リタイア暮らしは風の吹くまま

古希を迎えて働く奥さんからリタイア。人生の新ステージで
目指すは悠々自適で遊びたくさんの極楽とんぼ的シニア暮らし

2010年3月~その2

2010年03月31日 | 昔語り(2006~2013)
ホワイトデーと女のメイク

3月16日。目覚まし、午前9時25分。ん、なんで25分なんて半端な時間なんだろう。起きて、着替えだけして、ベースメントのソファで寝なおし。ごみ収集日でトラックが通るから、ぐっすりというわけにはいかないけど、しばしうとうと。ロウルが登場したのは10時を少し過ぎた頃。見習いのニール君を連れて来た。いやもう「紅顔の美少年」って感じのかわいい坊や(といっても18才くらいだろうけど)。そっか、照明器具は取り替えるだけの簡単な作業だから、助手がやっている間に、ロウルはバスルームの諸々の制御装置の方のめんどうを見るという寸法。たくさんある箱をこれはここ、これはあっちと仕分けして、作業開始。

バスルームの鏡の両側に取り付けるスコンスはカレシが気に入ったと選んだクリーンなデザインの代替品がことのほかぴったり。ドアを開けるとモーションセンサーがこのライトをオンにしてくれて、そのまま出て来てもちゃんと消してくれるから、カレシ得意の消し忘れがなくなる。天井のライトはシャワーの内外で別々のスイッチ。隣り合わせのところへして、換気扇のスイッチもその隣だから、並んでいるスイッチをいつもよく見ないで間違った方を入れてしまうカレシには楽しみかも。細かな文字の説明書がたくさんあって、今夜は「読書三昧」かなあ。

作業が進んでいる間、仕事は休みということにして、だらだらと小町横町の散歩。ホワイトデーとかいうヘンな日の悲喜こもごも?はおかしいのか、呆れるのか。日本の人はどうしてあんなに「おかえし」にこだわって苦悶するんだろうなと思うんだけど、特にマニュアル的な「マナー」にこだわる人には無視できない社会習慣なんだろうな。お返しの「常識」にこだわりすぎると、もらったうれしさも、くれた人の好意も台無しじゃないのかなあ。でも、「価値観」の価値は小町社会ではきちんと細かく目盛りがついているものさしで計れる価値、つまりは「お金」ということになっているような感があって、人の好意も愛情もそういうものさしで計られるらしい。そういう意味でホワイトデーの「おかえし」のトピックには興味があったけど、「決算報告」を載せている人がいるから仰天。

バレンタインであげたチョコの数14個で総額8650円(最高3600円、最低200円)、ホワイトデーでもらったプレゼント数は8個で推定総額4万2千円(最高2万5千円、彼氏は1万円。最低500円はコンビニのクッキー(怒)だそうな)。投資金額1円あたりのリターンは約5倍。きゃはは、株式や外国為替なんかに投資するよりよっぽどもうかるじゃないの!いっそのこと隔月とか隔週でバレンタインとホワイトデーをやってもらいたいくらいだよねえ。2万5千円も返してきた人は310円のチョコをもらったらしい。彼氏の2倍以上で、しかも彼女のお気に入りブランドのアクセサリーって、ふむ、もらったチョコの値踏みを間違えたのか、それともこの29才女子に気があるのか、ちょっとしたドラマが書けそうだなあ。日本の男は全体的にケチになったと言いながら、彼女は「愛され度アップ」とご機嫌らしい。欧米ではもっとましな割合になるかと想像しているようだけど、残念ながら欧米にはホワイトデーなんてものはございませんのよ。元から日本式のバレンタインデーがないもので・・・。

すごい数の書き込みで女の激論が戦わされているのが『ノーメイク。。。ものすごい嫌悪感』というトピック。30過ぎてメイクをしていない人のシミだらけの肌を見せられると嫌悪感を感じてしまうんだそうな。他人がメイクしていないからって嫌悪感とは、この人も感覚器官肥大症なのか、単なる「他人嫌い」なのか。だけど、ピッチを3段くらい上げたような声で、化粧は女のマナーだとか、身だしなみだとか、シミや老けた肌は汚いとか、盛り上がりっぱなしだからすごい。しまいにはメイク派もノーメイク派もお互いに相手を「性格悪い」(掲示板などでよく見るこの表現は反論に詰まって旗色が悪くなった方が持ち出してくる、いわば「いたちの最後っ屁」のような常套句らしい)。メイクしていない女性には「女の魅力を感じない」と言う意見まで登場。あの~、女が女に女の魅力を感じるって微妙に解釈されそうな表現だと思うんだけど。まあ、にぎやかな女の戦いを読んでいたら、スノボでファッション騒動を起こした国母クンの「ちっ、うるせえな~」というつぶやきが聞こえたような。ほんっとにうるさいよねえ、おばちゃんたちったら。

さて、ほぼ家中の照明器具を新しくしたら見違えるくらい明るくなって、シミもしわもそばかすも何もかもばっちり見えて(見せて)しまいそうだな。だけど、だからといって白塗りするのもなあ、人間の顔は壁じゃないんだから・・・。

世の中は便利になり過ぎかも

3月17日。水曜日。ぽかぽかの陽気。今日はセントパトリックスデイ。パレードはアメリカのニューヨークが元祖だそうだけど、今では世界中の人が一日アイリッシュになる。アイルランドは緑の島。国花のシャムロックも緑。だから、この日のカラーは緑色。シカゴではシカゴ川に染料を流して緑色に染めるのが恒例で、パブでは緑色のビールが登場したりする。まあ、緑色のビールって、想像しただけでええ?と思うけど、飲みすぎて二日酔いになったら顔も緑色になってしまうからなあ。具合が悪いときなど、日本語では「青ざめた顔」になるんだけど、英語的には「緑ざめた顔」になってしまうわけで、日本語と英語の間の「青」と「緑」の感覚的ギャップがこんなところにも出て来る。

朝食の最中に注文してあったサーマル手袋が届いた。Thermoskinというブランドで、一緒に入っていたパンフを開いてみたら、首から肩、腰、足の先まで、体中のあらゆる関節用のデザインがある。指先は爪から先が出るようになって外側は伸び縮みするナイロン/ゴム系の素材で保温作用と軽い圧迫作用があって、内側は吸湿性・通気性の素材で汗をかかないようになっている。なかなかごつくて、初めはキーを打つのにちょっと邪魔だったけど、すぐに慣れて来た。ただし、小指だけは元から短いもので手袋をすると先まで隠れてしまうから、はさみで少し切り落として調節した。

今日はクリーニングデイでシーラとヴァルがワンちゃんのレクシーをお供に到着。私たちが日本に言っている間泊り込みで留守番をしてくれるシーラは、照明のスイッチがないのにちょっと面食らったけど、温まっているシャワーのベンチに座ってみて、「うわ~いい気持~」とご機嫌。そこへマイクから予告があって、ほどなくしてフレッドがシャワーのガラス壁を取り付けに来た。ほんとうに1センチも厚さがあって、何となく高級ホテルのシャワーのような雰囲気に見える。このガラスをタイルに埋め込んだクリップにはめ込んで立てて、クリップのねじを締めて、今日の作業は終わり。スイングするドアの寸法を念入りに測って帰って行った。キャビネットも週末までには完成らしいから、もうあとほんのひと息だな。キャビネットと鏡と三角棚が入って、シンクと蛇口が入って、シャワードアが入ったらいよいよ新しいバスルームが完成かあ。なんだかどきどき・・・。

家の中が忙しい間、きのうガレージのドアの脇に新しくつけてもらった照明のセンサーのセッティングをチェック。やたらと勝手に点いたり消えたりするのは、ロウルが「テスト」モードになったままなのを忘れて帰ってしまったためらしい。脚立を立てかけて、ねじを外してカバーを開けてみたら、ほんとにモーションセンサーは「テスト」に設定してある。っとに、もう。でも、ロウルもきのうは残業だったもんね。ま、これくらいのことならワタシにだってできるからいいけど。センサーが動きを感知してからの点灯時間を「20分」にセットして、裏庭は夜の間中ずっと照明しなくてもいいから「ノーマル」モードにセットして、カバーを取り付けて終わり。簡単、簡単。これで夜に買い物から帰って来て荷物を運び入れるのに、ガレージから出たところで自動的にポッと明かりが点く。迷路みたいな裏庭で足元を照らしてくれるから、安全性もぐんと向上。

センサーひとつでいろんなスイッチをオンにしたり、オフにしたりできるから、もう手を使わなくてもいいってことかなあ。うん、便利になったもんだと思うけど、ひょっとしたら便利すぎるかも・・・。

人間が多すぎるのかな

3月18日。いい天気。公式の春初日(春分の日)はもうすぐだけど、現実にはもう2月からずっと春だし、今週はもう夏時間だし、こっちは別に祝日でも何でもないから、どうでもいいかな。家の外の桜並木はもうほとんど葉桜になって、今度はライラックが色づいて来たところ。でも、3月にライラック開花って、いくらバンクーバーでもやっぱりちょっとおかしい。

何でも30年に一度というくらいの異常気象で、元凶は「北極振動」だという話。この冬はマイナスになったらしい。そういえばだいぶ前に訳した「極渦」に関する論文にも北極振動の話があったな。(地球のてっぺんに竜巻のように巻き起こった渦がふらふらと動いて行く漫画っぽいイメージがあったけど。)朝日新聞に載っていた解説の図を見たら、あらら、偏西風が(エルニーニョの影響で)バンクーバーのあたりでだけぐいっと北へ蛇行して、さして緯度の変わらないヨーロッパの地域は寒波と大雪なのに、ここだけは暖冬。なんだか申し訳ないみたいな気もするけど、冬のオリンピックをやる年に開催地だけ暖冬って、マザーネイチャーは人間を皮肉っているつもりかなあ。

そのオリンピック、今日はパラリンピックのスレッジホッケーで優勝候補のカナダが日本にまさかの敗戦。男女スレッジとホッケー3種目金メダル独占のもくろみが外れてしまった。日本チームの監督さんが言ったそうな、「カナダと千回試合をしたら999回は負ける。今日はその1回じゃなかった」と。決勝はカナダの宿敵の強豪アメリカと対戦だけど、金メダルを取れるといいな。瑕疵のない「完璧」が要求される(らしい)、まだ決して障害者に優しい社会とは言えない国で、特殊な用具や練習場所を確保するのだって大変だろうと想像するけど、「何をもって完璧」とするのかを考えさせる機会になれば、金でも銀でもメダルはぐんと重みを増すと思うな。いつかオリンピックとパラリンピックが統合されればもっといいなあ。がんばれよ、ニッポン!

カナダ統計局がおもしろい予測を発表した。2031年までにカナダの人口の4人に1人が外国生まれで、勤労世代のやっと半分がカナダに少なくとも三世代済み続けた家族になるという。同じデータからは、メトロバンクーバーのいわゆる「ビジブルマイノリティ(先住民と白人以外の人)」があと数年で「ビジブルマジョリティ」、つまり多数派になるという予測も出ていた。その中の大多数はもちろん中国系で、インド系を初めとするアジア系が続くけど、日系人がどれほどの比重を占めるようになるのかはわからない。あんがい「あそこはアジア人だらけ」といってカナダを避けるようになるのかなあ。(今だって中国人や韓国人が多すぎるという文句はけっこう多いけど。)いずれにしても、未来の新しいカナダは名実ともに「太平洋の国」になるってことか。ヨーロッパから北アメリカへと経済の中心が西へ移動して来た後の次の行く先はアジアだから、21世紀は「アジアの時代」になるんだろうと思う。それでまただんだんに西へ移って行って、200年か300年もしたら今度は「ヨーロッパの時代」かもしれないな。それまで人類がこの地球上にいればの話だけど。

スシが食べられなくなる!とひと騒ぎしたクロマグロは結局取引禁止にはならなかったようで、世界の漁獲量の80%を平らげる日本の人はひと安心だろうな。クロマグロはスシやステーキとして食べたことがあるけど、なぜかあんまり感動しなかった。キハダの方がいいけど、ワタシとしてはビンナガが一番好きだな。トンボマグロとも言われるから親近感があるってわけじゃなくて、とにかく一番口に合うから好きなんだけど。ただし、トロは脂っこすぎて魚のおいしさがあんまりないようで苦手かな。でも、東京へ行ったら築地でクロマグロのスシを食べてみようかなあ。高いだろうなあ、きっと。まあ、ビンナガにしてもストックは減っているそうだから、いずれはクロマグロと同じように保護するかどうかでもめるようになるんだろうけど。

ふむ、どうも人間のおかげで、地球の生物の未来はあぶなっかしいなあ。かといって、人間も地球上の生物だからどこかへ行ってしまうわけにはいかない。人間だけは絶滅しないとは言えないとしても、やっぱりマグロが少なすぎるというよりも人間が多すぎるのかなあ。そうはいっても、ワタシも人間のひとりだし、魚は大好きだし・・・

冬の最後の日

3月19日。暦の上では「冬」の最後の日。朝早くから電話が鳴っていて目が覚めたけど、いつものように「こんな時間に誰だ~」とむにゃむにゃ。ところがカレシがむっくり起き上がって、「誰か来ている」。ん?たしかに、ピンポ~ン。「マイクがキャビネットが来るって言ってたんだ」と、あわてて起き出して行った。朝から来ると言うメールは来てなかったけどなあと、寝ぼけた頭で考えつつ起きたところでまた電話。マイクが「おはよ~」。玄関先では人の声がしている。午前10時少し前・・・。

