりするという「風評被害」が起きているという記事があった。ま、そういうことが起きるだろうとは予想していたけど、そのうちに小町横町に「福島の人と結婚しても大丈夫でしょうか。生まれて来る子供のことが心配です」なんてトピックが上がってくるだろうな。だけど、そういうニュースはたぶん外国の人たちの目には触れないだろうから、日本人の評判に傷がつくことはないと思うな。ここは、遠くから森を見ている人たちに森の中の木々が見えないのはプラスだということもあると思わない?

ただいま開店休業中

4月9日。土曜日。雲が広がってきた。カレシが早めにごそごそと起き出したもので、釣られてワタシも起きてしまって、なんとなく寝足りない気分。ゆうべからのカレシのリクエストで、ベーコンポテトと目玉焼きの朝食。カレシが肩が痛いといいながらオレンジをいくつも絞ってくれたのでフレッシュなジュース。冷凍の濃縮ジュースとはオレンジの種類や質も違うだろうけど、絞りたてのジュースはやっぱり味が違うなあ。

正午にテレビをつけたら、ゴルフの中継をやっていて、昼のニュースは完全に休みのもよう。週末はいつも30分で端折ってゴルフ中継なんだけど、ま、世の中、平和そうでいいか。チャンネルを切り替えてCTVの24時間ニュース。アメリカ合衆国は「お手元不如意につき臨時休業いたします」ということにはならなかったようで、まずはめでたい。でも、恒例の年次危機になりつつあるような気がしないでもない。ま、アメリカのことだからアメリカ人が何とかすればいいことだけど、就任当初は若々しかったオバマ君もすごく老けたという感じがした。クリントンもブッシュも大統領になって一期目が終わる頃には目に見えて老け込んでいたっけ。戦後最悪の事態と格闘している菅さんはどうなんだろう。菅さんが出て来ないもので、こっちではエダノさんが日本の首相だと思い込んだ人もいるけど・・・。

連邦議会総選挙が始まってほぼ2週間になるけど、保守党と自由党の支持率の差はあまり縮まらず、未だに9ポイントの大差。保守党はちょっぴり下がったけど、上がったのは3番目につけている万年野党の新民主党。ハーパー首相は参加登録をした人の集会に出て公約をぶち上げたりしているのに対して、ハーバード大学を辞めて「救国の士」のつもりでカナダに戻って来て、自由党党首になって、「国民は選挙を求めている!」と威勢よく保守党少数政権を倒したイグナチエフは街頭に出没して支持者と握手して回ったり(いわゆるbaby-kissingというやつ)、バーベキューをやったりの古典的な選挙戦。それなのに、大手のリサーチ機関が各党党首の選挙戦のスタイルを成績評価する調査をしたら、ハーパーはAかBが多い好成績なのに、イグナチエフはどうも「落第点」が多いらしい。とどのつまりは、経済は結構うまく行っているんだし、当面はハーパー政権で文句はないということなのかなあ。選挙ってほんとにおもしろい。

大地震からほぼ1ヵ月経って、収束が見えない原発については毎日「何それに放射性物質がいくら」みたいな記事ばかりで(大きな危機が起きていないと言う意味ではいいことだけど)メディアも少々飽きて来たのか、このひと月の政府や東電の動きや、買いだめや海外での反応といったいろいろな事象を検証する分析記事がちらほら目に付くようになった。産経にはおとといだったか参議院議長とのインタビューがそっくり話し言葉で掲載されていて、じっくり読めたし、今度は「大震災特別連載」と言うのが始まっていて、その初めが首相官邸の「開かずの扉」(首相の執務室)。これもじっくり読むと自然災害が「人災」に発展していく様子を垣間見ることができる。また、社会心理学者その他による「社会事象」の分析もなかなかおもしろい。きっとワタシはこういうタイプの「じっくりと読める記事」を求めていたんだろうな。

考えたてみたら丸々1週間も仕事をしていない。予約はあるけどまだ10日。も先のことだから、このままさらに1週間くらい開店休業が続きそうかな。湾岸戦争が勃発したときも阪神大震災が起きたときも一時的にばったりと仕事が途切れたから、今度もそういうことだろう。一国の経済活動を止めるわけにはいかないし、ビジネス活動まで自粛しているわけではないだろうから、そのうちまた少しずつ動き出すだろうな。まさに未曾有の大災害だったんだから、ペースを取り戻すまでにはかなりの時間はかかるだろうけど。まあ、ちょうどいい機会だと思って(と言うと語弊があるかもしれないけど)、しばらくはゆっくりと休養させてもらうことにしよう。

自粛にもいろいろあって・・・

4月10日。日曜日。正午を過ぎてゆっくり起床。朝起きて真っ先に仕事の納期を考えなくてもいいのに慣れてきた。ま、慣れすぎてしまうのも何だけど、ご隠居さん暮らしの予行演習としてはいい感じ。

朝食後、日本の新聞サイトへの接続がやたらと遅いと思ったら、前日が地方選挙の投票日で、一夜明けての月曜日早朝だから、たぶん新聞社が記事を更新中だったのか、あるいはアクセスが殺到したかのどっちかだったんだろう。東京は石原さんが四選して、「パチンコや自動販売機に1千万キロワットも消費する国は日本くらいのもの。パチンコ好きはがまん、自販機はなくても生きて行ける」と言ったそうな。1千万キロワットか。ギンギラギンのネオンにチンジャラジャラにドンチャカドンチャカの大音響だから電気のメーターの回り方もすごいだろうな。自動販売機も、犬が歩かなくたって棒の方から当たって来そうなくらいある。カレシが東京は明る過ぎると言っていたけど、そのために東京電力は東北電力の管内にある福島にあんなにたくさん原発を作ったとしたら、福島の人は踏んだり蹴ったりだよね。新潟にある刈羽原発も同じで、発電した電気は地元にはほとんど流れていなかったんだって。本当だとしたら、東電はえらく傲慢な企業だと思うけど、首都圏は「地方」とは別格なんだろう。ところで、東電のロゴ、なぜかミッキーマウスみたいに見えるんだけど、英語のスラングで「mickey mouse」と言ったら何を意味するのか、東電の社長、知っているのかなあ・・・。

小町を見ていたら、「自粛ムードから解禁するのはまだ早いか」という趣旨のトピックがあって、賛否両論。書き込みを読んで行くと、「今まで楽しめたことをやる気になれなくなった」から、自粛はやめろといわないでくれと言う人がいるかと思うと、「そんなにもディズニーランドへ行きたいのか」と遠まわしに楽しむのは「不謹慎」と言っている人もいる。戦争中に「欲しがりません、勝つまでは」のスローガンで国民を統制したのに似ていて怖いという人もいた。まあ、そうやって暗黙的に「罪悪感」を植えつけて他人の思想を統制する風潮はこれが初めてじゃないと思う。ここでも「自分がこういう気持なのに/こういうことを(我慢して)やっているのに、他人も同じでないのは許せない」という心理が浮き上がって見えて来るからおもしろい。匿名の掲示板で解禁はまだ早いかどうかなんて聞いているけど、別に政府が「自粛」をお願いしたわけじゃないだろうから、数を頼むような多数派工作をしなくても、自分の判断で最善の行動を取ればいいんじゃない?楽しむ気になれない人は何もしなくていいし、盛り上げようと言う人は大いに盛り上げればいい。ま、この「自粛ブーム」、海外のメディアにも「jishuku」として登場するようになったから、そのうちにOEDに新しい外来語として採用されるかもしれないな。

さて、カナダ連邦議会総選挙も投票日まであと3週間の佳境?に入って、保守党、自由党、新民主党の政策プラットフォームが出揃い、今週はテレビで党首討論会がある。この討論会に呼ばれなくて大いにむくれているのが緑の党のメイ党首。裁判所に訴えてみたけど、あっさりと却下。だって、グリーンは残念ながら議席を持っていないし、メディアが主催する討論会だからしょうがないだろうと思うけどな。環境活動家だけあってまるで小学校の先生みたいに口やかましいし、人の発言は聞かないでしゃべりまくるし、それにティーンの女の子じゃあるまいし、あのケラケラ笑いは国政レベルの政党の党首としてはちと軽すぎると言う印象はぬぐえない。

カナダは英語とフランス(ケベック)語が公用語だから、党首討論会も英語圏向けとフランス語圏向けがある。そのフランス語圏向けの討論会が当初予定されていた木曜日から水曜日に急遽繰り上げになったんだけど、その理由と言うのが何と「ホッケー」。モントリオール・カナディアンズとボストン・ブルインズのプレーオフ第1ラウンドの初戦が木曜日ということで、テレビ中継がかち合ってしまうと、フランス語系ケベック人から抗議が殺到したらしい。はい、はい。選挙よりもホッケーの方が最優先だから、政治談議はジシュクというわけね。でも、笑っちゃうなあ・・・。