トッドは段ボールに包んだキャビネットと、三角棚を運び入れて、取り付け担当のウェインを残して次の配達先へ行ってしまった。ウェインが包装を外すと、おお、ちょっとワインレッドが入ったおしゃれな色合い。給水管2本と排水管を通す位置を確かめて、ドリルで穴を開ける。素材はカエデなんだそうな。こっちは盛大な爆音を聞きながら朝食。トイレの後のコーナーに三角棚を取り付けるのに、玄関先に電動鋸の台を据え付けての作業。天気はすごくいいけど、開け放した玄関から入って来る空気はひんやりと冷たい。三段の棚をねじで止めて、てっぺんのクラウンと縁取りのストリップをつけて、1時間ほどで作業は完了。キャビネットのドアのノブを買ってこなくちゃ・・・。

マイクが登場したのはキャビネットが所定の位置に納まった頃。「カウンターはどうする?ラミネートにする?みかげ石にする?」 う~ん、ここまで「高級感」が出ちゃってはラミネートはないだろうなあ。みかげ石の方がタイルの雰囲気とマッチするしなあ。高くつくけど。ということで、明日サンプルのタイルをもってみかげ石のシートを選びに行くことになった。キャビネットのサイズとシンクを据え付ける穴のサイズを測ってからの切り出し作業で、また1週間くらいかかるらしい。ふむ、結局「竣工」は月末ぎりぎりになるのかなあ。まあ、一応はトイレとして機能しているからいいけど・・・。

お昼前に全部終わって、静かな午後。いつのまにか4件も団子になって、ぎゅっと詰まりそうな様相になって来た仕事に取りかかる・・・つもりにはなるんだけど、この2、3日はすごく疲れた気分でなかなかエンジンがかからない。取り替える照明器具を揃えないと、床暖房を含めた電気工事がいつまでたっても「完」にならないのに、選定作業を徹夜しながらのぎゅうぎゅう詰めの仕事の合間にやるしかなかったからスムーズに運ばなくて、知らないうちにかなりのストレスになっていたらしい。それが解決して、1日でわっと全部作業が完了したもので、きっと一気に緊張が緩んだんだろうな。その夜はめずらしく夕食後に眠ってしまったりして、ちょっとここのところぼや~んとした気分・・・。

生活している傍らでの改装工事は、終わり近くなって設備などの取り付けや仕上げの作業になるあたりが、期待感の高まりもあって一番ストレスになる時期。我が家はもうこれで5回目か6回目の改装だから勝手がわかっていているはずなんだけど、やっぱりストレスになる。でも、今回はカレシが遅々とした進行や家の中に置きっ放しの資材に癇癪を起こしてぶっち切れることがなくて、今までで一番楽だったな。よく辛抱してくれたと思う。ありがとね。もうあと10日ほどだからね。さて、ねじを締めて、仕事にかからないと、また徹夜モードになってしまう。明日からは公式に春・・・

春初日は春ぼけ三昧

3月20日。今日は公式に春の初日。公式といっても、どういう意味なのか良くわからないけど、北米では春分の日をもって「春」が始まることになっている。同様に、夏至が夏の始まりだし、当然、秋は秋分の日、冬は冬至に始まるわけだけど、実際の季節とはかなりずれている。たとえば、これからどんどん昼が長くなって明るい時間が増えるから気分も軽くなるという意味では、冬至の方が春の始まりにふさわしいように思うけど、実際には冬至の頃に春の気配が始まるなんてことはないな。それでも、ニュースの第一声は「今日から春です」。はあ、もう2ヵ月も春なんだけど。もっとも、バンクーバーには四季なんてない、あるのは「乾期」と「雨期」だけという人もいて、長く住んでいるとあんがいそっちの方が実感があるような気もするなあ。

正午少し前に起きて、カレシが石屋のカルヴィンと午後2時半に会うアポを取ってから、朝食。一応いろんな寸法を測って、シンクの穴のテンプレートを用意して、デジカメでキャビネットの周囲の写真を撮って、いざ出かけてみたら肝心のタイルのサンプルを忘れて来てしまった。やれやれ。でも、どっちみち正確な寸法を測りに来るそうだから、とりあえずカレシが気に入ったという青系統の黒っぽい石の見本を借りて来た。実際の証明の下で置いて見て、壁の色には合うけれど、カレシがタイルの色と付き合わせて、もっと明るい色調の方がいいという。ま、カレシが一番よく使うバスルームなんだし、まだ鏡の調達もあるんだしということで、この部分はカレシにげたを預けてしまった。ワタシは仕事に追いまくられながらここまでプロジェクトマネジャーをやって来たんだから。癇癪を起こさないでいるのだけが「参画」じゃあないんだからして・・・。

やれやれ、これで仕事に集中できると思ったら、「ディナーの予約を入れといた」とすごい事後報告。おいおい、ディナーに行こうかって話をしたのは覚えているけど。ま、久しぶりにPastisに行くと言うから、ま、いっか。というわけで、またも仕事への「専念」を中断して、おでかけ。ところが、車を止めて降りたところで、「財布がない」。えっ、どこかで落としたの?眉間にしわを寄せてう~んと考えて、「ポケットに入れるのを忘れた」。なあ~んだ。ワタシもカードを持っているからいいけど、憧れのオンナノコとの初デートじゃなくてよかったね。せっかくのロマンスも一発で吹っ飛んじゃうよねえ。

手始めにピコンとクロネンブール。(そういえば、日本でピコンを調達するんだった。通販で売っているから買っておいてもらおうか・・・。)カレシはキッシュとマグロ。ワイン通で有名なオーナーがフランスはロワール地方、Vouvray産のシェナンブランを推薦。ワタシはフォアグラと鴨にして、ピノノワール。フォアグラには定番のソーテルヌを小さいグラスに少し。デザートはもちろん焼きたてあつあつのプチマドレーヌ。Pastisでのディナーはこれがお目当て。指で摘んで口に入れていたら、かる~く100個は食べてしまいそうなくらいにおいしい。ああああ、ストレスも何も吹っ飛んでしまうくらいにおいしくてしあわせ・・・。

帰り道、財布を忘れてきたカレシは運転免許証も持っていないから、「おまわりさんの注意を引くような運転はしちゃダメ」と釘を刺されて、慎重運転。ずっと前にあったでしょ、ちょっと危ない右折をして止められたら、シートベルトもしていなくて、おまけに免許証も家に置いて来ていたもので、「危ない右折」は注意だけにしとくけど、といって、(高い罰金のつく)シートベルト不装着と免許証不所持で違反切符を切られたこと。いつもの横道運転をやっていたら、パラリンピックのカーリング会場の交通規制に出会ってしまったけど、とにかく今日は文句を言わずにまじめにのろのろと慎重運転。あはは、忘れものには気をつけなくちゃね(二人とも)。今日はなんだか久しぶりに「普通の土曜日」だった感じがするなあ。

似て非なる似たもの同士

3月22日。月曜日。あっというまに3月も下旬。足が早すぎるよ、時間。ちょっとは止まってひと息入れて欲しい。というわけにもいかないから、カレンダーを見てため息をつくだけにしておくけど、やっぱり時間が経つのが早すぎていけないな。

土曜日にお出かけした分を取り戻そうと、きのうは1日猛烈な勢いでがんばった。がんばりすぎて、明日の夕方が期限の分まで終わってしまった。とりあえず今日が期限の分を見直しして納品。続けて明日の分も見直しをして今日中に納品できることになった。クライアントは喜ぶし、ワタシも次にまた納期がきつい仕事が待ち構えているからうれしい。がんばってぶっ飛ばして、予定通りに納品したら、どうしてもとねじ込まれた仕事のある週末まで、3日間は「架空の仕事」。たまにはそんな案件でもでっち上げないと「24時間戦わにゃ~」状態になってしまうことがある。「24時間戦えますか」なんていわれても、こっちも人間なんだから・・・。

カウンターの調達を任せられたカレシ、メールで見積もりをもらって、電話して、ボイスメールに価格はOKだけど借りたサンプルは合わなかったから選び直しをしたいとメッセージを残したまではよかった。だけど、今日は何も返事がなかったもので、さっそくご機嫌ななめの様子。「トイレは使えるんだし、シャワーさえ使えるようになれば、後はいくら遅れたってオレはどうってことないよ」とか何とかぶつぶつ言っている。やれやれ、いつもながらの「今すぐ主義」のカレシだなあ。すぐに返事が欲しいならこっちからプッシュすればいいものを、それはやりたくない。自分ではそういうことをやりたくないから、ぶつぶつ、ぐちぐちと文句を言って、何とかしてワタシが「じゃあ、電話してみるね」と言い出す方向にもって行こうとする。その手はもうわかってるから通じないんだけどなあ。

カレシの言動を見ていると、ふっとよく「なんだか心理的に日本人っぽい多い人だなあ」と思い当たることが多い。日本人っぽいというよりは、日本人に多い性格と共通する点が多いということだと思うんだけど、オンナノコたちとの火遊びに走るまではそんな風に感じたことがなかったのは、カレシを日本人と比べてみたことがなかったからかもしれない。だって、日本人じゃないってことは当然最初からわかっていたし、日本じゃないから何もかも違うんだと最初から納得して来たわけだし・・・まあ、あの頃は日本と便利につながっていられない時代だったから、みんなそんな風に納得して来たんだろうと思うけど。だから、長い間この人はこういう人なんだと思っていた。よく考えてみると、最初のうちは「何もかもが違う」のに慣れることにエネルギーをつぎ込んでいて「この人ってどうしてこうなの?」と考える余裕がなかったのかもしれないし、あるいは、あんまり日本人っぽいせいで「外国人」という実感がわかないままだったのかもしれない。

それが長い間に「何もかもあたりまえ」になってから、ある日突然カレシがそれまで特に考えることがなくなっていた日本や日本人を二人の生活空間に持ち込んで来たもので、改めて「誰なの?」という目で見るようになったんだろうな。そうしたら、何となく鬱っぽいところ、他人やものごとに対して否定的なところ、自分に自信がないところ、だけどプライドは高いところ、他力本願的なところ、待つことができないところ、何となく子供っぽいところ、何となくオタクっぽいところ・・・新聞や掲示板やその他の日本のメディアを通して見る「日本人」、ワタシと(数は少ないけど)親しく交流のある日本人とはかなり違った、たぶん「一億総何とか」の方の日本人に似ているなあと思えてきた。

だからといって、あの時にカレシを日本に行かせてあげていたら、今頃は日本人らしい日本人妻をもって幸せになっていたかというと、それはないだろうなあ。「日本なんか嫌いだ。日本人は~だから嫌いだ」と毎日ネガティブなオーラを出しまくっているんじゃないかと思う。所詮カレシは日本人じゃないし、日本人の心を持っているわけでもない。たまたま一般的に日本人に「多い」性格を持ち合わせているということだけだから、あくまでも「外国人」の日本ではもっと生きにくかっただろうと思うなあ。まあ、カレシはあくまでもカレシという人間なんだから、そのつもりで向き合って行けば、ワタシとしてはそれでいいんだけど。

女ってすることが多すぎる

3月23日。火曜日。少し早めに目が覚めたから、即起き出して、朝食を済ませて、「架空の仕事」に入る?前のひと仕事にとりかかる。期限は午前7時。ま、ぶっ飛ばせば午前2時には済みそうな感じだけど。

カレシは英語教室の教材作り。マイクから電話がかかって、カウンター選びはどんな状況かと聞いているようで、カレシはさっそく「連絡がない。困っている。何とかならないか」と泣きついた?らしい。どうやら配管屋のトニーがシンクの据付を終わらせて下請仕事完了ということにしたいらしい。まあ、月末だし、みんなお金を払ってもらいたいよね。下請から来る請求書を払わなければならないマイクだって早くプロジェクトを終わらせて残りの代金を回収したいだろうし。みんなのニーズがうまくかちあって、ホームストレッチのペースがちょっとでも早まればしめたもんだけど・・・。

実際のところ、連絡がないんじゃなくて、カレシがメールをよくチェックしていなかったために、カルヴィン君からのメッセージを見落としていたんだけど、どっちにしても石の選びなおしは明日の話。たしかに借りて来たサンプルはちょっと黒が勝ちすぎているから、明日こそはちゃんとタイルを何枚か持って行って、マッチするのを見つけなくちゃね。終盤になって急にげたを預けられたカレシ、1月半ばからどさどさと降ってくる仕事を徹夜までしてこなしながら、プロジェクトマネジャーをやり、日本行きのホテルやパッケージの予約をやり、税金申告の準備をやり、毎日のご飯を作り、たまには洗濯もやって来たワタシのストレスが少しはわかったかなあ。たった1件の折衝だけでくたびれるなんて、そりゃあないでしょ~がぁ、っとに。はあ・・・

結局のところ「工事完了」は4月に持ち越してしまいそうだけど、それでもたぶん来週いっぱいでいよいよというところか。3日間は架空の仕事の彼方に雲隠れして、週末はまた特急仕事が2本か。その後はまた「ここにはないどこかの仕事」を3、4日。消費税の申告期限も迫ってくるから、第1四半期の帳簿付けもやらないといけないし、何よりも4月の会議でのプレゼン資料を作らないと間に合わなくなってしまう。なんで女ってこんなにすることがいっつも山積みなんだろうなあ。何もしなくても、いつも山のような「やらなければならないこと」があって、やってもやっても減らない。まあ、取り崩せば崩すほどに、どんどん積み上げまくる人たちがいるんだから、しょうがない。かといって、ワタシは逆立ちしたって専業主婦にはなれそうにないしなあ。食べるのは好きだから料理はするけど、掃除洗濯はめんどうくさい。毎日やれる人はすごいなあと思う。掃除洗濯が好きだと言う人はもっとすごい。

ま、とにかく今年何度目だか今週何度目だかわからなくなったけど、とにかくまたまた胸突き八丁を越えると、ロングウィークエンドだから、気張って気合を入れて、がんばりなさいね、ワタシ。