笑っちゃう話といえば、夕食後にカレシが金曜日に買って来たGodivaのチョコレートをほとんど食べてしまったので、「キミにチョコレートを買ってあげないといけないんだ」けど、GodivaよりもDaniel’sの方が好きだから、芝居のついでに行きたいと言い出した。ええ、ワタシ、まだ3個くらいしか食べていないのに、いつのまにか一箱食べちゃったの?それで、ワタシに買ってあげたいけど、自分の好きな方のを買いたいってこと・・・だよね?あ、つまり、ワタシの分まで食べてしまった埋め合わせは口実で、買ったらまたみんな食べちゃう気・・・でしょ?あのさ、つまみ食いをジシュクしないと、太っちゃうよ、アナタ・・・。

太平の眠りを覚まされた日

4月11日。月曜日。目が覚めると明るい。正午ちょっと前。う~ん、まだ早いからこのままもう少しうとうとしていようかなあ・・・なんて思っていて、突如思い出したのがきのう飛び込んで来て今日が納期の仕事。メールを打っている最中にあの最大余震が来たらしく、かなり揺れたと書いてあった。あれからちょうど1ヵ月で、少しずつ普通の毎日になって来たところでグラリと大きな余震が来ると、誰だってもういい加減にして欲しいという気持になるのは当然だけど、いい加減にしろと言っても聞いてくれるような相手じゃないから・・・。

とにかく、がばっと起きて、朝食を済ませて、早く起きたからとちょっとのんきに『On The Road』の続きを読んで、それから仕事。ごく小さなもので、しかも軽い内容だから楽々。だらけた頭を適度に活性化してもらった感じがする。それで午後が過ぎて、トレッドミルでさらに頭のくもの巣を払って、夕食の支度を始めたところで、あさって行くつもりの芝居の座席予約を忘れたのを思い出した。まあ、今回はイアンとバーバラがヨーロッパを旅行中でワタシとカレシと2人だけだし、週の真ん中の水曜日だから満席と言うことはないだろうけど。

夕食が終わる頃に東京から電話ですぐに送るから今日中にできないかという超特急の仕事の話。うわ、10日。もしんとしていたのにどうなってるんだろうな。ひょっとしたら、少し仕事をさせておかないと年だからボケてしまうと思ったのかもしれないなあ。ま、ありがたいと言えば、ありがたいけど。最後のひと口を食べて、コーヒーを片手にオフィスに降りて、ファイルを開いたら、何とかなりそうだったので、よっしゃ~とばかりに超特急でぶっ飛ばして余裕で仕上がり。それにしても何だかあわただしい1日。だったなあ、まったく。

ワタシの誕生日まで後2週間で、カレシが注文したプレゼントが5月まで届かないけどいいかと聞いてきた。え、プレゼントって何だろう。ここのところ、郵便でどさっと来るカタログを見ては、これはいいな、あれもいいなと「ヒント」を出しまくっていたんだけど、その中のどれかな。それともまったく別のものかな。この年になっても誕生日大好きのワタシは今からワクワク。復活祭の日付で計算上一番遅いのがワタシの誕生日なんだけど、今年は暦のめぐり合わせで復活祭四連休の最終日(月曜日)。前回はカレシが生まれた年で、次に回って来るのは27年後の2038年。おお、ちょうど満90歳の誕生日じゃないの。極楽とんぼにふさわしいめぐり合わせのようなもするから、これもちょっぴりワクワクするような話。うん、本番までまだ2週間あるけど、何だかもう久しぶりに盛大にご馳走を作って食べたい気分になって来た・・・。

フクシマは友情も溶融するのかな

4月12日。火曜日。まあまあの天気で、のんびりと起きて、のんびりと朝食を取って、のんびりと本を読んで、のんびりとメールをチェックしたら、きゃっ、また仕事。カレシが「開店休業なんて絶対に長続きしないと言っただろ?」とニヤニヤ。あれこれと遊びのプランをぶち上げていたのはどっちだったかなあ。まあ、仕事は仕事。あるときには喜んできちんとやらないとね。

会計事務所から2人の所得税確定申告書が送られて来た。といっても、メールにPDFで添付されているので、まずは保存して開けてみる。カレシは15万円ほど、ワタシは3万円ほど、それぞれ追加納税になっている。カレシの3つの年金のうちで所得税を源泉徴収して来るのは組合年金だけなので、毎年ドンと追加で取られるのは当然だけど、ワタシの方は自営業の事業所得だから、景気次第で戻ってきたり、追加を取られたり。でも、今年は少し戻ってくるはずだけどなあとよく見たら、カレシの年金収入から60万円もワタシの所得に振り替えてある。何年か前に年金受給世帯の減税策として、年金収入の一部を配偶者の所得に移して、夫婦の合計納税額を減らせる制度ができて、会計事務所にOKを出せば最適な振り替え額を計算してくれる。振り替え前後の比較表を見ると、今年は夫婦で5万円ほどの節税になっていた。ま、取られる税金は1円でも少ない方がいいに決まってるよね。

福島の原発事故がレベル7に引き上げられて、史上最悪の「nuclear crisis(核危機)」のひとつになったけど、チェルノブイリほどじゃないとか、チェルノブイリとは違うとか言っても、一気にまとめてドンと出たのと1ヵ月かけて小出しにして来たくらいの違いで、ものすごい量の放射能を人工的に環境中に吐き出したことには変わりないと思うけどな。外国メディアは騒ぎすぎだと言われて来たけど、「最悪レベル」になったところで「今ごろになってわかったのかいな」というところかもしれない。大震災に関しては今も世界中で哀悼の気持は変わっていないけど、核危機は自然災害じゃないし、大気も海もつながっていて結果的には地球上の人類全体に影響するんだから、騒ぐのもあたりまえだろうに。だいたい、自分たちは外国で起こった事件に「大変だ、怖い」と大騒ぎするのに、自分たちの足下で事件が起こると「騒ぐな」と言うのもねえ。人間には都合の悪いことを他人に知られたくないという心理があるのはたしか。でも、政府や企業の「隠蔽体質」はそういう心理が社会的に集積した結果じゃないかと思うんだけど。

核危機で日本に住んでいた外国人たちが帰国したり、母国に避難したりしていることで、小町では同行した日本人妻たちがけっこう叩かれている。外国人が母国へ帰って行くのを「海外逃亡」なんて言葉で表現する人もいて、アメリカで同時テロがあったときには日本へ帰った日本人がかなりいたという書き込みは無視。外国人ならしかたがないと一応の理解を示す人はいるけど、日本人妻が親兄弟、友達を日本に残して外国人と一緒に逃げ出すのは身勝手だと言う反応になるのかな。まあ、募る不安の中で、安全なところへ移るという自分たちにできないことをできる人が疎ましいだけなのかもしれないけど、これも風評被害のうちに入るのかな。まったく、東電のせい?で日本人の「友達関係」がどれだけ解消(unfriend)されることやら・・・。

今日は英語の党首討論会。東部時間だから西の端のバンクーバーでは午後のけっこう早い時間に始まる。全国の応募者から選ばれたらしい「一般市民」が質問して、それをスタジオに並んだ党首たちが討論する形式になっている。号砲一発、質問の内容が変わるたびに、野党3党は一斉にハーパー首相を攻撃。対するハーパーはクールに「対策は野党が否決した予算案に織り込んであった」とやり返す。ああだ、こうだ、なんたらかんたらの四つ巴の舌戦、直後の国民の反応はハーバー首相に軍配が上がりそうな気配。バンクーバーのラジオ局のオンライン投票でのランキングはハーパー、レイトン、イグナチエフ、デュセップの順になっている。もっとも、討論会で誰が勝ったと思うかと言う質問に対する投票だし、西部は保守党の基盤だからハーパーが強いわけで、自由党の基盤であるオンタリオ州の新聞サイトでは、イグナチエフがほぼ互角でハーパーに迫っているから、ある程度の勢力地図が描ける。それにしても、イギーは一生懸命なのはわかるし、学歴、毛並み共申し分ないのに、何をやっても「この人を首相に!」という流れができて来ないのはどうしてなんだろう・・・。

プレーオフはタオルパワー満開の季節

4月13日。水曜日。ごみ収集のトラックの轟音で目を覚まして、ごみを出したっけ~?と夢うつつで考えながら、またしばしうとうと。でも、カレシが起き出したし、今日は掃除の日だしで、結局は午前11時半には起きてしまった。何となく眠いけど、夕方までに済ませて納品しなければならない仕事がある。期限は夜11時だけど、今日は芝居に行くから急がないと・・・。