脳みそは休みモード

3月24日。水曜日。いい天気。今日からちょっと「幻」の仕事に出張で、のんびりした気分で起きた。でも、とりあえず、朝食を済ませて、サンプルのタイルを持ってカルヴィン君に会いに行く。黒すぎた最初の候補は、ショールームで見るとちょうどいい色調に見えるんだけど、どうやら南向きでさんさんと日が差しているせいらしい。バスルームには窓がないから、100%人工照明。それじゃあ、印象が違っても不思議はない。今度は少し茶色っぽいんじゃないかなあというのにした。ほんとうに青系統の石というのはあまりないのかもしれないな。まあ、よく見たらタイルにも薄茶や緑っぽい色が混じっているから、いいか・・・。

キッチンの本棚を取り付けに来ると言っていたマイクに途中で電話したら、今日は天気がいいから、今外でやっている作業を優先させるので、本棚は明日。楽しみにしていたけど、実は、ああ、よかった。なにしろ、コーヒーがない。ミルクがない。野菜類がない。食べるものがない、ない、ないの危機的?な状況。渡りに舟とばかり、スーパーに寄り、青果屋に寄りして、どんと買い物をして来た。これでひと安心。キッチンの本棚が入る窓際も、置いてある椅子やらスタンドを移動して、準備OKにしておける。

なんだかみんな急にせかせかと急ぎ出したなあと思ったら、来週の週末は復活祭の四連休だった。てっきりその次の週末だと思っていて、なんで連休の週末にコンサートがあるのかなあと(漠然と)考えていたら、来週だったのか。もっとも、カレシはご隠居だし、ワタシの商売は月月火水木金金で週末もへったくれもないから、三連休だろうが四連休だろうか関係なんてないもんなあ。それでついうっかり忘れちゃうんだけど。う~ん、復活祭のご馳走、ど~しよ~。久しぶりに極楽とんぼ亭でスペシャルディナーということにしようか。ほんとにバレンタイン以来の久しぶりの開店。メニューは何がいいかなあ。なんとなく春らしいものを春らしい彩で・・・う~ん、ど~しよ~。

さて、いつもな~んにもしないで終わる「休みモード」初日だけど、明日は忙しくなりそう。体は使っていいけど、脳みそだけは休ませてあげないとね・・・。おやすみ。

やらなくちゃ、やらなくちゃ

3月25日。木曜日。午前10時より少し前に目が覚めたらかなりの雨。。夜のうちにマイクから「午前中遅く」に本棚を取り付けに来ると言うメールがあったので、11時ごろかと狙いをつけて、10時半に目覚ましをセットしておいたんだけど、雨の音で目が早く目が覚めてしまったのかもしれない。アラームをオフにして、ベースメントのソファでちょっと寝なおし。正午を過ぎてカレシが起きて来たけど、マイクは影も形もない。はて、「午前中遅く」はマイクの時間だったのか、我が家の時間だったのか。

おかげでゆっくり朝食をすることができて、マイクとウェスとダレルが来たのは午後1時半。おお、すばらしい本棚。仕上げのステインの色もキッチンのキャビネットとぴったり同じ。クレアの大工の腕はすごいんだ。張り出し窓の下に端から端まで、位置を調節できる棚で本棚部分が2段。上に底の浅い引き出しが3つ。さっそく、後になるコンセントの位置を測って穴を開けて据え付け、持って来た薄い板とグルーガンで窓のカーブに合わせるトップと一番上に置くガラスのテンプレートを作る。なるほど、そういう手があるんだ。何かのときのために覚えておこう、と門前の小僧のワタシはこと細かに観察。

そうするうちに、石屋のオーナーのホーさんがバスルームのカウンタートップの寸法を測りに来た。広東語なまりが強いのは、きっと香港からの移民一世だからなんだろうな。週末に作業をして、月曜には取り付けできそうというからびっくり。「マイクはいいお得意だからね」とホーさん。実は配管屋のトニーが今月一杯で商売を閉めてニューブランズウィック州に帰るのに、我が家のシンクの取り付けが最後の最後まで残った仕事なんだそうで、トニーのために特別に急いでくれることになったらしい。トニーの人徳に感謝しなくちゃ。マイクは明日ペンキ塗りの総仕上げで、鏡とキャビネットのドアや引き出しの取っ手はワタシが自分で買ってきて取り付けることにした。自分で家具を作ったこともあるし、それくらいお茶の子さいさいだって。きのうまでの作業の請求書に小切手を切って、今日の訪問は終わり。前回の分とあわせるとほぼ見積もりの金額になっている。残りの作業からして、それほどのオーバーにはならずに済みそうな見通し。それでもカレシの「読書室」は我が家で一番のデラックスな空間になった・・・。

おまけでプロジェクトに加えた新しい本棚のおかげでキッチンのテーブルの周りが広々とした感じになって、料理の本がたくさん入りそうだし、引き出しにはネットで見つけて印刷したレシピをしまっておける。テーブルの上の緑色のかさのライトのおかげで、二人の食卓もちょっぴり「図書室」風のゆったりした雰囲気になった。でも、しばらくはオイルステインの臭いが漂いそう。バスルームもキャビネットの塗装の臭いがまだぷんぷん。だけど、ほんとにあと1週間で長い長いプロジェクトもいよいよ「完」か。ほぼ10週間のお付き合いで、なんだか名残惜しいような気もするけど、「平常」の生活に完全に戻れるのはうれしい。

あわただしい1日の今日は、会計事務所から納税申告の資料を持って来いという手紙とチェックリストが送られてきた。はあ、こっちも早くやらなくちゃね。消費税の納付申告もやらなくちゃね。請求書も書かなきゃね。その前に残る2つの仕事をちゃんとやらなくちゃね。1ヵ月後に迫ったプレゼンの準備もやらなくちゃね。う~ん、まだ他にも忘れてる「やらなくちゃ」はないだろうなあ(大丈夫、かな・・・)。

改装工事、ようやく95%

3月26日。金曜日。また10時半にかけてあった目覚ましが鳴る一歩手前で目が覚めた。なんだか目覚ましをかける意味がないような気がするな。(かけないと寝過ごすんだろうけど。)カレシも目を覚ましたので、今日はそろって早起きということにした。きのうの雨が嘘のようないい天気。

市内での10時のアポが終わったら来ると言っていたマイクは11時半を過ぎても現れない。新しいプロジェクトの相談らしいから、長引いているのはいい兆候なのかなあ、思っていたらウェスとダレルが本棚の天板を持って到着。出窓の鈍角にぴったりと納まった。外したベースボードもぴたり。明るい日差しのせいもあって、広々して見えて気持がいい。庭仕事をしていたカレシも入ってきて、ご満悦。そこへ登場したマイクもご満悦で「ここにずらりと料理を並べてパーティができるなあ」。ほんと、立食パーティに使えそう。本棚に載せるガラス板のテンプレートを作り終わったウェスとダレルを次の仕事に送り出して、さてペンキ塗り・・・のはずが、フレッドが出来上がったシャワードアを持って来たので、またもマイクはペンキ塗りを諦めて「じゃ、来週」。来週早々にはキャビネットのカウンターが来て、トニーがシンクを取り付けに来るから、なかなか出番はなさそうだけどなあ。

分厚い強化ガラスはヒンジを取り付ける切り欠きが一番難しくて、ちょっとしたミスでこっぱみじんになってしまうらしい。ドアは大きな取っ手がついていて、内側、外側のどちらにもスイングするようになっている。ちょっとホテルのような感じもするなあ。壁に固定してある方のガラスとタイルの間の隙間に防水用のシリコンを塗り込んで新しいシャワーストールは完成。明日の夜には使ってもいいというから、ちょっとワクワク。フレッドが帰って、ほどなくして今度はUPSが小包を持って来た。うわっ、注文してあった新しいバスマットが4枚。まるで申し合わせたような、何というタイミングの良さ!

ばたばたしているうちに夕食の算段を忘れていたもので、とりあえず刺身用のキハダマグロとビンナガとサーモンを出して来て水につけて解凍。もらいものの菜の花ご飯の具があるのでお米を2合セットして、ビンナガのしっぽの方をタルタル風にして、大根を薄切りにしてちょっと塩もみ・・・とスピード料理でちょっぴりお祝い風の夕食。二人とも待ちかねていたように、元の本箱から出してリビングに積んであった料理の本やリビングの本棚にあった料理の本も並べた。ミニコンポも本体とスピーカーが納まって、まだ余裕があるぞ’。アイランドに置いてあった回転式のブックスタンドも引退させたら、ほんとにキッチンが広々として見える。これですっきり。後は墨においてあった2脚のダイニングチェアをどうするかだけど、東南アジア製のせいか木が乾燥して足の桟が緩んでしまって、ずっと前からぐらついていたから、やっぱり分解して処分か。リビングの「八角塔」においてあるダイニングテーブルとは色が合わないし、これも新調のしどきだろうなあ。

早起きして、1日中ばたばたしていたような気がして、今日は疲れたなあ。でも、疲れているんだけど、やっと95%くらいのところまで「こぎつけた」という感じで心はウキウキしている不思議。さて、明日はカレシがブロックウォッチの新キャプテン/副キャプテンのトレーニングの日。午前10時15分までに警察署のロビー集合ということで、うへ、8時半に起床だ。かといって早寝もしにくいなあ・・・。

仮想的有能感はしんどい

3月27日。土曜日。目覚ましは午前8時45分だけど、目が覚めたのは8時43分。ま~た目覚ましが鳴る寸前にお目覚め。どうしてなんだろう。この時計、まさか眠っているワタシの脳みそにヘンな電波を発信しているんじゃないだろうなあ・・・というのはちょっとSF的で、ちょっと被害妄想的か。な~んかしゃくに触るし、特に今日はカレシが早く出かけなければならないから早起きするんだから、目覚ましが鳴り出すまでのらくらしてやった。(時計と張り合ってもしょうがないけど・・・。)

カレシは定番の「めんどくさい。行きたくない」の連呼。朝食を済ませて、ひとつ先の地下鉄の駅まで車で行くことになった。それはそれでいいんだけど、「ノートかなんか小さいのはない?」 そんなのないよ(何で今頃・・・)。「ボクの携帯、知らない?」 知らないよ(知るわけないでしょ)。どっちみち終わったらWhole Foodsで落ち合うんだから、なくたって大丈夫。「どこにあるのかわからないのに出かけるわけには行かないだろ」。あ、そ・・・。

携帯がみつかって、やっと出発。ひとつ先の駅はモールにあるんだけど、モールの外の路上駐車のスペースを探して、ぐるぐる。あのさ、このあたりは1時間とか2時間の時限付きが多いし、オリンピックからこの方許可証がないと止められないところが増えたの。探している間に時間が経っちゃうから、4時間までのモールの駐車場に止めればいいのに、「いや、止められるところがあるはず」と、ぐるぐる。結局、もうひとつ先へ行くことにして、ここも許可証専用ばかり。それでも、オリンピック規制から新しい規制に切り替わる間らしくて止められるところがあって、やっと地下鉄に乗れた。ただし、降りるのは2駅目のオリンピックヴィレッジ。

それでも何とか警察署ロビー集合の時間に間に合って、ワタシはぶらぶらと買い物。天気が良いんだから、一番近い駅まで歩いた方が早くて樂々だったと思うんだけど、なんだって物ごとをやたらとややこしくては、自分でストレスになってむくれるんだろうな。ほんとにフシギな人だねえ、あなたって。ただ観察しているだけならおもしろい心理ですむんだろうだけど、毎日付き合う側にとってはけっこう対応がややこしい。(まあ、ややこしいといっても心理的メカニズムみたいなものがわかればそれほどめんどうでもないんだけど。)なにしろ人の助言は頭から否定しがちだし、うまく行かなければ何がああだからこうだからと理屈を並べるし、世の中のことすべてについて「ベストアンサー」を持っている(と思っている)ところは、パパと実によく似ていて、まさに「この父にして・・・」の感がある。どっちも(おそらくは)自分への苛立ちを他人や社会に転嫁しているということ、ある意味で基盤の弱い自尊感情の補強策としての「仮想的有能感」なのかもしれないな。

この仮想的有能感というヤツ、人やものごとと貶めたときには瞬間風速的に気分が高揚するのかもしれないけど、長い人生はかなり生きにくいものになるんじゃないかと思う。俗界を遠く離れた仙人と違って人間は霞を食べて生きていけるわけじゃないから、喜怒哀楽がこもごもの現実の空気を吸って現実的有能感という栄養を吸収しないと、心が栄養失調になる。生きるエネルギーが不足して、そうでなくたって誰にとってもけっこう大変な人生がしんどいものになるんだろうと思うな。要するに、仮想的有能感に当たる心理は何も日本の若者に限った現象じゃなくて、人間世界にはごく普通に存在しているのが、縦(上下)志向の社会で(バブル景気という)無秩序な変化が起こった結果、たまたまその時代にその社会で育った人たちの間に集団発生したかのように見えるだけかもしれない。

自尊感情とか自己肯定とか言っても、まず肯定すべき「自分」がいないことには話にならないけど、「自己」のつく言葉がおしなべて否定的な意味合いを持ち、「個人主義」がわがままや身勝手と同義語のように扱われ、「自己否定」を善とする風潮の強い社会だと、よけいに自分を肯定しにくいのかもしれないな。人間というのは根本的に「自分はOKなんだ」と思いたいものなのに、建前だか何だか知らないけど「OKじゃない自分」であることを求められるんだから、そりゃあややこしいよなあ。自分は全然OKじゃないのに、他人はOKだと思えと言われたって、そんなの無理。だから、人間関係がややこしくなるし、自分はますますOKじゃなくなって鬱々とするから、生きるのがしんどくなってしまうんじゃないのかな。それで仮想的有能感という「よろい」を着て自衛しようとするんだろうけど、所詮は仮想のよろいだから、「現実」という強敵の前ではひとたまりもない。自分がOKじゃないんだから、世の中はOKじゃない。他人もOKなはずがない。それってしんどいんじゃないかい?

今大流行で猫も杓子もやっているような感のあるTwitter。日本でもツイッターとして普及しているらしい。Twitterのメッセージのことを「tweet」というんだけど、日本語ではこれを「つぶやき」と呼んでいるとわかって、なんだかいかにも日本的なイメージだと思った。誰なんだろうな、こんな名訳?を考えついたのは。だって、tweetというのはピーチクパーチクとにぎやかな鳥の「さえずり」のことだけど、片や「つぶやき」は大きな声では言えないことをぼそぼそと独りごちっているような、いかにもネクラなイメージが浮かんできてしまう。文化を他国語に翻訳する難しさが現れているのかもしれないけど、この違いはおもしろい!

それにしても、カレシのことから日本人の話に発展することがずいぶん多いなあ。でも、カレシを観察していると日本人のことがわかって来るというのではなくて、まったく逆に海を隔てていろんなメディアを通して日本人を観察しているとカレシという人がわかって来るということで、「あっ、この人のこの言動はそういう心理なんだ」とわかって来れば、カレシと二人の人生もけっこう生きやすくなるというもの。似て非なるものでも似たような対応が通じることもあるってことかな。

15分が惜しくてアメリカへ

3月28日。日曜日。あっという間に日曜日って感じだけど、あっという間に3月もおしまい。きのうはなぜかものすごく疲れた気分で、ベッドに入ったとたんに眠ってしまったらしい。まあ、相当な早起きだったから、言ってみれば「半徹夜」とあんまり変わらないかもしれない。中途半端に少しだけ睡眠をとるよりは、ぶっ通しで起きている方が楽なんじゃないかという気もするけど、果たしてどうなのかなあ。

カレシの方もかなりのお疲れらしい。今日はRestoration Hardwareという変わった名前の店にバスルームの鏡やタオルかけを見に行くはずだったんだけど、カレシの何となくうつ~っとした顔を見たら、こりゃだめだ~。まあ、ワタシも仕事モードに戻らなきゃならないし、なんだかめんどうになったもので、ネットで注文することにした。アメリカの会社でカナダへは特急サービスはやらないということで、所要日数は1週間から10日。間に復活祭の4連休が入るから2週間近いかもしれないけど、日本へ出発する前には届くだろうから、ま、いっか。ということで、前から決めていたサテン仕上げのステンレスのフレームがついた鏡をクリック。ついでにあちこちを見ているうちに、キャビネットのドアのつまみをクリック。同じデザインコレクションのタオルバーをクリック。ついでにタオルリングもクリック。ついでに鏡の下につける小さなガラスの棚もクリック。「チェックアウト」をクリックしたときには6品目になってしまった。だから、ネットショッピングは危ないっちゅうの。

アメリカのサイトだから価格標示は当然アメリカドルなので、アメリカドル建てのクレジットカードを使う。品物の配達先は自宅だけど、請求先の住所は郵便局の私書箱になっているから、ここを請求書の通りに正確に入力しないとカード会社に拒否されることがある。(銀行の残高明細の送り先が私書箱になっているせいで、黙っていたらカードも同じ住所で発行されてしまった。)カードの裏にある3桁の暗証を入れてクリック。ん?問題あり、やり直すか電話をしろだと?も一度カードの番号と期限と暗証を入れてクリック。あれ、また同じ。しょうがないから電話。カードのデータは間違っていないのに通らないと言ったら、「ときどきあるんです。私が処理しますので、ご注文品を読み上げてください」だって。あ、そう。ショッピングカートに戻って、品番を読み上げて、返って来る品名を確認して、個数を言って・・・いやあ、手際がいいの何のって。アメリカのどこにあるんだろうな、この会社。カードの番号と請求住所と配達住所と電話番号とメールアドレスを教えて、注文番号をもらって、カナダドルにすれば900ドルの買い物。あまりの効率の良さに、思わず「ヘルプ感謝しま~す」と言っちゃった。

どっちみち自分で取り付けるものだから、配達が10日先でもどうってことはないけど、よく考えてみたら、初めからウェブで注文すればよかったんだな。というのも、バンクーバーにある店に行っても、目ざす品物が在庫にあるとは限らない。トヨタのカンバン方式を取り入れたのかどうか知らないけど、どうも最近は「お取り寄せ」が多いから、どっちみち自分で注文するのと同じ時間がかかってしまう。それなら自宅に配達してもらえる通販の方がよほど効率的。それに、こっちで買えば当然価格はカナダドルになるわけで、しかも関税や輸送費を含めたアメリカドル価格を即換算するわけじゃなくて、大きなマージンで嵩上げされた「カナダ価格」になる。だったら、アメリカドルのカードで買って、アメリカドルの口座から直接払えば手っ取り早いというもの。

日本でも昔は「北海道価格」というのがあって、九州の端では東京と同じ価格でも、北海道では輸送コストがかかるとか何とか理由をつけて、さして距離の違わない九州より高くなっていた。道産子のワタシとしては同じ日本の中でどうしてそんな不公平な扱いなんだろうと不思議でしかたがなかった。要するに北海道は植民地並みに搾取されていたわけ。カナダ国内でも、かっては資源や農産物を西から東へ輸送する運賃が、工業製品を東から西へ輸送する運賃より格段に安く設定されていたという、一種の「西部価格」のようなものがあったそうで、同じぼったくり精神でアメリカからカナダに輸入されるものも為替レートとはかけ離れた高い価格になることがよくある。だから、カナダドルのレートが良くなると、国境沿いのカナダ人は大挙してアメリカへ越境ショッピングに押し寄せるわけなんだけど、その越境ショッピングがやりやすくなったのはインターネットのおかげ。

というわけで、車で15分先の店まで行くのがめんどうで、飛行機で何時間かかるかわからない店で衝動買いつきのショッピング。あんがい、それで在庫をそろえる代わりに初めから「カンバン方式」にするチェーン店が増えて来たのかもしれないな。ほんとに便利な時代なのかどうか、わからない・・・。

極楽とんぼ亭記事: サングリアで作る魚のソース

3月29日。きのうは一晩中すごい嵐が吹き荒れて、目が覚めたらちょっとした台風一過の日差し。それもすぐに曇ってしまったけど、なぜか目まぐるしく晴れたり、曇ったり、降ったり。ひょっとしたら先週の日本の春嵐の成れの果て・・・?

今日は納期が2つ。まずきのうのうちに済ませたものを見直して、スペルチェックして、納品。お次は翌日午前7時が期限だから、髪を振り乱してわき目も降らずに超特急の突貫作業。そういうときは手間をかけた料理なんかする気にならない。そこで手抜き自慢?の極楽とんぼ亭シェフのお出ましとなる。

[写真]
スズキのソテー、サングリアリダクションソース、蒸したインゲン添え
ほうれん草、マッシュルーム、オルツォのリゾット風
(サラダ)

まっ白なスズキは上品な味を殺してしまわないように、軽く塩と胡椒をしてフライパンで焼くだけ。白身の魚にはフルーツ味のソースがよく合う。さてリキュールは・・・とお酒の棚を見渡して見つけたのが、もらいものの出来合いのサングリア。小さい鍋にたっぷり入れて、ゆっくりと何分の一かに濃縮する。元々サングリアはワインにフルーツと炭酸飲料を入れたものなので、そのまま飲むには甘すぎるけど、魚料理のソースとしてはかなりイケる。これはめっけものだな。

さて、明日はいよいよバスルームのキャビネットにカウンタートップがついて、シンクと蛇口がつくらしい。やっと99%というところか。やれやれ・・・

たかがブランド、されどブランド

3月30日。火曜日。まずまずの天気。(極楽とんぼ時間の)きのうは午前3時半までかかって仕事のINBOXを空にした。やれやれ、これで一応すっきり。復活祭の四連休が終わるまでは「内緒」のお休みモード。納品したばっかりなのにもう「来週の予定は?」なんて聞いてくるから、どうしようか。うまく延長する手はないものか・・・・

今日はカウンタートップが来るということで、起き抜けから二人ともそわそわ。マイクが何時ごろ来るかと第一声。ほどなくしてカルヴィン君から「2時と2時半の間に行きます」(よくこういう幅のある表現が使われる)と連絡。ははあ、マイクがせっついているな。なにしろ月末の明日がカナダの太平洋側から反対の大西洋側まで引越しするというトニーの仕事納めの日なもので、遅れは許されないってこと。おかげで磨き上げたみかげ石のカウンタートップが入って、シンクもはめ込んでくれた。薄いブルーの壁に合うかなあと心配だったけど、スコンスの電球が天井のハロゲン灯の白にほんのり赤みを加えてくれたので、思いのほかぴったり。キャビネットの色とも合って、「これ!」と選んだカレシは大満足。トニーは明日の朝10時と10時半の間に来るそうな。これで99.5%。

休みモードの最初の仕事はキッチンの新しい本棚の引き出しに引き手をつける作業。浅い引き出した3つ並んでいるから、水平に3個まっすぐにならないとかっこ悪い。そこで大きな紙で引き出しのフロントのテンプレートを作って、これを縦と横に2つに折って中心線をつける。引き手は心心で3インチだから、中の両側に1.5インチずつ。これをテープで貼って、プッシュドリルというスプリング式の押して穴を開けるドリルを使ってねじを通す場所に印をつける。引き出しのフロントはオークだから硬くてプッシュドリルでは傷をつけるのがやっと。その上でいよいよ電動ドリルで穴を開ける。ここまでは良かったけど、浅い引き出しなので、箱の一辺にフロントを取り付けてあるから、厚さが引き手のねじの長さより50%増しになってねじを通しても引き手のねじ穴には届かない。はて、どうしたものかと思案して、一番大きなドリルビットで内側から少しずつ穴を広げてねじを奥まで押し込めるようにしてみたら成功。小1時間かかって、引き出し3つに引き手がついた。作業中にプッシュドリルの先がすべって指先に切り傷ひとつ。離れたところにあるねじ回しを取ろうとしてぎっくり腰寸前。何でできたのか、腕に引っ掻き傷が4つ。もちろん労災はなし・・・。

カレシを英語教室に送り出して、去年の減価償却を計算して、帳簿を閉める。これで納税申告の資料は全部そろったから、後は会計事務所に持って行くだけ。明日は請求書を書いて、プレゼンの準備に入る(つもり)。つもりって、あと3週間しかないんだけどなあ。大丈夫なの、ワタシ?といいながら、今日はここでおしまい。せっかくの休みモードなんだから、あれやこれやと馬車馬みたいにやることないもんね。リラックス、リラックスで、ゆるりと小町の井戸端を訪問してみると・・・。

メイク論争の後は、今度はブランド論争。ブランドを愛好をするのはむしろ所得の少ない人ではないのかという疑問。ようは、身なりが安物だったり、カジュアルだったりする人が高級ブランドのロゴ入りのバッグを持ち歩いているということなんだけど、例によって「そういう人、いるいる」と知人、友人、同僚、ご近所さん、はては赤の他人まで、「ブランド物を持ち歩く貧乏人」を引っ張り出して、ああだこうだと、まあ、(たぶん気に食わない)人をこき下ろして溜飲を下げる場になっている。他人のことはどうだっていいじゃん!と思うんだけど、この人たちには深刻なストレス源なんだろうな、きっと。

このトピックには、「少ない所得」とはいくら以下なのか、富裕層と少所得層をどうやって見分けるのか、そもそも「ブランド」とは何かが明確に定義されていないから、議論は最初からかみ合わない。だからおもしろいんだけど、日本では、ヴィトンもグッチもローンで買うらしいし、中古がよく売れるというから驚き。読み進んでいるうちに、「ブランド」というのは概ねあの土気色の地にアルファベットの模様が入っているバッグのことを言っているらしいとわかってきた。そういえば、ああいうのを持っている人はどこに行ってもたくさん見かける。ワタシには個別のブランド名まではわからないけど、ポピュラーなんだということはわかる。だって、どれもみんな同じような色に同じようなデザインで、いったいどれがルイヴィトンでどれがグッチなのやら。(常日頃ダサいデザインだとは思っているけど・・・。)

だけど、名前や値札にかかわりなく、ああいうのが大好きという人もいるんだろうし、まさに蓼食う虫も好き好き。本人が好きならそれでいいじゃないかと思うけど、そうはどっこい簡単に卸してくれないのが厳しいチェックで泣く子も黙る小町横町の井戸端委員会なのだ。ほんと、だいたい身なりや風采がぱっとしないからって貧乏だとは限らないのに。ホームレスで野たれ死にした人が実は億の貯金を持っていたなんて話もあったし、人間て自分より所得が少ない人を「貧乏」だと思いたがるところがあるしなあ。レスポンスの中に「1点豪華主義」という昭和の流行語が出てきてすごく懐かしかったけど、「一億総成金」バブル時代の「何もかも豪華主義」のような消費から、またつつましい「一点豪華主義」に戻って来て、女性にとってはルイヴィトンやグッチ、シャネルのロゴ入りバッグがその「一点」ということなのかなあ。まあ、「一点豪華」もそこがぱっと明るく見えて、うつうつとした閉塞感から少しでも抜け出せるとしたら、悪くないと思うけどな。とどのつまりは人それぞれなんだけど。

ブランドで思い出すのが、秘書時代に上司にもらった「セクレタリーデイ」のプレゼント。濃紺の地にぶっ違いの「F」が一面に並んだクラッチバッグ。何だかつまらないデザインだなあとは思ったけど、使い勝手はすごく良かったから、結局はジッパーの布が擦り切れるまで使い込んだ。あのバッグが「フェンディ」というイタリアの高級ブランドで、おそらくは当時のワタシには目玉がぼい~んと飛び出すくらいすっごくお高い品物だったとわかったのは使えなくなって捨ててからずっと後のこと。基本的にずぼらなワタシは入れ替えがめんどうなので、ふだんのバッグはひとつだけ。それをどこへでも持って歩くわけだけど、しがない秘書稼業のワタシが高級ブランドのロゴ入りバッグをフツーのデパートのバッグのつもりで持ち歩いているのに気がついた人ってどれくらいいるんだろうなあ。