そして、今日はバンクーバー・カナックスのプレーオフ第1ラウンド第1戦。相手は去年優勝したシカゴ・ブラックホークス。シカゴとはなぜかプレーオフで対戦しては敗退させられてきたジンクスみたいなものがあるから、どうなるかな。プロスポーツのチームをこっちのメディアは本拠の土地の名前(バンクーバー)で呼び、日本のメディアはチーム名(カナックス)で呼ぶ違いがおもしろい。日本のスポーツニュースを見て、キャピタルズって?ああ、ワシントンか。ライトニングって?ああ、タンパベイか。コヨーテスって?ああ、フィニックスか。てなぐあいにいちいち解読?しながら読むのもちょっとクイズっぽくておもしろいけどね。どうしてこういう違いができたのかな。

芝居はジョージ・バーナード・ショーの『The Philanderer』。「女たらし」とでも言う意味のタイトルで、写真で見るおっかない顔とコメディがなかなか結びつかないけど、ショーがノルウェイのイブセンに感化を受けて書いたフェミニズムの先駆けみたいなテーマで、「Ibsenist(イブセン主義者)なんて言葉が出てきたりする、「女が男を獲物として狩る」話。ビクトリア朝時代のウィットがちりばめられていて、おもしろかった。ちなみに、ショーはノーベル文学賞とハリウッドのオスカーの両方をもらった唯一の人だそうで、オスカー受賞作は後のミュージカル『マイフェアレディ』の先駆になった映画『Pygmalion』の脚本。戦前の映画で、ミュージカルよりもずっと上出来というのはカレシの評だけど、一度見てみたいな。

芝居が終わった後は車のラジオを消して帰宅。カレシが試合は木曜日だと言うからかち合わないように今日にしたのに、実はカレシのうろ覚えのスケジュールで、みごとにかち合ってしまった。そこで、試合は録画のタイマーをセットしておいて、再生してみるまでニュースは一切だめということになった。帰り道はすごく車が少なくて、試合は終わっている頃だから、負けてしまってみんなさっさと帰ってしまったのか、それとも、首尾よく勝ったもので、みんなまだダウンタウンのパブやバーで祝賀の気勢を上げているのか。結局は第1ピリオドを見て2対0でリードしていたので、残りは早送りでゴールの場面だけを見ようとしたら、そのまま終わってしまったそうな。初っ端からシャットアウトはなかなか幸先がいいんじゃない?

まあ、これから6月の決勝まで(行けたらの話だけど)、地元ホッケーファンは白いタオルを振り回して一喜一憂する「セカンド・シーズン」が続くわけだけど、この「白いタオルを振って応援」の伝統は、30年くらい前にカナックスのプレーオフの試合でレフェリーのペナルティコール連発に対して当時のニールセン監督がスティックの先にタオルを載せて「もういいよ」という抗議のジェスチャーをしたのが始まりで、監督は出場停止を食ったけど、その後の試合ではファンが白いタオルを持ち込んで観客席は白一色。勢いづいたチームはとうとう決勝まで行ってしまった。最後の第7戦まで粘って、延長戦で力尽きて惜しくもスタンリー杯は逃したけど、それ以来「白いタオル」はファンの必携品。今ではチームのロゴ入りオフィシャルタオルが売られている。ちなみに、「タオルパワー」の元祖ニールセンは数年前にガンで亡くなったけど、バンクーバーでは最近アリーナにタオルを乗せたスティックを掲げている銅像が立った。たしか、当時の対戦相手はシカゴ・ブラックホークスだったと思うけど・・・。

風評は便利なスケープゴート

4月14日。木曜日。普通に疲れて眠ったのに、関が出て8時前に目が覚め、しばらくこみ上げてくる咳を鎮めるのに格闘して、やっと眠りに戻ったのがたぶん9時頃。おかげで目が覚めたらとっくに午後1時を過ぎていた。カレシが10時過ぎにゲートのチャイムが鳴っていたというので、ゲートの郵便受けを見に行ったら「不在通知」。あ、通販の品物だ。どのみち明日は(カレシによると)ショッピングデイだそうなので、(いつものように)ついでに引き取ってくればいいか。遅い朝食を済ませて、本を読んでいたら、視界の隅っこでピカッ。3秒ほど数えたところでゴロゴロッ。おいおい、また雷さん?ゆうべもは2回ぐらいだったけど雷が鳴っていたな。バンクーバーはあまり雷が鳴らない土地なんだけど。