まあ、こっちには他人が持っているものが気になる人ってあまりいないだろうけど。外から目に見える情報だけでその人が金持か貧乏かなんて、空港のボディスキャナじゃないんだからわかるわけがないでしょうが。金持は危ないからそんなこと吹聴して回らないし、やたらと貧乏だと愚痴る人たちに限ってけっこうお金があったりするし、ほんとうに貧乏な人は生きるのに忙しくてブランドがどうのこうの言っている暇なんかないだろうし、はたしてどうやって見分けるのかなあ。興味津々・・・。

3月はライオンのように

3月31日。水曜日。トニーが来るので少しだけ早起き。カレシはぐうすかだから、そっとベースメントへ降りて、まず所得税申告の書類を整理して、マークをつけたチェックリストと一緒に大きな封筒に入れて今日の仕事がひとつ完了。

うたた寝していたら、トニーが来て、シンクに蛇口を取り付けて、排水パイプを取り付けて、まわりに防水のシリコンを塗って、トニーの担当の仕事はこれで全部完了。今日が仕事納めで、あと2週間でニューファンドランドへ出発するんだそうな。奥さんも同じ土地の出身で、どうやら「帰去来」の心境なのは奥さんの方らしい。ニューファンドランドはいつか行ってみたいところ。テレビでやっている州の観光省局のコマーシャルを見ると、アイルランドの風景に似ているし、古くからアイルランド人が入っていたから人間も似ている。生まれ故郷の釧路にも似た雰囲気が感じられるから、一度は行ってみたいと思うのかな。ニューファンドランド島(新しく見つけた島)。何となくロマンがある・・・。

シーラとヴァルが来て掃除。外ではジェリーが今年最初の芝生刈り。といっても、この冬は市道も家の庭も、見渡す限り芝生がめちゃくちゃにほじくり返されてぼこぼこ。何でもコフキコガネという虫が大発生して芝生に卵を産みつけたもので、その幼虫を狙って鳥が大挙して芝生をほじくり返しているという話。そういえばカラスが芝生をむしってはポイ、むしってはポイとやっているのを見て、頭のいいカラスのことだからてっきり「愉快犯」だと思っていたけど、実はごちそうを食べていたわけか。それにしてもほんとに「ぐしゃぐしゃ」としかいいようがないくらいにほじくり返されているし、むしられた芝は枯れて散乱しているし、目も当てられない惨状。我が家の庭には芝生がないからいいけど、市道の芝生の修理は市がやるのかな。

掃除が進んでいる間に、地下鉄でダウンタウンの会計事務所までひとっぱしり。明日から定期や回数券が値上がりするけど、シングルの切符は据え置きなんだそうな。要するに、前払い切符の値引き率を下げたってことか。値上げ率としてみると10%近いそうな。でも、一枚の切符で90分の間に往復すれば実質的には半額なんだけど。明日からは電気料金もそれぐらい上がるし、いろんな公共料金がど~んと上がる。まさにインフレの観。不況から回復するペースが速すぎるとかで、夏までには金利も上がるという観測。おまけに(サブプライムの教訓を受けて)住宅ローンの規則が変わって借りにくくなるらしいから、今のうちに買おうと言う需要があるのか、不動産エージェントが郵便受けに入れて行くチラシには「売約済み」の家の写真がずらり。スタイルで年代が、住所で地域の環境がわかるんだけど、この場所でこんな値段!とびっくりするような高値で、「言い値以上」と書いてあるのもざらだからすごい。こうなったらもうバブル再発としかいいようがないような・・・。

今日はカレシの英語教室最後の日。6月に夏の教室を立ち上げるまではいわば「春休み」なんだけど、「最後の授業」だってのに、いつものように出かける間際になって「携帯がない」。きのうは持って行ったじゃないの。バッグの中をかき回し、中身をぶちまけ、デスクの周りをかき回し、バッグを放り込んだら中身がこぼれたからとトラックの床を3度も調べたのに、携帯は見つからない。「どっかにあるはずだ!」とイラついたって、カレシが自分で置いた「どっか」にあるはずでしょ。自分の持ち物くらいちゃんと自分で管理してくれないかなあ。そのうちふっと思い出したのが、きのうはまたバッテリが上がってしまったトラックじゃなくてエコーで出かけたこと。やっぱり携帯はエコーの床に落ちていた。「思い出してくれて助かった」と言うもので、ワタシがいなかったらどうするの?と聞いたら、「生きていけないよ」とスリスリ。それはヤバいよと言ったら、「なんとか順応するさ」。ワタシがいなくなる前から順応してくれた方が安心なんだけどなあ・・・。

3月はライオンのようにやって来て、子羊のように去ると言うけど、今年はライオンのようにやって来て、ワタシが獅子奮迅でやっている間に、ライオンのように駆け去った。やれやれ・・・。


2010年3月~その1

2010年03月16日 | 昔語り(2006~2013)
運動しないとメタボになる車

3月1日。月曜日。いい気持で眠っているのに、早々とカレシに起こされる。すまなさそうな顔(ってこともないかな)で、トヨタの緊急サービスのカードがいると言う。ゆうべスーパーへ行こうとエコーに乗ったら、あ~あ、またバッテリが上がってエンジンがかからない。ライトは点くし、カリカリと今にもかかりそうになるから、完全に上がったわけじゃないけど、エンジンをかけるだけの力はない。この前出かけたのはいつだったかなあ。オリンピックが始まってから1、2回は出かけたはずだけど。まあ、近頃の車は昼間でも自動的にヘッドライトが点くし、やたらとエレクトロニクスがついているから、週に1回とか2回とかちょっとそこまで買い物に出かけるくらいだと、電力消費量の方が走って充電される量よりも多いのかもしれないな。それで、月に1回はドライブに行けと言われるんだろうけど、用もないのにガソリンを燃やしてドライブしなきゃバッテリがもたないなんて、設計上の欠陥じゃないでしょうかねえ、トヨタさん。資源のムーダを省くためにも、なんとかしてほしいんですけど・・・

カレシにカードの入ったバッグのあるところを指差して、また寝なおすこと1時間半。起きてみたら3月。ほんとにあれっと気がついたら3月という感じ。ゆうべのうちにあわただしく作った請求書を送って、急ぎの豆仕事をやっつけているうちに、タイル屋のベンとアシスタントのロブが来た。2人とも東欧系だろうと推測していたら、ポーランド系なんだそうな。まだ若いようだけどいかにも職人さんという風采。金曜日に張った床のタイルは30センチ角の大きさなのでさして時間がかからなかったけど、シャワーストールのは2種類のサイズを組み合わせてパターンを作るのでかなりの時間がかかる。小さい長方形のタイルは30センチ角のメッシュで裏張りしてあるけど、15センチ角のは1枚ずつスペーサーを入れて、水準器でまっすぐなことを確認しながら張っていく根気の要る作業。

写真の赤い点々がスペーサー。水色は防水剤をぬったところ。壁の中の四角い部分はシャンプーや石鹸を置くニッチ。なんとなく中世の城の石壁のような雰囲気があるような・・・。

忙しいんだけど、夕食後にちょっと時間を取ってせっかくエンジンがかかるようになったエコーをドライブに連れ出すことにした。たまには思い切り走らせて運動させないと心筋梗塞になるなんて、ペットのワンちゃんを散歩に連れて行くようなもんだな。ただ走るのもなんだからと、郊外のHマートまで行くことにした。途中で変なところを曲がったおかげで、元のところまで戻ってしまったり、フリーウェイに乗り損ねたりして、やっとHマートのあるモールに着いたら閉店30分前。魚のカウンターはもう空っぽで掃除をしていたから、冷凍やパックのまぐろやサーモン、イカをどさどさっとバスケットに放り込んで、ついでに特売品の長いごぼうの束、にんにくの茎、ニラ、ぶなしめじ。カレシはお目当ての唐辛子の入っていないキムチ。レジの人が「お魚がお好きなんですねえ」とにこにこ。店内のアナウンスは韓国語なんだけど、南国系の顔をしたワタシは逆立ちしても韓国人には見てもらえないから、会話は最初から英語。持参の大きなトートバッグに詰めてもらって、カムサハムニダ!

だけど、仕事、あと2週間のうちに3本合わせて推定35000語。フリーザーを満杯にして喜んでいるときじゃないでしょうが。ピッチを上げなきゃまた半徹夜の暗雲がもくもく。ばね指が治らない親指が痛いんだけど。左手は関節がどれもみんな痛いんだけど。どうするんだ、もう・・・

日本からの難民って、どうして?

3月2日。火曜日。ほんとうに3月に突入だなあ。道路向こうの桜はそろそろ本格的に散り始めた。そういえば、木を伐りに来た人たちも、今年はヘンだと言っていたっけ。早いのは桜の開花だけじゃなくて、いろんな樹木が早々と新芽を出し始めているんだそうな。二階の窓から見下ろしたら、ライラックも芽がすごく膨らんでいる。4月にならないうちに咲き始めたりして。う~ん、やっぱりヘンだ。

昼を過ぎてベンとロブが到着。タイル張りの作業を再開。その間、ワタシはオフィスに引っ込んで仕事に専念。詰まっているもんね。親指の関節がしくしくと疼く。マウスを使う手だから困る。マウスを右側に置けばいいかもしれないけど、キーボードはどうしても両手がいる。昔はマックのマウスは左手、PCのは右手と(別に理由はなかったけど)使い分けていた。ワタシの手にはマウスは何となく大きすぎるような気がするなあ。どこかでラップトップ用の小ぶりのマウスを見たことがあったけど、探してみようかな。うん、ミニーマウス、ダジャレになっていいじゃないの。だけど、そのヒマが・・・

チリ地震の衝撃で地球の自転が1.26マイクロ秒速まったんだって。1日がそれだけ短くなるわけで、そりゃ大変・・・というのは冗談だけど、こうやって大地震のたびに地殻を動かすエネルギーの方向によっては自転が速くなったり、遅くなったりするらしい。マイクロ秒は1秒の100万分の1だから、毎年どこかで大きな地震があって、そのたびに1日が1マイクロ秒ずつ短くなっていったら、100万年経ったら丸々1秒、1千万年経ったら10秒で、1億年経ったら23時間と58分と何秒ってことになるのか。(ちなみに、今年は3月14日午前2時に夏時間に移行で、日曜日は1日が1時間も短くなる!)

オリンピック見物に来ていた外国人観光客のうち7人が帰国せずに難民申請したんだそうな。ハンガリー人が4人、ロシア人が1人、そして・・・ええっ?日本人が2人?平和で金持ちで民主的で、海外在住組が医療制度も人間もショッピングも何もかもカナダよりいいと自慢たらたらの日本から難民?それも、なんと2人も?へえ。移民大臣は「ふざけるんじゃない」と呆れているそうな。どういう人たちなんだろうな。かっては「被差別の出身」を理由に難民申請して認められた人がいたと言う噂があったけど、真偽のほどはわからない。だけど、難民の申請を出してしまえば、認定の手続きをしている(何年もの)間は生活保護もくれるし、英語の勉強もさせてくれるし、却下されても不服申し立てをすればのろのろと進む手続きが終わるまでさらに何年もカナダにいられて、最終的に却下されたら帰国する切符を買ってくれるし、う~ん、特典付き長期滞在ビザの一種だと思ったんじゃないだろうなあ。もちろん、難民として認められる正真正銘の理由がある人たちだということも考えられなくはないかもしれないけど。やっぱり、なんで日本から難民なの?

予算消化期(消火器?)の仕事、残りはあと3万2千語、かなあ。親指が痛いよう・・・

難儀している人だから難民?

3月3日。いやあ、いい天気。少しだけ早めに起きて、朝食後にすぐ仕事にかかる。今のところは何とか予定通りのペースで進んでいるから、手綱を緩めないようにしなきゃあ・・・といっても、この場合、手綱の先をパカパカ走っている馬車馬は自分なんだよなあ。自分で自分の手綱を取って走るのは、なんだか転びそうなあぶなっかしさがあるな。ま、こけないようにしないとね。

午後一番にシーラとヴァルが掃除に来て、間もなくベンとロブがタイル張りの作業続行に来た。小さな我が家はなんとなく人口過密の様相。出たり入ったりで玄関が開けっ放しになることが多いけど、なにしろいい陽気。半袖のTシャツのままで外へ出ても、日なたにいるとちっとも寒くないどころか、ぽかぽかして来る。3月になったばかりなんだけどな。エルニーニョのおかげで、早々とシーズン到来したのは草木ばかりじゃない。もうアレルギーで鼻をぐしゅぐしゅさせている人がたくさんいるそうだし、郊外の「自然たっぷり」の住宅地では冬眠から覚めた熊が出没するとの注意が出ているとか。暖冬のせいか、オリンピックの賑わいのせいか、熊も早起きしてしまったんだろう。腹ペコ熊がゴミを漁りに来て人間さまと鉢合わせしたら危ないなあ。(でも、それが自然と共存すると言うことの一面なのかもしれないけど。)

きのうの日本人の難民申請の話で、急に興味がわいてきたもので、久々にローカル掲示板をのぞいてみた。タイトルをざっと見ただけで、相変わらずにいちゃんねる亜流のグダグダ、ブースカなのは一目瞭然。ヒマなんだろうな、きっと。せっかくお金をかけてカナダまで来たのに、ヒマを持て余して「同じ日本人」同士で足を引っ張り合っているらしい。地元の同年代層がたむろするフォーラムもよく荒れているから、そっちに投稿したら英語の勉強になるだろうに、もったいない話。でも、ニュースを聞きつけた人がいると見えて、難民のトピックが立っていた。まあ、顔が見たいとか、恥ずかしいとか、がやがやといつもの調子だけど、その中で、数年前にお金が底をついたから生活保護をもらおうと難民申請したワーホリの日本人がいたという話があって、あっは~と頭の上に豆電球。

だいぶ前から日本のマスコミで「ネットカフェ難民」という言葉をよく見るから、ひょっとしたらそれで「難民」の意味を誤解してしまった日本人なんじゃないのかな。それよりもっと前には「ランチ難民」とか「昼食難民」というのがあったし、他にもいろんなところで「○○難民」という表現が使われている。日本の社会に多数いるらしいこの「難民」は物質やサービスが得られなくて「難儀」を強いられている人たちであって、迫害や差別から「避難」して来た人たちとは大違い。あんがいお金がなくなったもんで、その日本的「難民」の延長線上で「トラベル難民」申請を考えたのかもしれないな。カナダ政府は申請の動機や理由は個人情報ということで公表しないから、本当に正真正銘の(避)難民なのか、常識もボキャブラリも貧弱な難(儀)民なのかはわからない。「日本では報道されていないのは恥ずかしいから?」・・・はて、どうなんだか。今回は、日本人は被害者じゃないから、関心がないんじゃないかなあ。知らせてあげたら?

初めにありきは言葉?文法?

3月4日。木曜日。夜は少し冷えるけど、何となく初夏かと思ってしまうような陽気。タイルの目地の仕上げをしに来たベンもロブもかわいそうに汗びっしょり。目地にモルタルを塗り込む作業は筋肉労働なのだ。ベースメントのオフィスの方へは少々涼しい風が入ってくるけど、玄関と裏口のドアを開け放してあげた。マイクが「視察」に来て、「はい、プレゼント」と1月31日付の請求書。これで不況対策のひとつになっていた住宅改装費の税額控除が満額受けられる。

夕方、リッチモンドでディナーをするのに、イアンとバーバラのところへ。オリンピックの間、スケート競技の会場が近かったおかげで、住んでいるコンドの一帯が「Oゾーン」とかいうオリンピック特別区域に指定されてしまって、駐車場への出入りが何かと大変だったそうな。やっと静かになったところで、前に行って気に入ったジャパニーズレストランでいっしょにディナーをしようということになった。仕事が詰まっているんだけど、外食なら作らなくていいし、ま、息抜きも必要だし・・・。名前はちゃんとした日本食レストランで、ドアを開けて入るとみんな威勢よく「いらっしゃいませ~」。ちゃんとした日本語だな、日本人なのかなと思っていたら、あら、中国語で話をしている人たちもいる。ふ~ん、あいさつは堂に入った日本語だけど、中国系が集中しているリッチモンドだからみんな中国系でも不思議はないな。(香港には行ったことがないけど、香港を平たくしたようなところかもしれないな。)

前菜のメニューになぜかお好み焼きやたこ焼きがあったりするので、おもしろそうだからお好み焼きを注文したら、マヨネーズとかつお節を載せたものが出てきた。おいしかったけど、お好み焼きにマヨネーズって普通・・・?ずっと昔にカレシといっしょに行った日本のどこかの店でお好み焼きを食べたことがあったけど、マヨネーズは載っていなかったような。かつお節も載っていなかったような。えっと、いったいどんなお好み焼きだったんだろうなあ。(我が家でミックスを買ってきて作るのはとんかつソースをちょっとだけだし、日本のよりは(これもミックスだけど)韓国のチヂミの方を作ることが多い。)考えてみたら、記憶の中の「お好み焼き」は小さい頃に父が食紅で色をつけて花やボートやいろんな形に薄く焼いてくれたおやつ。料理本で見たお好み焼きは豚肉だの玉ねぎだのが入っている似ても似つかないものだったのでびっくりした。ま、日本にいた頃にお好み焼き屋に行ったなんかないし、第一、北海道にそんなもの、あったのかなあ・・・?

ディナーの後はイアンのところに寄って、食後酒を飲み、コーヒーを飲みながら、しばしわいわいがやがや。今夜はカレシとバーバラが始めたポーランド語とロシア語の発音の比較が言語学的な議論に発展して、4人で喧々諤々。ヨーロッパ系言語にはかなり厳格な文法規則があるらしいけど、たしかに英語は綴り方も読み方も発音も一定していない。イギリスを征服した諸民族の言語が入り混じって発展した言語だからしょうがない。チョーサーの『カンタベリー物語』なんか近代英語とはかけ離れた綴りで、『源氏物語』を古語で読むのと同じくらい難しい。バーバラは「例外こそが英語の文法」とぶち上げると、カレシは「例外は多いけど、英語にも確立した文法がある」と主張。しまいに「日本語の方がよっぽど文法の決まりがあやふやだ」とこっちに矛先を向けてきた。いや、日本語だってちゃんとした文法はあるんじゃないのかなあ。主語はあまり使わないけど、述語も目的語もある(と思う)し、動詞も形容詞も現在形や過去形で語形が変化するし、発音だって単語の組み合わによって変化するし。だけど、いつ主語を使っていつ使わないのか説明しろと言われても、ちょっと困るんだけど。学校の国語の時間に日本語文法を詳しく教えられた記憶がないような気もする。国語の時間は、教科書を読んで、漢字を覚えて、作文して、それから何をしたっけ?はて、忘れてしまったのかなあ・・・。

長々とおしゃべりをして帰ってきて、仕事に直行する気になれないでいるけど、今日の5時間あまりのタイムオフ、あしたからねじり鉢巻で何としてでも取り戻さないと、徹夜になってもしらないよ。

ありかたのありかたを教えて

3月5日。金曜日。いたって静かな1日だから、気合いを入れて仕事に精を出して、追いつけ、追い越せ。だけど、親指がしくしく痛いんだよなあ。なんだかちょっとばかりストレスになって来る。親指を曲げなくてもいいように、マウスを斜めにして使ってみるけど、こんどは手首がくたびれてくる。あ~あ。そろそろ引退を考えるか、それとも音声入力ソフトの導入を考えるか。とりあえず、新しい保温手袋を注文しておいた。やれやれ・・・。

ずっと停会していた連邦議会が再開したと思ったら、総督が読み上げた施政方針演説の中で、国歌の歌詞の一部を変えて「ジェンダーニュートラル」にするという案があって、国中が騒然。最初の部分の「all thy sons command」というところの「son」がダメってことらしい。小学校の頃に歌詞が変わって覚えなおしたというカレシは「またかよ~」。カナダの国歌は元々フランス語で書かれたもので、英語版の歌詞は何度も変更されている。まあ、フランス語の流れに合わせたメロディだから、英語だとなんとなくしっくりしないというか、ぎくしゃくするところがあるのは確かだけど、ジェンダーニュートラルにと言われてもなあ。それって、「中性化」のこと?思い切って「kids」にする?いっそのこと、フランス語だけにしちゃったらどうなの?でも、そうなったらケベックは喜ぶかもしれないけど、カナダは分裂するか。地元のラジオ局の世論調査でも90%が歌詞の変更は「ノー」。たぶん、全国津々浦々で反対が圧倒的だったんだろう。今日になって「国家の歌詞は変更しません」と来た。っとに・・・

さて、英日の仕事を中断して、日曜が期限の日英の仕事の方に切り替える。どこかの学者が書いたものらしく、漠然としていることはなはだしい。それでも、やっているうちに要旨はつかめて来るけど、やりにくいことには変わりない。この「~のありかた」という表現、なんとかしてくれないかなあ。いかにも「上から目線」で、こうあるべき、ああすべき。岡目八目のつもりかもしれないけど、なにしろ主語がないから、人さまにああしろ、こうしろと言いながら誰も責任を持たないという感じがする。こういうときに日本語は便利な言語だと思うけど、漠然と「ありかた」という指差しをしているだけで、具体的にどうすべきかは人まかせ。哲学的な思考なのか、禅の教えなのかよくわからないけど、「~のありかた」なんて言われても、グダグダと単語を連ねないと説明できないよ。もちろん、そのあたりの「日本の心」を深く理解していて、迫る納期なんかなんのそのでさらさらっと英語人が理解できる英語に訳せる人もいると思う。時間があったら教えを請いたいところけど、こっちは象牙の塔でひねもす思索に耽るわけには行かない。あ~あ、小町横丁の井戸端おばちゃんたちがとびきり上から目線で繰り広げる常識論の「こうあるべき」の方がよっぽどわかりやすいと思うなあ。

さて、あと10日で、残りは3本。合わせて27000語くらいかなあ。そのあとにまた大きな話があるし、3月はほんとに魔の季節だ。まあ、髪をかきむしっていてもしょうがないから、たすきがけのねじり鉢巻で、行っちゃうか・・・

ピアニストを撃たないで

3月6日。またも週末。いい天気。午後のポーチは温度計がもうあとほんのちょっとのところで20度。初夏の陽気だなあ。それなのに、こんなにまぶしい青空なのに、ベースメントノオフィスにこもって、仕事、仕事、仕事。どういう因果なんだろうな。日本にいたらとっくに定年退職して、悠々自適で日々趣味にまい進しているところかなあ。う~ん、たぶんこの年までずっと独身で、ずっと働いて来てただろうと思うけど、「悠々自適の趣味三昧」はちょっとばかりあやしいな。まあ、「定年」まであと3年と1ヵ月と少々。おとといもイアンとバーバラを相手に仕事を「やめるか、やめないか」の悩みを熱く語ってみたけど、カレシも含めてみ~んな「やめない方に賭ける」。はあ・・・

静かな午後・・・と思ったら、ベンがひょっこり現れた。明日の日曜日に角のタイルの合わせ目にシリコンで防水処理をしに来ることになっていたんだけど、郊外から遊びに出て来たついでに今日やってしまうことにしたんだそうな。いいも悪いも、どうぞ、どうぞ。それにしても、かっこいいシェードをかけてるなあと思ったら、まだ独身なんだ。そっかあ、若いもんねえ。狭いところでシリコンを塗るのは体に良くないから、表と裏とドアを開け放して通気。ほんとに初夏みたい。先に夏をやってから、春をやるとか・・・んなことになったら、気候変動も何も地球は絶体絶命か。

おととい外食したばかりなのに、きのうカレシが急に思い立ってBacchusにディナーの予約を入れてあった。そういえば、カレシのコレステロール騒動で魚ダイエットに切り替えて以来、めったにディナーのお出かけをしなくなったな。極楽とんぼ亭を(ときどき)開店するせいもあるんだろうけど、10年もの間ほぼ毎週土曜日に外食だったのが、そういうことがめんどうくさい年頃になって来たのかもしれない。レストランのクラスがだんだん上がって来て、いわゆる「グルメ食材」をひと通り味見できたし、なんとなく飽きて来たのかもしれない。お気に入りベスト3に入るBacchusはワタシの還暦祝いのパーティ以来だから、いやあこれはごぶさた。

いつものようにピアノの側のテーブル70番を指定。今夜のピアニストはちょっと年配だけど、ジャズがレパートリーのメインらしい。渋い声での弾き語りもいいな。ちょっとロマンチックな曲が終わって、「ナイス」と言ったら、「これは明日からレコーディングを始めるぼくの新しいアルバムに入れる曲なんだけど、アルバムのタイトルは『Nice』に決めたよ」だって。ええ?「ナイスといったときの響きがピンと来たんだ」そうな。どうやらアルバムCDを自主制作して、ネットを通して販売しているらしい。「よかったらiTuneからダウンロードしてね。名前はクライド・ハーヴィー」とひとくさり宣伝。2人がリクエストする曲を弾いてくれて、最後に「お2人に」と、グローヴァー・ワシントンJrの『Just the Two of Us』をいいテンポで弾き語ってくれた。ミュージシャンの組合規定の休憩時間に入るクライドにありがとうのチップを弾んで、帰りがけにマネジャーに「今夜のピアニストは格別に良かった」と言っておいた。フランソワ・トリュフォーの映画に『ピアニストを撃て』と言うのがあったけど、久しぶりのしゃれたディナーに花を添えてくれたピアニストを撃つわけにはいかないもんね。

おいしい料理を楽しんで、すてきなピアノの弾き語りを楽しんで、ピアニストとおしゃべりをして、思いつきのお出かけとしてはすばらしいひととき。仕事の遅れなんて、気にしない、気にしない・・・といいたいところだけど、馬車馬にもうひと鞭くれて、がんばろっと。ワタシだって翻訳がんばってるんだから、撃たないで。

日本語は本当にヘンになったの?