それにしても4月も半分過ぎたというのに何ともヘンな天気。けさはずっと郊外のアボッツフォードは時ならぬ春の雪で銀世界。(バンクーバーでも午後4時近くになって雪になろうか、雨になろうか決めかねているような重たそうな雨(あるいは雪)がひとしきり降っていた、ロッキーの向こうのカルガリーでも雪が降って、逆にトロントの方は初夏のような気温になったかと思うとすぐに冬に逆戻りして、来週の天気予報はまた初夏の陽気に戻るらしい。地球の「力場」が狂ったのかな。そのうち、誰か目端の利く人が地震や異常天候や季節外れの陽気をひっくるめて「地球はもうすぐ終わる」みたいな大予言の本を出すかもしれないな。で、21世紀のノストラダムスとかなんか騒がれてベストセラーになり、予言者先生は大もうけをすることになるんだろうな。だけど、地球がもうすぐ終わってしまうのなら、いくら大もうけしても使いきれなくて、結局は豪遊できる身分を楽しまないうちに終末が来てしまうんじゃないのかと(よけいな)心配をしてしまうけども。

在日外国人の映像ニュース投稿サイトにテレビ朝日だかの「外国人の日本脱出」に関する15分ほどのクリップが投稿されていたので音声と一緒に見てみた。メイドカフェだかのウェイトレスが外国人観光客が来なくなったと嘆き、秋葉原などの免税店は金づるの中国人観光団が来なくなったと嘆き、山谷の外国人相手の格安ホテルは予約のキャンセル続出と嘆き、中国人相手の不動産屋は売りに出されるマンションが増えていると嘆き、研修生の名目で低賃金の仕事をしていた中国人労働者が帰国してしまったと嘆き、外国人が日本から「逃げ出した」ことによる日本経済の損失は推定1.5兆円にもなると嘆き・・・。ずっと見ているうちに、表面にこそは出さないけど、「日本に来させて、住まわせて、働かせてやっていたのに恩知らず」と言いたいのかなと思わせる雰囲気が何となく感じられて、小町での反応を合わせると、やっぱり深いところで「自分たちは不安でも逃げることができないのに、外国人はこれ見よがしに逃げ出して・・・」というような感情が暗流のように流れているのかなと思った。

もっとも、ずらりと並んだ(ほとんどが在日外国人の)コメントも小町同様に「ムカつく派」と「容認派」に分かれているから、外国人がみんな臆病で無知で身勝手と言うわけではないことは確か。会社の命令で離日した人もいれば、心配する故国の家族を安心させるために帰国した人もいるし、逆に思い直して日本に留まった人や故国に一時避難した人、情勢を見て日本に戻った人もいる。日本に行こうにも政府の渡航自粛勧告でできないという人も多いだろう。渡航制限地域へ行って万が一のことがあった場合に旅行保険が利かないという事情もあるらしい。渡航制限や自粛を勧告したのだって、もしも「最悪の事態」が起こった場合にチャーター機を差し向けるなどして自国民を救出しなければならなくなるからで、必ずしも不確か(あるいは過剰)な報道に踊らされているわけではない。どこの国だって自国民のめんどうを見るのに手一杯で、外国人を安全に故国に送り返すなんて思いつきもしないと思うけどな。日本政府はそうしてくれるの?

ま、とにかく新型インフルのときはバンクーバーに来る日本人観光客が激減したし、その前のSARSのときも「危険地域」は何千キロも離れたトロントなのに同じ現象が起こった。どれも「感染したら怖い」という気持と、旅行を強行したら帰って来て「村八分にされるのが怖い」という気持が交錯して、多くの人たちにはいろいろな意味で苦渋の決断だったんだろうと思う。だから、「放射能が怖い」と言って日本を敬遠する外国人の気持も少しは理解できるんじゃないかと思うけど、不安の真っ只中にいるときは難しいのかな。こっちでだって、「カナダ中がSARSでばたばた死んでいるわけじゃあるまいし」と呆れてはいたけど、オンタリオではアジア人がタクシーの乗車を拒否されたりして、ちょっとしたパニックはあった。ま、洋の東西を問わず、人間は自力で対処できない不安が募って来るとそれだけ理性が萎縮するものらしい。でも、外国人の日本脱出と来日拒否による経済損失1.5兆円の責任は、そっくりそれほどの深刻な核危機を招いた東京電力と日本国政府にあるんであって、海外での過剰報道や「風評」のせいにしようとするのは国民の注意を逸らせようという政治的な魂胆があるのかもしれないな。