3月7日。雨の日曜日。カレンダーを見たらもうすぐ夏時間だし、すぐ後に春分の日。それでも目が覚めて暗いなあと思うのは、雨のせいか、目がしょぼついているせいか。来週あたりは高台で雪がちらつくかもしれないと言う予報。ちょっと遅くないですか?冬のオリンピック、終わっちゃったんだけど。

とにかく今日は朝食のコーヒーを飲み終わったら即今日午後が期限の仕事をかたづける。かたづけるといっても、この原稿、趣旨は理解できるんだけど、すらすらと翻訳するほどにはわからないから困る。突然カタカナ語が出てきて、元が英語だと言うことはわかるけど、カタカナ語になる過程で意味あいが変わってしまっているように感じるし、元々カタカナ語というのは、英語なり、フランス語なりの単語を持ってきて、一義的な定義を与えているものが多い。つまりは、「一語一義」。そういうカタカナ語名詞に気軽に「化」をつけられても、直訳式に「~ize」とやれないことも多いから、こっちは(英語の)言葉に詰まってしまう。

おまけに読めない漢字が出てくるからよけいに困る。何とか読み方を調べても、今度は意味がわからない。しょうがないから辞書をひっくり返して意味を調べる。ははあ、そういう意味だったのか、とわかったところで、今度はセンテンス全体の中で意味をなしてくれない。いったいどういう意味で使っているんだろうなあ、と頭をかきむしって考える。だって、センテンス全体が意味をなしていなきゃ、英語人にわかる英語にならないから困る。(ま、英語人のカレシがよく書けていると太鼓判を押してくれても、後で日本人にわかる英語に書き直されたりするんだけど・・・。)

はあ、やたらと文句が多いけど、最近の日本語はほんとにわかりにくくなったという気がする。もっとも日本であたりまえに日本語を話して暮らしている日本語人にとってはわかりにくいなんてことはなくて、「え~と~」と頭を悩ませているのはワタシだけなのかもしれないけど。自分の書いた日本語を読み返して、「なんでこんなヘンな文章になるのかなあ」と思うことが多いから、もしもTOEICの日本語版があったら、きっと目も当てられない点数を取るだろうと思う。だから、人さまのことは言ってられないのはわかるんだけど、それでも、変わってしまったのはワタシの日本語能力じゃなくて、日本語の方だと思うなあ。小町でだってよく言っているじゃない、最近の日本語はヘンじゃないですかって。

どっちがヘンなのかはこの際横においとくとしても、最近の日本語原稿は特にちょっと古そうな漢字の熟語の使い方がヘンだなと思うのが多くなった。意味をよく知らないのか、意味は知っていても表現として使う場合のニュアンスをよく知らないのか、よくわかんないなあ、やっぱり。だけど。頼むから、オフィスなんかで号泣しないでほしいな。ちょっと気に入らないことがあったからって激怒しないでほしいな。思っていたことと違ったからって驚愕しないでほしいな。「ごめんね」ですむような場面で謝罪を要求しないでほしいな。ちょっとカチンと来ることを言われたからって暴言を吐かれたなんていわないでほしいな。できるだけ普通の日本語でやってほしいな。だけど、あまりフツーすぎてしまうとまた話は別で、やっぱり浦島ワタシにはよくわからないかもしれないけど。

教えてちゃん

3月8日。高台で雪が降ったのかどうか知らないけど、寒い。おまけにまた前線が接近中らしく、天気予報は雨と風。世界中でヘンな天気だなあ。今週末からはパラリンピック。障害を乗り越えてがんばって来た人たちの競技会なんだから、ヘンな天気で困らせないであげてよね。

マイクが「ランチの後で」来るとメール。だったら2時くらいかな。朝食もそこそこに、それっと野菜果物の買出しに走る。夜は開いていないから、午後のうちに行かなければならないんだけど、午後は誰かしらが何かの作業をしに来ていて出られずじまいになる。そんな日が続くから、冷蔵庫の野菜類は在庫払拭でまさに食糧危機。とにかく大きなトートバッグ2つ分の野菜を仕入れて、またそれっと帰ってくる。

マイクがペンキ塗りの仕上げに来て、途中でシャワーの囲いになる強化ガラスを切るフレッドが来て、詰まりに詰まった状態の仕事は中断。ガラスは厚さが1センチだそうで、壁とベンチと敷居になる部分の形に合わせて正確に切らないと使いものにならないということで、念入りに何回も測っていた。金具の色を選ぶのに、ずっとリビングにおいてあったシャワーセットを箱から取り出して「この色」。今週中には納品だそうな。昔はビルの玄関のガラスドアを作っていたけど、寒い冬の間の取り付け作業が嫌になって、暖かな内装専門にしたというから、働き方もいろいろ。

フレッドが帰った後、マイクはペンキ塗りに専念。ワタシは仕事に専念。カレシは教材作りに専念。そのうち、すっとんきょうに「困るなあ、もう」。英語教室に来ている日本人の生徒さんから、日本で英語教師をやるための資格を取れる学校選びの相談メールが来たとか。東京じゃない地方から来ているということもあってか、カレシは「熱心だし、積極的にしゃべるし、日本人でも遊び半分で来ている連中と違う、まじめな子だよ」とほめまくっていたけどなあ。ビザの期限が近づいて、学校へ行くことで延長しようというのか、どの学校がいいだろうかということらしい。「オレはボランティアでやってるんで、外国人相手の英語学校商売のことなんか知らないよ」とカレシ。自分で調べて目的に合いそうなのを探し出してから、相談しに来い」と回答したそうな。「やっぱりあの世代は自分で考えないのかなあ」と、ちょっとがっかりした様子。

今どきの日本には「教えてちゃん」という言葉があるくらいだから、ゆとり教育の世代はそういうのが多いんじゃないの?小町横町にもローカル掲示板にもいっぱいいるけどなあ。ネットには玉石混交の(ただの)情報が溢れ返っている時代なんだから、ちょっとググって見れば何か見つかるものを、自発的に考えるよりも先に「ジョーホーください」となってしまうらしい。元々受身の文化だからかもしれないし、「もらうこと」があたりまえの世代なのかもしれないし、ただの甘ったれ世代なのかもしれないし。何でもかんでも「Tell me(教えて)」と来るから、「教えてちゃん」を英語にするなら「Little Miss Tellme」ってところかなあ。「口を開けて餌をねだっているヒナみたいじゃないか」と、カレシ。あはは、それはちょっと手厳しいけど、ふむ、あながちハズレでもないような・・・。

でも、独立精神を身につけることも海外体験の収穫のひとつだと思うし、このテルミーちゃんはかなり生真面目に有意義なカナダ生活を過ごしたらしいから、自分で何とかできるだろうと思うけどね。

たすき3本、はちまき3本

3月9日。雪は降らなかった。環はなぜかカレシより先に起きて、ぎゅぎゅぎゅっと詰まって来る仕事の算段。なんだか行っても行っても出口が見えないようなヨーロッパ英語の日本語訳。まだ1万語はある。えらいこっちゃ。その後に少し小さいとはいっても、できあがったら8千語は超えそうなのが控えているから、えらいこっちゃ。そういえば、ご予定は?というメールに返事してないし、仕事の打診のメールにも返事してないし、ど~する?

とにかくカレシがめずらしく寝起きの悪そうなぼけっとした顔で起きてきて、朝食。さて~と腕まくりをして、勇ましくたすきがけをばと思ったらマイクから「ウェスとダレルがもうすぐドアを持って行く」と電話。別に相談することもないから、ここはカレシに任せることにして、仕事、仕事。ほどなくして現れた二人、ガレージを占拠。ポケットドアを据え付けて、ドアの枠やベースボードのトリムの作業。このドアがまたいい。大きな分厚いガラスが入っている。曇りガラスなんだけど、明るい照明が点いているのに、中にいる人間はドアのそばに立っていてもぼんやりした影にしか見えない。これだったらシャワーから出て来たときにキッチンやリビングに誰かいても裸を見られない。うん、空港に設置される「ボディスキャナ」の方がよっぽどヌードで丸見えって感じ。

ドアが入って、ガレージで裁断したトリムの釘付けにかかろうとして、ウェス君曰く、「ネイルガンを忘れて来ちゃった」。あらまあ。「明日の朝、仕上げに来るけどいい?」 う~ん、朝って、どのくらい朝?「8時くらい・・・」。うは、早起きか。そこでワタシの頭の上にポッと点ったのが1000ワット級の電球。あのさ、今夜は徹夜で仕事するから、朝一番に来て。どっちみち急に早寝はできないから、7時半に起きるとしたら睡眠はせいぜい3時間か4時間。そんなんだったら、いっそのこと徹夜しちゃえ。「じゃ、7時半くらいに来るけどいい?」 こっちは寝ないわけだから、5時でも6時でもいいんだけど。結局は、午前7時半頃ということになった。

ほんとうのところは、今夜でなくてもどっちみち今週は徹夜を避けられそうにない状況だったもんで、まあ、一石二鳥の口実というところ。よ~し、今夜はがっちりと縦横斜めにたすきをかけて、ねじり鉢巻を3本くらいきりりっと締めて、朝までにどこまでやれるか、ひとつがんばったろ~な!

とうとう徹夜しちゃった

3月10日。やっほ~。やった、やった。いやあ、我ながら、う~ん、すごいのか、いかれてるのか、わからない。きのうは、きっと95%くらい仕事人。「ミルクがない。ジュースがない。コーヒーがない」と騒いでいたカレシが英語教室から帰って来たところで、お金を渡して「お願いね」。(っとに、おつかいくらい、ひとりで行けるでしょっ!もう・・・。)夜中過ぎにランチを食べ終わって、わき目もふらずに仕事、仕事。午前3時半になったところで、カレシはギブアップして、「おやすみぃ~」。

いやあ、それから仕事がはかどるのなんのって。行っても行っても出口が見えない難物だったのに、きのうの朝は1万語ちょっとあったのが、気がついたらもう午前7時で、残りはあと4千語。(丑三つ時の気ちがいタイピストみたいに見えていたりして。)裏口のドアのロックを外しておいて、仕事を続行。そのうちに一階で作業が始まった気配。きのうガレージドアのリモコンを貸してあげて、それで勝手に入ってきて始めてね、ということになっていた。ウェスが「うへえ、で、ずっと起きてたの?」と聞くから、うん、一睡もしてない。きのうの朝の11時半からずっと。「元気だねえ」。うん、どうしてか自分でも不思議だけどハイパーなのよねえ。

還暦を過ぎたいい年になって、いそいそと徹夜するってのもなんだかなあと思うけど、目はしょぼしょぼするし、親指はしくしくと痛いけど、自分でもいやになるくらい元気と言うか、はちゃめちゃというか。いいのかなあ。丸々24時間以上起きていて困るのは、やたらとおなかが空くこと。途中でそろっ~とキッチンへ行って冷蔵庫を開けてたワタシ。海藻のサラダをみつけて、フォークだけ持ってそろ~っとオフィスへ戻って、キーを叩く合間におやつ。いいのかなあ、こんなことやってて。それでもとにかく仕事に追いついたから、やれやれ。

ウェスとダレルの2人組みと入れ替わりに配管屋のトニーが登場。トイレを据え付けて、シャワーの金具を取り付けれくれるという。一階と二階にトイレがあるのに慣れてしまって、住人が二人しかいない家なのに、ひとつしかなくなるとえらく不便。冗談半分に「そろそろトイレの争奪戦も飽きたしね」と言っていたら、マイクが気を利かせてくれたらしい。二階の古いトイレは取り外して前庭にごろり。騒々しかったのになぜかすやすや眠り通したカレシが起きてきて、トイレをポーチ脇に据えてしまった。今のような配管がなかった頃に外に作ったトイレを「アウトハウス」と言うけど、この古トイレをマイクが片づけてくれるまで飾っておくつもりらしい、「話のタネになるじゃないか」と自分のユーモアを自画自賛でご機嫌だけど、せいぜい「ゴミ屋敷」の話題になるくらいじゃないのかなあ。いっそのこと土を入れてチューリップを植えてみたらどうかなあ?う~ん、暗くなって白いのがのそ~っというのは、やっぱりなんだかなあ・・・。

まあ、次の仕事にかからないと、また徹夜することになりかねない。それでも今夜はしっかりと寝て、明日はまた明日のはちまき人生・・・。

ハイパーおばあちゃんだ

3月11日。よ~く眠った。徹夜明けだったきのうは、徹夜明けだからといってくたびれていられない仕事日。困った英語の仕事の最終チェックをして送り出して、や~れやれ、完了。コンマがないと困るところにコンマがなくて、コンマがあっては困るところにコンマがあるから困る。ドイツ語やフランス語はコンマの使い方が英語とは違うのかなあ。文の途中に(ちゃんとコンマで区切ってだけど)やたらと「ついで」みたいな説明語句が入っているのも困るなあ。まあ、文学的ではあるけど、ヨーロッパのお役所文学は文学の香りってわけでもないだろうに。ああ、親指が関節も付け根も、しくしくと痛いよう・・・。

ま、とにかく終わった、終わった。待ったなしで控えていた次の仕事はいつもの英語訳。翻訳と通訳は似て非なる技能だからかもしれないけど、変てこ英語から日本語に訳していて、急に回れ右してすんなりと変てこ(じゃなくて実はあいまいなだけの)日本語から英語に訳すってのはけっこうキツイ。ま、ワタシがへぼになったのだけで、「え、簡単だよ」という人もいるだろうけどな。言語的にだんだんぶきっちょになる感じがするのは、あんがい年のせいだったりして。バイリンガルで育ったんじゃないから、英語と日本語の処理中枢はきっと別々の場所にあると思うんだけど、ひょっとして右脳と左脳に分かれていたりして。それで、橋渡しをしている脳梁のあたりで交通渋滞して、トヨタもフォードもうまく流れないとか・・・。

あと1ヵ月と2週間で第62回目の誕生日。はあ、62才ねえ。そんな実感はさっぱりだけど、この年でこんなにハイパーになっている自分を昔は想像もつかなかったな。どうも昔からわりとちょこまかしているタイプだったらしいけど、ほんとにこんなだったのかどうかはあやしいと思う。そういえば最近SSRI系の抗うつ薬を飲んでいて、うつ病からの回復を通り越して、外向型のハイな性格に変わることがあるという研究発表があったな。ワタシも同じ薬ではないけど、2年くらい、一時は最大の用量でそのSSRI系の抗うつ薬を飲んでいたから、カウンセリングとの相乗効果で、人が変わってしまったのかもしれないな。まあ、50でも60でも70でも、自分が生きやすいように素直に生きて行ける環境でもあるんだけど、特に悪い性格になったようじゃない(と思う)から、いいか。

働くことが好きなのか(う~ん)、仕事が好きなのか(たぶん)、翻訳が好きなのか(さあ、どうだか)、はたまた、お金稼ぎが好きなのか(大いにあり得る)、仕事でなくても、生きていると実感できることが好きなのか(うん)、何でもいいんだけど、正直なところ、常識警察やらマナー警察やら思いやり警察やら違和感警察やら、とにかく一歩外へ出ると右も左もうるさい小姑だらけのような生きにくい環境にいないってことは幸せだと思う。うん、幸せな気分になったところで、ねじり鉢巻でぶっ飛ばさないとまたまた徹夜になってしまいそうだから、次の仕事も思いっきりハイパーに気合いを入れるかな。

人間の器はどうやって測る

3月12日。だんだん目覚めの時間が遅くなる。で、今日は2人とも正午過ぎ。ここんところ何となくどっちかが先に起き出すことが多かったし、誰も来ないとわかっているし、カレシの腕枕でしばしいちゃいちゃ忙しいときはこんな寝ぼけまなこのひとときも貴重なクオリティタイム。いっときでも二人の関係がだんだんに上等のコニャックのようにまろやかになって来たのかなあ、なんて思えて来る。一緒に暮らし始めてから、あと2ヵ月で丸々35年。VSOPまで来たかな?それともXO?それとも・・・?

今日はパラリンピックの開会式。きのうは郊外で目が覚めたらまっ白だったというところがあったらしいけど、今日は天気は回復。道路向かいの桜は半分くらい散ってしまっている。そういえば、日本では南の方で咲き始めたと言う話を聞いたような気がするけど、北緯49度でもう葉桜ってのはやっぱりちょっと早すぎるんじゃないのかな。日曜日からは「夏時間」。うん、やっぱり季節を急ぎすぎているような気がするんだけどなあ。人間はナノ秒単位で機能するようにできてないんだってば。

その日曜日が期限の大きめの仕事。やっぱり英訳の方が楽な感じがする。文系の論文はやたらと漠然としたコンセプトをだらだらと難しい漢字でしゃべっているようで閉口するけど、それでも内容によってはおもしろい。外交や国際政治になるともっとおもしろいし、歴史が絡んでくるとなおさらおもしろい。よく日本史の戦国時代とか幕末から維新にかけての激動の時代のさわりを、講談師みたいな口調でカレシに聞かせたけど、30年前に1ヵ月かけて読んだ分厚いH・G・ウェルズの『世界史概観』もおもしろかった。本棚を見渡したらいろんな世界の歴史の本があるけど、これだけ歴史の記録があるのに、人間はそこからあんまり学んでいないんじゃないかなという気もするから皮肉。特にインターネットの普及で過去と現在の時間的な距離感が失われつつあるような感じがする。

立体的な時空間の実感がつかめないネットの世界に住み慣れると、現実での人間の距離感も失われて行くものらしい。他人との心地よい距離感がつかめなくて、人とのかかわり方に悩む人が増えているらしいのもそのせいかもしれないな。だけど、目の前にいる相手のとの適切な距離感がわからないのは基準点となる「自分」がないからじゃないのかな。しょうがないから(自分の目に映る)「他人の目に映る自分」を基準点の代用にしているような感じもする。人のことがいちいち気になるというのは、裏返せば一種の「自分探し」なのかもしれないな。だから、他人のことにいちいち違和感だの嫌悪感だのを感じて、ネガティブな感情で反応する人はあんがい存在が不確かな自分、信頼できない自分への苛立ちを他人に投射しているのかもしれない。「自分がかわいいだけ」とか「自己中」と評される人ほど実は愛すべき自分も世界の中心たる「自分」もないというパラドックスが存在するような感じがするな。

情報技術の大々的な発展で人間の視野の時空間が飛躍的に広がったはずだけど、人間の視野は反比例して狭まっているということなのかな。人間の「器」が小さくなって来たということなのかな。小町横町の井戸端ではよく「器が小さい人」と応酬しあっているけど、この「器」、どうやって大きさを測るんだろうな。器というからには、何らかの「入れ物」を想定しているんだと思うけど、ちょこっと和英辞書を引いたら、capacity、caliberと定義している。Capacityは容量だから、器にどれだえ入るかということか。Caliberは円筒状のものの直径のことだけど、語源は「靴職人の靴型」だというからおもしろい。成長するにつれて足は大きくなるから、履く靴もだんだん大きくなるし、小さい靴だって履いているうちに少しは伸びるけど、子供の靴には子供の足しか入らないってことかな。

問題は器に「どれだけ入っているか」じゃなくて「どれだけ入るか」ということだと思う。容量の小さな器はすぐに一杯になって溢れるけど、容量の大きな器だったら同じだけ入れてもまだ「余裕」があると思う。自分の器にどれだけ余裕があるかは、やっぱりまず基準となる「自分」を入れてみないとわからないだろうな。アルキメデスみたいだけど、結局はまず「自分」ありきってことか・・・。

みんな丸く収まれば・・・

3月13日。土曜日。今日こそ胸突き八丁のホームストレッチ。だけど、バンクーバー交響楽団のコンサートの日。う~ん、時間、大丈夫かな?と思案していたら、カレシが「どうだろうね、今夜のコンサートに行かないことにするなら、秋にでもシアトルかサンフランシスコでのコンサートをプレゼントするけど」と持ちかけて来た。今日のダウンタウンはホッケーの試合があるし、パラリンピックもやってるしで、地下鉄も混雑しそうだから、と言うのがその理由だけど、「忙しいんだし、3、4時間は余分に仕事できるでしょ」といわれるとなかなか抗しがたいところがある。

結局、思いつきで3軒どなりのカヨに電話して、コンサートに行く時間あるかどうか聞いてみたら、「残念、郊外でディナーがあるの。誰か他にいればいいけど」。う~ん、残念。思いついたばかりで誰も思いつかないなあ。「私の友だちで行きたい人がいるかもしれないけど」。おお、ぜひぜひ電話してみて。30分後にその友だちから電話。なんとなく恐る恐るの声で「あの~、いくらくらいお払いしたらいいですか?」え、いくらくらいって、売ることは考えていなかったなあ。もらってほしかったんだけど、と言ったら、うれしそうに「いただきに行きます」とのこと。ほっ、よかった。

だって、ドレスサークルの最前列のど真ん中に2つ空席があるのって、なんだか前歯が抜けたみたいで、ステージから見てもさびしいと思う。ちょうどきのうの夜は楽団事務所から電話で来シーズンのチケットをどうするかと聞いてきた。もちろん、来シーズンも同じシリーズを同じ席で更新。こんなに早々と更新を勧誘する電話が来たのは、どうやらこの席を希望している人たちが何組かいるせいらしい。「当分は手放しませんから」と言っておいたけど、去年シリーズを変えたときに空席だったのはたまたまの奇跡だったのかもしれない。

ほどなくしてチケットを取りに来た。今夜のメインはホルストの「惑星」で、夫婦で大好きなんだそうな。ほんとにうれしそうな顔だったから、これでみんな丸く収まった感じ。カレシは混んでいるダウンタウンへ行かずに済むし、ワタシは(夏時間への切り替えで1時間は消えるけど)仕事時間が増えて第2の徹夜の心配はなくなるし、カヨの友だち夫婦は好きなホルストを堪能できるし、ミュージシャンはバルコニー真正面にぽっかり開いた穴を見ないで済むし・・・いつもこんなぐあいに何でもうまく行けば世の中はしゃんしゃんしゃんと回るのになあ。

キンコンダッシュってこのこと?

3月14日。今日から「夏時間」。30何年前と比べて「夏」が6週間も早くなった・・・ってわけじゃないけど、なんともせかされている気はする。半ばがむしゃらに仕事をしている目の隅っこ、日曜日の午前1時59分がいきなり「午前3時00分」になるんだから、無意識でものショックなんじゃないかなあ。しょうがないから、3時半(体内時計はまだ午前2時半)にしぶしぶ切り上げて、すぐに眠れるわきゃないだろ、とレミを一杯ひっかけて、(脳みそはまだ3時じゃないのとぼやくけど)就寝は午前4時。

だけど、うまく寝つけなくて、どうして息苦しいのかなあなんて思っているうちに、少しだけ眠って朝。1万語にもなった大きな仕事は今日の午後5時が期限。やっぱり気になって、午前11時に起き出した。きのうのコンサートを諦めたおかげで1週間に2度目の徹夜はせずに済んだけど、見直しと手直しだけでも半日で足りるかどうか。どうしてもときどきこうなっちゃうんだよなあ。狂気の3月なんだけど、狂気だよねえ。まあ、カレシがまだ寝ている間に、がむしゃらにキーを叩く。親指が痛いのに、目がしょぼしょぼなのに、もう。正午を過ぎて起きてきたカレシが「ぶれ~っくふぁ~すと」と呼ぶから、駆け上がっていって朝食。コーヒーマグを持ってオフィスに戻って、またせっせとキーを叩き、午後いっぱいトイレにも行かずにがんばって、それ納品。(ちゃんと直した時計は)午後4時55分!きゃっ、間に合っちゃった。こういうのをきっと「キンコンダッシュ」というんだろうな。お待たせしました、特急「ワタシ」は定刻で発車で~す。

食材をフリーザーから出し忘れたもので、夕食は三色ピーマンと黒オリーブのパスタだけにして、さて食糧の買出しの番。カレシも長いリストを持っていて、バスケットでは間に合わないから、外にあるカートを取りに出て、デポジットの25セントを入れて押して来る。「入口」から入ろうとしたら、制服のおまわりさんが2人、おしゃべりに夢中でそのまま「入口」に突進して、ゴン。後ろにいたカレシが何か言ったらしく、おまわりさんたちはげらげら笑いながら「出口」から出てきた。いっしょに笑いながら後について出て来たカレシ、「入口からは出られないことになってるよって言ったら、警察学校じゃそんなこと教えてくれなかったよ、だとさ」。きゃはは。犯人を追いかけて入口からでも強行突破で外へ出るように教えるんだろうか。ドア越しに見たら、外にパトカーが止まっていて、白い紙袋の中からなにやら出していた。どうやらスナックを買いに入ったらしい。(北米のおまわりさんはなぜかドーナツと切っても切れないイメージ関係がある。まあ、おまわりさんがのんびりおやつを食べていられるのは平穏な夜だってことだ。

大きなカートに一杯の買い物をして、出てきたら雨が降り出していた。月末までに次の仕事が3つも並んでいるけど、火曜日の夜まではお休みってことにして、ゆるりと小町横町の井戸端会議でも冷やかしてみるか。どんな話題に花が咲いているやら・・・あっちも春、爛漫かな。

何が何でも閉店休業

3月15日。いい天気。今日は絶対に休み。いくら仕事が並んでいても、うちは「行列のできる翻訳屋」じゃないんだからして、絶対に「本日休業」。いつもの「開店休業」じゃなくて、正真正銘の「閉店休業」。ま、それでも朝食後に、この先のスケジュールの算段をしておいた。最後の方できちきちになってしまわないように、訳上がりの語数を見積もって時間表みたいなものを作るだけなんだけど、小さなファイルをいくつもひとまとめにして、はい!と渡されるのもけっこう手間がかかるのだ。

今日は照明器具の買出しの日。ウェブのカタログから選んだデザインを基本に、ショールームのマネジャーとメールでやりとり。デザインの数がすごいからたいていは販売店にはなくて、メーカーから取り寄せで、一番の問題はどれだけ早く取り寄せられるか。トラックで6日が最短。一応、希望品目のリストを送っておいて、今日会って話をすることになっていた。店はおとなりのバーナビーだから、カレシが大人になるまで育ったあたり、どんぼが37年前に初めてカナダに来たときに滞在した友達家族の家(カレシと初めて顔を合わせたところ)があったあたりを通って、変わってないなあ、ここは変わったなあ、この店はまだあったんだと、なんだかちょっぴりセンチメンタルなジャーニー。青空なのに、フロントガラスに雨粒がぽつ、ぽつ。あら、お天気までおセンチなの?

マネジャーのステファニーさんに取り寄せ品の代替品を推薦してもらって、カレシの意見を聞きながら、結局6品目10個全部を店の在庫から選んで取り寄せはゼロになった。カードで支払いを済ませて、懸案解決。やれやれ、ほっ。後はロウルが取り付けの日に引き取りに来てくれる。その足でホームデポに寄って、モーションセンサーのついた屋外用の照明4個と、トイレットペーパーやタオのホルダーを買って、これで施主側の「作業」は完了。帰って来たらマイクからメッセージが入っていたから、「照明器具が揃った」と報告。しばらくして「明日の朝9時にロウルが取りに行くと店の方に連絡しておいて」と電話。えっ、もう?店は閉まっている時間だから、ステファニーさんにボイスメールを残し、「緊急」と書いたファックスを送っておいた。てことは、ロウルは10時くらいには器具を持ってご到着ってことか。てことは、ちょっと早起き・・・でもまあ、だだ~っと進捗しそうだから、いっか。

トラックの時計が3時になっていたから、「へえ、意外とささっと終わったねえ」と、昼寝をする気満々のカレシ。家に帰ってみたら、あれ、4時過ぎ。そうなんだ、トラックの時計はまだ夏時間に変えてないの。そういえば、暖房のタイマーや目覚まし時計、キッチンの時計は変えたけど、残りはまだ「冬時間」のままでほったらかし。家中の時計をひとつひとつ調整しているヒマなんかなかったもん。コンピュータは自動的に変わってくれるからいいし、オーブンや電子レンジはタイマーなんか使わないし、ビデオ機器はカレシのもんだからワタシはカンケーないしね。ラジオ局の投票では70%くらいの人たちがこのまま1年中夏時間にすべきに投票していた。テレビでは「月曜の朝の通勤は特に車の運転に注意」なんて警告していた。時計を進めた後の月曜日は事故が増えるらしい。そりゃ、
一応は時差ぼけ症候群なんだから。ま、あしたにでもゆっくりと変えておこう。